鍋・フライパンあれこれ美味
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
000000
ホーム
|
日記
|
プロフィール
【フォローする】
【ログイン】
第22章
心の戦いを制する者
―――ゼロ……聞こえる?
頭の中に直接ユフィの声が響いた。どこか儚く、弱い声。
―――あぁ。
なんとなく、感覚でそれに応える。
―――……アリガト……ね。
その声はいつもの彼女らしくない声。ゼロの好きではない、出来ることならば、聞きたくない声。
―――お前だけを、死なせたり、しない。この戦いが、終わった後も、俺には、お前が、必要なんだ。
魔力の扱いに細心の注意を払っている所為か、ゼロの声は途切れ途切れだ。
―――……その気持ちは嬉しい。私も、ずっとゼロと一緒にいたいもん……。でも、無理しないでね。私だけの犠牲で勝てるなら、それに越したことはないから……。
ゼロ自身、非常に驚いた。ここまで彼女の決意が固かったことに。ここまで自己犠牲の精神があったことに。
―――ある!俺が、ムーンを倒せれば、それでいいんだ。……ユフィが、傷つくことなんか、ない……。
そして自分の情けなさに腹が立ってくる。自分にもっと力があれば、彼女が今危険な魔法を唱えることも、古代魔法を探しにいくことも、そもそも戦うこともなかったのだ。
ユフィはゼロの温かさに包まれる想いだった。ここまで自分を想ってくれる人がいる。自分の為に、危険を冒してまで自分を助けようとしてくれる人がいる。心のどこかで、もっと彼と生きていたいと思えてくる。
―――ゼロ……。ありがとう。
再び彼に感謝の言葉を告げる。その声は、ゼロの好きなユフィの声に近付いていた。
ムーンの魔法剣がもの凄い連撃で繰り出される。その攻撃のほぼ全てを、ヴァルクは見切り、防ぐ。連撃の合間に彼からも幾度か仕掛けている。
ユンティの力を借りていたとはいえ、依然にゼロを倒した過去を持つという事実は紛れも無い真実なのだ。
「流石、前に私が見込んだだけのことはあるわねん♪どうかしら、もう一度手を組まないかしらん?」
一度間合いを取り、ムーンがヴァルクに話しかける。
「お生憎様、アンタの思想は危険すぎる。アンタとゼロなら、俺はもう完璧にゼロ派だよ」
獰猛な野獣のそれと酷似したその眼光の中に、燃えるような彼の思いがあった。
「ゼロちゃんに……期待しすぎじゃないかしらん?ゼロちゃんは、別名“死神”と呼ばれるのを知っていないわけはないわよねん♪いつ貴方に死をもたらすか分からないわよん?」
揺さぶりをかけようとムーンがヴァルクの瞳を覗き込むように見つめる。常人ならばムーンの美貌の前に、簡単に折れてしまうだろうが、彼は一筋縄に折れるような者ではない。
「俺の夢は、ハーフエルフもヒューマノイドエルフも、平等に扱われる世界を築くこと。俺が死んだとしても、その夢は必ずアイツが叶えてくれるさ」
ヴァルクは、ほとんどまともに腹を割って話したこともないゼロを、心から信頼していた。
「どうしてそこまでゼロちゃんを信じられるのかしらん?」
「剣を交えた、剣士だけに分かり合える世界があるんだよ!」
今度はヴァルクから仕掛ける。
この問答のおかげで、残り1分といったところだろう。
多少の冒険をしても大丈夫だという気持ちが、彼の中にはあった。
しかし。
「私、興味ない敵には容赦ないのよん♪」
ムーンの瞳に危険な火が灯っていた。ボォっと、彼女の右手が光っている。
その意味に気づかず、ヴァルクは突貫する。
だがユンティは戦慄した。
―――ヴァルク!!おい!!!止まれぇぇぇぇ!!!!
悲痛な声が彼に届いたが、時既に遅し。
ベイト、セティ、シックスの3人が、ゼロたちの戦う屋上へとたどり着いた。
そして彼らは信じられないような、有り得ないような、無残な光景を見た。
「ヴァルクさん!!」
リンが目に涙を浮かべ、叫ぶ。
彼の胸元に、ムーンの右腕が突き刺ささり、彼の胸を貫いていた。
「な……んだと……」
自分はムーンへの突撃をしたはずだった。自分の剣を彼女に突き出したはずだった。
全力で、彼女を殺さんとする勢いだったはずだ。
だが自分の視界から彼女が消えたと思った瞬間。彼女は自分の懐に潜り込み、右手を突き出したのだ。
その右腕が、あろうことか自分の胸を貫いている。
「サヨナラよん♪」
ヴァルクの胸から右腕を引き抜く。その手を開き、握られていた、赤く染まっている何かが床に落ちた。
それは、骨のようだ。あろうことか彼の胸を貫いた時、同時に彼の胸骨を砕いたのだ。常識では有り得ない荒業である。
小さな悪戯をしたかのように、不敵な笑みを浮かべながら、赤く染まった右手の血を軽く舐め取る。
―――ヴァルク!!ヴァルク!!
薄れていく意識の中、泣き叫ぶ幼い声が頭に響いた。
ユンティの顔とコトブキの顔が、頭の中で混同する。
―――わりぃ……俺、ここまでみてぇだ……。
カラン
乾いた音をたてヴァルクの剣が床に落ちる。続いて、彼自身も倒れ伏す。赤い血溜りが広がる。
彼は自分の死を受け入れた。
―――コトブキ……お前は……しあわ……せ……に……。
そこで彼の意識は途絶え、彼の命の火が消えた。
同時、運命を共有する筈であったユンティもその存在が消えようとしていた。
―――ヘヘヘ……っくしょぅ……。ま……俺はアシモフ様の意志に背いた時点でこういう運命だったのかもな……。
薄れいく自分という存在。楽しかった記憶など、ほとんどない。強いてあげるならば、“ヴァルクが主だった”ことか。
―――アノン、先の行くぜ!お前は、ちゃんと役目果たしてから来いよ!
そう叫び、彼女という存在は完全に消えた。
アノンは、彼女という存在との記憶を、深く噛み締めた。
―――ユンティ……我が戦友よ。安らかに眠れ……。
「残念だけど、ゼロちゃんたちを護ることは出来なかったみたいねん♪」
ムーンがゼロたちの方へと向き直る。
だが彼女は突如としてユフィから発せられる多大な魔力を感じた。
「残念ですけど、間に合いましたよ」
ユフィがニコッと微笑んでムーンに告げる。そう、詠唱は終了したのである。後は発動させるだけ。
「私今、すっごく怒ってますから!!」
そして次の瞬間、その言葉、彼女の怒りと共に現れた眩い光が、ムーンを包み込んだ。
同時にユフィも自分という存在がどこか遠いところまで飛んでいってしまいそうな、それほどの魔力の消耗を感じた。アノンから魔力の供給を受けなければ、発動と同時に消滅していただろう。
―――命の恩人に、感謝……。そして、ナターシャよ、彼の魔法をもって、我が敵を滅ぼしたまえ……。
魔法を発動させながら、苦しそうなユフィをギュッとゼロが強く抱きしめた。
それだけの行為が、彼女という存在を確実に繋ぎ止めた。
一同は、ユフィの放った魔法を見つめていた。
「ここは、どこなのかしらん?」
ムーンは、見たことも無い空間に一人立っていた。
いや、立っているのは分からない。何故ならそこには地面がないのだから。
何も無い。真っ白いような、真っ黒いような、そんな曖昧な空間。
これこそ、真の孤独なのだろうか。
耳を澄ませば、背後の方から何かが聞こえる。
振り返ってみると、そこには懐かしい光景があった。
自分と最愛の兄ライトが、仲睦まじく遊んでいる幼い光景。
ムーンはその光景を懐かしそうに見つめた。つい、表情が緩む。
「これは、対象者の記憶を引き出す魔法なのかしらん?」
だが、あくまでこれは魔法の効果、自分は戦闘中であるということを忘れてはいないようだ。
その光景が終わると、次は貴族学校への入学式の光景が現れた。
懐かしい顔ぶれ。東の貴族で、この戦いで果てた者。自分が命を奪う原因を作ってしまった者。今、戦っている者。そんな顔ぶれの、幼い姿が、その光景の中には全てある。この中の何人が死に、何人が生きているだろうか。
続いて初めてゼロと出会ったときに感じた、彼の特異性、どこか他の者とは違う、自分と似たような、あらゆる面で超越した能力を彼から感じたのを思い出した。
彼だけは敵に回したくないと思っていた時期もある。
そんな懐かしい、貴族学校時代の光景が終わり、今度は血生臭い光景が現れた。
実の父を殺した時、実の父の胸にこの右手を突き刺した瞬間。北の王を殺した瞬間。気に食わない者は、次々と殺していったことを思い出す。
そして今、まだたった18年の人生の中で、自分は多くの命を奪ってきたのだと実感する。自分の手が、赤くないはずなのに、赤く血で染まっているように見える。
―――精神にダメージを与えるタイプなのねん……♪
だが、そんな事はすでに割り切っている。自分のやったことを後悔する気はサラサラない。
今さら何を言われようと、関係ない。
人殺しと言われても仕方が無い。否定はしない。
そんなことを考えていると、また違う光景が現れた。
それは最愛の兄ライトを、ゼロと戦うに相応しい戦士になるように“強化”したこと。
優しい彼に戦闘本能を植え付け、相当の実力を植え付け、今までの彼には無かった力を持たせた。
ムーンの行為に対して彼は何も言わなかった。だがどこか寂しそうな、哀しそうな目をしていたのは今でも頭の中に鮮明に残っている。
あの行為は、兄の気持ちを裏切ったのではないか。
兄は最後まで自分を信じてくれていたのに。自分は、兄に何ということをしてしまったのだ。
大好きだった兄の笑顔を壊してしまったのは、自分ではないのか。
どんなことでも割り切っていたはずなのに、心が痛む。
―――私が……兄様の気持ちを……裏切った……?兄様を、裏切った……?
―――そうだよムーン。お前は僕を裏切ったんだ。
居ないはずの兄の声がする。
ついに、最強にして、完璧な彼女の強さにヒビが入った。
―――私は……間違っていた……?
彼女の強固な意志が崩れた。
そこで彼女はこの空間から解放された。
「ユフィ。これはどういう魔法なんだ?どの型にも属さないようだが……」
ユフィの兄、シックスが代表して彼女に問う。
「この魔法は、神々の戦争の時魔法の祖、ナターシャが行使していた古代魔法の一種で、対象の脳に干渉し、記憶を引き出し、相手の精神を揺さぶる魔法だよ」
「なかなかえげつないですね」
彼女の説明を聞き、セティが相槌を打った。
「だが今回みたいな相手には有効な手段だね。正面突破は、被害が大きすぎる……」
ヴァルクの亡骸を一瞥し、ベイトが重々しくそう言った。
「少し悔しい話ですけどね」
リンが、自分の傷を睨みながらそう言った。
その会話を、ゼロは黙って聞いていたが、そっとユフィの耳元にこう呟いた。
「お前の命を懸けるなんて、もう二度と許さないからな」
その言葉に、ユフィは嬉しそうに、小さくゴメンと答える。お互いがお互いを信頼しきっているからこその、その会話。
―――ユフィ殿。私は、貴方を見くびっていたようだ。貴方に自分の命を懸けてまでゼロの手助けをしようと思う気持ちがあるとは知らなかった。以前貴方と口論してしまった時、私は貴方のことを知らな過ぎたようだ。そのことに対して、今ここで詫びよう。
アノンもユフィに対して発言する。アノンの中にあった、ゼロの愛を一身に受ける彼女への嫉妬は消えうせ、同じゼロを愛する者として見るようになっていた。
―――気にしないで。私も貴方も、ゼロを想う気持ちは一緒だから。同じ気持ちを持つ仲間として、これからもよろしくね。
ユフィが優しくそうアノンに言う。
―――あぁ、こちらこそ。
アノンは、表面上笑っていたが、どちらにせよ自分が残り僅かな命だということを、物憂げに自覚していた。
そんな雰囲気の中、ハッとユフィが顔を上げた。
「来るよ!」
ユフィが臨戦態勢を取り、皆もそれに合わせる。
光の中から現れたムーンは、先ほどまでとは雰囲気が変わっていた。
付け入る隙が無かった彼女のどこかに、隙があるように見える。
今まで見せていた余裕もない。
彼女は無言のまま魔法を発動、光の矢が放たれたが、ユフィとセティの魔法壁がそれを阻んだ。
どう見ても魔力の無駄遣いとしか思えない、粗末な攻撃。
ムーンの魔法が消えるや、シックスとゼロが切り込んだ。
何の打ち合わせも無く、同時に左右から全力で切りかかる。いや、ゼロがシックスのスピードに合わせたようだ。
ムーンは、避けられないと判断したのか、ゼロの剣だけを防ぎ、シックスの攻撃を右腕にまともに受けた。
白い肌から、美しいほど赤い血が流れ落ちる。
だがその傷もムーンが手をかざしただけでたちまちふさがり、痕も残らなかった。
「なッ?!そんな治癒を行えば、どうなるのか分からない理由じゃないだろ?!外面は完治されても、内部の組織は一生治らないぞ?!」
“求めすぎた”回復魔法を行使したムーンに対して、ベイトは驚きを隠せなかった。
しかしムーンは無表情。その感情も読めない。だが。
「……全てを……壊すのよん♪」
次の瞬間ムーンはいつものような美しい笑みではなく、腹黒い、見るものに嫌悪感を与えるような笑顔を作った。だが、どこか泣いているようにも見える。
「効果通り、壊れちまったって理由か……」
そんなムーンを見て、一瞬ゼロが寂しそうな顔をする。
―――本当に、全てにおいて最強の奴なんざ……いないもんだ。
自分は最強の称号を求めていたわけでもないが、やはり自分の力に自信を持っていたのだろうか。そんな思いが立ち込めた。
ムーンが短剣を振り回す。素人のそれではない。熟練者の、円舞にも似たソードダンス。
迂闊に近付けず、ゼロとシックスは間合いを置いた。
ユフィとセティも、彼女が無意識に張っている、恐ろしく精度の高い魔法壁により、迂闊に手が出せない。魔法壁で跳ね返された魔法は、唱えた術者に跳ね返るのだ。二人ともが高位の魔法使いが故に手が出せない。自滅は最も愚かだ。
見かねたベイトが魔獣を召喚しようとするが、それはゼロが制止した。彼の魔獣は確かに強力だが、リスクが多すぎる。彼の親友としてゼロにはその行為はやはりさせたくなかった。
「疲れるのを待つしか、ないですかね……」
避けながら、リンが半身でムーンに向いたままそう呟く。
傷はベイトの魔法で痛みを薄くしてもらった。違和感はあるが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
―――確かにそれも一理あるが……。
―――今の彼女に疲労や痛覚があるかどうか、怪しいな……。
ゼロとアノンは冷静にムーンの状態を見定めた。その言葉通り、今の彼女にそういった感覚があるとは思えない。
全員なかなか仕掛け難く、足踏みしていた。そんな時、ムーンの方からその鉄壁の防御を崩してきた。
ヴァルクを殺した時のように、身体能力の強化魔法を唱え、伝統的なエルフ体術で攻撃してきたのだ。
まさに、奇想天外。彼女の攻撃パターンは一体いくつあるのか。
彼女の攻撃に翻弄され、ゼロたちは反撃に踏み出せなかった。一撃でももらえば、ヴァルクと同様に、貫かれるだろう、仮にそれを避けたとしても、骨折は免れない。
ムーンの美しい四肢が舞う度に、死の香りが漂ってくる。
それに加え、相手の動きを読めないことには、攻撃の起点も生まれない。さらに、回避行動失敗すれば、その瞬間終わりだ。人数では勝るが、状況的にはかなりの劣勢。
―――今は……タイミングを待つしかないか……。
ゼロがそんな判断を下しかけた時、ついに辛抱たまらずリンがムーンに仕掛けた。回復魔法の効果が切れれば、また自分は戦力外になる、そんな焦りもあっただろう。
だが。
ガキィィィィィィン!!
甲高い音を立てて、リンの剣は中ほどから折られた。
彼女の剣は、万全の状態程の速さは無かったが、相当な速さだったのにも関わらず、である。
ムーンの白く細長い美脚がリンの剣撃に合わせ繰り出され、こういう結果になったのだ。
ここに来る前、リンはセリラの武器を壊し、彼女を動揺させ見事に倒してきたが、今回はまさに立場が逆だった。武器を破壊されるだけで済んだものの、彼女の戦意は完全に喪失した。
「あ……あぁ……そ……んな……」
有り得ない。
顔面蒼白となり、リンはたまらずその場に座り込んだ。
隙だらけ、無防備な彼女にムーンは笑ったまま右足を繰り出そうとした。
ある者は顔を覆い、ある者はあまりの出来事に動くことができなかった。
だが。
「リン!何やってんだ!!」
ゼロが彼女の前に立ちはだかり、ムーンの蹴りを素手で受け止めた。剣をも砕く破壊力を秘めたムーンの蹴撃を受け止めたのだ。受け止めたゼロの右手の皮膚が裂け、血が滴り落ちた。
―――先輩……利き腕を……!
リンにはゼロの横顔しか見えなかったが、その横顔は、今まで見たことないくらいに格好良かった。中性的な容貌のゼロだが、今は計り知れない程の男前に見えた。
「一回負けたくらいで死んで言い理由ないだろ!立て!死んで人の同情を買おうとするな!甘ったれるな!どんなに恥掻いてでも、生きろ!」
珍しくゼロが熱く叫び、叱責している。そんなゼロを見て、不謹慎にもユフィは嬉しくなった。彼には強さがある。決して壊れない強さがある。
「ハ、ハイ!」
リンが立ち上がり、折れた剣を構える。ゼロの言葉により、復活した彼女の剣は、折れていようが立派な剣のように感じられた。
「……んで……なんで……」
ムーンが強く握られた自分の足をゼロの手から無理矢理離させ、ヒステリーを起こしたように俯いた。
「なんでゼロちゃんはそんなに仲間に恵まれているの?!信じられるの?!信じてもらえるの?!」
突如、無防備に叫び始めたムーン。
無防備だが、誰も攻撃できなかった。
まるで駄々をこねた幼い子供のように泣き喚くムーン。
「人の信頼は、まず自分が相手を信じなきゃ築かれないんだよ」
ゼロは剣先を下げ、ムーンを見つめ語り始めた。
「初めから信頼を持った奴はいない。だから、誰かが最初の一歩を踏み出して人を信じる。信じられた奴もそいつを信じ返す。こうやって、信頼の相互関係を築いていくんだ」
思わず聞き入ってしまうような彼の言葉。
―――以外と、熱い言葉を語るものだな……。
詳しく素性を知らない義理の弟に対して、シックスは意外に感じた。
「時には裏切られることもあるだろう。だがな、裏切られたからって、自分もそいつを裏切ってちゃ、いつかまた必ず別の奴に裏切られちまうもんだよ。結局そいつはその程度かって、周りの人間に知られるからな」
―――流石一国の主。堂々としているものだ……。戦うだけではないということか。
セティがゼロへの認識を改めた。
「だから、裏切られても、それに気付いたとしても、自分だけはそんな素振りを見せちゃいけないのさ。決して自分からは裏切らないんだよ。裏切らない奴に人は付いて来るもんさ。特に、過去に裏切られたことがあって、人を信じられなくなっている奴はな」
―――僕は、ゼロを裏切ったりはしないよ。天地神明に誓って、絶対に。
ベイトが、心地よさそうにゼロの熱弁に耳を傾けていた。
「私は……誰からも信じてもらえなかったから……誰も信じられなかったのよん……」
ムーンが、弱い声で言い訳をする。
「それは詭弁だよ」
ゼロが優しく微笑み、優しい声でそう言った。
「お前を信じてくれた人、誰よりも信じてくれた人、いただろ?」
その言葉を聞き、ムーンの頭の中にたった一人だけ、唯一無二の、自分を絶対に信じてくれていた兄のことが頭に浮かんだ。
「でも、私は……」
「他人の俺が言うのもなんだが、あの人は絶対にお前を裏切ったりはしないよ。どんなにお前があの人を裏切っても、あの人はお前を裏切ったり、恨んだりしない。それにお前ら、兄妹だろ?」
頭の中には、自分の勝利を祈ってくれているであろうセシリアがいる。
ゼロの幼い子供をあやすような声は、ムーンの心に届いたのだろうか。
「ゼロちゃん」
急にムーンがマジメな顔をして、ゼロを見つめた。
そして自分の後方に、黒い、不思議なゲートを生み出した。
どこに繋がっているのかは、見当もつかない。揺れ動くようにそのゲートは震えていた。
「最終決着は、1対1で決めましょう」
ムーンの提案は、数の面で不利な状況から逃げるように感じられたが、ゼロはそうは思わなかった。
「覚悟が出来たら、入ってらっしゃい」
そういい残し、ムーンはそのゲートへと入り姿を消した。
残ったメンバーは、一様にゼロのことを見た。
「罠だな」
シックスがそう言う。
「罠じゃないほうがおかしいよ」
ユフィが兄の言葉に笑った。
「まぁ、ここで逃げる理由にはいくまい」
珍しく、セティが積極的な意見を述べた。
「逃げることはもうできないみたいだね」
ベイトが笑いながらゼロに微笑んだ。
「先輩、ガンバってください!」
リンの屈託の無い瞳が、眩しい。
そしてユフィがゼロの前に出て。
「行ってらっしゃい」
そう言い、ゼロに優しく、軽くキスをした。
一同が驚き、どこかニヤついている。真っ赤に頬を赤くしたユフィとゼロ。
よく考えれば人前で、というのは初めてだった。
「最後の戦いくらい、“絶対に勝つ”。そう言っておくよ」
そう軽く言い残し、手を振りながらゼロはゲートの中へと姿を消した。
ゼロが入ると同時に、そのゲートも消える。
ユフィたちは、ゼロの勝利を頑なに祈った。
―――ゼロ……。
ユフィの祈りは、きっと彼に届くだろう。
いざ最後の戦いへ。
いまさら待ったを言うことは出来ない。
数多の犠牲を払い、ついにここまで来たのだ。
今は亡き彼ら彼女らの魂と共に、ゼロはムーンとの決着を付けに向かう。
遥かなる統一の夢は、ゼロの勝利によって成されるのだ。
BACK
/
NEXT
ジャンル別一覧
出産・子育て
ファッション
美容・コスメ
健康・ダイエット
生活・インテリア
料理・食べ物
ドリンク・お酒
ペット
趣味・ゲーム
映画・TV
音楽
読書・コミック
旅行・海外情報
園芸
スポーツ
アウトドア・釣り
車・バイク
パソコン・家電
そのほか
すべてのジャンル
人気のクチコミテーマ
フィギュア好き集まれ~
204
(2025-11-20 16:34:03)
GUNの世界
Browning Hi Power【Commercial】HW…
(2025-11-20 12:30:22)
寺社仏閣巡りましょ♪
11月12日のお出かけ その1 飛木稲…
(2025-11-14 23:40:04)
© Rakuten Group, Inc.
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Design
a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
楽天ブログ
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
ホーム
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: