Laub🍃

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2018.07.07
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カテゴリ: .1次題
「君達は、もう少し長い間子供で居たいとは思わなかったの?」

そいつは俺の部下だった。


満開の星の下、さらさらと揺れる何千と言う黒い葉が、一瞬凍り付いた気がした。




俺達の仕事は内戦を終わらせる事。
俺達の雇い主は、内戦の期に敵国を滅ぼす為、ゲリラ側に加担しろと言った。


俺達は皆貧乏で、雇い主や兄貴分に拾われなきゃ今頃ゲリラ側と同じような事か、それかもっと惨めな境遇になっていただろう。
だからゲリラ側に加担できる事は俺達の気分を明るくもした。


俺は仲間内じゃあもともとはボンボンな方だった、だけど取引先や流通経路が内戦の影響でどんどん潰れて親は体を壊し、俺は体力を、姉は体を売るようになっていた。


だから雇われた後は必死に頑張った、嫌わせないように、接した相手を出来るだけ幸せにできるように。それを見てれば、相手が未来を繋いで、そうしてその礼を俺に言ってくれるのを聞いてーーー若干のどうしようもない嫉妬を抑え込めば、残るのは純粋で誰にも侵されない自己満足だ。


家族の為になんて俺は働いてないし、雇い主の為にも、仲間の為にも俺は働いてない。
大義名分や誰かの理想の為に頑張るなんてのは究極的に言えば自己正当化の手段で、それに縋って、縋りすぎて振り払われて親のように心を病むのはまっぴらごめんだった。


…だから、これもただの自己満足だ。


「君達は、もう少し長い間子供で居たいとは思わなかったの?」

そう言った部下を俺は放って。
目を丸くしている子供たちに、考える隙を与える前に。

「お前らはすげえ」

銃を持たなければ生きてこられなかった子供達に笑いかけた。

「俺なんて、こんな難しい道具もう少し年食わないと使えなかったよ」
「もう技術は大人に片足突っ込んでるな。…頑張って、生きてきたんだな」


境界線が踏まれた途端、入ってはいけない部分に土足で入った途端、終わる気がした。

「……は……はは、おれらよりずっと命中度ひっくいお前に褒められてもなあ」

技術のことで馬鹿にされても、どんなに無様でも構わない。
軽口で出来るだけ昇華できるようにしなければいけない。
……こう思うのも傲慢なのかもしれないが。


あの憎悪と嫉妬の目と、何もできず言えない歯がゆさを思い出す。

「ひっでえなあ」

何年かして、この年になるまで手を汚さないで居られた俺達を、お前たちは憎むのかもしれない。
馬鹿にするのかもしれない。


だけど、少しでも誇りをお前たちは持つべきで。
……そうして、少しでいいから、手を汚さないで済んだ人への憎しみを昇華できるように、消化できるようにして…。

「……でもな、半分大人でも、半分子供でいることはできるんだぜ」

そして、普通の暮らしを、普通に楽しまなければ。

「いつも遊びまくってる俺みたいにな」

そう言って、笑顔のスイッチオン、にっかり笑う。
同時にポケットからトランプを取り出して。

「さ、遊ぼうぜ!」


部下にも笑いかける。
曖昧な顔で頷く部下がああ言った気持ちも、その内知ってみたいと思った。





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最終更新日  2018.09.10 00:43:48
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