Laub🍃

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2020.05.29
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 全てを完璧に取り繕おうとしていると逆に敵を増やすし厄介なファンも増やす。だから俺は俺を見てる相手に隙を見せつつ隙なんて見せてないという顔をしつつ他人に対してあからさまな不満をぶちまけないことで俺はこれまでなんとかやってきた。

 しかしここ最近しっぽを出し始めたストーカーはあまりに迂闊だった。
 そして人が良かった。俺の落とした鍵やら手帳やらはみんなすぐに届けられたし、逆に何かものがなくなるということもなかった。

 だけど、だからこそ俺はこいつにならこれまでの不満をぶちまけてもいいと思ってしまったのだ。

「なぁ、なんとか言えよ……っ」
「ふ、う゛、うぅ……」

 ストーカーの名前も住所も素性も持っていた財布である程度分かったけれど俺は彼を帰す気などない。口も最小限しか開けないようにして給餌して、おむつも履かせて動けないように喋れないようにして自由な時間はずっと彼を弄んでいる。普通ならとっくに幻滅してもおかしくないのに彼はそれでも俺を慕っている。
 口調はいつもと違って荒っぽく、身なりだって整えてない俺を見て、それでも彼はその瞳に宿す憧れを消してない。



 背筋をぞくぞくと何かが駆け上がる。

 どんなに試しても消えない絶対的な信仰が俺は欲しかったのだ。





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最終更新日  2021.05.04 11:35:24
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