Laub🍃

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2018.04.06
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カテゴリ: 🔗少プリ
不死身の侍と同じ頃、他のある少年も、自らが不死身である事に気が付いた。
彼は常時殺し殺される世界に居た。
奪い合う貧しい世界で、それまで一度も傷を負ったことのなかった彼だったが、その日は少し条件が悪かった。彼は油断しており、荷物も多く、おまけにその中に大事な母親に見せたいものが混じっていたためその凶弾をよけ損ねてしまった。

しかして、彼は死ななかった。

弾を押し返し、赤い肉を見せながら回復していく胸。

彼は命があることに安堵した。
そして、怯えて逃げ惑う犯人を見て呆れ笑った。
これは人に見られてはいけないものだと自覚して、そして、流れるような動作で手を伸ばした。

犯人の銃で犯人の体で確認をしたが、銃は普通の、人を殺せる銃だった。

ナイフで自分を試しに差すと、ナイフの方が折れて押し出されてしまった。

そうして彼は眼下の虫の息を完全に踏み潰し、奇妙な音程で歌いながら歩き始めた。


彼はじきに、その地区で『王様』もしくは『暴君』というあだ名をつけられることとなる。




そんな彼に、何度目かになる刺客が現れた。

彼を思うように翻弄し、ぜえぜえと息を吐くさまをにやにやと笑って見ていた暴君は、ふと、彼に妙に怪我が多いことに気付く。

「お前、虐められてんの?」

そう考えたのは、服の背中にでかでかと書かれた文字、『半々』が理由だ。

「うっせえ!」

さきほどまでは上着で隠れていたそれを暴いたのは暴君だった。
憤怒の表情を浮かべ、挑みかかってくる彼を躱しながら暴君は哂う。


 ……お前、人、殺せないだろ」

まあ俺は殺されても死なないんだけど。

そう言って哂う彼に、ナイフが突き立つ。

「やっ…やってやった!やってやったぞ……っ!これであいつらも、俺を認め…」
「うんうん、よく刺せましたー。ちびの癖に偉い偉い」



「ぐう……っ」
「わりい、やりすぎた!俺いくらやられても死なないから、反撃でやりすぎちまうんだよなー」

半々。確かどこかで、ハーフの蔑称として使われていた言葉だ。

「まだ生きてる?じゃあ、せいぜいまた襲ってきなよ。俺、お前の事嫌いじゃないからさ、待っててやるよ」

そう言って去る暴君は、久々に目をきらめかせていた。
新しいおもちゃを見付けた子供のような目だ。

「同じ半々のよしみでな」





次に会う時、小さな殺し屋と『友達』になることを、暴君はまだ知らない。








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最終更新日  2018.12.25 03:17:14
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