Laub🍃

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2018.06.23
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カテゴリ: .1次題
少年はある国の次期国王として生を受けた。
何でも彼の思うがまま。
しかし一つだけ難点があった。
暗殺が非常に多かったのだ。
それを憂えた家族と家臣団によって彼は幾人もの影武者を設けた。

しかし幼い彼はその重要性を認識することなく、頻繁に影武者と入れ替わって遊んだ。
影武者の中には賢い子供も居て、そんな子供が少年の為に王子を演じると、もはや大人達には判別がつかないのだった。

ある日とうとう影武者が殺されてしまった。
それだけならまだ影武者を変えれば済むだけの事だった。

そうして逃げる道すがら一人欠け二人欠け、とうとう少年についている従者は一人だけになった。

最後に一緒に落ち延びた従者は身分を証明してしまう少年の顔を焼いた。背中に奴隷の烙印も押し、少年を汚し甚振った。従者は王子を落ち延びさせる為なのだと繰り返し説いた。
少年は激しい苦痛で気を失った。

少年が気が付いた時には敵国に捕虜として保護されていた。
従者の首を敵国の兵が持ってきて、もうお前の酷い主人は死んだから安心していいと言った。
捕まる時に、奴隷を差し出すから自分の命だけは助けてくれと言ったのだと吐き捨てた。

少年は焼かれた顔で泣いた。
聡明な従者だった。そんな不快感しか煽らない取引をする筈がない。
彼は命どころか矜持も何もかも捨てて、少年を守ったのだ。


少年はその想いにこたえるべく、耐え忍び、出世し、そうして将軍として国を乗っ取り始めた。
潰れた顔には仮面を被り、奴隷の焼き印には刺青を掘り、恐怖の記憶は新たな縁で塗りつぶし、少年は青年となり、壮年となり、そうして子孫……息子である現国王も含まれている……に囲まれた中で幸せに逝った。





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最終更新日  2018.08.15 13:47:00
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