三文風信

三文風信

2010.05.19
XML

カテゴリ: カテゴリ未分類


この雲が通り過ぎる頃、父の十何年目かの命日がくる。

どんな状態でもよかったから、生きていてほしかった。
話ができなくとも、目が合わなくとも。

別れの時に、ちゃんと言えたありがとうの言葉。

後はよく覚えていないけれど、
明け方、
病院から車を走らせた時の、雨上がりで、風が強かったことだけが記憶にある。

あの時と、よく似ている。
風が強くならなきゃいいけれど。

今年の命日は、お参りできなくてごめん。


幼い頃、父と近所の小川へホタルを見に行ったのを思い出した。

不規則な動きをする小さな灯火は、心を和ませる。
でも、よく注意して。
横並びに二つ、同じ動きをするのは蛇の目だからな。
父の言葉が耳に残った。


つい先ほど、山里のお母さんからの電話。
今度、芋の苗の植え付けがあるよ。
うーん、娘の部活の都合がよくわからないわ。
そうだよね、じゃ、ホタルでも見においで。
たくさん出るんだよ。


独身時代のドライブ。
ホタルを見に行こうと誘われた。
小さな川沿いの空きスペース。
満点の星空に負けないぐらいの、ホタルの群れ。
ただ時間を忘れ、その中に漂っていたこともあったっけ。

ホタル好きは父親の影響。
自然を愛し、家族をこよなく愛した、
父はもういない。

またやってきた命日にあわせて、ホタルは今年も飛ぶだろう。









お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010.05.19 21:46:55コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: