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月臣邸
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2005.12.26
が…がむばりゅ!!!
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と言われて渡された、1枚のチケット。
ナイトメアのライブチケット――公演日は、明後日。
最近出来た、隠れ名店って感じの喫茶店の中で。
キョトンとして、目の前で苺パフェを頬張る黄泉を見つめた。
「…ん。じゃ、行く」
「ぇへへ。あ、終わった後楽屋来てね! 一緒に帰ろっv」
生クリームを口端につけて、ニコッと微笑む黄泉が本当に可愛かった。
…ぶっちゃけ、初めてだ。ナイトメアのライブに行くのは。
想像しただけでゾクゾクした。
ちょっと、変態っぽいけど。
汗を流し、掠れた高い声をマイクにぶつけて。
ライブ中露出して肌や胸板を出すってのは、SHOXXとかで見たから知ってる。
…ヤベーって。ライブ中に勃っちゃうかも。
「…流鬼ぃ、なんでニヤけてるのぉ?」
「……はっ。ゃ、なんでもねぇなんでもねぇ」
不思議そうに首を傾げて見上げてくる黄泉に、俺は苦笑して手を振った。
「変な流鬼ぃー…。はい、アーン」
クスクス笑って、スプーンで一口分掬ったパフェを俺に差し出してくる黄泉。
ちょっとの沈黙が流れ…俺は、恥ずかしさを打ち消してパフェを口に含んだ。
なのに、な。
**********
「うっわ…すっげぇ、人多…」
入場時間は5時なんだけど、今まだ4時だってのに死ぬほど客が並んでる。
すごく小さめなライブハウス。本当にこれだけの人数が入るんだろうか…と不安になった。
…すっげぇな、このバンギャ達。ありえねぇ。
黄泉コスしてる奴らも沢山いるけど…似てねぇ。バカ。デブ。
可愛くなって細くなって白くなって小さくなって、黄泉の双子と間違われるくらい似た容姿に生まれ変わってきてからコスしやがれコノヤロー。(言いすぎです
整理番号は早めだけど…客が女ばっかなので、一番後ろに並んだ。
後ろには、チケットが買えなかったのだろうか。コスだけして、ライブハウスから音漏れしている音を聴いてる子たちも何人かいた。
「…ハァ…」
並んでる時が、いっちばん長いんだよな。
早く始まんねーかなぁ…。
と上の空で思っていると。
「…あのっ。流鬼さん、ですか…?」
身長が小さめな、目のパッチリした女の子に声をかけられた。
「……あー、はい。そうですけど」
まぁ違うっつっても何がある訳でもねぇし…。
イエスを答えて、その子から目を逸らした。
「あ、サイン…っは色紙がないんで、握手してもらえませんか…っ!?」
…あーあ、顔真っ赤。
震える手を差し出されたけど――
後ろら辺にいる客達は、ジロジロとこっちを見ている。
この子1人に握手なんざしたら、もしかしたら沢山握手強請ってくる奴いるかもしんねぇしなー…
それに何より。
…黄泉以外に、触りたくない 気が して。
「…悪り。君だけ特別扱い出来ねぇから」
「……そう…ですか」
シュン、と落ち込んだように俯く女の子。
…居心地悪ぃな、クソ…。
ハァ、と一息ついて。
俺はポケットに手を突っ込み、その場から離れた。
辺りを一周して戻ってくると、もう5時で。
整理番号関係ない時間。
客がゾロゾロと入場していく姿が目に映った。
俺は列の最後尾について、ライブ会場へと上っていく。
「Σひ、人多…ッ」
バンドやっててライブ慣れしてる俺でさえ、ビクついてしまうこの人数。
ライブ会場へ入ると、あり得ないくらいの人口密度で。
皆前列に行こうと一生懸命前に歩いていく。
「……」
汗を一筋掻きつつ、俺はドリンクを貰って割と空いている後ろに位置し、壁に凭れてステージを見た。
きゃ、客が多くてドラムセットさえも見えねぇ…。
すると。
影アナが、始まった。
『はぁい。こんにちわー! 黄泉です。』
ビクッと体が震える。
うわー、黄泉の声だ。
神経を集中させて声を一生懸命聞こうとするが――
バンギャ共の「きゃーv」という黄色い声が煩くて全然聞こえねぇ…。
途切れ途切れに聞こえる黄泉の高い声。
ずず、とドリンクを啜りながらなんとか聞いてると――
『キャッ!? ちょ、やめ…瑠樺さんッ』
「!?」
な、なに…今の声。
甲高い嬌声のような声が聞こえたかと思うと、またもやバンギャ達の(さっきよりも断然大きい)「きゃー!!v」という声に邪魔をされた。
なんだてめぇら。全員腐女子かコラ。
やがて全然聞こえなくなった影アナが終わり、客達の声も落ち着いた頃。
イライラが止まらなくて、持っていたドリンクのプラスチック製のカップをバキッと割ってしまった。
あー…畜生、イライラする。なんだってんだ。瑠樺ってアレだろ、ドラムの奴だろ。
ライブ前に何やってんですかコノヤロー、しかも俺が来てるってわかってんのに。
ハァ…、と大きな溜息をついた瞬間。
パッ。と。
ライトが、消えた。
刹那、ドドド…と音が聞こえるほどに、客が一斉に前に走りこんだ。
すっげぇギュウギュウだなおい…大丈夫か。
後ろと前に差が出来る程になったころ、SEが流れてきた。
あ…もしかしてコレ、黄泉から俺が見えるかもしんねぇな。
そして、ライトに照らされて。
ドラム、ベース、ギター…そして、黄泉が出てきた。
キャー、と客の歓声が鳴る中、黄泉はマイクを握り締めお立ち台に立ち――唄い始めた。
…上手い、よな。
響く声が堪らなく全身に行き渡り、俺の身体を痺れさせる。
”音楽”が、これほど気持ち良いなんて。
やがて煽り曲に入ってきて、俺も汗を掻き始めた。
目を細めて黄泉の表情を見やると…黄泉も、汗を掻いていて、暑そうに衣装の肩部分を肌蹴させていた。
ああ! 黄泉! そんなっこんな公の場で露出するんじゃありません! 勿体無い!(…)
あ、この曲知ってる。
流れてきた音楽が知ってる歌で、思わず口ずさんだ。
瞬間、黄泉と。目が合った、気がした。
大体1時間半以上は経っただろうか。
MCも終わり、ラストの曲に差し掛かった。
――にしても…聞いた話では、ナイトメアのライブってすっげぇメンバー達がイチャついてるって聞いたんだけどな。
キスもするらしいし抱き合うらしいし…。
だけど、今日はそんなのが一切無い。中にはつまらなそうにしている客もいる。
ま、俺にとっちゃ万々歳だけどよ――…。
やがて、アンコールに差し掛かって。
最後はめちゃくちゃ煽り曲で締めて、黄泉はほぼ半裸になっていた。
汗で濡れた髪がキラキラとライトに照らされて。
潤いを持った肌が艶めいて、思わず目を細めた。
最後、ありがとー!などと叫んでステージ上から去っていくメンバー達。
フゥ…、と溜息をひとつつく。
感想は、すっげぇよかった。
全身汗でびっしょりで。暑くて、楽しくて凄くて――
とっても、気持ちが良かった。
ゾロゾロと客が出口に向かい、ライブ会場が段々と空いてきた。
「…っと」
ふぃっと周りを見回し、スタッフに駆け寄った。
楽屋ってどこ? と聞くと、快く教えてくれた。
もう辺りはすっかり暗くて。
窓から夜空を覗くと、月が綺麗に光っていた。
…黄泉に、逢いたい。
抱きしめたい。
さっきの影アナ何? とか、聞く気は無いから。
ただ、凄かったって。
言いたい。
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Last updated 2005.12.26 16:35:53
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