Laub🍃

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2017.11.22
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世界でたった二人生き残ったら、どうすればいいんだろう。

元々俺達はそう仲がいいわけでもない、単なる美化委員と生徒会で、ただ偶然見つけた古い地下室の調査をしていただけだった。

たった3時間だ。3時間で地上は地獄に変わり果てていた。
どこかの科学者が作ったゾンビウイルスが地上を満たしてしまっていたんだ。

俺、ソリティアには愛する女の子、マインが居た。
彼女、タロットには愛する男の子、ウーノが居た。

けれど二人を探すこともできず、俺達はただ逃げ出した。

マインは強いから大丈夫だと俺は信じた。
ウーノは弱いからと探しに行こうとするタロットを必死で説き伏せた。


きっとまた会えると信じていた。

それなのにいつかまた人に出会えるかもしれないのに、二人きりになって3年半、俺達は寂しさから結ばれてしまった。

気丈で、何でもできるように見えるタロットは案外泣き虫だった。
やる事がある時はそれに集中できても、一度暇が空いてしまうと崖や廃墟といった
夜いつも隠れて泣いていた。危ないから一緒に居ようと何度言っても駄目だった。
だからウーノの名前を呼んでは泣いているタロットに、嘘を吐いた。

俺はタロットの事を好きになったから、だからタロットまで居なくならないでくれと。
タロットは信じていないようだった。
というかどう見ても俺への警戒心が強くなっただけだった。

それでも、その日から俺への気遣いなのか、タロットが深夜にふらふらと姿を消すことはなくなった。

そうしてタロットの方も不安と寒さを抑える為に俺にくっついてくることが増え、そして気付いたら、こんな仲になっていた。


ただぼうっとすることが増えた。

タロットは俺とあまり強くは争わなくなった。
俺の引く手に素直についてきてくれるようになった。

朝焼けを一緒に見て、一緒にご飯を食べて、そうしてたまに重なり合って、生きている事を確かめて、このまま昔の事を忘れて生きていくのもいいと思っていた。

それなのに。




「マイン!」

マインが生きていた。

「よかった、生きてたんだ!」
「……ああ、……こんなにぼろぼろになって…」
「大したことないよ。…ソリティアは、一人?」
「いや、タロットが……」
「…タロット?」
「ああ、すぐそこに……あれ?」


タロットは姿を消していた。

生焼けだった筈の魚と一緒に。











兄が昔話してくれた御伽噺を思い出していた。
アダムとイヴ。

それがわたしたちに似合いの形容詞だと思っていた。


けれどわたしはきっとリリスだったんだろう。


「タロット!?どこだ!!」


ソリティアの声をしり目に歩き出す。

私は知っている。

ウーノはもう死んでいることを。

校舎を離れたあの日、ゾンビの群れから逃げる時、背中を押してくれたあの感覚を覚えている。

だけど信じたくなかった。もう一度探しに行きたかった。
ウーノの精一杯の抵抗を無駄にしてでも、ゾンビになっていてもウーノに会いたかった。

だけど、ソリティアがあんまりに情けない声で縋るから、そうも言ってられなくなった。
背の高いソリティアがまるで小さい時のウーノみたいに、わたしが居ないと駄目だというから、仕方なくわたしは残った。



けれど、もうわたしが居なくてもソリティアは大丈夫だろう。




校舎の方に歩き出す。



泣き虫ウーノ。
ウーノを守る為に強くなった。

ウーノが居ないとわたしは泣いてばかりだ。

だから最後に、ウーノの胃袋にでも収まって、ウーノを元気づけてやろうか。

そうしたら、泣くに泣けないだろう。





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最終更新日  2018.11.15 18:34:37
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