トドのつまりは・・・

トドのつまりは・・・

2011年11月02日
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カテゴリ: 電子書籍


アマゾンジャパンが、10月上旬に、約130の出版社を前に電子出版事業に関する説明会を行い、アマゾン側から、後日契約書が送ってきたらしいのだが、その内容を出版社の人間がばらした記事が載っていた。

アマゾンの契約書に激怒する出版社員 国内130社に電子書籍化を迫る - BLOGOS編集部 - BLOGOS(ブロゴス)

要旨としては、
(1)新刊だけでなく、出版社が権利を持っている既に出版した書籍はすべて、アマゾンが電子書籍として売ることができる。(ただし、非独占契約)
(2)アマゾンの取り分は、推奨フォーマットで提供された電子書籍は、希望小売価格の55%で、推奨フォーマット以外なら、希望小売価格の60%。
(3)配信する全書籍の著作権は、出版社が一括して管理すること。
(4)紙の書籍の値段が、電子書籍を下回ったときには、電子書籍の値段を紙の書籍以下に下げることができる。
といった点が問題だと言いたいらしい。

ただ、正直、これを書いた人は、日本の出版界にどっぷりつかり過ぎじゃないだろうか。

まず、アマゾンのような米企業が、最初から、日本の出版社の事情に配慮して、最初から相手に有利な条件を提示するはずがない。そんなの当たり前だろう。
それを、交渉で自分たちに有利な条件に契約を変えてゆくのが、ビジネスの交渉というものだ。
アマゾンは、以前から大手出版社とは、別途、個別交渉をしているとの噂はあり、そうした大手出版社は、当然、他の電子書籍プラットフォームと天秤をかけながら、よりよい契約条件を引き出す交渉を粘り強く続けていることだろう。

一方、十把からげて一方的に説明された130社というのは、はっきり言ってアマゾンにとってもどうでもいい会社だったと見るべきだろう。
どうせ、大手の参入が決まれば、そうした中小出版社はついてゆくしか、道はない。


小さな出版社でも、電子書籍化できる権利を持ち、売れる自信がある本があれば、それを鍵に、アマゾンと交渉すればいい。
それもなくて、なんとなく自分たちが売れない本を、アマゾンがたくさん売ってくれると思っているだけなら、出版社の機能とはなんなのだ?
それでは、本の著作者個人が直接アマゾンで本を売るのと、何も変わらないだろう。

日本の商習慣として、出版社には、単行本の出版権だけしかなく、著作権は著者個人に帰属する。
この記事の筆者は、(3)を、アマゾンの契約書では「出版社が出している全書籍の著作権を、無理やり出版社が一括して管理せよ」と解釈しているのだが、私にはそう読めない。
そもそも(1)の契約内容では、出版社が著作権を持つ書籍について、過去の書籍もすべて電子書籍化できることを書いているに過ぎない。出版社が、元々電子書籍化の権利を持たない書籍を、どうこうしろとは、アマゾンはどこにも書いていないのだ。

だったら、(3)を、「出版社が出しているが現在著作権を保有していない書籍を、すべて出版社が管理せよ」と主張していると解釈するのは無理がある。

すなわち、アマゾンが、出版社に対し、「自社で出版している全ての書籍対し、欠けることなく著作権または電子書籍化の許諾を委託されなければ、1冊の本も売ってやらない」と言っているかのような解釈は、論理の飛躍があるし、被害妄想的でさえある。

条件を素直に読めば、「出版社が著作権を持つ書籍は、すべてアマゾンが(非独占的に)電子書籍化して販売できる。もしアマゾンで売りたい本があれば、著者から委託契約を取って自社で著作権を管理してくださいよ。」という当たり前のことを言っているに過ぎないように思う。

当然だが、書籍の著作権を持つ著者は、自分が個人でアマゾンと契約して本を出しても何も問題はないのだ。
そのことを忘れて、あたかも紙の書籍の出版権しかもっていない出版社が、電子出版で何か美味しいことにありつけると思うこと自体が、大きな勘違いだと言える。

benli: 講談社の電子書籍に関する契約雛形


これをやって、ようやく出版社が、主体的に電子書籍化を行えるようになるのだ。
その努力もせずに、アマゾンから送られてきた契約書に文句を言うだけでは、電子書籍で何も利益は得られる訳がない。
元々、出版社が何の権利も持っていないなら、当たり前のことだ。

アマゾンは、当然、次のステップとして、個人が直接アマゾンと契約して、電子書籍を売るための契約条件を公開するだろう。
この個人との契約スキームを、米国ですでに運用している実績があることは、ソニーやシャープにはないアマゾンの強みの一つだからだ。(もし、個人契約のアマゾンの取り分が、一般の出版社向け契約と変わらないとしたら、アマゾンとしては、出席した130社はどうでもいい存在だと思っていることが確定だ。)

「これまで『電子書籍は取次を通さない分安くなる』、『紙の本よりもコスト減になる』など、著作権者も出版社も儲かるというような夢物語が語られてきましたが、それらは本当に夢物語だったんです。」
「電子書籍全体の売り上げは伸びているのは当たり前です。電子書店が、それだけたくさんできているからです。ただ、その伸びは鈍化しています。特に牽引役だった携帯電話向けコミックの息切れが如実なんですよ。出版業界は再販制度という流通制度に守れていながら、構造不況が続いてました。わずかに残された企業体力を加速度的に奪って、どん底へ叩き落す電子書籍の仕組みのバカさに付き合う必要がありません。そのことを著者も出版社もそろそろ気付くべきなんです。電子書籍は、結局、誰も幸せにならないんですよ」
馬鹿馬鹿しい。電子書籍ビジネスの本質は、著者と読者の間の「中抜き」である。どこの誰が、それで出版社が儲かるなんて言ったのだろう?(私は少なくとも初耳だ。)
また、電子書籍化は、著者にとっては、デメリットもあるが、メリットも多い話であり(人にもよるが)、出版社の人間が、著者を勝手に同じ立場に見立てて、自分たちの味方に引き寄せるべきではないだろう。

さて、アマゾンが著作権を持つ個人に対し、どういうアプローチを仕掛けるのか、次のステップが楽しみになってきたな。

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最終更新日  2011年11月02日 22時19分49秒
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