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銀の月の孤城
第17章―妖精は今日も死ぬ
(by チャールズ・モーガン)
1思いっきり、アンネローゼに頬を叩かれた。
「アンネローゼ・・・ッ」
ヴォルフリートの頬が叩かれる。アンネローゼを見ると、涙を浮かべていた。趣味の詩の朗読も途中で止めてしまっている。大好きなレモンティーも床にカップごと転がしていた。
「お前の頭の中は、脳みそが入ってないの・・いつ、私がお前にそんなことを望みましたか!!」
ばかばかと胸を叩かれる。
「裏切り者、裏切り者!!」
「アンネローゼ、君に怒られても仕方ない・・・僕は君を失いたくないんだ」
その言葉を聴いて、アンネローゼはかぁぁと顔を染める。
「お前は私の所有物でしょう!!」
人形も皿もペンも紙も本も、見事に地面にひっくり返っている。
「酷い!!」
アンネローゼがケーキ用のナイフを手に取り、ヴォルフリートに襲い掛かる。
・・・ガタンッ。
机ごと、ヴォルフリートはアンネローゼに襲われ、床に倒れた。
「・・・・殺してやるわ!!」
ナイフがヴォルフリートを襲う。
「君が好きなんだ、アンネローゼ」
動きが止まる。
「・・・・お前」
心からこぼれた言葉だった。
「僕はあの日と全然変わっていない。誰と関係を持とうと、意味がない、君じゃないと何をしたって、何の意味もない」
ヴォルフリートはアンネローゼを抱きしめた。
「大丈夫、大丈夫だから、僕が君を守るから。怖いものから全部、僕が守ってあげるから」
「・・・ヴォルフ・・・」
答えるようにアンネローゼはヴォルフリートの背中に自分の白い腕を回した。
「異能者の保護団体?」
ヨハンはルドルフが何を言い出したのか意味がわからなかった。隣にはえリアスの姿もある。
「・・・ああ」
「今日は、アーディアの話ではなかったのですか」
「先日、とある筋から異能者に対する差別や一方的な殺人を聞いてな」
「・・・カレですか」
「何だ、エリアス、何か知っているのか?」
「・・・ああ、彼は私に自分が異能者であり、異能者を守ることを頼んできた」
「まさか受ける気ではないだろう。アレは表に、この世に出てはいけないものだ。現実にはあいつらは認められていない」
「そいつの見返りは何だ?俺たちにしらられば、自分の身柄だって」
「・・・信頼するに値する人物だ。彼は私たちの敵ではない」
アンネローゼの手は優しい。エルフリーデは病人も老人も子供もまるで女神のように包み込み、誰もが彼女を愛していた事を良く知っている。大人しい少女だった自分と自己中心的な怒りで精神が不安定なアンネローゼ。同じ双子なのに、何故アンネローゼはグ平等な扱いを受けるのか。
「そうなの・・・苛められたの・・・可哀想に」
真っ白というよりは青白い細い手がエルフリーデの漆黒の髪を撫でる。その声はどこまでも涼やかで優しい。
「出してくれるといったのに、お前は私に嘘をついたのね」
「お許し下さい、アンネローゼ様」
「許さないわ、私をたばかった罪は」
当時9歳だというのに、人間離れした握力で、大人の男を水の中に引き入れた。
「きゃはははははははははっ」
狂ったような、甲高い声。塔の中のアンネローゼの部屋は壊された人形やぬいぐるみ、少女趣味のベッドや家具が数多くあった。
「~~っ」
恐ろしいバケモノのようで、その光景を見た依頼、エルフリーデはアンネローゼに近づく事はなくなった。
漆黒の闇に閉ざされた場所は、アンネローゼのいる部屋に良く似ている。音楽の神ミューズに支配された、愛と死が行き交う街、ウィーン。音楽は全てを支配する力を持つ。オペラや宗教音楽、フランスからはトルバドゥールと呼ばれる吟遊擬人、ドイツからは民ね全ガーやマイスタージンガー、オランダからは宮廷室内楽といった風に音楽は流れている。明日ペインは市の近くには、陸軍省がある。王宮近くにはオペラ座が。街のいたるところに、ハンガリー景気へい、チロル山岳兵が行き交っている。
・・・双頭の鷹は既に大長老で、外見ばかりが若者でしゃれていて、豪華で古めかしく形だけなしている。
「それで、何故ヴォルフリート・・・君の親族の命を狙ったのかね」
「狙う?わたくしが何故、彼の命を狙わねばならないでしょう、日の光も貴方達と同じような食事さえ制限されているわたくしが」
「その割には随分軽装で外にでていたが・・・君は階級が下の人間が自分の家の中に入っていくのを随分最後まで嫌がったそうじゃないか」
アンネローゼが自分の髪をねじりながら、憂鬱そうな表情に不機嫌そうに唇を尖らせた。
「当然でしょう、身分もわからない人間を家の中になんて入れたくないですもの」
2
「繊細とか、私は無関係ですからね。ずっと、神経を張り詰める仕事はしていますが」
社交界デビュー前とはいえ、伯爵の家柄で皇太子殿下の純粋な友人で人当たりもよいというのは、大変貴重だ。世間話をする為、横に指しかかり、辺りもないように狩猟会の休憩所でヴィクトリアは偶然、ヴォルフリートと話すことになった。ほぼ初対面である。
「15歳・・・同い年なんですよね」
「はい、ヴァルケシュヴァーン家の令嬢であるヴィクトリア様と同じ年なんて、恐縮ではありますが」
柔らかく、温かく、どこまでも優しい口調、穏やかな陽だまりを思わせる笑み。ダークブラウンの髪は整われているが、元々きっちり着るのが好きではないのか、軍服を着崩してきているが、少しもだらしなく見えないのはぴんと伸びた背筋のせいか。
「・・・今日の天気はどうなると思います?」
なぜか、落ち着かない気分にさせる。視界の隅では、馬の世話をするギルバートの黒い髪が見えた。
「午後は晴れるといってましたね」
「・・・・」
―いい人ですよ、彼は。
ただ、家の中であまり家族と関わるのが苦手で、いつも本を読んでいるんだとか、どう思います?
穏やかな横顔はほんの少し前までそばかすで平凡だったという。今は可愛らしく、少年らしさが際立ち、危なっかしさを感じさせる。優しい顔だが、時折、男らしい表情も見せる。
「行くぞ、モノ度も」
「はっ」
どこからか、出世コース爆走中の入り婿でギルバートの父親の弾む声が聞こえる。
おせっかいなのよ、ギルバート・・・この男だって、あの忌まわしい男の血筋だ。いつ、醜い本性を見せるか。
ギルバートは、この目の前の自分の親友といわれる不思議な瞳の少年を信じ切っていた。
―何故、こうもギルバートは純粋なのか、とヴォルフリートは不思議に思う。
「貴方は間違っている!!」
「何を、この帝国の狗が!!」
取り押さえながら、ギルバートは真っ直ぐな目で強盗犯を押さえる。日に焼けた肌に鳶色の巻き毛。
「訴えたいなら、正当な手段で訴えるべきだ!!」
ジプシーのコだ、と同じ軍の貴族の男が蔑みながらそういった。自分のように違う瞳を持つ人間よりもはるかな嫌悪感だった。
「はっ、それもどうせ、フランツ・・バイエルンの魔女に取り込まれたあの皇帝で押さえ込まれるだろうが!!」
「黙れ!!」
省の玄関に向かって、ギルバートはヴォルフリートと歩く。
「また痛めつけられたんだって、いくら上官でも言うべきことは言った方がいいよ」
「ありがとう、ギルバート、君は優しいな」
のんびりした笑顔にギルバートもホッとなる。
・・・心配だな。
「でも、大丈夫だ、・・・今度から気をつけるよ」
「本当かな、君はすぐ無茶するから」
「そんなことないよ、僕はたでさえ、今の作業で遅れてるからね、少しでも鍛錬を積まないと、上官や君にも迷惑をかけるし」
「手伝おうか?」
力なく、ヴォルフリートは笑う。
「・・・駄目だよ、それじゃ、ギルバート」
「え・・・」
「手伝ってくれるのは光栄だけど、これは僕ががんばらないと意味がないことだから。いつまでも最初の時みたいに君に甘えていたら僕は成長しないだろう?」
「ヴォルフリート・・・」
「ね?」
じ~ん、とギルバートはなった。
「君って人は・・・」
「すまない、ヴァルフベルグラオ、今日のスケジュールのことで」
「はい、何でしょう。ギルバート、それじゃあ、僕はここで失礼するよ」
3
それはまるで天上の音楽を思わせた。深海にすむ人魚の歌声にも似ていた。メインボーカルとなった彼女に、14歳だった頃の自分を思い出す。であったときから彼女は明るい笑顔で、眩しいくらいにエレクを照らした。
暗闇としに満ちた世界で、蹴落とししあう世界でエレク派、歌う彼女に出会った。馬車に乗っている時は良く似た別人だと思っていた。
―可愛いお人形さんみたいね。
過去の初めて女性と関係を持ったことを思い出す。
「ほんっとうに、こんなジプシー育ちと勝負するのか」
アリスが所属する座では、エオスは煙たがれていた。仕事が三流の劇場の歌手ということではないだろう。恐らく生えれ区のどぎつい過去を噂に聞いているのだろう。みだらで危険で何を考えてるのかわからない、裏の人間とも顔なじみの自分をネズミのように嫌っている。
・・・だから、何だというのか。
雪が降った翌日の昼下がり、偶然、劇場内で、エレクはアリスとチェスのゲームをしたこととなった。手を組みながらニヤニヤと笑う。
「それで、あんたは何を賭ける」
「賭け事は卑しい人がすることだわ」
キッ、とアリスはエレクを睨んだ。
「挨拶代わりに誰とでもキスするなんて、不道徳な」
「ただの挨拶だろ、それにあんた、もう結婚してるんだろ、なにオボコがってるんだか」
かぁぁとアリスの顔が赤くなる。
「最低!!」
「チェスは俺とお前で盤上の駒を交互に指しあい、相手のキングを追い詰めるゲームだ。あんたが勝てば、俺はローゼンバルツァーとは縁を切って、あんたの弟とも関わらない、俺が勝てば・・・そうだな、あんたと一晩過ごそうか」
周囲もざわついた。
「・・・・・本気なの」
優雅に手を入れ替える。艶やかに優しく笑う。
「もちろん」
4
「チェックメイトですね」
「ええっ、こんな一方的な」
ローゼンバルツァーに着たばかりの頃、ヴォルフリートは塔でアンネローゼに噛まれた。
「白のキングが勝った・・・・」
負けたのがショックだったのか、ずっと盤面を見つめている。
「ナイトに頼りすぎたのがあだになりましたね」
くすくす、と妖しく笑う。
「それで、アーディアディトは情報やト交渉屋と手を組んで、何を調べていますの」
「キングを追い詰めるんだとさ、最近社交界の貴婦人の間で妙な薬が出回ってるとかで」
ヴォルフリートがルークを持った。
「ところでアンネローゼ」
「何かしら」
「また、ローゼンバルツァー家から刺客が着たんだって」
「異能者が余程怖いのよ・・・、私は量子化」
手がパズルのように溶けていき、部屋の外で悲鳴が聞こえた。
「ギャああああああああああああああああああああああああああああああ」
「そして、吸血鬼・・・・他人の血を吸い、能力を自分のものにしてしまうから」
ギリギリギリ・・・・ズシャッ。
「そして、別の場所から鋭い牙と手で相手を殺す・・・・・・ねぇ?」
最後の言葉は急に狂気のアンネローゼのものとなった。
「あ・・・っ」
ぴりり、と痛みがアンネローゼにはしる。
げほっげほっ、ぶはっ。血がアンネローゼの口から出る。
「ああ・・・・」
「アンネローゼ、だから力は使うなって」
ヴォルフリートは慌てて駆け寄る。赤い瞳となり、ヴォルフリートは腕をつかまれ、床に叩きつけられる。
「アンネローゼっ」
「黙りなさい」
「―--」
襟元のボタンを外され、鋭い犬歯がいっせいにヴォルフリートに襲い掛かる。
鈍い音が耳元で響いた。
・・・・ずるるる。
銃を下げながら、標的となった男の身体を見る。背後でローゼンバルツァー家の監視人・・・漆黒のマントと仮面の男が入る。
「坊ちゃん、よくやりました」
「・・・・」
「これで、帝国にたてつくものはいなくなりましょう」
「・・・・・」
「貴方がウィーン・・・、ハプスブルク家を守ったのです」
ガタンッ。もう握る力はなく、ヴォルフリートは座り込む。
「さぁ、ミらルダお嬢様、予知は叶いました。標的は貴方の予知どおり、悪はドナウ川のほとりで貴方の手で消し去りました。ゆっくりお休み下さい」
「・・・・うふふ、えへへ、私・・・正義の味方・・・」
声色が表情が小さな少女のもので別人の声だ。
「ぱぱ、まだ起きてるかな」
5
まるで読み忘れていたページを見つけるように、爆発事故が起きる前に、ヴォルフリートが合いに聞いて、聞いた。
「―あの川でのキスさ、何の仕返しだったんだ、結局?」
肩が緊張感で震える。いつもの軍服ではなく、外に歩いてもいいようにヴォルフリートは動きやすい格好をしていた。
これから、ナンパした女性とデートだそうだ。胸焼けか、エレクの胸は重たいものでも飲み込んだようにかなり重苦しい。目元が緩みそうになるのをこらえた。
「ほう?気にしてくださるとは光栄だ、一介の歌手の戯れのキスを」
役者のように大げさに手をくねらせながら、いやらしく、エレクは笑う。
「あんたが望むなら高値でまたさせてあげてもいいぞ、ん?どうだ、坊や?」
顎をつかみながら、からかい混じりにエレクはそういった。
「情報や、香水臭いから近づかないでくれる。今日はこの前の情報量の全額、払いに着たし」
嫌そうな表情で、ヴォルフリートが答えた。
「・・・・そうだな、意趣返しだ」
「意趣・・・・何に対してさ?何、最初の情報で君をオカマの根城に置き去りにしたことを怒ってるのか?それとも、食事代を値引きしたことか?」
「ひねくれものだな、あんた。何で、そう捻じ曲がったふうしか見れない?友達少ないだろ」
「そうでもないよ、同じ仕事とか、黒猫追跡同好会とか科学奇行部とか魔術部とか、踊り子のスカートを除こうカイとか、色々いるよ」
・・・最後の方はつっこんでいいのだろうか。
「お友達が多いようでなによりだ。俺がああしたのは、あんたが誰にも心を開かず、暴走しない為の・・・気付け剤だ。あんた、不器用で計画性ないし、いつかとんでもないミスして死にそうだから。童貞だしな」
ヴォルフリートの顔が真っ赤になった。
「えっ」
「あんた、女と寝たことないだろ」
―どうも、外見で勘違いされているな。エレクはニヤニヤと笑う。大体、自分の周りは自分がお子様とか、そういうのに疎いと思っているらしく、最初はディーターにもそう思われたしな。
とりあえず・・・。
「ええと」
「?」
「期待してもらって悪いけど、・・・僕、去年、・・・・結んでもらってるんだけど」
ギルバートもああ、何故拒否反応を見せたのか。
ガタンッ。
「・・・・?」
ゴットフリートとアーディアディトの住居スペースは二階の西に位置する。
「・・・おはよう、ゴットフリート義兄様」
なぜか、ゴットフリートの頬が赤い。かんしゃくでも起こしたのだろうか。視界の隅には、事件でもあったように、レオンハルトとエレオノールがお互いの顔を見合わせて喧嘩していた。
今、出てきたのはアーディアディト、姉の部屋だ。
「?」
夫婦なのだから、朝から同じ部屋にいてもおかしくない。なぜか、部屋の前にはチェスのルークの駒が転がっていた。
「メイ、一体、何が」
「ヴォルフリート様、お姉様が・・・・」
身体中の血がざわめいた。
6
ネグリジェを着たアリスは青ざめていて、箪笥の中から出てきた。
―姉さん。
「姉さん!!」
「・・・・あ、ヴォルフリート?」
良かったと引きつった表情が安堵感を浮かべた。
足から力が抜けて、床に崩れ落ちそうになるがヴォルフリートが駆けつけて、抱きとめる。
「・・・・だよ、ないてたから慰めようとしたのによ」
ゴットフリートの声がどこからか聞こえてくる。
「・・・・ヴォルフリート」
部屋の中は強盗にあったようにあらされ、人形も本も何もかもが引き裂かれ、カップも粉々にされている。
「・・・・一体」
その時、部屋の中にディートリヒが入ってくる。
「・・・・アーディアディト、警察を呼びました」
ぐったりとした表情だった。
「・・・警察?」
「ヴォルフ兄さま、・・・・良く聞いてください、この家から犯罪者が生まれました。そして、その犯罪者を逮捕します」
・・・ゴットフリートが・・・!?
「姉さんの昨日は・・・・」
「言わないで、ディートリヒ!!」
ぎゅっ、とアリスはヴォルフリートにしがみついた。
「―レオンハルト、僕らの父です」
7
フランツ・ヨーゼフ皇帝の実母・ゾフィーの姿をルドルフは忘れたことがない。抑圧や責任を受け入れ、ハプスブルク家を守るために、祖母ゾフィーは生きていた。国民の見本でアレ、と口々に物心つく前からゾフィーは、エリザベートから話されたルドルフにそういって、ミライの皇帝として、甘やかすことなく厳しく育てた。
ジゼルには、ゾフィーからの抑圧は少なかった。後継者ではなく、あくまでお受けの一員として扱い、ルドルフに比べると扱いが優しかった。
「神を信じなさい」
司祭がそういった。
「武人として、帝国の剣となりなさい」
軍人がそういった。
「人を疑い、人を操る力を持ちなさい」
政治家がそういった。
「生活を守ってください」
市民がそういった。
「貴方は、オーストリア・ハプスブルク家の未来の皇帝なのだから」
「ルドルフ、皇帝となるものに個人というのは必要ないのだよ」
皇帝となり、帝国や国民の平和を守る。それがあるべき姿だと思った。自分はそうやって、生きて、帝国のために結婚し、後継者を生ませて、そして、帝国の為に死んで、自分の為には死んでいかないのだと思った。
ウィーンの街を自宅のバルコニーで孤児院の子供達にあげるクッキーをプレゼント用の袋に入れながら、ローザリンデは、御側付きのメイドリーナと共に見下ろしていた。
このところ、自由を、民族をと暴力に訴える民衆が帝国内にいるポーランド人や純粋なオーストリア人以外にも増えてきた。
どこかで、デモを行う異国の言葉が聞こえてくる。
・・・怖い。
リュービクラル家は、元々オーストリアに昔からいる貴族の家柄ではない。ドイツの小国の出身で、独裁や権力を嫌って、オーストリアに移った。
―見て、あの肌の色。
―ガラスだまみたいに綺麗な目ね、亜麻色で、デモ、オーストリアの人間とは違うわね。
異物には敏感な宮廷の貴婦人達は、初めて社交界デビューしたローザリンデを見る目も厳しく、同じドイツ系の人間からは結局は権力に擦り寄った偽善者だとローザリンデの家族を嫌そうに見た。
そんな時に、ヴィクトリアやアーディアディトが手を差し伸べてくれた。
「君は君のままでいいんだよ」
「・・・・殿下」
「だから、誰の目も気にせず、社交界の一員として、堂々と誇らしくいなさい」
その笑顔はどこまでも優しかった。
舞踏会に参加する主な注目のメンバーは大体が決まっていた。皇帝陛下のプライベートな付き合いもあるというヴィヴァリー夫人、二番目が、ローゼンバルツァー家のエレオノール、3番手が皇帝のご意見番の議員の妻でサロンの女主人である慈愛の・オルガ・フォン・ヴァルケシュヴェーン。若輩者の貴婦人はまずこの皇族に近い上位グループのご機嫌や意思をとることが暗黙のルールだった。
舞踏会の花としては、最近はツェツぃーリア嬢やアーディアディトが注目され、ヴィクトリアも有力な家柄の貴公子や上に上がりたいなり上がりの家の嫡男に注目を浴びている。
皇族とつながりのある公爵家や重要ポストの人間の意見は、階級社会の貴族社会において、重要だった。
ギルバートの父であるリヒャルトは公爵家の親戚筋であるヴァスィツァオバラー家の婿養子で軍内でも皇族つきの護衛衆を引きえる精鋭で、上のクラスで、出世クラスの人間だった。
薔薇の優しい匂いが会場にいるギルバートの鼻腔をくすぐる。冷たい貴族の視線がギルバートに注がれ続けた。
「見て、オーストリアの狐の娘よ」
柔らかく愛らしい、それでいて上品で高貴な微笑みが見るものを温かくする。ピンク色の唇には、ローズピンクの口紅が添えられていて、小さな唇には良く似合っていた。
「あの薄汚い手段で何人の人間も貶めて、地位に上り詰めた」
好奇心と知的な輝き、純粋な魂を漂わせた紫がかったラファエロ・ブルーの大きく緩やかな瞳は光に満ちており、膝まで伸びたストロベリー・アイスを思わせる柔らかでふわふわの髪をアップさせた、スレンダー体型でありながら美乳の大きい胸を持つ少女は、まさに本物のお姫様だった。雪のような白い肌は恐らく異性を知らないであろう。
「賄賂にも手を出し、主な人物も手の中に取り込んでいる」
彼女は18歳を迎えたばかりだが、幼さを感じさせる顔立ちのせいか、15歳か16歳くらいに見える。花を思わせるドレスに身を包み、視線を奪っていた。
「何でも、他に後継者になる嫡子がいないからジプシーの、愛人との子を跡継ぎにしたとか」
「あの少女を息子として生めばいいものを、妻の間に女ばかり・・・」
扇を片手に口々に噂をする貴婦人の中にローザリンデの姿もあった。
「アーデルハイト・フォン・ヴァスィツァオバラー嬢は相変わらず、美しいな」
「今日は君の付き添いだろう、ギルバート」
ベルクヴァインはやんちゃな笑みで、ギルバートを優しく包んでいた。裏表のない、本当に真っ直ぐな友達だ。
―確かに眩しい。
しかし、今日はアーディアディト・・・憧れのヴォルフリートの唄姫の姉君の姿がないことがギルバートの姿を曇らせていた。
逮捕されたレオンハルトの家は実質的にゴットフリートのものとなった。が、ローザリンデが尋ねたクリスマス前のその日、ゴットフリートはホテルの一室で身体中の骨を折られ、引きちぎられて死んでいた。エレオノーるは病どこにいた。
「お母様、これは・・・」
「知りません、早く、帰りますよ」
ローザリンデは母親の手を突き放した。
「ローザ!!」
気付いたら、アリスの家の扉の前にいた。
ガンガン、と扉を叩いていた。中から、ディートリヒが出てきた。
ディートリヒはローザリンデの顔を見ると恥ずかしそうに顔を背けた。
「何の御用ですか、こんな夜中に」
「アーディアを出して頂戴!!」
「・・・何故」
「お願い・・・!!」
心配でたまらない、そういった表情になっていた。
「・・・え?」
アリスは警察や発見者のアレクシスから聞きなれない言葉を聴いた。
「ゴットフリートが・・・何?何ですか?え?」
「ですから、あなたのだんな様であるゴットフリート様はトランヴァニアやシルボヘミア王国のものに国の大事なとあるお方の公式資料や武器の情報を流したという罪をおかした可能性があるといったのです」
アリスに衝撃が走る。
「!!」
「貴方の父君のこともありますし、貴方の家にだけ家宅捜査をさせていた着ます。・・貴方達兄弟がこの家の嫡子かどうかという噂についてもね」
「は?」
「知らなかったのですか?貴方がローゼンバルツァー家のものとなり今日に至るまで、認められましたが、貴方は事件を起こしたあのヨハネス公の娘の子供です。人のぷわさというのはいつまでも残るのですよ」
銃弾のチェックをしながら、ヴィルフリートは苛立ちを感じていた。原因は自分自身の過ちである。勿論、人格が違うからヴォルフリートが判断したことはヴィルフリートにも跳ね返ってくる。・・・軽率すぎるぞ、あいつ。
自分と同じ身体を共有しておいて。
ヴィルフリートが表にいると言う事は、異能者としての自分の仕事についているのだ。
・・・俺だって、仕事以外にも自分として過ごしたいのに。
・・・・屈辱だ。
「おい、ヴォルフリート、コマーロムについたぞ」
馬車が止まった。馬車の中からエドガーが出てきた。
「エドガーか、早いな」
ヴォルフリートも降りた。
「レハール隊長が案内役だそうだ」
「レハール?」
「軍楽隊長だよ、軍にも音楽を楽しもうっていう」
ヨハネスの一声で、アリス達だけを残し、レオンハルトを抜いたローゼンバルツァー家の人間は集められた。アリスはまだ弟の肩にもたれつつ、リビングで興奮が冷めないのか、ないている。
・・・・あの女が着てからだ、この家がおかしくなったのは。
ディートリヒは同じリビングでアリスを睨みながら、苛立ちを押さえようと指先を噛み続けている。小さい頃のクセが抜けないのだ。
ドタドタドタッ
「お嬢様、お待ちください!!」
ドイツとオーストリアの境界線上に位置する避暑地で、アリスはヴォルフリート共に皇帝陛下とドイツの帝国との親交会に、ルドルフのお世話係兼遊び相手という名目で着ていた。
「いいじゃない、せっかく、山の近くまできたんだもの」
坂道を元気良く駆けていく。
こんな青空が広がる日に部屋の中にいるなんておかしい、飛び出したい気持ちでアリスは一杯だった。
「なんて、恥さらしな女なんだ」
地元の貴族の同い年くらいの子供達が青ざめた表情でアリスを見ていた。
「ねぇ」
甘えたような女の声が聞こえた。
「お兄様、あのお方、本当に議員のあのヨハネス公のお孫様ですの」
その時、家庭教師らしい初老の女性が入ってくる。
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