ナ チ ュ ー ル

ナ チ ュ ー ル

秩序の構造


秩序の構造

一つの秩序は必然的に一つの思想的体系を要求する。秩序は支配する者にとって一つの自然であるが、被支配者にとっては巧まれたる体系に外ならない。

一つの体系なるものは集積せられた自覚に外ならないが、無数の自覚のうちの唯一無二なる自覚を意味するものではない。

一つの体系を支持するものは個々の自覚における撰択作用に外ならない。従って人は自らの執着以外の原因によって一つの体系を支持することは出来ない。

一つの秩序が着々と動きつつあるとき、一つの体系としての思想はそれに伴って動くものではない。思想の体系はそれが飽和点に到達するまでは決してその骨格を変えるものではない。

一つの秩序は下部構造によって動くのであって、上部構造はつねに均衡だけを欲するが如く反対に動かうとするものだ。下部構造は必然以外の動機によって動くものではない。

歴史はしばしば上部構造の歴史として描かれてきた。法制史は多くの部分を歴史の分野で占めているが、それは原因の分野を占めるものではなく、結果の分野を占めるものだ。

若し人間が動機によって動くものであるならば、歴史は動機の連鎖によって描かれるべきである。

歴史は人間が持っていると同じ数の欲望と動機とを持つものだ。

人間は若し何物かを欲するとすると、それは必ず必要であるものを欲することは明らかである。ところで或ものが必要であるといふことはそれほど解り易いことではない。必要は真に欠乏しているにしろ、或いはそうでないにしろ、欠乏の感覚に由るものであるように思はれる。それは言はば、均衡の欠如を充たすひとつの感覚である。

ところで我々は秩序といふものが一つの欠乏を基盤にした、他の必要のうへに構成されていることを、直かに知っている。それ故若し一つの必要の方向が他の必要の方向と逆でない限りは均衡に到達することは不可能である。歴史学の分野で国家又は、指導と従属の秩序が破られる諸条件はすべてこのことによって説明することが出来る。古典経済学における稀少性、搾取、交換、使用価値なる概念はすべてこのことの述語に外ならない。


吉本隆明全著作集 15  初期作品集より


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