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銀の月の孤城
第7話ー踊りましょう、あなたの掌の上で
(人間は知りすぎるくらいに知っているが、実行することはあまりに少ない)
1
悪い人ではないようだ、そうなると、どこから、あんな情報がルドルフ様の耳に入ったのだろう。
その日の全ての作業を終え、ベッドに付くと、誰かの悲鳴の映像が、ヴォルフリートの頭の中に飛び込んできた。
―助けてくれっ。
「ヴォルフリート?」
「ごめん、起こしちゃった」
「なんか、知らないけど、早く寝ろよ、明日も速いんだから」
「うん・・・」
胸騒ぎがする・・・。
「・・・・」
ヴォルフリートはいつもの制服に着替えると、クラディ尾が寝たのを確認して、ランプを持って、廊下に出た。空気は冷たく、辺りは静まり返っている。
視界の隅にローラント司祭の服の袖が見えた。喉の音をごくりとさせた。
・・・行くか。
歩いて、しばらくしたとき、ローラント司祭は、聖堂の柱に手をやり、隠し扉を開けると、マントをはおっああ怪しい男女達が、その柱に吸い込まれるように入っていった。
・・・これは。
嫌な予感がヴォルフリートを支配する。
貴婦人らしい中年の女性が虚空を見つめ、何かをつぶやいている。
ついていこう、何かわかるかもしれない・・・。
その時、青い薔薇が吹きあふれる庭園、涙を浮かべる少女、薔薇の花園の中を走る子供、血まみれの異国の少年の光景が痛みとともにヴォルフリートの脳裏に駆け巡った。
はっ、と意識を現実に戻すと、客人たちは奥の部屋に入り終えていた。
何だ、今のは。
「・・・・」
つかれてるだけだよ、今は何が行われてるのか、突き止める事が鮮血だ。鼻腔を百合の匂いがくすぐった。
香水?
カランカラン。
小さい女の子用の靴が、階段から落ちてくる。ローゼンバルツぁー家に着たばかりの頃、暑く晴れ渡ったあの日、いつもならアリスについているヴォルフリートは何かに導かれるように、アリスが止めるのも聴かずに歩き出し、あの屋敷に、ブリジットの双子の娘、アンネローゼと出会った。
その時、いきなりの強風が2人の間を通り抜けた。
ザァァァァ・・・・
「・・・・凄い風・・・・」
避けるような体勢を手にとって、目をつぶるほどだ。サラ、とした漆黒の美しい髪が視界のすべてを覆った。
「拾ってくださる?」
淡い桜色のような唇から、小鳥のような声が鳴り響いた。
4日も律儀なヴォルフリートが連絡を来ないのは珍しい。ルドルフは心配になり、アリスのところにも連絡が来ていないか、尋ねてきた。
「ヴォルフリートから知らせですか?まだですけど、何かあったんですか」
「来てないのか・・・」
胸がざわつく。
「ルドルフ様?」
「すまない、失礼する」
「はい、さようなら」
ルドルフは慌ててアリスの下から去っていった。
・・・ヴォルフリートッ。
2
教会で、神に祈りを捧げるルドルフにヴォルフリートはアーディアディトを連れて、遭遇した。ひたすらにルドルフは祈っていた。
「何を祈ってるの?」
シュテルンバステルの家に入り、今日から軍に見習いとして入る事になったヴォルフリートはルドルフに尋ねた。
「この国の平和を」
「・・・・」
「なんてな、冗談だ」
ルドルフが立ち上がった。
「このセカイに、神の慈愛など存在しない」
まるで神を信じていないような口ぶりだ。邪悪で美しい笑みがルドルフに浮かぶ。背筋が冷たくなる。
知ってはいた、ルドルフがプライドが高く、期待された皇太子だけではなく、冷酷である事を。
信じるのは、こんなにも難しい。友情だけでは、この人と付き合っていくのは難しい。
「君もだろ?」
「僕はルドルフ様と、・・・違うよ」
へまをした女官や家庭教師、邪魔な人間は片付けていく。権力で、ルドルフ様の実力で、ルドルフ様は本当に強い。利用するものは、本当に使い倒す。
残酷で、慈愛で、美しいものが好きで、いじめっ子で、傲慢で、誰にも優しく、自分に厳しく、大人っぽく、隙を見せず、からかうように、きつく確実に、エモノを締め上げていく。僕がいなくても、彼は強く生きている。
対等な友情とは、僕は思えない。
残酷な皇子様。
―ただ、この帝国を守るために。
けれど、もっとわからないのは天才で完璧なこの子がなぜ、自分を気に留めるのだろう。
「痛い・・・痛い・・・・」
「フン、レベルの低い異能者のねずみが・・・」
ルドルフは、自分の命を狙った異能者の男を乱暴に蹴った。
冷酷な支配者の顔をして、蔑むような視線を浮かべて、ヴォルフリートは只者陰でその恐ろしさに怯えるしかできない。
漆黒の羽がルドルフの周りを宙にひらひらと浮かぶ。
・・・怖い・・怖い。
「悪魔め・・・」
「触るな、この下種が!!」
光の矢が男の手を貫いた。
怖いよ。凍えそうだ、なんて恐ろしく、冷え切っている霊気だ。男は悲鳴を上げて、残った力で走り去っていった。
「・・・ルドルフ様、大丈夫?」
「お前に心配されるほどじゃない、女みたいに泣いてたな」
ふん、とルドルフ様が鼻で笑った。かぁぁ、とヴォルフリートが羞恥で顔を赤くした。
―アーディアディト、ルドルフ。
男達は、傷つけるといった。自分を餌にする、と。だめだ、僕は彼らを守らなければいけない。なぜか?
そんなのはわからない、ただそう決まっている。
シーツの上で、散々殴られ、蹴られ、罵倒されたヴォルフリートは出て行こうとするヴァルデマールの足を掴んだ。
ガァーン、ガーン。
どこかで、重い音が鳴り響いている。
身体中が痛い。歩くのも難しく、甘い匂いがまだ残っている。
「異能者は、この銀の匂いが弱いはずだ、・・・バルト、貴様は何故歩けるのだ?」
男が何か言っている。
―君の美しい姉は、私が特別にいたぶってやろう。
だめだ、だめだ、だめだ。
虚空を瞳に映したヴォルフリートは、ふらついた足で、ヴァルデマールの腕をつかんだ。
「触るな・・・、お前なんかに姉さんは傷つけさせない」
ガーン、と鳴り響いている。
守らなきゃいけない。
強く、腕を握り締めた。
「あの男は、・・・アウグスティーンはどこだ・・・・!?」
今までのヴォルフリートにはなかった、冷え切った声で、本人は気付かず、強い口調で正面からヴァルデマールを見据えていた。
「・・・・・」
3
「ヴォルフリート・バルト君は今、お伝えしたとおり、4日前に風邪を起こして、治療させているのです。この件は私が責任を持って処理しますので、お引取り下さい」
「僕が合わせて欲しいといってもか」
「無礼を承知で言いますが、ここは帝国の法律が適用されない場所ですので、ルドルフ殿下もしってのとおり、帝国とは違う権限を持っているので、私だけの力では対処しかねます」
謙虚な態度だが、一歩も譲らない。
・・・アウグスティーン、この男は。
「・・・・わかった」
外に出たルドルフを、ヨハンが待っていた。
「来ていたのか」
「今日は諦めて、帰ったほうがいいんじゃないのか、お前の部下がヘマしたんだろう、ルドルフ、お前、ヴォルフリートに甘すぎるんじゃないか」
ルドルフは通り抜けようとして、足を止めた。
「・・・アイツは、部下じゃない」
ヨハンは首を傾けた。
「ヴォルフリートが危険な目に合っている、アイツは僕の友達だ・・・」
驚いたようにヨハンは、ルドルフを見る。
「友達は守るものだろう」
「・・・これはハプスブルク家の皇太子とは思えない甘い言葉だな、散々、異能者としてアイツを利用しておいて、友達か?」
厳しい口調でヨハンがそういった。
「お前の為にも言っておくが、ヴォルフリートはお前が思うようなお人よしのただのバカだけじゃない、軍に入るのだってあいつ自身が決めた事だ、ルドルフ、お前はそれが約束を、自分を守るためなんて思ってるのか?勘違いするなよ、あの子が守りたいのはただ一人だけだ、お前は特別じゃない」
「アイツを助けに行く、お前はもしもの時に控えていろ」
「ルドルフ!!」
冷たい風が身体を吹き抜ける。薬の影響か、まだ身体がおぼつかない。
ズォォォ・・・ン。
ヴォルフリートの瞳が鋭くなり、修道院全ての景色が頭の中に飛び込んでくる。あの男、自分自身も異能者だったのか、喉の奥でこみ上げてくるものを抑え、冷えたせいなのか、殴られた影響か、おなかの具合が悪い。トイレに行きたいけど、そういう感じじゃない。
あの時、見たのは、
神聖な儀式じゃない。
・・・・・カルトだ。
―異様な景色だ、全てをあんな男に捧げ、自分の悪を浄化する為に、あんな、動物の命を奪うなんて。貴婦人やあの男より偉い男が従順ないぬのように、尻尾振って、命令を聞いて、足にキスするなんて。
人の命をあんな・・・。
「どうせ、浮浪者になる運命だった、私には人の未来が見えるのです」
それなら、命を奪ってもいいと?
「いけませんね、次期シュテルンバステル伯という方が、いえ、悪魔の一族の少年というべきか」
空間を捻じ曲げたように、一気に、恐ろしい美しい形相を浮かべたアウグスティーンが、ヴォルフリートが悲鳴を上げたのと同時に、その手をヴォルフリートの胸に突き通した!!ヴォルフリートの口から血がこぼれる。
「ぐはぁ!!」
「君の真実を知っても、皇太子は今までのようにいられるかな」
手が離され、スローモーションのようにヴォルフリートの体は叩きつけられる。
・・・アーディアディト!!
4
カシャン・・。
地面に叩きつけるように、ティーカップの受け皿ごと、アリスは紅茶を落とした。ちなみにミルクティーを飲んでいた。
胸にざわつくような感じが広がる。床には、ティーカップの破片が散らばっていた。
・・・ヴォルフリート?」
外では、嵐が吹き荒れていた。
銃を突き付けながら、クラディオをつれて、公式の文書を持って、ルドルフが突入したのは、深夜の3時、丑三つ時だった。静まり返った室内は騒がしくなり、幹部クラスの何人かも驚いて、置きだした。
突入した理由は、アルベルトの母親である貴婦人が薬をやっている事を自供したという理由だ。次々に容疑者となる人間は捕まり、ヨハンの命令の元、動き、ルドルフはクラディオの情報を元に、地下の奥の部屋に向かった。
ダン!!ダン!!ガン!!
ドォォン!!
何だ、この音は???
ルドルフの頭がパニックに陥る。
「どうして・・・、アウグスティーン・・・」
腕を押さえながら、ローラントがルドルフの前に闇の中から現れる。
「お前・・・・」
「信じていたのに・・・」
ふらりとした足つきで、ローラントはそのままルドルフにもたれかかるように崩れ落ちる。
「・・・逃げましょうよ、殿下」
クラディオはがたがたと震えさせている。
「ならぬ・・・・!!」
二時間前、クラディおはローラントたちの命令で、会員だけが入れる部屋に引きずるようにして、ヴォルフリートを運び込んだ。アウグスティーンの近くには、東洋人と褐色の肌の少年が漆黒の服を着て、立っていた。鷹のような鋭い目つきに、クラディおは圧された。
「何をするのですか?」
「新しく生まれかわせるんだよ・・・・」
「ヴォルフリートは・・・・・」
「早く帰りなさい、君には関係ないことだ」
「生まれ変わる???」
体から、血の気が引いていくのがわかる。
「・・・・あれは」
ルドルフの言葉で意識を現実に戻した。奥の部屋をルドルフと顔を合わせながら、ゆっくりとクラディオが開ける。
「ルドルフ!!」
表情をぐったりさせて、ベッドの下で転げ落ち、背中をうたれた後があるヴォルフリートがシャツから方を丸出しにして、シャツやズボンを血にまみれてヴァルデマールに抱きかかえられながら、倒れていた。
「ルドルフ、これは・・・・」
ヨハンがルドルフの肩をつかもうとすると、ルドルフが感情的にその手を乱暴に振り払った。泣き出しそうな、見た事もない他人となって。
「お前・・・」
肩を震えだし、明らかに動揺し、酷く恐怖し、何かが変わったような瞳を浮かべ始めた。
「どうしよう、・・・僕のせいだ、どうしよう・・・、何で、何で、・・・・怖い」
「ルドルフ様?」
小さい子供のような表情で、ふらりとした足で、ヴォルフリートに近づき、ヴァルデマールを殴ると、力が抜けたように座り込んで、抱きついた、いや、正確には子供のようにしがみついた。
「恐ろしい子供だぞ・・・!!悪魔の力で殺そうとして、私の手に噛み付いて、・・・誰か、誰か、この男を殺せ!!誰か、いないのか!私を助けろ!」
「ルドルフ!!」
ルドルフは控えていた獣をすばやく取って、銃口をヴァルデマールの口の中に押さえ込んだ。
「・・・・・黙れ、下種、殺されたいか」
「・・・・・っ」
「消えろ、今度現れた、本当に殺す、暇も与えずに殺す」
「ひいい」
「いやだ、いやだよ、ヴォルフリート、死ぬな、死ぬな」
子供だ、子供に戻っている、本当に。
「ルドルフ、いい加減、離せ」
「ヨハン・・、ヴォルフリート、死なないよな?僕をおいていかないよな?ヴォルフリート、ごめん、ごめんなさい」
移動中も同じことをつぶやいていた。
「僕をおいていくな」
5
目が覚めると、宮殿の中にいて、アリスの姿があった。
「・・・・姉さん?」
アリスの瞳から涙がボロボロとこぼれ、アリスはヴォルフリートが目を覚ましたのを確認すると、いきなり抱きついた。
「ヴォルフリート!!よかった!!」
「姉さん・・・」
「良かった、本当に良かった、・・・・本当に死んじゃうと思った」
ヴォルフリートの服の袖をギュっ、と握ってきたのでヴォルフリートが掴もうとすると、白い手が震えている事に気づいた。・・・震えている。
「ヴォルフリート、・・・・ヴォルフリート」
わぁぁ、とアリスが力強くヴォルフリートを抱きしめて、泣きじゃくる。
「私、怖かったんだからね、あんたがそんな恐ろしい場所で、私を置いて、一人で死んじゃうんじゃないかって・・・凄く怖かったわ」
自分の為に泣いてくれる、姉だから、家族だから。
ヴォルフリートは、ギュっ、とアリスの細い身体を抱きしめた。
そうか、帰ってきたのか・・・・。
「ゴメン、もう大丈夫、大丈夫だよ、ありがとう」
アーディアディトと変わるように、ルドルフが三時半の頃に、供のものを連れて、ヴォルフリートの部屋を訪れた。机やイス、貴族のものにしては簡素なつくりといっていい、天蓋つきのベッドなど、見渡す限り、必要なもの以外のものが少ない。
・・・生活感のない部屋だ。
「お前達、下がっていいぞ」
「はっ」
部屋の中はシン、と静まり返り、ルドルフとヴォルフリートだけになる。
「ルドルフ様・・・」
「ヴォルフリート、元気そうだな、体の調子はどうだ」
いつもの張り詰めたような、大人びた声ではなく、珍しく感情的な声にヴォルフリートは意外な思いをした。
「はい、家の人間やお医者様の先生も気を使っていただいて、ルドルフ様が手配してくださったそうで、ありがとうございます」
崩れるような、フニャッ、とした笑顔を浮かべた。
「どうして、笑えるんだ、お前は・・・・」
「え・・・」
「お前は、あの男に・・・・、あいつらに傷だらけで、その・・・・・」
深刻な表情だ、ルドルフ様も傷ついているのだろう。責任感が強く、人間らしい人だから。ヴォルフリートはどこか冷静な頭でそう思った。
「暴力を振るわれて・・・・」
酷く動揺している。勿論、数人の人間に長時間殴られ、脅迫された所までは覚えている。記憶があいまいなのは、恐怖によるものだと医者は言っていた。ヴォルフリートは、ルドルフの肩をつかんだ。
「貴方のせいじゃありません、今回の事は僕の勝手な判断で、責任は僕にあるんですよ、ルドルフ様、貴方はあそこにいる人たちを助けた、そうでしょう?」
「・・・それは善意でしたわけではない」
あんな恐ろしい光景が脳裏から離れる事はない。信者たちの魂が抜けた表情や儀式よりも恐ろしかったのは、こいつの体を見たときだ。殴られた痕やうたれた痕、それに・・・・、この先は言葉に出すのははばかれる。
―ルドルフ、こいつはアウグスティーンにQQを振るわれた疑いがある。
言ってはいけない、こいつが忘れてるなら。
正気の人間がすることではない、これは神を否定する犯罪だ。殺人に等しい。
「ルドルフ様?」
村での事も、今回の事もヴォルフリートは被害者で、罪はない。
「犯人たちは全員捕まえる、お前はしばらく休め」
「でも・・・・」
手を離すと、ルドルフが乱暴にヴォルフリートの手を掴んできた。
?
「・・アリスを哀しませたいのか」
深い、暗い宇宙を見せるような知性の色を輝かせたいつも見慣れた鋭い高貴な瞳がまっすぐにヴォルフリートを見つめた。
「ルドルフ様、・・・・あの、近いんですけど」
違う、まったく見た事のない何か、別人の色を瞳に宿している。
「僕もアリスが好きだ、彼女を哀しませたくない」
以前から、面食いなんだろうと思っていたが、自分の記憶では、2人に甘い雰囲気や好きになる原因に思い当たる節がない。女官や甘い言葉をかけるませた子供、いや、普通に、ルドルフ様は黒髪が好きなんだろうと考察していたが、幅が広い。友達の恋愛話は大体がつまらないものが多く、耳障りだとヨハン様は言っていたが、事実、つまらないものだ。
それにしても、いきなりというか、隠してたのか、突発的過ぎる。
「お前の姉だからな」
「・・・は、はい」
妙な雰囲気をなぜか感じ取ったヴォルフリートは、じっと見られ、ルドルフから視線をそらした。それは恥ずかしいとか、美貌に見惚れるとかではなく、明らかな恐怖だ。
最後はつけたしだった。自分はというと、ルドルフ様をクラディオや司祭様、ヨハン様の言うような特別のくくりに入れた覚えがないし、マドンナやカリスマに憧れるファンのような執着性はなく、恋愛方面でもルドルフ様やディーターほど、興味はないし、疑われるような論理的ではない嗜好を無意識でも持っている可能性は低いだろう。
「何故、視線をそらす?」
「いやあ、ルドルフ様もお年頃だなと思って、僕、応援したほうがいいですか?」
「・・・・悪趣味な香水のにおいがする」
ルドルフがイヌのように、ヴォルフリートの髪をかいだ。
「は?」
「帰る」
「?ハイ、気をつけて帰ってくださいね」
扉の所までつかつかと歩くと、ルドルフが振り向き、頬を緩めて、振り向いた。
「・・・・また、来ていいか、2人で、お前に会いに」
「時間があるときはあってるじゃないですか」
友達らしく、世間話や殴り合いやチェスをして。ルドルフ様にしては歯切れが悪い、自分の気持ちを表面に出すのが苦手だと思っていたが、ア、戻ってきた。
「仕事とか、そんなのは関係なしで」
「・・・姉さんの事を相談しに?」
顔が真っ赤だ、それにしても目つきが悪い。
「―お前は、特別なものではなく、神さまに愛されるひとりでいいと行く前に言ったが」
「服に爪をかけないでくれませんか、痛い」
「気付いたんだ、僕はお前を傷つけたくないって」
どうも話がかみ合わない、何故だろう。
「お前は他の他人とは違う、みっともない所を見せたくない奴で、僕は、つまり崇拝してるんだ」
「は」
「お前に僕を罰する権利をやる」
「・・・・怒りますよ、ルドルフ様、貴方らしくもない。僕は貴方を対等な友人と思っています、だから、貴方が自分を下げるような言葉は認めません、貴方を支えるのは、変えるのは、僕ではなく貴方です」
「・・・・・」
ルドルフが視線を下に下げて、黙り込んだ。
6
宮殿内で、とぼとぼと歩いているのを帰ってきたばかりのエリザベートが目撃する。ボーッ、として、熱を帯びた頬をしている。
「ヨハン、犯人の情報は」
「ア、ああ、戻ってきたのか、部下にもたせてるから、こっちに」
そのまま、反対方向の廊下にいってしまった。
・・・どうしたのかしら。
傷も大分治り、フェンシングの練習を、貴重なプライベート時間で従兄弟のエルネストとしている最中、
「アリスを倒す方法を知らない?」
と、邪気のない笑顔でそういわれた。
「・・・また、ルドルフ様がらみ?前から聞きたかったけど、エルネストってルドルフ様が好きだよね」
「そ、そんな!!」
「女子からモテるビジュアルなのに、もったいない、でも、本当に好きなんだね」
「・・・・変態だと思うか」
「変だとは思う、でも、僕はそれで仲良くするのを止めようとは思わないよ」
「何で?」
エルネストが恐る恐る聞いた。
「何でって、止める理由ではないしね、仕方ない事だろう、あ、・・・いてて」
また、おなかの具合が悪い。最近、体の調子が悪い。
「大丈夫?まだ、直ってないのか?」
「うん・・・、まだ、感覚がおかしいというか」
薔薇の束を持って、庭師のエメリヒ老人と歩いているアリスと出会った。
「姉さん!」
「ヴォルフリート、体はもういいの?」
「うん、大丈夫」
人のよさそうな優しい微笑みの、白ひげの恰幅のいい老人は足を引きずりながら歩いていた。ヨハネスお気に入りの庭師で、生まれは不明らしい。
「また、薔薇の手入れの手伝い?」
「ええ、楽しいの、とっても」
スペイン・ハプスブルクの花、マルガリータ、13歳で11歳年上のレオポルトいっせいにと告ぎ、4人の子供をもうけるが、22歳で高い。神聖ローマ帝国皇帝フェルディナント賛成の妻、マリー・れおぽるでぃーね、フェルディナントにせいの弟とメディチ家の令嬢クラウディあの娘として生まれ、1648年、フェルディナント賛成に嫁ぎ、僅か17歳で他界。
神聖ローマ帝国依頼のハプスブルク家に伝来する、インペリアル・クロスと呼ばれる十字架。表面は金で覆われ、多くの色石と真珠が埋め込まれ、二エロ細工が一部にある。ハンガリー王の王冠やボヘミア王の王冠。多民族国家の皇帝、フランツ・ヨーゼフ。
歴史的事実は、ともかく、
エレクトいう少年の元を、ヴォルフリートが訪れたのは、仕事が終わった夜中の事だった。アンティーク店の看板が下がっているのを確認すると、同僚となったディーターと共に、オーナーの中国人を訪ねた。
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