Laub🍃

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2018.11.16
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 彼ら戦災孤児はティシア(生贄)と呼ばれる場所で生かされている。
 いつかみなが愚か者の住まう地下街「ヒポギオス」を出て、天に近い「イメラ」に至る為の手段を得る為に彼らは利用されている。


「メラ。そこは危ないぞ」
「せんせー!」

 目の前の少年はぱっと数mある崖を飛び降りる。

「わっ、ちょっ」
「着地成功ー!」

 全く、肝が冷える……!
 大きなため息を吐くとメラはきょとんと大きな目を瞬かせる。


「お前に何かあったら私がテノに怒られるのだから少しは慎重に行動してくれ」
「だって~~~ここは退屈なんだもん。せめて他の実験棟に行きたいよ」
「……」
「テノは元気?クラは?ヴィディは?みんなどうして会えないの」

「毎日毎日痛いのも苦しいのも我慢してる。自分の形が変わっては戻ったり死にかけたりするのを何度も耐えてるのに、どうして自由時間くらい他の子に会わせてくれないの」
「言っているだろう。君たちは人類の希望なんだよ」

 地下都市アンドラスは、もともと地下のスラム街だったヒポギオスに、つい数年前、地上の街アンドラから落ち延びた者たちが押し掛ける形で形成されている。

 かつてのアンドラは焦土と化している。金の大陸特有の異様な音の反響は生物兵器でない者にはあまり効かないーそれを知った風の大陸の奴らが、廃棄物を馬鹿みたいに詰め込んだ兵器をこちらに投下してきたのだ。
 風の大陸ではただ少し邪魔なものとだけ扱われていた廃棄物は、こちらの大陸の鉱石文明と化学反応を起こし、見事に大爆発を引き起こしてくれた。
 そうなるまでに間にどうにか平穏に事を終わらせられなかったのか、いやあいつらが悪い、と地下街に避難してさえ私たちはいまだに馬鹿みたいな議論を続けている。

 ここに住み着く者たちは多種多様な馴染み方をしていく。


 そして、地上に出て生きられるように日夜研究を続ける私たちのような者だ。

 もともとスラム街の闇医者だった私はどうにかどちらの立場にも話が通じるので、どちらにも得があるよう動きまわっているが、なかなかに難しい。

 今日も私は幼い姿のまま成長することのない彼を撫でる。



*********


メラ…ゼニメラス μέrα Την ημέrα της

 新陳代謝が異様に速いので地上に出る為の希望の星筆頭として扱われている。
 ただしその分人体実験も沢山されている。

テノ…ラファステノμαύpος φτεrό
 メラの幼馴染。軍人の家系。戦災孤児。
 武力が高い。モンペ。

レオ…アプレオスαpουραίος
 ”先生”と呼ばれている闇医者。苦労人。クラが他人を殺しそうになっていた時は止めたし、クラが他人に殺されそうになっている時も止めている。

クラ…コクラκούκλα
 マッドサイエンティスト。かつて自分が行った非道な実験をやり返されている。

ヴィディコキュオスφίδικόκκινος
 メラの許嫁。兵器産業の一族の末裔。戦災孤児。
 クラに行われた実験により延々と眠り続けている。





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最終更新日  2021.06.05 03:37:59
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