Laub🍃

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2017.11.08
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カテゴリ: .1次題
それは悪いことです。
それは酷いことです。

そうやって言うあいつらが大嫌いだった。

だから私はそれを言わないことにした。

見て見ぬふり、聞いてないふり、
そうして彼らは皆私に感謝する。

それが私の存在価値だった。

それなのに。

「それは悪いことだよ」


そう言って咎める彼女の方になぜかみんな引き寄せられる。

私は気が付けばそんな彼女の慰め役になっていた。
皆を警告するわけにはいかないけれど、警告しては痛い目を見る彼女を慰める役になっていた。





時が流れるのは早いもので、私も彼女も十歳年をとった。

けれど私も彼女も変わらないままだった。

唯一つ変わったのは一緒に暮らしていることだけだった。

私が外に話を漏らさないと分かっていて彼女はあらゆることをぶちまける。

外の公明正大とは少し違った形の彼女を見られるのは面白かった。


どうやら社会の波は彼女に厳しいらしかった。

そして上司の汚職を告発しようとした彼女は逆に会社に潰されてしまった。


忠告も警告もせず応援しただけだった。

それから半年、そんな彼女といまだ一緒に暮らす私は言う。

「ゆっくりしてていいんだよ」
「今まで頑張ってきたんだから」


そうして彼女はやっと泣いた。




そんな彼女を抱きしめて私は笑った。


嗚呼、この時を待っていた。





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最終更新日  2018.11.14 21:52:30
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