Laub🍃

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2018.06.19
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カテゴリ: .1次題
「あたしは必要とされてるの。あんたなんかと違ってね」


以上、親からサンドバックにされ、春を売っては生活費にあてている姉のお言葉だ。

ちなみに殴られもしないが撫でられもしない、放置プレイの極みを受けてる俺はといえばそんな姉の給料と世話を必要としている。


必要とされてる、だから行かなくちゃとしきりに言う姉はぼろぼろで、相手の悪口ばっかり言うのにその相手と離れることはなく。

きっと外では俺のことだって「弟があたしを必要としてるから帰らなくちゃいけないの。バカな弟でねー、一人じゃなんにもできないから」なんて言って笑ってるんだろう。


みんなが姉を求める。
俺はみんなを求める。


いつからか俺を世話してくれる人が姉以外にもできた。
姉が帰ってこない日、誰かの所で眠ってるんだか必要とされてるんだかわからないけどとにかくそれで手いっぱいの時のことだった。



その家の子は俺より年下だったけど、姉みたいに頼りがいのある子だった。


そうして俺は人を求めた。

甘えて愛して必要として頼って体液啜って、寄生虫になった。
一人じゃ啜り殺してしまうから、何人も何人も。

姉もそれでいい、あたしも肩の荷が下りたと言ってくれると思ってた。

なのに、実情を知った姉は俺を疎んだ。


「これだけ与えてあげたのに、どうしてあんたは他の所へ行くの」
「あたしだけを必要としなさいよ」

俺には全く理解できない。

必要とされる側がなんでこんな顔をするのか。
どうして。



姉はそのまま俺を刺した。
風邪をひいたときにリンゴを剥いてくれた包丁。
姉の腕に消えない傷を残した包丁。

あの赤が蘇って、そのすぐあと、暗闇に呑まれた。





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最終更新日  2018.08.06 05:54:39
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