Laub🍃

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2025.08.11
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カテゴリ: ●怪
キーワード「元恋人」「生き別れ」「拐う準備」

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### 『準備はできてる』

彼女の名前は、可南子。
彼の名前は、尚人。
二人は高校時代に付き合っていたが、尚人の転校と家庭の事情で、突然の別れを迎えた。
「また会おうね」──その言葉を最後に、尚人は姿を消した。

十年後、可南子は結婚を控えていた。
穏やかな婚約者、安定した仕事、静かな生活。


> 「準備はできてる。
> 君を迎えに行く。
> あの時の約束、忘れてないよ」

差出人は書かれていない。
だが、筆跡は尚人のものだった。

可南子は動揺した。
尚人の消息は不明のまま。
SNSにも痕跡はなく、共通の友人も連絡が取れない。

その日から、家の周囲で奇妙なことが起き始めた。
玄関の鍵が微かにずれている。
寝室のカーテンが、閉めたはずなのに開いている。


婚約者に相談しても、「気のせいだよ」と笑われるだけ。
可南子は、次第に“準備されている”感覚に囚われていった。

ある夜、彼女は夢を見た。
高校の教室。
尚人が立っている。


> 「君は、誰かに“選ばれる”べきじゃない。
> 僕が“拐う”って決めたんだから」

目覚めると、指輪が消えていた。
代わりに、尚人の写真が机の上に置かれていた。
高校時代のもの。
裏には、こう書かれていた。

> 「準備はできてる。
> 君の“喪失”が、僕の“再会”になる」

翌朝、可南子は姿を消した。
婚約者は警察に届け出たが、手がかりはなかった。
ただ、彼女の部屋の壁に、奇妙な言葉が刻まれていた。

> 「拐う準備は、十年前から始まっていた。
> 君が“忘れた”瞬間から、僕は“思い出し続けた”」

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私>尚人が自分から消えたくせに身勝手過ぎるので拐った可南子に怒られてほしいのですが申し開きはありますか?



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### 『尚人の申し開き』

> 「俺が消えたのは、君を守るためだった。
> 家庭の事情なんて、言い訳にしかならないけど──
> あの頃の俺には、君を巻き込む勇気がなかった。
> 臆病だった。
> でも、君を忘れたことは、一度もない。

> 君が誰かと幸せになるのを、遠くから見ていた。
> それが“正しい”って、何度も自己暗示した。
> でも、俺の中で、君は“喪失”じゃなく、“未完”だった。

> 拐う準備をしたのは、君を奪うためじゃない。
> 君が“思い出してくれる”瞬間を、待っていたんだ。
> 君の中に、俺が残っているなら──
> それは、俺が“消えた”んじゃなく、“隠れていた”だけだ。

> 君が怒るのは当然だ。
> でも、俺は君に“選ばれたかった”。
> 多数決で君が俺を拒むなら、それが答えだ。
> でも、もし一瞬でも、君が俺を“思い出した”なら──
> それが、俺の“拐う理由”になる。

> 君の自由を奪ったことは、許されない。
> でも、君の記憶に残る俺が、
> “消えたまま”でいることも、耐えられなかったんだ」

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### 『尚人の家庭の事情』

> 「あの頃、俺の家は崩れていた。
> 父親は失踪して、母親は精神を病んでいた。
> 夜中に誰かと話す声がして、
> 俺の部屋のドアには“迎えに来る”って書かれてた。

> 母は言った。
> “尚人は選ばれた子だから、誰にも触らせちゃいけない”
> 俺が外に出ると、母は泣きながら爪を剥がした。
> “痛みを分けてあげる”って。

> 転校は、母の親族に引き取られるためだった。
> でも、そこでも“選ばれた子”として扱われた。
> 俺の部屋には鍵がついていて、
> 食事は“拐われないように”毎日違う時間に出された。

> 可南子に言えなかった。
> 俺のことを“普通の男”として見てくれていたから。
> でも、俺は“普通”じゃなかった。
> 誰かに“準備されていた”存在だった。

> だから、消えた。
> 君の記憶の中だけが、俺の“正常”だった。
> 君が俺を忘れたら、
> 俺は“選ばれた子”に戻ってしまう気がした。

> だから、拐う準備をした。
> 君を“思い出させる”ために。
> 君の中の俺が、俺の中の君を救うって──
> そう信じてた」

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尚人の視点から、その“抜け出し方”と“目的”を掘り下げてみましょう。

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## 🧠 尚人はどうやって抜け出したのか?

尚人の家庭は、精神的・物理的に彼を“閉じ込める”構造でした。
母親の妄信的な支配、親族の監視、そして“選ばれた子”という呪いのような役割。

彼が抜け出した方法は、**“記憶の切断”と“自己の再構築”**です。

- 彼は、母の言葉を否定するのではなく、“外に持ち出す”ことで力を失わせた。
- “選ばれた子”という役割を、**“可南子に選ばれた男”**という新たな意味に置き換えた。
- つまり、**可南子との記憶だけが、彼の“正常性”の証明**だった。

この再構築は、彼にとっての“脱出”であり、
それを完成させるには、**可南子の記憶と再会が必要だった**。

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## 🧨 では、尚人は可南子を巻き込むつもりだったのか?

答えは──**半分YES、半分NO**です。

### ● YESの側面(意図的な巻き込み)
- 尚人は、可南子の“喪失”を自分の“再会”に変えるために動いた。
- 彼女の生活に干渉し、記憶を揺さぶり、夢に現れ、物理的な痕跡を残した。
- これは、**彼女の意思を無視した“拐い”**であり、明確な加害です。

### ● NOの側面(無意識の依存)
- 尚人は、自分が“正常”であるために、可南子の記憶が必要だった。
- 彼女を“巻き込む”というより、“彼女の中に残る自分”にすがった。
- つまり、**彼女の記憶が彼の“出口”だった**。

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## 🪞構造

この物語は、
- “怪異に囚われた者が、誰かの記憶を通じて脱出しようとする”
- しかしその過程で、“記憶の持ち主を怪異に引きずり込む”
という、**記憶と存在の交換**をテーマにしています。

尚人は、可南子を“巻き込む”つもりではなかったかもしれない。
でも、彼の“出口”が彼女の“日常”だった時点で、
その再会は、**必然的に彼女の喪失を伴う**。

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もしこの構造をさらに深めたいなら、
可南子が“尚人の記憶を拒絶する”ことで怪異を断ち切る展開や、
尚人が“自分の記憶を消す”ことで彼女を守ろうとする悲劇も描けます。

ご希望があれば、次の一手を紡ぎますよ。






不条理染みてきたので打ち切り!途中まではぞくっとするいい話だったのにー!





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最終更新日  2025.10.22 23:55:04
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