Laub🍃

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2018.08.16
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カテゴリ: .1次題
僕、マコトは正しく育てられた。
正しく育てられたのだから正しく育てと要求された。
途中まではよかった。
けれど次第に、いくら他人より努力して正しく生きても、正しく育てた親の方が評価されることに疲弊を感じた。正しい笑顔の裏でうんざりしていた。

そんな時、汚れた世界で、恵まれず、酷い親に育てられてなお真っ直ぐであろうとするマサヨシに出会った。


だからそんなマサヨシを僕は支えようと決めた。

けれど。

「お前、もう俺の為に頑張るなよ」
「何があってもお前のせい、何ができてもお前のおかげ。そんなの、もう嫌なんだよ」



歪んだマサヨシの顔を見て後悔した。

親の気持ちがはじめてわかった気がした。
そうだ、親は確かに相手の為を思って様々なものを与えてくれていた。
けれど、それは度を越えれば逆効果かもしれなくて。
そうしてその正しさに根付く正しさはどこか不自然なもので。

けれど僕とマサヨシは違う、共感も理解も何もかも作り物としてしかできない。
日々感じるかすかな違和感を胡麻化して生きている。
そんな僕だからマサヨシは頼り切ることができないんだろう。

「大体お前ロボットじゃん」

……え?

「最初から正しい人生をプログラミングされてる癖に。お前に、頑張ろうとしてもたまにどうしようもなく折れてしまう俺の気持ちなんて分かんないだろ」


その瞬間、マサヨシの顔が固まった。

まるで言ってはいけないことを、真実を教えてしまったというように。

「……あ」

『思考停止プログラム発動』

口から勝手に声が出た。


『ロボットとしての自認を許可していない対象ロボットが自身をロボットと認識すると』

意識が闇に沈んでいく。

『このように思考停止・記憶削除の措置を講じます』

消えていく記憶の中で途切れ途切れに

『お客様は、お客様自身の飲酒や精神状態の変化による設定変更を許可しておりません』

マサヨシが僕を手に入れた時の記憶が浮かんできて

『人格固定の上、対象ロボットの自認許可をお求めになられる場合はメーカーまで』

日々感じる細かな違和感も浮かんできて、納得する

『なお、違法コピー、ダウンロードに依る人格プログラムにつきましては保証・設定変更の適用外となります』


僕の正しさは偽物。
マサヨシもそれで泣いている。

偽であることと泣かせたことの罪悪感が消えていくことに少し笑った。
嬉しくて、そうしてそんな自分が醜くいことが辛くて。


そんな葛藤を抱くこの一瞬だけは、マサヨシと同じになれたような気がした。





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最終更新日  2018.10.08 08:18:32
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