Laub🍃

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2018.03.08
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カテゴリ: .1次長
「僕は研究者として死にたくないんだ。
 離れた所でも、兄さんの力になりたい。

 ……力になってくれるね、姫」

「はい」

 頑張れと言われれば頑張る。
 けれど、いつまでだろう。
 どこまで、頑張ればいいのだろう。

 苦労を理解されていない気もする。

 そう思って頑張り続けてきた。



 姫のためじゃない。姫のことも大事ではあったけれど、地の将軍に心を残したままの姫の手を無理矢理引く兄はあまりにも痛々しい顔をしていたから、だから僕は、姫と地の魔女の間を取り持ったのだ。

 代わりにやってきた姫の偽物は、姫にそっくりだった。
 うまく僕が弄れば、少しずつ兄に心を移す姫になることだろう。

「姫は、地の魔女の所で眠っていることにしよう。」

「あっちに僕達は手を出せないんだ」

 金の国の本拠地で、地の魔女ーー金の門番は本領を発揮する。
 魔女はほとんど望めば何でもできる。実際に眠ってもらうこともできるそうだ。
 けれど姫には普通に生きて普通に死んでほしかった。
 僕にはそれができないから。

 星空の下で僕は姫の隣を歩く。

 姫の姿は少しずつ歪んでいく。



「姫は何も悪くないよ」

 だからこうして、隠れていて。
 時折は姿を戻してあげる。


 さくさくと草を踏んで辿り着いた場所は、小さな村だった。











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最終更新日  2021.05.23 23:12:45
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