Laub🍃

Laub🍃

2021.12.10
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カテゴリ: .1次小
ただ俺は兄で居ることを辞めたかった。
 母さんは昔母さんの兄貴に虐待を受けていたらしく、その傷が癒えないまま、俺に理想の兄像を求めた。


 俺が妹なら、母さんは立ち止まってくれたのだろうか。
 俺が妹なら、あの友達は俺を切り捨てないでいてくれたのだろうか。

 そんな言っても仕方のない仮定が胸を占め、思春期になった俺はMMOでネカマをやっていた。
 兄の居る妹を演じることにしたのだ。

 幸い初心者に優しい人がそんな俺を拾ってくれた。
 助けられ優しくされたのは俺ではないが、中に居る俺もまた、着ぐるみ越しに抱き締められているような感覚を覚えて嬉しかった。




 でも俺はそれを脚色していかにも俺がそこまで悪くないのに悪者ぶってるかのように宣った。
 クズの所業だ。

 そしてその人は幸か不幸かそれを信じてくれた。

 当時の誰もと絶縁している俺は、その人が「君は悪くない」と言ってくれるのだけを支えにすることができた。



 予感があった。
 まとわりつくそいつらのことをその人に話したら、その人の目はそちらに行ってしまうだろうと。
 だから俺は黙っていたのだ。

 そして同時にこの人とはある程度の距離を取らないとあいつらの二の舞になるような恐れを抱いた。

 その人にはそれだけの中毒性があった。

 そっとわからないように自然に距離を置いたつもりだった。
 それでも「どうして最近距離を置いてくるんだ?」なんて訊かれたから俺は、



 と返した。これでは突き放したようかな、戦闘力だけ目当ての奴みたいだ、と思った直後、やはり彼は顔をしかめて、「そうか」と言ったきり、俺の望み通り離れていった。

 とても寂しかったけれど、追うのは我慢した。

 追ってまた嫌われたくないから。

 そんなこんなで少し距離を置いていた俺に、その人ー---ブルーの素性を探ろうという提案が、他のユーザーからされた。

 俺は、乗ることにした。



中略

*********************

 ブルーは崩壊してる家庭の可哀想な子を逃がして庇うことを生業としていた。

 俺にブルーの素性を探る提案をしてきた奴は、その逃げおおせた子を探しているDV野郎だった。

 俺はなんとか間一髪でそれを知ったが、ブルーの新たなシェルターつくりを手伝うことになった。


 俺は今、生きていることをー俺自身を必要とされていることを実感している。





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最終更新日  2022.12.08 00:52:21
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