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銀の月の孤城
第六話ラストモラトリアム
(by 寺山修司)
1
隠し扉か、ぴたとその本棚に手を置きながら、テロリストに占拠された学園の中をティーアはマインライトとアロイスを身をクぐませながら、懐中電灯を片手に進んでいく。アロイスの手の中には銃があり、ティーアに向けていた。
緊張感がティーあをおおっていた。
・・・・カイン。
「・・・いい顔だな、お綺麗なバスラー家の坊ちゃん」
「女だったら、今すぐここでひん剥く所だがな」
ぎりり、と歯をかむ。
・・・・くそ、部屋に銃を置き忘れるとは。理事長室の部屋の電気は消され、僅かなライトのヒカリが、ルドルフとジョシュア、フィリーネ、アルヴァーの痛めつけられた身体を照らす。フィリーネは端正な顔立ちを必死に恐怖に包まれないように気を張っていた。
「オ嬢ちゃん、おじさんたちの相手をしてもらおうか」
「・・・・ひっ」
縄で縛り付けられたフィリーネの声が震える。
「止めろ、フィリーネさんを汚い手で触るな!!」
「あぁ?」
褐色の鍛えられたからだの男が冷たい目でアルヴァーを見下ろす。あまりの冷たさにアルヴァーは怯えた。
「触ったら、どうなんだよ!!」
ドカッ
「止めろ、うちの生徒に、クラスメイトに乱暴は!!」
「黙れよ、親のすねかじりが!!」
!?購えない、予想以上の力で白い頬を身体ごと、赤いじゅうたんの上に叩きつけられる。この私が・・・・こんな野蛮人にっ。
「おやめなさい、ルドルフに手を出すのは、この私が許しませんよ!!」
頬を叩かれる。
「てめえも黙れ、小娘が!!」
「・・・・ひっ、・・・やぁっ、・・・・お父様、かあさま・・・」
ガタガタとフィリーネは恐怖で震える。
「・・・・なの、違う」
現実逃避に入ったらしい。その様子を床に押さえつけられたルドルフは悔しそうに見る。
その時、フィリーねの後ろにいたジョシュアののんびりした、子供じみた表情にルドルフは異常なもの、いや驚きを感じた。
「おじさん達、カガリ様に文句があるんだよね、この学園アスハ家の寄付金でまかなっているから」
声ものんびりしている。舌をからめて、何か、チップ上のものを出す。
「僕、おじさん達の国が欲しいファントムペインだよ、ちっぽけな学園の経営者のそんな女より僕をカードに使わない?」
「はぁ?お前みたいな田舎臭い、薄汚れたガキが何を」
カインがいきなりルドルフの手を掴んだ。力強く、乱暴に。手馴れた、訓練された人間の手だった。
「おまけに大佐の息子、ルドルフ・バスラーの親友だ」
「貴様、何を、お前と私は昨日であったばかりで」
「うん、再会したんだ、そうだろ」
カインは少しもルドルフを見ていない。ただのんびりとテロリストを見ているだけだ。
「・・・小僧、貴様、何者だ」
「誰でもない、前の戦争の実験体の殺人人形だよ、今、地球連合は地球統合組織のことでプラントももめていて、カガリ様も国民を抑えるので精一杯だ。僕がおじさん達のメッセンジャーになる、だから僕だけは助けてくれ」
「キサマァ!!」
ルドルフがカインに飛びかかろうとするが、カインは押さえつける。
「自分だけ助かる気か?」
「誰だって自分の命は重要でしょう?」
「お前の狂言じゃないだろうな」
「それじゃ、調べてくれ、存分に」
2
潮の香りが二人を包んでいた。青空が一面に広がっていく。どこからか、ウミネコの鳴き声がした。
「それでオトシモノはどこなんですか?アンジェリアさん」
百合の花のにおいがした。華やかなお姉様風の衣装に身を包んだアンジェリアが不機嫌そうに眉を顰めて、コーティングされたピンク色の爪を睨んでいる。
「黙りなさいよ、アスタール家のごくつぶしが」
「本当に海なんでしょうね、貴方の大事な母親の形見を落としたのは」
ドン!!ドン!!
ドン!!
映像の中でテロリストのリーダーは教員達を打ち抜いていった。
悲鳴が鳴り響く。
「クソッ、警察は、我が軍はなにしてるんだ!!」
カガリが机を叩く。
その時、手元の電話がないた。
アルヴァーはテレビの映像がジョシュアとテロリストのリーダーのものに切り替えられたことに動揺した。
「・・・・ブルーム、彼は一体・・・」
「フィリーネ・・・・」
もうイチぞ、備え付けのテレビを見上げる。
『我々が要求するのは、オーブとプラントが手を組み、世界を戦争の道に招かないことである。カガリ・ユラ・アスハ、要求を呑んでもらいたい』
『人質は学園の全生徒と教員である。要求を引き伸ばすならば、一人ずつ見せしめに打っていく。アスハ代表、貴方には地球連合のファントムペイン、人造人間の少年を引き渡し、我々の真のリーダーを返し、我が国に従うことを誓っていただきたい」
カインはグラウンドに出され、護送車らしき車の上に立たされる。目隠しされていた。
「カイン!!」
映像を見て、ティーアガ悲鳴を上げる。アロイスも声につられて、映像を見て、なぜか目を見開かせる。
朝が開けたころ、オーブ側のカガリの使者が学園内に入る。
「・・・・カガリ様なら、助けてくれる。よかった」
フィリーネが肩を緩め、声を元気にする。
「ああ・・・」
「あら、ブルーム、その胸のところのそれは・・・」
「え、ああ、これは小さい頃、父さんにつけられた刻印というか、刻みモノで、民族のものというか」
「へえ・・・、珍しい習慣ね」
3
くだらないいたちごっこだ。プラントと地球は戦争を止めた?ナチュラルとコーディネーターは武力を持って、今の平和を手に入れた?
同僚のサジャはその氷のようなよこがおをみて、ぞくり、となった。
「おい、ベルツ、お前、変なこと考えてないよな」
「私たちのここでの仕事は潜入調査でオーブの内情を国に持ち帰ることだ。地球統合組織の根が張らないうちに・・・」
地球統合組織!?ティーあの大嫌いな言葉だ。
「ちょっと!!あんた達、何者!?学園の人間じゃないと思ってたけど」
意気込んだが、すぐにティーあの熱は下がった。塵かデク人形のように、男が、絶世の美少年がティーアを見据えたからだ。
「貴様に関係ない・・・。サジャ、お前、そいつを連れて、先にBルートで本艦に帰還しろ」
「女はどうするんだ?」
「貴様の好きにしろ・・・、どうせテロリスト上がりだ」
さすがにティーアの顔が青くなり、じたばたする。
「ちょっと、女の子を危険な目にあわせる気?あんた、それでも、男なの?」
「黙らないと、今度はナイフで顔を向くぞ」
ざわわわ、と身体中の器官がざわめく。
「最低!!」
4
『カガリ様と交渉役の少年、それに学園を占拠したテロリストの一人がいる現場で発砲されました!!』
『現場は煙で覆われており、報道陣や警察や軍も動けず―ー』
煙に包まれる中、痛みをこらえながら、ルドルフはグラウンドの中で横になって、意識を戻す。
・・・無事だったのか。
そう思って、目を恐る恐る目を開けると、血だらけのカガリの姿が目に入ってきた。
「カガリ様!」
表情が青くなる。慌てて駆け寄ると、額から血を流したテロリストの豪腕が襲いかかってくる。
「このオーブのガキが!!」
「・・・・!!」
ルドルフはぎゅっ、と目をつぶった。その瞬間、上から爽やかな疾風が湧き上がる。
ドカッグキッ
バキッ
「!?」
「―もう、姉さん、無茶しすぎだよ」
この声は・・・まさか。心臓が脈を打つ。
―まさか。
目を開けた瞬間、ティーアの眩しい白い太股がルドルフの眼前に飛び込んでくる。彼女よりも数倍大きい武装した男がティーあのとび蹴り一つで床に崩れ落ちていく。
ギリリリ・・・ッ。
「はい、姉さん、犯人の手下、抑えたってさ」
「いてててててっ、ひい、やめろ、腕がちぎれる!!」
カインが仕方なそうな笑顔で細腕で犯人の一人を縛り付けていた。
ばさり、と耳にかかっていた三つ編をかきあげる。赤紫のツリ目勝ちの大きな瞳がルドルフを捕らえていた。ティーアガ主犯格の男の手を踏みつけた。
「いててっ!!」
「姉さんはやめてくれる?私と貴方、一切血はつながってないんだから、他人でしょう?」
じろり、とカインを睨む。
「カイン、あんた、オーブ代表とその子を連れて、移動しなさい」
「・・・ティーアは?」
「私は、この男に用事があるから、ほら、お・き・なさいよっ!!」
5
ティーアはMSの上に叩きつけられる。
「舐めたまねしやがって、ぶっ殺してやる!!」
「く・・・っ」
カインによって外に逃げ延びたルドルフは、アルヴァーたちと再会する。
「ルドルフ、良かった!」
フィリーネは駆け寄ろうとするが、フィリーネはその横顔を見て驚いて近寄るのを止めてしまった。
「・・・・・ジョシュア・カールス・・・」
見たことのない、福音でも聞いたような、そんな目覚めたような表情をしていた。
「・・・・・平和な世界?」
「!?」
「どこにあるんだ、そんなもの」
さっきまでの冷徹さとは違う、初めて見せるアロイスの悲しみと激しい情念が混ざった声だった。アルヴァーは驚いたように見る。エリザベスはアルヴァーにしがみついていた。
「ザフトのドレイクガンダム・・・・」
アルヴァーは強い、初めての自分の中のわきあがる感情に動揺を隠せなかった。
『カガリ様、大丈夫ですか?』
「あ、ああ・・・」
6
両手を中くらいの・・・あんな民族的な刀で塞がれた状態で切り刻まれると思わなかった。額や目の近くも切られている。多分学園からは、かなりの距離を離れている。
―殺される、か。
銃もナイフも連絡ツールも奪われて、これではミスリルの家族らしくもないじゃないか。
「貴様のせいだ、貴様さえ余計なことしなければっ」
身体を高台らしいタイルの上に叩きつけられ、銃口で体を押さえつけられる。
ガンダムか、いじってみたかったな。先ほどの放送での内容が脳裏に浮かんだ。
ガンッガンッバシンッ
「これは罰だ、神は過ちを持つものを赦さない、人殺しの人形が!!」
バシンッ
顔や手、体を何度も叩かれ、殴られ、蹴られる。銃口をたたきつけられる。
「・・・・・ったいな、殺すならさっさと殺してよ」
「このガキ!!」
「殺してやる!」
―ああ、都会で飼いならされた狼のぎらついた目だ。
体を起こされ、銃で撃たれそうになった、その時、コツン、と何かが響いた。
「アレク・橘・フリューゲルを最初に襲ったのはお前か?シャルル・パドゥ」
「・・・・誰だ、このガキの仲間か?」
銃をアロイスに向ける。
「いいや、私はお前を罰する為に来た・・・動だった、我が帝国がお前たちに与えた情報は」
「・・・・その軍の紋章は、まさか・・・貴君は」
カインはシャルルといわれた男とその少年の顔を見合った。たくらむような、高貴で優雅な笑みを浮かべていた。
「ああ、お前が知っているあの皇帝陛下が治める国の人間だ」
「・・・それでは、私を助けろ、お前達も今のオーブやプラントに疑問を持っているだろ」
「ああ、そうだな、ここで助けるべき命は一つだ」
にやり、と悪人らしい笑みをアロイスは浮かべる。
「では・・・」
「任務を遂行しようではないか、我々の明日のために」
・・・・え~っ、僕、異国の事情で殺されるんですか?マジで?
カインはため息をついた。アロイスが持っていた銃をあげる。
目を硬く閉じ、体を硬直させた時、銃声はなり終わっていた。
「・・・・・・?」
事態がよくわからず、カインは目を目を開けると、朝日が飛び込んできた。爽やかで穏やかな太陽と青い空が見えた。そして、血だらけで何度も銃で撃ちぬかれたシャルルの亡骸があった。そして、逆光で目の前の銃を持つ軍服の少年の顔は見えない。ギラリ、と鋭い眼光が異様に輝いていた。
「!?」
ズキズキッ
うまく動かない手で頬に触れると、血がべっとりついて、身体中にシャルルの血が飛び掛っていた。
「え・・・っ、あ・・・っ」
助かったらしい。アロイスが動いた。緊張感が、カインを襲う。
「お前らしくもないな、お前の腕ならこの程度の粕はすぐ殺せたはずだ」
中性的で精悍をも感じさせる整いすぎた顔立ちモ普段なら十人中八人は振り向かせられる、麗しいクールな美貌だろう。しかし、整った顔立ちはカインには逆に警戒心を持たせた。
・・・こいつ、自分よりも強い。直感でそう感じ取った。
カッカッ、と軍靴が鳴り響き、ぴたりとカインの前で止まる。
「・・・っ!」
LD・・・・LD・・・・ッ。カインは心の中で自分のリーダーの名前をつぶやく。
「・・・・・カイン」
「は?」
アロイスが膝を折り、カインの頬に手を添えた。
「・・・・お前、今までどこにいた・・・生きていたならば、何故、私・・・俺のところにまっすぐに帰らなかった?」
覗き込むような視線でそういわれた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・ええと、君と僕、どこか出会いましたか?」
しかし、表情とか、変えない後かないのが薄気味悪いな。アロイスは驚いた表情をしたがすぐに氷のように表情を引き締めた。
「・・・貴様・・・」
「ひっ」
「ふざけるな!!私がどれだけ心配したか!それを貴様は!」
胸ぐらをつかまれた。
「知らないよ、君はつまりどこかの国の兵士だろ!!僕が知るわけないだろ!助けてくれたのはありがたいけど、わけわからないこというな!」
カインはアロイスのてをかんだ。
「!!貴様!」
痛みを抑えながら、立ち上がる。
「オイ・・・ッ」
「近づくな、バカが!」
「カイン!!」
「!?」
カインは目を大きく開けた。
アロイスが懐に飛び込んで、未曾有地を強打したからだ。
ずるる、と崩れ落ちる。アロイスはタイルの上に倒れそうになったカインの体を抱き上げる。
「・・・カイン」
「・・・・帰ろう、私たちの・・・お前の家へ」
「やっと、会えた・・・・・」
「もう、大丈夫だ、怖いものは俺が破壊してやる」
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