Laub🍃

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2017.10.03
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テーマ: 自作BL小説(22)
カテゴリ: .1次題
堂々としてれば嘘とばれない。

それを俺は母から学んだ。

可哀想にふるまえばそれ以上攻撃されない。

それを俺は父から学んだ。

そうなるべきじゃないと思っていた。
学生時代は反面教師にして、何があっても嘘を吐かないように、可哀想に見えないように頑張ってきた。
だけど苦しかった。敵が多かったし、味方だと思ってた人も次第に俺を裏切っていった。
それでも笑ったり強がらなければいけなかった。

だから俺は社会人になったことを機にそれをやめた。

青い青春の苦い味は味わい尽くした。
これからは腐った大人の甘い味を知ることにした。





俺は人を信じない。
どんなに酒の席で酔っぱらっても本当の事を打ち明けない。
どんなに優し気な人相手でも本当の悩み事を打ち明けない。
どんなに親しくなっていても実際の問題事を打ち明けない。


どんなにオフレコの場でも、どんなに優しげでも、どんなに親しいと思っていても、


人は裏切る時は必ず裏切るのだ。


そっちの方がまだましだからというときもある。
そうすることが正しいと思われたからということもある。


……たくさん、たくさん、そうしなければいけないようなストレスを相手に押し付けてきたのかもしれない。


だから俺は嘘を吐いた。

どんなに傷付けられても本当の自分は傷付けられないように。

過去を隠した。性癖を隠した。

同情されて、それ以上突っ込まれないような事情を真実をもとに造り上げて、そうしてそこに居られる理由と、自分が異常な感覚と疑り深さと嘘を吐くことに理由をつけた。



あの頃、友達も好きな人も全て失って、泣きながら貪るように空虚を埋め尽くすように見たそれらがやっと役に立った。


もう大人だという意識もそれを後押しした。
大人ならば遊ぶ時間が少なくてもいいのだ。
大人ならば他人行儀でも許されるのだ。
大人ならばかつての友人と縁が薄くてもおかしくないのだ。
大人ならば仕事の為だけに人情を切り捨てても悪くないのだ。
大人ならば他人の家やプライベートに踏み込む必要などない。

〇〇くんておかしい、なんてもう言われない。言わせない。
何故ならもっとおかしい人が沢山大人の分母には居るのだから。





友達も要らない。彼女も要らない。

そう思ってばりばりと仕事をこなしていた僕のもとに、



「……お久しぶり、です。

 ……火口先輩、ですよね?」



…2つ下の後輩がやってきた。


よりにもよって俺が凋落するところを丁度見ていた後輩。
最後の方は哀れんだような目で俺を見ていた後輩。


「……誰だろう?ごめんね、覚えてない」
「穂村ですよ!ほら、将棋部で一緒だっ「ごめん。本当に覚えてないんだ」

空気を読め……!!!



「ね~火口先輩、思い出してくださいよ~」
「だから覚えてないし思い出す気配もない。あとここは学校じゃない、先輩じゃなくてさんづけで呼べ」
「えぇ~」


……いつの間にかこいつの教育係と言うことになっていた。
くっそあの上司……!!!


ちら、と見るとそいつの女みたいな顔が少しふわ、と笑った。
くそ、こいつ俺らの世代にしごかれてあの頃泣いてばっかりだったくせに…!



「あの頃沢山教わったんですよ~、火口先輩の教え方が一番好きでした。これからもよろしくお願いしますね~」
「……」


俺の心の中の過去への鍵が更に増えた。

…何はともあれ、がんばらなくちゃな。





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最終更新日  2018.10.14 23:21:10
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