人間仁科のブログ・八重山見聞録外伝

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カテゴリ: パーソナル
例えば私が本を出したとする。

例え話であるから内容はどうでもいいのであるが、ま、どうして北海道から石垣島までわざわざ自転車こいでやってきたのかみたいな独白本だとしよう。出版の名義はあくまで仁科たかし個人だ。なれば本文には旅の理由やら旅のエピソードやら北海道での暮らしやら東京時代の思い出やらが長々と書き連なり、親兄弟や友人たちなんかにも触れることになる筈である。

で、色々と思いの丈を披瀝開陳せしめる中で、我が主張・我が人格・徳の有無・才能や能力・思想性などなどを補強もしくは裏付けるべく北海道の友人やら石垣島でお世話になってる人たちやら学生時代の恩師なんかに証言者として登場願うとしよう。【高校のときの仁科くんは既に窃盗放浪記という題名の長編小説を書いてました。話の中にはツバメ返しなんて万引き技が出てきたりして、ホントかよ!みたいに思いましたが、窃盗技の真偽のほどはともかく(笑)やはり当時から文筆の才能あふれるやつでしたよ。窃盗放浪記、すげぇ面白かったですね。それに彼はパンクバンドのボーカリストとしても特異な才能を披瀝してました。一度こんなことがあったんです。高3の夏休みに俺たちが企画したライブで彼は~】と、ま、そんな具合である。

無論、そこは仁科名義で出してる仁科の独白本であるから仁科に都合の悪いネタなんか載せはしない。高校時代の友達が私の人格を貶めるに相応しい実話を書いてきても、そんな原稿、速攻ボツである。であるから仮に10名の証言者がいたとして10名とも仁科絶賛、仁科肯定、仁科万歳、仁科サイコー、ブラボー、LOVE YOU!ってな事になるのであろうが、果たしてそのような提灯記事をそのまま、まっすぐに、疑念を挟むことなく読む方はいるのだろうか。

いるのである。これが。

世間の方々はどうやら『本を出すような人は作り話なんか書かない。仮に著者が作り話を載せようとしても出版社側がそれを了承する筈がない』ぐらいに思っているのである。どうやら。

でも了承するのである。出版社は。
無論、場合にも程度にも担当者にもよるだろう。でも基本了承である。それに、自叙伝を出すような人ほど話の三つや四つ五つ簡単に作ったり誇張したりチョー余裕でやらかすのである。

とは言え、それをデマとか作り話とか自作自演とか言ってしまうと聞こえも悪いし、書くほうも載せるほうもある種の罪悪感を覚えてしまうのでストレートな呼称は用いずに『演出』と言い慣わすことになる。


いまどきはセルフプロデュースなどと欧米風に呼びならわすようだが、要は自分に都合の悪いことは伏せ、隠し、見なかったことにしたり気付かなかったことにしたりして、反対意見や敵対する者や批判者の声は徹底的に排除し、てめぇの主張を裏付けることと補強してくれる情報ばかりを取捨選択して取り繕うわけだ。

この手法を用いれば不肖仁科たかしも聖人君子になったり素朴なナチュラリストに変貌を遂げたり、才気あふれるカリスマと化したり自由自在である。すごいことである。凄いし、ましてや私に多少の地位や名誉や財産、現金があれば尚更に演出は大掛かりとなり、著者サイドに都合よいセルフプロデュースに難色を示すような出版社は切り捨て、ひたすらなびき、擦り寄ってくる出版社や各種メディア、業界人著名人文化人なんかを重用すれば完璧だ。そう容易く自作自演と一般にバレはしない。

でも、もし仮に本を出すようなことがあっても私はそんなやりかたは絶対用いない。なぜならば、読む人が読めばそのような体裁は演出みえみえで、それだけでこちらの徳の低さを喝破されてしまうだろう。徳の低さをそのまま売りにするのはありだが、低い徳をさも高そうに見せるのは駄目である。ダメダメである。

まだしも文章のテクニックで高そうに見せるならともかく、自分で選んだ友人知人に都合のよい証言をさせて徳を高くみせるなんて手法はやっぱり恥ずかしい。少々格好も悪い。でもって、そのようにしてセルフプロデュースされた虚像の上っ面が剥がれる時は呆気ないほど一瞬である、たいていの場合。どうせセルフプロデュースするなら容易くは壊れない虚像にしておかないと枕を高くして眠ることも出来ない。とは言え、間違って私が本業で有名になることがあろうとも自叙伝など 間違っても 出さないわけだが。

自叙伝を出すってことは自分自身を売り物にすることに他ならず、つまりそれはタレント志望の強烈なる発露である。タレント志望が悪いなんて言うつもりは寸毫なくも、我が心の内にタレント志望の一片たりとも持ち合わせてなくば肯定も叶わないのである。私的には。



で、なんでこんな事を書くのかって?

昨今こんな手合いの駄本が多いよなぁと少々辟易し、それを読んだ方々が又喜んで他人に薦めているのを見るにつけ、程度こそ低いが、虚像を世に広めるとはある種の社会的害悪であるよなぁと軽く憤慨もするからである。








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Last updated  2008.10.06 08:50:20
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