Never be A Hopeless

Divorce-離婚-II

エスケープ

自宅に戻ると、とりあえずもう一度Rの携帯、そして家に電話をかけた。

が、やはり電話はつながらない。

当日は日曜日だったため、デビットの事務所に電話をするが、誰もでない。ワタシは手短に何が起こったかを留守番電話に残した。

かなりパニックになっていた。

こういう場合、いったいどこに助けを求めればいいのだろう?この出来事は誘拐として扱われるのだろうか?だけど、Rの義理父がいうには、面会のスケジュールが決まっていない限り、Rは合法的にロンロンを連れて行けるらしい。

ワタシはドキドキする心をなんとか鎮めながら、当時ロンロンのベビーシッターをしていた家族に相談した。
ベビーシッターの家族は、ワタシとロンロンにとって、今やアメリカの家族ともいえる存在。そしてそこのレナード、コニー夫婦はワタシの一番の理解者であり、協力者でもあった。(それは今でも続いている。彼らがいなかったら、ワタシとロンロンの人生はどんなに複雑になっていただろう...)


レナードはかつて少年裁判所に勤めていた事もあり、法的な手続きに割合詳しい。

レナードはワタシの話しを聞き終わると、やはりRの義理父の言う通り、面会スケジュールが決まっておらず、かつ離婚が成立していない以上、ロンロンの父親であるRにはロンロンを連れて行く権利があるだろう、と言った。しかし、ロンロンは別居後1年、ワタシとずっと暮らしており、また、自閉症である彼にとって学校に行けなくなるようにすることが、Rにとって有利に働くこともないんじゃないか、とも言った。

そして、おそらく何もしてはくれないだろうが、警察に連絡し、状況を説明しておくように、と言った。たとえ何もしてくれなくても、こういう出来事があった事を、公的な記録に残しておく事は、大切な事だから、と。


日本でも警察なんて電話した事ないのに、アメリカで911(日本でいう110番)する事になるとは...。

ワタシは出来るだけ冷静に、でも詳しく伝えるように、メモ紙を片手に生まれて初めて、警察へ緊急電話をした。


警察のオペレーターの反応は、かなりがっかりさせられるものだった。

要は、面会権に関する裁判所発行のペーパーがない限り、警察に法的にロンロンを取り戻す、執行権力はないとのこと。警察は、Rがロンロンを海外へ連れて行く可能性の有無を尋ねた。正直、全くその可能性がないとは言えなかったが、ワタシにはその可能性は限りなく0に近いと思われたので、その質問には『No』とだけこたえた。

警察も動いてはくれない。こうなったら、何としてでもロンロンを自力で連れ戻さなくては。

だれもR、Rが一緒に暮らしている女(日本人。詳しい話しは後日述懐しますわ)、そしてロンロンの住所を知らない。インターネット、電話局の番号案内を駆使して居場所を突き止めようとするが、全くらちがあかなかった。
こうなったら、ワタシに出来る事は一つだけ。

ワタシは、まるでストーカーのように、10分おきに、Rの携帯、そして自宅に電話をかけまくった。

それは、その後3日間続いた。




ロンロンが帰ってこなかった翌日の月曜日、デビッドの事務所で働く、リーと言う女弁護士が電話してきた。

リーはRに連絡を取り、どういうつもりか聞く、と言っていたがワタシにはRが電話に出るとは思えなかったし、結局この人たち(弁護士)には何も出来ないんだろうな、と期待していなかった。

まあ、リーも何度か電話して、メッセージを残したみたいだから、少しはRに対するプレッシャーになったのかもしれないけれども・・・。


そんな中、ワタシのRに対する電話でのハラスメント(自分で言ってしまった・・・)はひたすら続いた。朝は5時頃に目が覚め、すぐ電話。仕事中も、上司の目を盗んで、ひたすらかけ続け、夜は夜で、力つきるまでリダイアル攻撃を続けた。

ええ、ワタシ、しつこいんですよ。自慢にもならんが、ここまでやるかってくらい、やったと思います、この時ばかりは。

だって他には何も考えられなかった。本当に、Rの事を信用していなかったから、ロンロンを取り戻す事に必死だった。

そしてついに3日後の木曜日、ワタシのあまりのしつこさに我慢できなくなったんでしょうな、Rが電話に出た。

ワタシはとにかく、ロンロンの声を聞きたかった。まだ、おしゃべりの出来なかった彼だが、ワタシの声を聞かせるように、Rに頼んだ。Rはロンロンに電話を渡し、『マミーだよ』と、言ったのが聴こえた。

『ロンロン!元気にしてるの?マミーだよ!!』

ロンロンは言葉を発しなかったが、息づかいでそこに愛しの息子がいる事を確認した。とりあえずは元気そうでほっとした。

そして、Rに再び電話をかわり、ワタシはここぞとばかりにまくしたてた。

N:『あんたねえ、いったい何を考えてるの?日曜日って言ったら次の日曜日ってのが常識でしょう?あんたがそこにロンロンを閉じ込めておいて、学校にも行かせないって一体どういうつもりなの?』

R:『お前が俺に渡したメモには、何時の日曜日なんて書いてなかったじゃないか。おれは、しばらくロンロンを返すつもりはないよ。ロンロンは俺の息子でもあるんだ。俺が面倒見たっていいはずだよな。』

このド腐れ外道が...ロンロンを使って人をおちょくるのもいい加減にせい!!っちゅーねん!!!

N:『あっそう。あんたらがその気だったら、こっちにも考えがあるからね。あんたの彼女の親に、あんたたちがやっている事を全部ばらしてやるから。あんたの彼女の親、あんたが未だ結婚していて、そして彼女はそれを承知で日本からアメリカに、あんたと住むために移住して来た事も、ぜーんぶ話してやるから。覚悟しておく事だね。』

すると、Rはげらげら笑いながら、自分の彼女に向かって、

『hey。N(Rの彼女)。Neverbが君の日本の家族に電話して、僕たちの事全てばらすって言ってるよ。
Neverb。やりたきゃやれよ。誰がお前なんかの言う事を信じるもんか。』

そういうと、Rは一方的に電話を切った。

しかし、ワタシには勝算があった。

なぜなら、N(Rの彼女、日本人)は、Rの事を家族に紹介していたらしいが、奴が結婚している事、そして、不倫の状態にあるのに奴と一緒に住むために渡米している事を自分の家族にはひた隠しにし、それを親に知られる事をすごく恐れていた事をワタシは知っていた。(なぜ知っていたかは長くなるので省略)。だから、きっとこの脅しは奴らを揺さぶるのに十分だと思ったのだ。

案の定、最初の電話を切った後、10分も経っていなかったと思う。Rはワタシに電話をよこし、さっきとはうって変わった様子で、

『やっぱりロンロンはマミーに会えなくて寂しいみたいだ』

などとほざき、翌日、ロンロンを連れてくる事に同意したのだった。

(つづく)

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