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銀の月の孤城
第五話黄金の鳥篭
(by 星野富弘)
1
レンは緑服服のパイロットと銃撃戦を繰り返していた。
カッカッカッ
「追跡している反応は消えたか」
レンは頬をなでおろし、ヘルメットを外し、格納庫の間の金属製の橋の上に足を伸ばした。その時、換気扇から女の子の声が聞こえた。
「きゃああああ!」
ウサギ耳を思わせるピンッと立つクロムイエローのリボンと自分に良く似たダークブラウンの独特の髪型の可愛い系の女の子がスカートを翻して、生足をさらして板の上に転げ落ちた。
「いたぁぁい」
ベアトリーチェはゆっくりと埃や油にまみれた服を払いながら、身体を起こした。
「・・・・・!?」
大きなうさぎか、小動物を思わせる赤紫の瞳でベアトリーチェはレンの姿を見た。
・・・・・・綺麗な男の子。
コーディネーターは遺伝子から操作されて、容姿も美しいものが多い。中身はともかくレンも例外ではない。本人は自覚はないが。
―一般人か。それも自分と似た雰囲気の。
「・・・・・お前、どこからしのんできた?身分証かなにか自分を証明できるものはあるか」
レンも数秒見たが、すぐに意識を仕事に戻した。
?ある事に気づいた。目の前の少女が凝視しているのだ。自分を。それも軍人を前にして、何の警戒心もなく。それにしても妙だった、彼女が見る自分を見る優しい目が。
「・・・・君、どうか」
「兄上様ですね、レン・ナラ・アスタール・・・ですよね、わたくし、オーブの・・・・貴方の妹です、双子です」
「はぁ?」
長いロレックスの車から降りると、青白い表情で整った顔立ちを曇らせながら、バスラー家のルドルフは学園の玄関に歩いていった。
ふう・・。
「皮肉かな」
・・・学園の方が安心できるとは。家の中はいつも嵐で、とても狭い。
2
油とオイルの匂いをさせながら、飛行機の手入れをクラスメイトとしていると、チャイムが鳴り響く。ガタイのいいクラスメイト、ニールとマクスウェルはエンジンが全てそろったことを確認すると、中で整備しているカインに声をかけた。
「行くぞ、ジョシュア」
「授業だ、授業」
「は~い」
のんびりした声でカインが鼻を黒くしながら、顔を上げた。
「合同授業でエリート組のC組と騎士の真似事かぁ」
「アルヴァー、君もC組だったのか」
「珍しく、サボらなかったわね、偉いわ」
軽やかに、優雅にフィリーネ・クラッセンが女神を思わせる笑顔でフェンシングの練習着に身を包んで、横を通り過ぎた。
「ジェイドにサボろうとしたら見つかったんだよ、全く、規則とかルールとか煩いうるさい、何を考えてるんだか」
「授業をサボるのはいけないよ」
「お前こそいつも、オイルまみれのにおいしてるんじゃねえよ」
その時、周囲の女子が色めきだす。艶やかで優雅なラインの金髪の少年、ルドルフが現れた。
「・・・・あれ、バトラーだ」
「誰?」
「・・・ああ、君は転入生で知らないんだっけ。オーブを代表とする族長の家柄の分家筋で、オーブ軍の大佐の息子だよ、名前はルドルフ・バスラー」
3
コーヒーのカップは揺れていた。地球に向う船の中で、レンは漆黒の宇宙空間を見ていた。
―双子の妹?ナチュラルでオーブ?
プライベート通信で、レンは父親に聞いた。
艦内でアンジェリアの軽やかな歌声が鳴り響く。新曲で、恋の歌のようだ。
「お兄様、花をどうぞ」
「花冠?俺は高校生だぞ、エリザベート」
「うふふ、でも、きっとお似合いですよ」
「まあ、エリザベート様ったら」
4
「先輩・・」
「さすがは会長だな」
「実はラクビー部が部費のことで」
「そんなに慌てなくても大丈夫だよ」
ルドルフの周りには常に彼を慕う人間が集まっていた。
「ハーッ、カリスマって奴?」
グラウンド近くのカフェスペースでカインはアレクやアルヴァーと共に軽い昼食を取っていた。
「バスラー家はアスハ家とも親交あるからね。今から取り入ろうという輩や彼の才能に引かれる人間もいるんだよ。強い引力があるんだよ」
「へー」
ジョシュアは素早い手つきで林檎を二つに引き裂いた。
「・・・キラ」
「大丈夫ですよ、ラクス様」
「でも、もしかしたら」
マントのすそをぎゅっと握る。
5
「キラ・ヤマト・・・不殺のコーディネーター」
テレビでは、一月前の映像が流れていた。レンは廊下でまだコーヒーカップを持っていた。
「・・・・兄さんは殺されたのに」
ぐしゃっ。
口元は歪み、コーヒーカップを握りつぶした。
「・・・・キラ・ヤマト」
『地球統合組織で救われた国では、憎悪も哀しみも存在せず、平和と笑顔と夢で作られていて、初のモデルケースに―』
パイロットスーツからはロケットのようなものがこぼれた。
「・・・大丈夫、姉さん?このところ、部屋でここの管理部との情報の取り合いしてるから、神経が張り詰めたんじゃないの」
「大丈夫、それより、カイン、今日のくすりは?飲んだ?」
「ああ、まだ」
カインはバックからケースを取り出し、ボトルがつけられた注射器のようなものを取り出し、首に針をつきつけた。
「じゃあ、やるよ」
ドスン・・。
6
夜の寮の中庭でルドルフは貧血に襲われていた。部屋にいては、弱みを見せることになる。
「ふぅ・・・」
その時、渡り廊下に連なる螺旋階段から下りてくる音が聞こえた。
「ててて・・・」
白い顔を見上げると、カインが夜着のまま、降りてきた。黒いパジャマはしっかりと肌を隠していた。
「ん?」
カインがルドルフの視線に気付いた。ツキが差し込んで、青灰色の瞳を輝かせる。
「・・アドヴァキエルの古い民唄だな」
「アドヴァキエル?」
「・・・ああ、北の方の。だが、その唄は国外には出されてないはずだ。何故、君が、その唄を?」
「頭の中にたまに浮かんでくるから、遺伝子の記憶かも?といっても、遺伝提供者の女性は見たことないけど」
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