第22話ゴットフリートの誤算


「ベルつこう、訓練、お願いします!!」
「新しく入る・・・・ええと、レイラ・バートレット准尉だったか」
「はい!!よろしくお願いします!」
「てだれのMS乗りだと聞いていたが、・・・・何の訓練だ」
「アロイス、相手にしなくて言い」
「ゴットフリート」


「無人島が多いですね」
「ルブラン、体調はよさそうだな」
「ええ、何とか」


「・・・・・LD、・・・お前、女性だったのか」
「違うぞ、シン・アスカ。私はシェリル・ルブランのナチュラル体だ、私のオリジナルはプラントにいる。私はエキドナだ」
「・・・・エキドナが、LDだったのか」
「私は代理だ」


                   2
驚いたようにゴットフリートは顔を隠して、塩水で濡れたシェリルを見た。
「・・・・だれですか?」
シェリルはきょとんとゴットフリートを見る。シンは銃を向けたまま、戸惑っていた。



レンはマリカの家にのしかかっていた。
「・・・・・ええと」
「・・・・・・」
なぜか、その表情には緊張感がない。



「・・・・」
「・・・・」
「ええと、ティーア、アロイス、飯探しに行こうよ」
カインは困っていた。



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「レンがマリカ女王と・・はわわ、どうしましょう」
「何言ってるんだ、貴様は」


「救援をよこすにもこの辺りはちょうどザフトと地球統合組織の中間地帯なのよね」
「ふむ・・・」
ルナマリアとLDはこの辺一体の地図を仲間と共に見ていた。



「ええと、じゃあ、紹介するな。こちら、アロイス・ベルツ。アドヴァキエル帝国の軍人で、・・・友人」
「アロイス、こっちはティーア・ブリュール、僕の同僚で僕の婚約者」
「は、権力主義の犬ね、帝国主義の人殺しの」
「ああ、偽善者でご都合主義の革命家か、ロール頭。男をだますのがミスリルの教育か」
「・・・・・・だから、何でけんか腰なんだよ」


「テント、張りましたよ、マリカ女王」
「・・・」
「あの?」
「さっきから女王をつけるのね。ちょっと離れただけなのに、他人行儀」
「え、あ、・・・・マリカ」
「何?」
年上の女性は難しい。
「果実を採ってきったので食べませんか」
「食べさせてくれるわよね?」



                4
「体調、アレはまさかライムグリーンの・・・・死神です!!」
「バカな、何故、この場所がばれた!!」
「近くにネオミネルバがいます、応援を!!」
「頼む!!」


「別方向から識別番号が違うMSが・・・」
「これは!!」
「アドヴァキエル王国のMSです!!」



「雑魚だったな」
「隊長、はやいっすね、いつもより」
「あれだよ、用事が急に流れたから」
「ああ、隊長、ブラコンだから」
「お前ら、何か言ったか?」


ラクスは艦内で沈黙していた。


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「レンは優しくて格好良くてお調子者で、年上の女性が好きでドジでしっかりナナモノのようで抜けていて、それでいて神秘的でこっちの気持ちに気付かなくて、私のMS乗りとしての実力のみを慕っていて、離すように慣れたんですけど、ただの上司とか見ていなくて」
「・・・・そんな男のどこがいいんだ」


ざわついた。
滝の中で水浴びをしているマリカと巌と岩の間で距離をとっていたレンは急に背筋が冷たくなった。長い黒髪をかきわけ、美しい曲線を青空の下、さらしていた。
「寒気?」
「あら?どうしましたの?」
「いや・・・」


「おー、新種、新種」
「ちょっと、何がいるのかわからないのに、先に行かないでよ」
たぷんたぷんと巨乳をゆらしながら、ティーアガ制服を脱いで、したのシャツを絞った状態でしばりながら、カインのきゃっきゃっとする背中を追いかけた。
「だって、この蝶、なかなか見ない種類だよ。これは今、捕獲しないと」
爽やかで純粋な笑顔だ。あははという声さえ聞こえる気がする。


「何故、脱ぎだす?」
「え?だって、風邪引きますし」
「女性が男の前でそんな」
「あら、貴方、私を襲う気ですか」
「だれガだ!!」


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仮面は剥がれ落ちた。薄暗い空間で、ぎらついた目が輝く。鏡に映し出されたのはエキドナではない。
アレク・橘・フリューゲルだった。しかし、学園にいた時のような陽気さはその表情にはない。


「食べられるかしら?」とティーアは気味の悪い色やピンク色のフルーツや卵を持っていた。
「僕のは、まァ食べられると思うけど」と頬に飛び散った血がつきながら、イノシシの喉元が引き裂かれた死骸を背負いながら、カインは立っていた。
「・・・・・先に聞いておくが、試食係はだれなんだ?」
嫌な予感しかしないのは何故だろう。
「私はしないわよ、この美しい私に腹下しなんてにあわないもの」
ポーズをとりながら、ティーアがキラキラしながらそういった。
「手が汚れるのもいやだから、あんた達で何とかしてよ」
「お前・・・」
ぴしり、とアロイスの顔がゆがむ。
「何?私に口出しする気?貴方、何様?」
「・・・・どうする」



「よかった、ドレイクガンダム、機動で着そうだ」
「・・・でも、明日までは動かない方が宜しいんじゃなくて?まだ周囲には敵部隊も潜んでいるのでしょう」
「大丈夫です、明日まで俺がマリカを守るので」
「レン・・・」
「え、あの・・・、ちかいのですが」
「駄目?」
「あ、あの・・・」
「やっと、あのお姉さんの目から逃げれたのでしょう」
「そ、それは・・・え、あ・・・・」
「レン、私は・・・・」
「ちょ、ちょ、近い、近い。ぼく達は分かれたじゃないですか」
レンはずるると逃げた。
「それにマリカはだんながいるでしょうが」
ドレイクガンダムの足に手を預け、レンに迫る。
「男として、今、決断見せて。私をどうしたいか」
「・・・・まだ、16歳なのですが」



「・・・・・親がつけただと」
女性の気配がした。淡い色の長い髪からは白い肌が見えるのが、背中のある部分がえぐれていた。
「ええ、私が悪いことをしたからオシオキだと」
闇のにおいがした。そこには先ほどの少女らしさはなく、ザフトの軍人としての横顔がある。
「それがコーディネーターというのか」
「・・・・」


「ふーっ、おいしかった」
「そうね、カイン、料理の腕、上達したんじゃない?」
人を殺す時の速さのようなスピードでフルーツを切り刻みながら、ゆるい笑みを浮かべて、カインは照れくさそうにする。
「ちょっと、こっちで食べなさいよ」
「・・・一人にしてくれ」
アロイスはむすっとして、魚を食べていた。
「暗い奴ね」
「ビタミン足らないだけだろ」とカインは葉っぱの上にフルーツを置いて、ティーアに差し出して、笑みを浮かべた。人ナッっこい笑みだ。
「はい」
ティーアはうっとなった。
「食べないの?」
「・・・食べる」
素直にティーアが受け取り、確認すると、カインはアロイスのもとに向かい、はい、と差し出す。
「はい」
「・・・ああ」
冷たい表情のまま、受け取る。
カインが横に座る。
「敵だから、ティーアが苦手か?」
数秒、確認するようにアロイスがカインを見る。
「・・・いや」
視線をそらす。
「?」
「恋人同士だろう、俺が邪魔してはいけないと」
「へえ、気遣いできるんだ」
「・・・カイン、・・・そのあの女・・・ティーアともう・・・婚約者ということは寝たのか?」
「寝た?ティーアとは別の部屋だからそれはないんじゃないか、仕事先で同じ空間だけど。寝てはいないよ、ティーア、神経質で枕を他の人が使うのはいやだろうし」
「そうじゃない・・・交わったのかと聞いている」
「まじ?・・ええと、ああ。確認してくる。アロイス、ちょっと、まって」
「は?カイン、確認って」
カインが立ち上がり、スタスタとティーアの元へ向う。
「ティーア、アロイスが僕とティーアが組み合いをしたかどうか知りたいって。僕とティーア、交わってないよね?」
ティーアの顔が赤くなる。
「バカ!」
「え?」
「死ね!カインのアホ!!」
叩かれた。


「・・駄目だって。よくわからないけど質問間違えたみたいだ」
「・・・・謝れ」



漆黒の闇に包まれ、寝ることになった。
「ティーア、機嫌直してよ」
「煩い、無神経」
ティーアはうずくまっていた。
「困ったな、・・・ティーア、じゃあ、何でもするからさ、機嫌直してよ」
「いや」
「アロイス」
「・・・俺は知らん」
アロイスはさっさと横になった。
「・・・ティーア、困るよ、怒ってばかりじゃさ。僕は君の怒る顔より笑ったり、いつもみたいに男前で格好いいティーアの方がすきなんだよ」
「!?」
ぴたとアロイスの動きが止まる。ティーアもぴくりと動く。
「駄目なんだ・・・おやすみなさい」
しゅん、とカインはうなだれて、下がっていった。
「待ちなさい」
カインの服のすそをつかんできた。
「ティーア」
「身体が寒いの・・・、命令よ、貴方で暖めなさい」
「貴様、何を言っている」
「貴方に関係ないでしょ、カイン」
「暖める・・・母鳥みたいに?」
「コミュニケーションよ、異性同士の。意味はわかるでしょう。昼間の話はそういうことでしょう。女の子から誘ってるんだから空気を呼んでよ。・・・・す、少しだけなら、触らせてあげてもいいわ。・・・よく考えたら、カインも男だものね、私みたいな美人が彼女なら、凄く普通なことよね、彼女として我慢させてもいけないわよね」
「ティーア?」
「私、カインのこと、か、可愛いとは思ってるし、・・・・そのできるだけ、がんばるから、丁寧に優しくよ」
ティーアが腕を引っ張り、胸を押し付ける。
「ティーア、腕が痛いんだけど」
「言うことを聞きなさい・・・・・。カインはお子様だから私が最初はリードしてあげるわよ。・・・あんたは朝までここで待ってなさい」
アロイスの顔が青くなる。
「貴様・・・」
「行きましょう」
わざわざ森の中で睡眠をとるというんだろうか。逆に疲れそうなのにな。
「???ええと、じゃあ、アロイス、行って来る。おやすみ」
ぎゅう、とティーアがカインに抱きついた。
「ティーア、胸が肘に当たって締め付けるんだけど。これからすることって、昼間の組み合い?」
「そうよ」
近接戦か、ティーアはスピードは速いし、勝てるんだろうか。運動して、並んで寝るのか。明日は救援来るし。
「ええと、適度でお願いします、野外の鍛錬は初めてなので。僕も疲れさせないようにするので」
「・・・マッ、カインのくせに。・・・望むところよ」
「・・・・・・ちょっと、待てぇぇ!!」





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「テロで家族を失った、そんな時へいかが我が家に復讐の機会を与えてくださった」
「・・・殲滅したの?」
「ああ、家族は失ったが、その代わり、生涯の親友と我が家の誇りは守られた。その時、両親に誓った。私がアドヴァキエルを守ると」
その瞳には、一点の曇りはない。
「私と同じね・・・・。私も守りたいものがあるわ」
「守りたいものならば、俺にもアル」
「だが、そのためには・・・・」
「・・・・」
ゴットフリートとの話の中で、シェリルは改めて自覚する。
・・・・・そうか、私は彼を。
レン・ナラ・アスタール、彼がすきなんだ。
頬に朱が差す。
「どうした?」
「いえ・・・」
シェリルは女神のように誇らしげにゴットフリートに微笑んだ。


アロイスが倒れた。
「・・・・・風邪ね。急に環境が変わったのが原因かしら」
「とりあえず、水を汲んでくる」
「お願い」
シートの上でアロイスはいきを乱して、顔を赤くしていた。
「・・・・・っ」


肩にタオルをかけながら、家族の写真が入ったロケットを見た。ゴットフリートは既に眠りに入っていた。
「お母様・・・・私、貴方と同じように、好きな人を守ります」
空には星空が広がっていた。


シートの上で、レンは固まっていた。その状態のまま、どさどさとマリカはドレスを脱いでいた。下着が見え、軽装となると改めてレンに抱きついてきた。
「レン・・・私をどう思う?」
「~~っ」
マリカの体の感触が伝わってくる。
「待った」
「何?」
「俺はマリカ・・女王陛下としない」
「私じゃ駄目って事?」
「正直、俺は・・絵と、男だから、その・・・したいです。・・・・でも、ええと、だから、マリカがすきとわかるまではしたくないです。このまま感情に流されたら、暴力だ。だから、マリカ、お願いです。俺はちゃんとしたいんです」
マリカは考え込んだ。
「わかったわ」
マリカがゆっくりと体を離す。
「・・・それじゃ」
マリカが目を閉じる。
「私と約束のキスを」
「え・・・」
「次に合える時のために」
「・・・・はい」
2つの影が重なった。



アロイスガ目を冷めると朝を迎えていた。カインも起きていた。寝ぼけ眼だ。
「カイン、おはよう、眠れた?」
「うん・・・ティーア」
カインが手招きした。
「何?」
「・・・・おはよう」
チュー。
「アロイス、おはよう」
その光景に、アロイスは慌てて起き上がった。ティーアは固まっている。カインはふぁぁとあくびを出している。
「顔、洗ってくる」
「カイン、待ちなさい!!」
「何?」
「何、今の」
「挨拶だけど、何か変?」
まだ、ぼーっとしている。
「くく・・・、口にするのは・・・」
「挨拶の朝の挨拶だろ、変なティーア」



「・・・・私の言うこと、聞けないの」
「・・・・・ふん」
?何だ、この妙な雰囲気。カインは昨日までと違う状況に戸惑いいつつ、連絡を取りに言ったティーアを見送った。
「薬を飲もう」
「・・・断る」
「軍人だろ、薬くらい飲めるだろ」
「嫌いなんだ」
ぷい、と視線をそらした。
「いいからのみなよ」
「断固、断る」
カインはむっとなり、無理やり、アロイスに飲まそうとする。
「こら、止めろ」
「ちょっと、暴れないでよ」
「離せ・・・っ」
アロイスはじたばたと暴れ、カインはアロイスを押さえつける。
「貴様!」
「顔は赤いし、風邪治ってないんだろ、大人しくのみなよ」
「こらっ、膝を押さえて乗るな」
っむかっとなった。何だか、さっきのティーアがアロイスに取られたような気分になり、苛立ちをぶつけたくなった。確かにイケメンはむかつくな。
みんなの言うとおりだ。ティーアと仲良くして。僕のティーアなのに。
「固定しないと逃げるだろ、薬、ほらっ」
薬を乱暴にアロイスの口に押し込んで、飲ませた。容赦なく、乱暴にボトルから薬を全て抜き取り、放り込んでいく。
「んぅ・・・」
薬がアロイスの口に流れていく。
「ホラ、ゆっくりのんで」
ティーア、手出したら、駄目。カインの頭の中はそれだけだった。
「うう」
逃げようとするので指をきつく動かし、飲ませる。喉が動いた。このまま、全部飲ます。だらしないな、幼児みたいに唾液を出して。
「男のクセに弱音出すな」
暴れていたアロイスの手足がやがてゆっくりしていくがカインは気づかなかった。
「ぅ・・・」
カインは薬が全て自分の手からなくなったのを確認すると、手を口から抜き取った。
「く・・・」
ちょっと、気が済んだ。すっきりだ。
「ん?」
アロイスはけほけほとしていた。
「全部、のんだみたいだね、アレ、何?そんなに苦しかった?」
「・・・・・最悪だ」
「飲まない君が悪いだろ」
カインは立ち上がり、スタスタと歩き出す。
「ベルツ、昨日から思ってたけどさすがは実の兄弟だな、フローが男に変身したみたいだ。ティーア、迎えに行こうっと」
「え?」
すぐ近くの木にアロイスが手を置いた。
「何、体調悪いのに動けるの?」
「カイン・・・・今のはどういう意味だ」
「何?へんなことを言ったか」
ぐぐ、とアロイスがカインに近づいてくる。とん、と背中が木の幹に当たる。カインはきょとんとした表情だ。
「アロイス・ベルツのの実の妹はフロレンティア、そうだろ。LDから聞いた」
ガタァァン。

 「え?」
「ん?」
「・・・・き。き・・・きさま・・・」


暴れまわるゴットフリートに、カインがティーアとレンと合っていた。
パン、パン。
銃弾が飛び回る。看板なので避けながら。
「あの人、脳の病気だから、友達が心配したみたい」
「健康そうに見えるけど」
「ってか、俺ら初対面の敵同士だよな?」
その時、轟音が鳴り響いた。



カインを除くティーア、レン、アロイスはサーッと体から血の気が引いていくのがわかった。
「地球統合組織の死神か」
MSから一人の軍人が降りてきた。レンにも緊張感がはしる。カインはのんきに縛り上げられたと後ろの方で言っている。
「その紋章はアドヴァキエルに、こっちはザフトか。何だ、戦争を始めたと聞いていたが、アレはガセか?」
帽子を被った三つ編の少女が黄金の瞳をヒューイに向けた。
「違いますですよ、ヒューイ君」
「隊長だ」
カッカッ
「不幸でもあったか?何だ、この薄気味悪い髪の色は?若白髪か」
ヒューイは乱暴にアロイスの髪を掴んだ。
「・・・・っ」
「おい、乱暴は」
「止めなさいよ!」
「貴様・・・」
「女みたいな白い顔しやがって、これでよく軍人が務まるな」
「離せ・・・っ」

「俺に命令するな、コーディネーターの分際で」
ヒューイがアロイスを殴ろうとした時、レンが止めに入る。
「離せ、何のつもりだ」
「暴力はいけない・・・」
「離せ」
「ちょっと!!」
「止めろといっている」
レンの瞳が鋭く尖る。ヒューイの動きが一瞬止まる。
「まーまー、皆落ち着いて、喧嘩は良くないって」
床を這いずり回りながら、カインが前に出る。気の荒い連中がカインを殴るけるをした。
「黙っていろ、ガキが」
銃が向けられる。アロイスははっとなった。
「止めろ!!そいつに怪我をさせたら俺が許さない!!」
「黙れ、コーディネーター野郎!!」
「こいつに傷をつけたら何だって!?」
ぐいと片手でレスラーのような男に持ち上げられ、痛みがカインに走る。銃口がカインに向けられる。
「おい、そいつを俺のところに連れて来い」
「へ?へえ」
カインはヒューイの前に出される。じーっとみられる。
「あ、あの?」
「・・・なんだ、貴様か。おい、お前ら、そいつらは牢にでもぶち込め、俺は部屋にこいつを連れて行く」
「ちょっと、カインをどうする気?」
「煩い女だ、俺が弟と食事を取るのがおかしいか?」
「は?弟?」
「え?僕、背が低い兄はいないよ」
「黙れ」
「俺のフルネームはヒューイ・レーフニング。本名はヒューイ・ブルークォーツ。こいつの兄だ」
「さて、行くぞ、ニンゲン兵器。貴様に我が部隊の人間用の餌をくれてやろう」
「え?え?」
「あーっ、疲れた、疲れた」


血のように真っ赤に染め上がったソラノしたでは穏やかな波があった。キラの表情は真っ青だ。
「・・・・・これくらいで、動揺なさるなんて、スーパーコーディネーターも大したことありませんね」
岩の間からザフトの軍服をきたリヴとレンが姿を現す。高貴でありながら張り詰めた表情はフレイ・アルスターに恐ろしいほど、似ていた。


「シン、お前がやっていることは世界を混乱させるものだ。恐怖では世界は平和にならない。新たな悲劇を招くだけだ。お前は、仮面の男・・・あのLDにだまされているんだ」
前を歩くシンの動きが止まる。
「変わっていませんね、アスラン隊長は」
「シン、心配してるんだ」
「わかっています。ですが、自分は貴方と違う。正式にザフトを辞めて、今の道を選んだ。地球連合や地球統合組織をただ亡ぼそうとは思っていませんよ」



「貴方は何もわかっていないんですわね、ラクス・クライン」
「・・・・!!」
その気迫にラクスやマリュー、フラガは押されそうになる。
「下手な慈愛ほど迷惑なものはありませんわ」



                     2
エリザベートや艦長、シェリルの策が地球連合の無敵艦隊を追い詰めていく。


「この策略、微笑みの魔女か」
「あの大会社の・・・コーディネーターについたというのは本当だったんだな」



「・・・議長、任務とは?」
「キラ・ヤマトの居場所がわかりました。レン、秘書官リヴと共に彼を捕まえなさい」
「はっ」



                      3
シェリルの機体を見た瞬間、悲鳴が地球連合のMSが鳴り響く。
「ザフトの赤い死神だ・・・!!」
「死の女神の使いめ!!」
「黄金のワルキューレめ!!」



「エリアル、私達、いいコンビね」
「うまくいきすぎなのが気になりますが」
「レンがいない以上」
「がんばるしかないわね」


その時、アカツキとオーブの艦隊が現れた。


                  4
「見つけたぞ」
「・・・・・君は」
「言わなくても、ザフトの軍人を殺してきたクラインの人形ならわかるだろ」
アレンの瞳は鋭い。



「ラクス議長のポスター、ハルなんて、リヴ姉らしいな。えげつねえ」
「行きましょう」
「ああ」




「・・・・鎮圧したのか、早いな、LD」
「思ったより粘られたがな」
「さすが天才パイロット」
「行くぞ、アウル」



                    5
「廃棄された第13皇子か・・・・母上の皇妃はアテナ妃か。妹姫と共にクーデターに遭い、ブルーコスモスのテロ事件に関与した罪でスカンジナビア王国所有の孤島内の施設で毒殺されたか」
ルカ・ハーシェルのハッキングでサイは、エリザベートの過去を知った。
「・・・・死体はどうなったの」
「フロー」
「記録では内々に処理したってあるけど」



爆弾が仕掛けられた学園の中で瓦礫の中、アレクは倒れていた。
「う・・・」
周りにはだれもいない。形態が鳴り響いた。そんな時だ。ブーツの音が鳴り響いたのは。
LDだった。
「休日は終了です、殿下」
シェリルに瓜二つの暗い瞳の少女。
「エキドナ・・・」



「・・・・そうか、ヴェータが。しばらくは17らしい生活が出来ると思ったのに」
飛行機の中で傷口を押さえながら、アレクはエキドナに言った。
「エキ度ナ、妹も一緒に」
「駄目よ、ミスリルは貴方でなければ。地球連合の鬼姫だって、そろそろ代理だと感づいているわ」
「カガリ代表が代表でいる間は大丈夫と思ったのに、俺は皇子なんか忘れられると思ったのに」
「共犯者のエリザヴェータは許さないわ。あの女、殿下にまで色目をかけて」
「きついな、君は」


                     6
「だぁれ?」
宮殿の奥の奥にないていた皇女エリザヴェータの前に、迷い込んだレンが現れる。エリザヴェータはMSのパーツで創った美しい細工が施されたオルゴールつきの懐中時計を大事そうに持っていた。



「旨いか?」
「おいしいです・・・・」
「隊長、その、もう少し離れた方が」
「何故だ」
「弟さんも食べにくいかと」
「問題があるのか?」


「妹、よくわかったね。ティーア、行くよ」

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