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銀の月の孤城
第二章 嵐の中で
by.ラ・ブリュイエール
1
さんさんと降る雪の日に、二歳を迎えたばかりの綺麗な赤ん坊と一切になる子供がシュタインベルク湖畔の、バイエルンの国王が治める国の小さな町に牧師の元にやってきた。女の赤ん坊とその弟は同じ懐中時計と指輪を持っていた。
―他人に見られてはいけない。盗られてしまう。
牧師は子供達を他の人間に任せている間、それを机の引き出しの奥にしまいこんだ。
皇妃ゾフィーは、ルドルフの質問に教鞭をとりながら、答えた。
「お前の母は帰ってきません」
「どうして、僕の誕生日なのに」
うるうる、とルドルフはなきながら、足元に纏わり着く。凍りつくような、冷え切った機械の目。
小さいルドルフにはそう見えた。
「あのものがハプスブルク家の皇妃ではないからです」
「でも、僕の・・・」
ただ一人のお母様だ。そういおうと思ったがあまりの威圧感にルドルフは声を上げることができなかった。
「あのものは、王宮のしきたりに私に耐えられず、お前から抜け出したのです」
いつのまにか、持っていたものが扇に変わり、パチンという音が響く。ルドルフは肩を震えさせる。
「ディートハルト、どこに言ったんだろう」
牧師に貰ったみすぼらしい小さなお守り袋を首にぶら下げて、ヴォルフリートは走っていた。
ドォォン。
「あれ、狐狩りの季節だっけ?」
ヴォルフリートは体を固まらせて、ゆっくり、振り返った。
がさがさ。
ざっ。
木の間から見覚えのある、アリスが飛び出てきた。
―姉さん?
鬼ごっこをして、林の中に隠れていたヴォルフリートは町のほうに慌てて戻るアリスが何かを見た後、慌てて逃げるのを逃げている友達を探している最中、見つけた。
「どうしたんだろ」
狐か狼、浮浪者にでも脅かされたのかな。ヴォルフリートはぼけっとした表情で、アリスが走り去っていく背中が小さくなるのを見送った。
何を見てたんだろう?
少しだけ、好奇心が生まれて、ヴォルフリートは湖の方へ林の中を通って、見に行った。
その時、臭い匂いがヴォルフリートの鼻腔をくすぐった。
黒い煙が辺りを少しずつ包んでいき、左目にゴミが入ったような感じが入った。
「・・・目がいてて・・・、何だ?」
火事???
左目をこすりながら、ヴォルフリートはふらふらしながら、薄暗い中で前に進んで、林の中を抜けると、全てが消えて、普通になった。
「あれ・・・・」
左目が楽な感じになって、ヴォルフリートはゆっくり目を開けると、一つしたくらいの高そうな服を着たか弱そうな、美しい少年が視界に入ってきた。
・・・・貴族の坊ちゃん?
2
―貴方はもう、必要ないのですよ。
大人びた、悪魔が宿ったような表情で凍りつくような、氷のような美しい高貴な瞳がその場を全て支配していた。
本当に偶然だった。
―何かに呼ばれたような気がして、歩いた道を引き返したのだ。
人が打たれた、違う、喧嘩してて、男の人がいきなり倒れて。
違う、私は見てない、きっと幻を見たんだ。怖い怖い、怖い。こんな事あるわけない。牧師様に教えないとっ。
「ヴォルフリート・・・」
ヴォルフリートはどこにいるのっ。
ガサッ、ガサッ。
ずるっ、と足を崩して、赤毛かかったダークブラウンの髪の少年が林の中から転げ落ちた。
「!?何奴!?」
「いてて・・・」
ドクン・・ドクン。
間者か?
少年はゆっくり起き上がり、
「!!?」
ルドルフはものすごく驚いた。ルドルフの前に、両目の違う、今まで見た事のない瞳が、オッドアイの瞳が見上げてきた。
「―-」
そばかすの平凡な顔立ちなのに、ルドルフは一瞬、何も考えられず、鮮やかなその瞳に心を奪われ、ボーッと見つめてしまった。
「?・・・転んじゃったよ」
気付いた少年は不思議そうに首を傾けた。視線に気付いたが、その意味には気付いていない。
はっとなる。ルドルフは心臓が包まれたような気分になった。
「ん?」
誰にも気付かれずに、死んだこの男を呼んで、教育係の協力者にも周辺の住民には近づかないように指示してたはずだ。
伯爵がすでにいなくて、良かったが、一般人に自分が人を殺している事を見られた。突然の予想外、ありえない事態にルドルフは混乱していた。
「貴様・・・」
ダークブラウンの髪の少年が足元の死体に視線を向ける。
ヴォルフリートは血だらけの男を見て、次にその少年を見ると、顔を真っ青にした。・・・血が、血が、アンナに。
数秒、その少年を見て、この後、どう反応すればいいか分からず、初めて関わる貴族という存在にどう対処するのかわからないで、体を膠着させて、緊張していた。
なので、少年の容姿の事など、元々興味がないのも合って、目に入っていなかった。
「・・・ええと、あの」
それでようやく、足元に崩れている男の死体に気付いて、恐怖が凄すぎて、悲鳴を上げるのが出来なかった。
「・・・って、君、大丈夫なの!?」
意識をはっとさせて、ヴォルフリートはさっきから何も言わない高貴そうな少年の両肩を掴んだ。
そうだ、自分よりこの子は死体を見ていた、きっと犯人か・・・、イヤ、自殺かもしれないが、とにかく凄く怖かったんだろう。
だから、さっきから声も出さないし、表情も硬いんだ。表情も全然変えないのも、冷静なのも、僕より怖かったんだ。
「大丈夫!?どこか怪我していない?怖かった!?」
少年は始めて、硬かった表情を少し崩して、驚いたようにヴォルフリートに体を揺らされていた。
数秒、ルドルフはヴォルフリートを見た後、何か思いついたような表情をして、確認するような声で聞いた。
「・・・どこから、見ていた。さっき、僕たちを見ていたのは君か」
ヴォルフリートが手を離した。
・・・もし、そうなら、僕はこいつを。
ルドルフに緊張が走る。・・・皇帝になる為には、僕は。
3
??、ヴォルフリートは首を傾けた。
「僕たち?君とこの人のこと?僕は・・・、ああ、ええと、友達と遊んでて、銃の音が聞こえて、なんだろうと思ってこっちにきただけでその前のことは知らないよ」
ヴォルフリートは辺りを見回した。
「・・・と、とにかく、その人、死んでるんだよね、牧師様とか大人の人を・・・。君は従者の人は?」
「それは・・・」
ルドルフは少し黙り込むと、いきなりヴォルフリートの胸にすりついた。
「へ?」
「僕は・・・、怖かった。この人がいきなり意識を錯乱して、目の前で自殺したんだ」
突然すぎて、ヴォルフリートは「は、はい」と答えた。
「そして、君は倒れていた僕を助けた、ここに来た大人にそう伝えろ、いいな」
「・・わかった」
・・・・・・男に抱きつかれるなんて、シュールだ。
と、ヴォルフリートは混乱しすぎて、場違いな事を思っていた。
ようやくルドルフ達の下に女官や警察、軍人達が集まりだす。
「子供の前で自殺なんて、なんて恐ろしい事を」
「・・・ひっ、・・・・あっ」
女官がルドルフの小さな体を抱きしめる。たくさんの人間に囲まれながら、青い表情のルドルフは息を整えていた。
やっぱり、怖かったのか、と気遣うような気持ちが生まれる中、少年がヴォルフリートを見た。
背筋が冷たくなった。
―悪魔だ。
体の芯まで凍りつきそうな、王者の瞳。これは、鷹の目だ。
天使の顔をした悪魔がヴォルフリートの前にいた。
「それでルドルフ様、この子供は・・・」
「僕と一緒にその人が銃で死ぬのを見たんだ、その人、僕たちを殺そうと、・・・ねっ、ヴォルフリート!!」
とても冷たい、青白い手だ。周りは気づかれないが、腕を強くつかまれた。
「・・・っ」
そうだといえ、と聞こえない声で強要された。支配するものの表情で、ルドルフは確かにそういった。
「はい・・・っ」
アーディアディトは1日たって、ようやく部屋を出た。
「大丈夫?アリス姉~」
「大丈夫よ」
そういいながらも、アリスは表情に力がない。ヴォルフリートがみんなのコップに水を注いでるのが視界の隅に入った。アリスはヴォルフリートに近寄った。
「姉さん、もう起きられるの?」
アリスを見た瞬間、ヴォルフリートは一気に心配そうな表情を浮かべる。
「だ、大丈夫よ」
「本当に!?昨日、帰ったら病気だって聞いて、熱は下がったの?」
じっ、とヴォルフリートがアリスを見上げる。
・・・・可愛い。
「うん、大丈夫よ、私がヴォルフリートを置いていく分けないじゃない」
「姉さん・・・」
キラキラ、とした空気が2人の間に流れる。
「・・・アリス、・・・あんた方向性間違ってるわよ」
シャノンは微妙な表情で、ため息をついた。
4
辺りが暗くなり、別れる時に軍人に抱えられたルドルフがヴォルフリートを呼び止めた。
「君・・・」
歩き出したヴォルフリートにルドルフはなぜか、不満を感じ、思わず呼び止めた。振り返ったヴォルフリートは若干、気味悪いものを見るようにルドルフを見て、こわばった表情になっていた。
「はい?」
優しい口調に勤めて、ルドルフは言った。
「・・・ありがとう、助けてくれて」
にこり、と笑う。
「いえ」
力ない、遠慮がちにヴォルフリートは笑う。
「だから、恩返しに、お近づきに・・・ねえ、僕の家に遊びに来ないか?」
・・・・。
は?
完全にヴォルフリートは、虚をつかれた。
表情が間抜けなものになる。
「はい?」
何をありえない事を言ってるんだろう。悪戯が成功した子供のように長いまつげを動かし、大人びたような、年相応の笑顔を向ける。ヴォルフリートには意地悪を思いついた子供しか見えなかったが。
「ルドルフ様・・・」
ルドルフをたしなめる声が上がる。
「・・・・」
「・・・・」
軍人達も厳しい表情をするが、よっぽどの身分なのか、口出ししない。
「駄目かな?」
子供らしい、澄んだ目で美しい顔立ちで言われ、キラキラとした空気に包まれて、空気に巻き込まれそうになるが、
ヴォルフリートは、
あっ、何だ、軽いご冗談か!貴族さまでこんな綺麗な綺麗な服を着た子が、庶民を同じ生き物と見るわけないもの。
と軽く、捕らえて、全て消し飛ばせた。
「・・・・・」
普通の空気になる。
うん、冗談、冗談。
ヴォルフリートはにぱーと微笑んで、ルドルフはびくっとなった。
・・・あれ?ルドルフは笑顔を引きつらせる。
「いいですよ、わかりました」
かなり軽い口調で答えた。
「何ぃぃぃ!?」
周囲に大声が上がったが、ヴォルフリートはきょろきょろとして、あからさまにわかっていなかった。
「え、何?」
「約束だよ、指きり」
「・・え、は、はい!」
白い指と日に焼けた指が重なり、指きりげんまんをした。明日は行く場所は決まってしまうのだろうか、大丈夫だよな、僕・・・姉さんといられるよね?
ねえ、姉さん?
「姉さん、結局、昨日どうしたの?病気じゃないなら、引きこもる別の理由があるんだよね?」
「ええと・・・」
あはは、とアリスは軽く笑った。
「2人とも!早く着なさいよ!!」
先を歩いていたシャノンが苛立った口調で姉弟をせかした。
「仕方ないわね、ヴォルフリート」
「シャノンらしいなぁ」
・・・ヴォルフリート、何かあったのかしら?
「ん?」
「何でもない」
・・・いいか、また明日でも聞けるんだから。
アリスはヴォルフリートの手を握った。ヴォルフリートは嬉しそうな表情になった。
小鳥のさえずりが鳴り響く中、アリスはシャノンに連れられて、町に来たという占い師のところに来ていた。街では、不況が続いているのか、不満げな人が多い。
「それで何を占ってもらうの、私、お小遣いは今月はあまり」
「大丈夫よ、2人分をエルヴィンやエミールに借りたから」
「シャノンはまた~」
「私は可愛いから、男の子が注目するのは当たり前よ」
ふっ、と自信ありげにどこか大人びた笑顔でシャノンが言った。
「シャノンって、ナルシストが入ってるよね」
「自分の顔が好きなだけよ、アリスも黙ってれば凄く可愛いわよ」
「いいよ、私は、男の子なんか興味ないし」
2日前のことは、やっぱり牧師様に言うべきだろうか。牧師様は嘘をついていけない、殺人はとても悪い事だって言っていたし。
何か、とんでもない事を見てしまったような。
・・・あの子、綺麗な顔してたけど、怖かった。
・・・・・怖い。
「アリス?」
「あ、なんでもない」
「あそこよ」
シャノンがさした先には、酒屋の裏で占い師がテーブルに腕を置いて、イスに座っていた。近くまで来ると、占い師が顔を上げた。
「すみません、私達を見てもらいたいんですけど、まずは私から」
シャノンは思いっきりアリスを突き飛ばした。
「シャノン!!」
シャノンは水晶の中を食い入るように、占い師が占っている間、見ていた。そして、数分後。
「健康には問題ないね、ただお嬢さん、貴方は自信家の性格のあまり、自らトラブルもまた幸運も招く運命のようだね。将来は、恐らく大金と地位は手に入れるが一番欲しい者は永遠に手に入らないだろうね」
「何よ、それ!!おばさん、頭おかしいんじゃないの!!」
「まあまあ・・・」
食って掛かろうとしたので、アリスは慌てて止めに入った。
「次はあんただね、金髪のお嬢さん」
「は、はい」
占い師は優しく微笑んだ。
「座って」
また、数十分後。
「・・・どうですか」
アリスはドキドキしていた。
「・・・あんた、最近、運命を変える、何か大きな秘密を見たんじゃない会。あんたもさっきのお嬢さんと同じように見えるけど、あんたには凶星が見える。あんたは、多くの男と出会い、その男たちの運命を変えるが、運命の男と幸福を手に入れる、同時に不幸を他人に招く」
「え・・・」
「でも、回避する手段もある、あんたが強い生命力で未来を自分自身で変えることだよ、その事だけがあなたを貴方を守る人たちを守る事になる」
5
「アリスだけずるい~、運命の男の人なんて」
「シャノン、苦しいって」
シャノンに首を絞められながら、アリスは歩いていると、道の真ん中を歩いていた同い年くらいの令嬢の目の前に一台の馬車が飛び込んできた。
「危ない、避けろっ」
見ていた通行人の男が叫んだ。
「アリス!!」
アリスは慌てて、令嬢の手を掴んで、露店につっこんだ。
「・・・・・っ」
「バカやろう!!」
「アリス!!」
シャノンも慌てて、アリスの元に駆けつけた。
「・・・大丈夫?」
アリスは起き上がって、白いレースを着た少女に聞いた。
栗色のウェーブヘアと、仔犬のような青い瞳、肌はどこか青白い。甘いお菓子のようなにおいがした。
「は、はい・・・」
「大丈夫?足元のドレスにどろがついていますよ」
シャノンがアイロン下手のハンカチを令嬢に差し出した。
「ありがとう」
シャノンは天使のような笑顔を浮かべていた。
「ええっ、シャノンがこの前の令嬢、グレーティア・ウラ・バーデンさんの家に!?」
狭い女部屋で寝巻きに着替えているアリスは、素っ頓狂な声を上げた。
「ええ、すごいでしょ」
「こんな田舎でよく貴族と知り合えたわね、紹介状とかは」
「そんなの推薦に決まってるじゃない、バーデンの家の執事に子供がいないからどうかって、これで上流階級に関われるわ♪」
ふふん、とシャノンは笑う。
「凄い、シャノンって特別なんだ」
「この町で一番可愛いもんね」
「アリスは二番目~」
「良かったね、シャノン、夢叶ったんだ」と思いっきりアリスは微笑んだ。
「うん、うん、これでイケメン子息に見初められたら完璧よ」
おほほ、とシャノンは笑う。
6
歌を歌った後、アリスは観客三名にお小遣いを貰った。
「これだけか」
ううん、ありがたく思わないと。
・・・・シャノンは夢をかなえた。きっかけを作った。
私もがんばらないとっ。
ぐうっ。
「・・・・おなかすいたな」
「アーディアディト・バルト?」
長身の灰色のコートを着た男2人が近づいてきた。
「そうですけど」
「君、歌がうまいんだってね、賛美歌もかなりのものだとか、誕生日ももうすぐなんだって?」
「あの、・・私に何か」
「牧師様に育てられたんだって、・・・その時、君の弟と一緒に何か手に持っていたとか、聞いた事ない?」
高圧的な空気がその男たちからアリスに向けられる。
「知りません・・」
「悪いんだけど、おじさんたちにそのプレゼントのありかを教えてくれないかな」
・・・妖しい。
「悪いんですけど、私、用事があるので」
「待ちなさい」
男の一人がアリスの手を掴んだ。胸が嫌悪感でざわついた。
「この・・・・っ」
その時、悪魔と呼ばれる異形の者が男たちの身体をざわつき始めた。絵本で見るような悪魔と同じ姿の、アリスは自分の目を疑った。
・・・・なっ
「ぎゃあああああ」
噛み付かれた男たちは、恐怖で頭が混乱して、アリスから去っていった。
「・・・・・・・・・何」
薄暗い家の間から、綺麗な淡い色の髪をした少年が姿を現した。アリスの心臓が一瞬、止まったかと思った。
「―アーディアディト・バルトだな」
現れたのは、ルドルフだった。
「きゃあああああああっ」
アリスは混乱のあまり、ルドルフの頬をひっぱたいた。
「落ち着け、止めろ、僕は君と話を」
「何で、貴方がここにいるのよっ」
「だから、言っただろう、君に話がある。僕はルドルフ、ウィーンに住んでいる」
「ルドルフ?」
「本題から聞く、君はヴォルフリート・バルトが異能者だということを知っているのか、答えろ」
気のせいだろうか、上から目線で、それも敵を見るようなまで見られているのは。何だか、むかつく。
「・・・何言ってるの」
「表情を変えたな」
「ヴォルフリートはただの子供よ、私と同じ」
「僕も異能者だ、先日僕に救う悪魔が君の弟に殺された、いや、消されたというべきか」
高貴な顔立ちはどこまでも冷たい。
「貴方の勘違いですよ、ルドルフ様」
「しかし・・・」
「だって、ヴォルフリートは裁縫も出来ない不器用なんですから」
アリスはにっこりと笑った。
「・・・失礼しますね」
その時のアリスの表情はどこか大人びいていた。
「また、歌を歌いましたね、アーディアディト!!」
「すみません、シスターチェルシー」
「ジプシーの女が歌うような歌を歌うとお前の品性が疑われますよ」
違う、あれはもっと自由な、魂の歌なんだ。アリスはそういいたかった。
「アリス・・」
アリスより背が低いシャノンとは対照的な黒髪の、清純派の友達・カリーヌ・マルゴ・バシュと大人しい太目のグンター・エルマン、最年少のエトムント・レッペとマルガリータ・リヒトホーシェン、エリク・ペッターはドア越しでヴォルフリートの後ろを見ている。
「大丈夫かな」
「大丈夫だよ」
マルガリータの跡に泣き虫のエトムントが言った。二人はいつも自分に会話するような会話をする。
「とにかく、今後作業に関係のない歌を禁じます、しばらく街中で歌うのもやめなさい」
「そんな、でも、私は!!」
「レディーらしくしなさい。ミス・アーディアディト」
高圧的な瞳がアリスを押す。
「・・・・・・・・・・・・・はい」
7
引き取り先の高利貸しのコンララディンがきたのは次の日で、マルガリータとエトムントを連れて行き、
「それじゃあ、アリス」
「元気でね、カリーヌ」
「うん・・・」
カリーヌはアリスに抱きついた。
「ヴォルフリートも・・・、忘れないで」
カリーヌの頬は赤く、本当に離れがたそうだ。そうだ、彼女はヴォルフリートを気に入っていた。
「当たり前だよ、君は大切な僕の家族なんだから」
「・・・・・うん」
小物売りの夫婦が遠くからカリーヌを呼ぶ。
「・・・それじゃあ、行くから」
「あっ」
カリーぬはヴォルフリートの手を振り払って、荷物を持って夫婦の下に走り出す。
「カリーヌ・・・・」
「アリス、ヴォルフリート、これでエリクで僕たちだけになったね」
「ええ・・・」
覚悟していたつもりだけど、やっぱり辛い。グンターが優しくアリスの肩を叩いて、ヴォルフリートがアリスの手を握って微笑んだ。
「・・・・大丈夫よ、私は」
母親の顔をアリスは知らない、ヴォルフリートもその事はただ笑顔を浮かべるだけでアリスには何も言わない。どんな理由で自分達を捨てたのか、底までにどんな経緯があったのか。誕生日の火に、アリスは牧師から懐中時計を貰った。時計の中はアリスの誕生日の日付が刻まれ、時計の下は二重になっており、特別に作った者だという事がアリスにもわかった。金でかたどられた底には、薔薇と白鳥が広げた翼のような紋様、周囲に薔薇のツルのようなものが飾られていた。
「この指輪はヴォルフリートに?」
「そうだよ、お前たちは神に祝福された子供なんだよ、誰かに必要とされ、愛されるために生まれてきたんだよ」
わぁ・・・、とアリスとヴォルフリートはお互いの顔を見合った。
天窓には、満天の星があり、アリスはヴォルフリートと手を繋いで、宝物を手に持って、ベッドに横になっていた。
「私達、無敵の兄弟だよね」
「勿論だよ、僕は何があっても姉さんは裏切らないよ」
「約束よ」
「約束だ」
ふふっ、と小さな兄弟はお互いの顔を見て、笑いあった。
・・・神さま、明日も弟といられるように、私は貴方の子供です。
アリスは目をつぶって、笑いながら眠りに入った。
異変が起こったのは、それから深夜の賛辞だった。エリクが部屋に飛び込んできて、火事だ、と叫んだ。
「アリス、ヴォルフリート、逃げろ!!」
扉を開けた瞬間、きな臭い空気や匂いが飛び込んで、泣き叫ぶマルガリータの声が聞こえてくる。アリスが慌てて外を眺めると、牧師やシスターが他の子供達を誘導しながら、町の人間と一緒に一生懸命火を消そうとしていた。
「ヴォルフリート、おきて!!」
「・・・ん・・・っ、あ?」
はっくしょん、とヴォルフリートは大きくくしゃみをした。
「・・・・寒い」
「いいから、早く、外へ!!」
「何で?」
まだ、ヴォルフリートは寝ぼけていているので、苛立ちを抑えて、アリスは得リクの後を続いて、廊下にヴォルフリートの手を引いて、走り出す。
火が辺りを立ち尽くしていた。
「・・・ひっ」
「アリス、どうするんだよ」
「姉さん・・・っ」
アリスにエリクやヴォルフリートが恐怖のあまり、抱きつく。
「大丈夫よ、すぐに大人の人が・・・・」
ヴォルフリートが耳元でささやく。
「姉さん、僕が・・・」
「だめよ、前もそれで皆に疑われたでしょ」
火の勢いはますます強くなっていく。まるでアリス達に襲い掛かるようにどんどん近づいてくる。
「いや・・・・」
「姉さん!!」
「だめよ!!」
アリスはぎゅっ、と目をつぶった。
アルベルト・グラッフ・フォン・フベルトゥス・エーベルハルトはドイツ貴族の流れを汲む、名門貴族の一つであるベルトはその嫡男であり、将来は帝国のために命を捧げる軍人の家で、アルベルトはいつも兄と比べられて、党首の座を駆けて、切磋琢磨していた。
グレーティア嬢との婚約や取引先の父の知り合いの娘と幼い頃から関わり、紳士的な騎士道に憧れるアルベルトは、品行方正ナ王子様だった。
「ヴォルフリート、早く、下へ!!」
「わかった!!」
晴れやかな少女の声が響き渡ったかと思うと、窓からイスが割れる音と一緒に落下してきた。
「・・・・っ、何だ」
カーテンを伝って、エリクやヴォルフリートが滑り落ちてくる。
最後に漆黒の闇に金色の髪を揺らして、足元から膝にかけて、大胆に開かせたままの、12歳になったアリスが一気にアルベルトの視界に、飛び込んできた。
「邪魔よ、どきなさい!!」
ずさささっ。
「いてっ」
「うわっ」
エリクとヴォルフリートは地面に転げ落ちた。
「エリク、ヴォルフリート!!」
アリスはうまく着地したが、そのまま足がふらついて、背中ごと、地面に転げ落ちそうになる。
「危ない!!」
その時、ふわり、とアルベルトがアリスの肩を掴んで、抱きかかえるような体勢になる。切れ長の優しげな紫がかった青い瞳、流れるような蜂蜜色の神と彫刻のような丘立ちと白い肌。気品にあふれた微笑を間近で見て、アリスは慌てて逃げた。
「あ、ありがとうございます、もう大丈夫ですから」
・・・神秘的というか、高貴な雰囲気のある人だ。でも、ルドルフといったあの子と違って、こちらの方がやさしそうだな。
その時、アルベルトが一瞬、柔和な雰囲気から陰のある表情を浮かべた。
「本当に大丈夫なのか」
ええ、ええと、何だろう、この、捨てられた子犬のような表情は。
「大丈夫なのかい」
「は、はい」
アリスは安心させる為に笑顔を浮かべて、アルベルトの手をとった。まるで騎士が姫の手を取るように。
「大丈夫ですよ」
「・・・貴方の名前を聞いてもいいだろうか」
「はい、アーディアディト・バルトです」
アリスは花のように優しく微笑んだ。
「・・アーディアディト・・・」
白い頬は微かに赤みをさしていた。
「・・・・あれ、あの場合、男の方が女の人をとるんだよね」
「そうだな、普通は男が好きな女の子を助けて落ちるのが、古典的な恋物語だな」
「おかしいよね」
「おかしいな」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
8
2日たち、アリスはアルベルトとも別れて、牧師の知り合いの家にヴォルフリートとともに寝ていると、牧師に呼び出された。
「着替えましたね、君たちの引き取り先の人が来ています」
「でも、牧師様の教会が焼けたばかりなのに」
「私もそう伝えたんですが・・・」
着替えて、髪を整えると扉を開けて、外に出ると、例の男二人を連れた、エリザベートのところに現れた少年をそのまま中年の男にしたようなインテリ風の男がこちらを見ていた。
「―--」
「商人の・・・っ」
「やあ、アーディアディト、君はアリスと・・・」
その時、風邪を引いたばかりのヴォルフリートが部屋から出てきた。
「姉さん?」
枕を持って、守り袋を提げたまま、寝ぼけ眼のままだ。
「行くわよ、ヴォルフリート!!」
「え、ええ?」
「アリス、こら、戻りなさい!!」
「すみません、牧師様!!」
町の隅まで走り終えると、アリスは辺りを見渡して、森の中に入った。
「・・・姉さん、どうしたの、さっきの人、僕らの引き取り先だろ」
「違うの、あいつらは・・・っ」
「・・・また、いつもの勘?」
アリスはそこでようやく、ヴォルフリートの手を離した。
「・・・・うん、とにかく、あいつらは、あの人たちは私達を守りに着たんじゃないわ」
「・・・でも、僕たち、何も悪いことしてないのに」
「そうよ、私達は悪くない・・・」
汗を拭きながら、アリスは息を吐いた。
「・・・・あ」
「ヴォルフリート!?」
「・・・・熱い」
かぁぁぁ、とアリスの頭が熱くなった。
「ゴメン、ヴォルフリート、そうだ、風邪を引いてたんだった・・」
最低だ、いくら、感情に流されていたとはいえ。
「お嬢さん」
「へヘッ、追いついたぞ」
「面倒かけやがって」
商人と名乗った上司らしい男が首を振ると、男たちが刃物を取り出した。
「悪いが、君たちには消えてもらう、君たちがいると私の使える方の人生が困るんでね」
「仕える方?」
ヴォルフリートはアリスの後ろに隠れる。
7
黒い影が男たちを包み込む。
ぶわっ、と吹き出て、アリス達に襲い掛かってくる。
牙のような者が、アリスの喉元を、鋭い爪がアリスの身体を引き裂こうとする!!
―悪魔に取り付かれている!!
その時、アリスの隅で何かが割れる音が聞こえた。
ヴォルフリートが座り込んでいたのに、感情のない瞳を浮かべて立ち上がる。その瞳はエモノを定めた獣の瞳に良く似ていた。
ゆっくりと男たちに人差し指を突き出して、つぶやく。
「―--」
男たちの表情が恐怖に染まる。
次の瞬間、アリスの意識はそこで途切れた。
目が覚めたら、ヴォルフリートはいなかった。
側にいると、守ると約束したのに。どんな事があっても、私が守らないといけなかったのに。
最後に見たのは、帝国の兵士に抱きかかえられるヴォルフリート、ルドルフ殿下という誰かが呼ぶ声だった。
「私をこの一座に入れてください!!」
「ウィーンを通るんですよね、そこまででいいんです!!」
「お願いします!!」
どこから、聞きつけてきたのか、新しい歌手や踊り子を探していたピュロス座の主人ドーグラス・イクセル・ベルイフェルトは、地方をふらふらと歩く靴磨きの老人についてきた美しい少年が女の子である事にすぐ気付いた。
目が不自由らしい老人は、杖を使って、歩きながら、こびた笑顔を浮かべていた。
「えへへっ、どうですかな、ご主人。このチビは結構な才能の持ち主ですよ」
高貴そうな青い瞳は生命力にあふれていた。
「・・・お嬢さん、お名前は」
「アーディアディト・バルトです」
「私は、ドーグラス、スウェーデン系のオーストリア人だ。ウィーンでは歌や劇を客に見せる仕事をしている、失礼だが、君はどこの生まれだね、両親は何の仕事を?」
「親はいません、私は歌を皆に届けたいんですっ」
まるで運動会の選手声明のように、正面を見つめながら、アリスは自信ありげに言った。ドーグラスは肩を浮かせた。
「君の得意な曲を歌ってみてくれ、とりあえず」
「はいっ」
アリスはブラームスの子守唄を歌い上げた。
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(2025-09-25 20:55:09)
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(2025-11-10 12:53:16)
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