人間仁科のブログ・八重山見聞録外伝

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 フランス中部、ヴザイという小さな村で俺はしばらく
居候暮らしをしていた。資金力がない奴が長旅をしよ
うとすると夜行バスやらヒッチハイクやらハードな移動
が続いて心はともかく身のほうはそれ相応に疲弊する
のであり、ヴザイでの居候先ロホタン家ではただひた
すらに疲労回復に努めることとなった。
 のうのうと昼前に起きていき昼食などを頂いた後、
歩いて一時間半ほどかかる近くの町までタバコを買い
に出かける。道すがら地平線まで続いているかの如き

こんなクソでかい畑を持ってる国に農業で太刀打ちでき
るわけないよなぁ。自給自足ってのはこういう国だから
言えるんだよ。うんうん」などと感想を漏らしつつ往復三
時間掛かってロホタン家に戻ってくると既に夕方であり、
しばしの一服タイムの後、今度は近所の酪農農家さん
のところへと向う。これはロホタン家で居候の俺に課せ
られた唯一の仕事であり、働くざる者食うべからずなの
であるわけだが、働くとは名ばかりの楽しい時間だった。
五リットルは入ると思われるでかい牛乳タンクを持参し、
搾りたての牛乳を入れてもらうのだ。搾乳機が搾り終え
るのを待つあいだ、牛乳をもらいに集まっている近所の

ス語だからほとんどわからないのであるが。
 居候先のロホタン家ではその牛乳を使った料理が多
いのであるが、これ、牛乳というよりは生クリームの如く
非常に濃厚な逸品であり、農業貧国日本ではまず口に
出来ないものである。ま、酪農やってる方ぐらいは飲め

とになってるもんね、我が国じゃ。
 で、フランスはサマータイム制を採用しているから、夏
場の日没時刻は午後10時頃であり、8時の夕食でもま
だ煌々たる夏の日差の中なのである。ロホタン家でもよ
く庭で夕食となったわけであるが、そこでいつも俺の隣に
いるのはロホタン家の主であり、ヨーロッパの絵本にでも
登場しそうな老農夫然とした老農夫ピエールその人だった。
ピエールには大嫌いな食べ物があって、それは米なので
ある。(つづく) 

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Last updated  2006.01.20 09:52:02
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