Laub🍃

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2024.11.03
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玉座の間に、夜の帳が静かに降りていた。
 戦勝の宴の余韻が残る中、呪術師の男・ティセリはひとり、女王・トワールの前に跪く。

「女王様。褒美をなんでも下さるとのお話、誠ですか?」
「ああ。女王に二言はない。先のお前の呪いは見事だった。
 敵の将はみなこちらに殆ど損害を与えることなく膝を折った、大活躍だ。
 望みを申せ、私にできることならば何でも叶えてやろう」
「……人払いをしてから、望みを申し上げたく」
「あいわかった、皆の者、今すぐ部屋の外へ出よ」

 皆が退出した後、呪術師は、静かに顔を上げる。その瞳には、深い疲労と決意が宿っていた。



 女王の眉がわずかに動く。

「どうか、私と“姿と立場”を入れ替えてください。」

 沈黙が落ちる。
 女王は玉座から立ち上がり、呪術師を見下ろす。

「……正気か?」
「恐れてなどおりません。ただ、あなたが死ねば、この国は崩れます。私の命一つで、それが防げるのなら、安いものです」
「死にたいのか?」
「死などは怖くありません。あなたの持つものを魂以外いただきましょう。
 ……代わりに、この国に勝利をもたらします」

 女王はしばし目を閉じ、やがて静かに目を開けた。

「……ふざけるな。そのようなこと、受け入れられるはずがない」


「ーーーー貴様…!取り立ててやった恩を忘れて……!」

その夜、秘儀が執り行われた。
月の光の下、二人の影が重なり、やがて入れ替わる。

翌朝、玉座に座っていたのは、呪術師の姿をした女王。
そして、女王の姿をした呪術師は、不敬な望みを口にしたとして投獄された。





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最終更新日  2025.10.26 15:12:48
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