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第28章
決着
そこはまるで夢のようだった。
笑っている自分の隣では、びっくりするほど美しい青年が呆れたような顔をしている。その黒髪の青年の隣には青い髪の女性と、黒髪の少女の姿がある。
みんな楽しそうに笑っている。
こんな世界で、あって欲しかった。
レイ、リューゲの剣は的確に急所ばかりを狙ってきた。そこからリューゲという戦士の強さが推し量れる。アノンの護衛を務めていたという話も疑いようのない強さだった。
彼の剣が首筋を狙ってくる。一歩後退してそれを避ける。しかしリューゲは剣を振り切らず、ゼロの眼へ一直線のラインで攻撃を止め、突きを繰り出してくる。この動きに誤差がほとんどない。
――この相手を、アリオーシュは倒したのか……。
一瞬の気も抜けない。そんな相手だった。
騎士と表現するのが最適な、スマートな戦闘スタイル。単純な戦闘技術が高いのだ。
こういう相手と戦うのは久しぶりだった。中央の戦士たちは一癖も二癖もある輩が多かった。故にこういった東西南北で戦った純粋な騎士タイプと戦うのが少し新鮮だった。
ゼロ自身は気づいていないようだが、彼の表情はどこか楽しそうだった。
「流石だな、アリオーシュ。その力、かつてのお前と寸分変わることがないとは」
今の言葉ではっきりと自覚する。アリオーシュの強さと、リューゲの強さを。本当に自分がそのレベルまで到達出来ているかの自信は正直曖昧だが。
「帰りたい場所と、護らなきゃいけないものがあるんでな、負けるわけにはいかないんだよ!」
右に左にゼロが動く。牽制しつつ、法則性のない不規則な動きをする。そして予測不可能であろうタイミングで攻撃に転じる。
虚を突かれたリューゲは無理矢理後退し難を逃れたが、ゼロはすぐさま追撃に転じた。相手の右足から左肩へと抜けるように一閃し、翻した刀で左胴を薙いだかと思えば、先ほど敵がやったように正面で振りを止め、突きに転じる怒涛の連続攻撃でリューゲを追い詰める。相手の身体はレイだ、死なせたくはない。だが、そこを気にする余裕が持てないのが正直なところだった。一撃必殺の覚悟を持った攻撃だった。
剣圧でレイの衣服が所々裂け、血が滲んでいた。だが致命傷にはほど遠い。
それでも、このまま戦い続ければゼロが勝つであろうということがアノンには分かった。お互い決定打は決められていないが、徐々にダメージを重ねるリューゲに対し、ゼロの身体にはまだ傷がついていないのだ。彼女の中で、複雑な思いがこみ上げてくる。
「もう、いいではないか……!」
隙あらばと伺い合っていた二人の気が言葉の主へと移動する。
「もう、いいだろう……リューゲ! お前の勝てる相手ではないと、お前なら分かるだろう……?!」
涙交じりの悲痛な言葉に、ゼロは目を伏せた。彼自身自分の勝利を感じていた。リューゲほどの男ならば、気づかぬはずがないとも思った。譲れないとすれば、騎士道精神か。
「アノン様……!」
それまでは気づいていなかった彼女の存在に、リューゲは目を見開いた。しばしの沈黙が流れる。
「貴様は……またしてもアノン様を誑かしたというのか!!」
突如だった。何の前触れもなく、リューゲの気が爆発する。圧倒されそうな憤怒の感情が肌にピリピリと迫ってきた。
「誑かす、だと?」
理解出来ない単語だった。根拠もなければ事実ですらない、彼女がゼロの側にいるのは、彼女の意志だ。
「アノン様を殺し、アノン様の心は私だけのものになるはずだった。だが貴様はあの時もアノン様と共に私の前に現れた。それだけでは飽き足らず、アノン様を悠久の眠りにつかせるなどという仕打ちをし……貴様だけは、貴様だけは死んでも許せん!!!」
この憎悪の根源について理解する。理解した瞬間、ゼロの中に彼への嫌悪感が目いっぱい広がっていく。独りよがりの思い込みでアノンを殺し、激しい思い込みが彼を駆り立てたようだった。
「お前がアノンを想うのは自由だ! だが、そんな想いで殺していいと思うな!」
再び両者が激突する。動機を思えば明らかにゼロに分があるが、リューゲの力は増していた。鍔迫り合いで、ゼロが僅かに押される。
アノンは言葉を失っていた。信じていたリューゲを、根底からひっくり返したような思いが募る。
「……馬鹿が」
怒りよりも、悲しみが押し寄せる。大戦中にアノンを守り続けた騎士を支えたものが、異常なまでの彼女への愛だとすれば、その愛の結末を思えば悲しすぎる、空しすぎる。
「私は誰よりもアノン様を守ってきた! それなのに貴様はアノン様を利用した!!」
誰よりも、何よりもアノンを想った一途な愛故の狂気が彼を突き動かしていた。誰しもが騎士道精神で彼は戦っていると思っていたことだろう。だがそれさえも偽りだったのだ。異常な愛情を蓑隠れにした騎士道精神、アノンと出会った時から彼は偽神への道を歩み始めたのかもしれない。
冷たい風がアノンの頬を撫ぜた。涙の伝った道がいやに寒く感じられる。
彼が守ってくれたのは事実だが、最早浮かぶ感情に感謝はなく、ただただ憐みがあるのみだった。
「アノンの気持ちを考えたこと、あんのかよ!!」
ゼロの刀が彼の気持ちを一蹴せんと繰り出される。それに対しリューゲの剣も踊り狂い、正面から衝撃を相殺しようとぶつかった。
「貴様には、貴様には分かるまい!」
気迫が空間を包み込んでいくようだった。大気が、震えた。
「身の程という言葉の重み、貴様には分かるまい!!」
怒りの一撃がゼロの身体を吹き飛ばした。何とか刀を離さずに受け身を取り、体勢を整える。そこに追撃が迫る。
必殺の破壊力を秘めた一撃が振り下ろされるのに対し、転がるように難を逃れる。だが怒り狂った男は止まらない。怒涛のようにゼロへと迫る。
――まずい!!
回避運動の反応が一瞬遅れたゼロに、フルスイングが飛びかかる。寸でのところで防ぐも、ゼロの身体は大きく吹き飛ばされ、刀と離れ離れになった。
「ゼロ!」
彼女の叫びに呼ばれるように、ゼロの刀がアノンの前に転がってくる。
「私は……」
その刀を握り、アノンはゼロの見よう見まねで構えてみせる。その切っ先には、リューゲが。
「私はお前のこと、信じていた……兄様よりも、お前のことを信じていた。お前のことが、好きだったんだぞ……!」
涙は、自然と溢れた。これはきっと、決別の涙だ。
「ゼロが、アリオーシュが何をしたというのだ……! イシュタルは私に命を与えてくれた。アリオーシュと出会わせてくれた。私に、かけがえのない居場所をくれたのだ……!」
「アノン様……」
リューゲの眼差しに暗雲が立ち込める。彼女の言葉が、何よりも響く。冷たい風よりももっと、彼の心を冷やしていく。
「私を裏切ったのは、他でもないお前ではないか……!」
「私が、アノン様を裏切った……?」
呆然としたリューゲが突如吹き飛んだ。入れ替わるように彼のいた場所にはゼロが現れる。拳でアノンの言葉を代弁したのだ。
力なく転がったリューゲに、立ちあがる気力は見えなかった。
「私など……どうなってもいい。ただずっと私はアノン様をお守りするつもりでした。アノン様をあらゆる脅威から守るのが、私に生きる意味でした。ですが、ジャスティ様たちが停戦協定を結び、戦争は終幕の気配を見せました」
ポツリポツリとリューゲが語りだす。その口調はかつてのリューゲのものそのものだ、アノンはそう確信した。
彼の言葉に耳を傾けながら、ゼロは愛刀をその鞘へと収める。納刀の音は、風にかき消された。
「ふと、魔が差したようにこんな思いが私の中に現れたのです。戦争が終われば護衛などいらない、アノン様は停戦協定の証として他の国の者と結ばれるのではないかと。……ずっと隠していた気持ちが、抑えていた気持ちが、抑えきれなくなったのです」
言葉の端々から彼の後悔の念が伝わってくる。ゼロの拳が伝えた想いは、リューゲにどう響いたのだろうか。
「アノン様を私のものにしたい。そう思い始めたら、もう私は私ではなくなっていました。戦争を終わらせぬためにアシモフと通じたのはご存じの通りです。ですが、それでも不安だった。だから、アノン様を私にとって永遠のものとするために、私は償い切れない過ちを犯してしまいました……」
ゼロもアノンも、何も言えなかった。
もしユフィが他の男の下へ行くとしたら、自分は黙っていられるだろうか。運命と割り切れるだろうか。
「アノン様を殺めた後は、虚無感しかありませんでした。けれども、後の戦場でアリオーシュの側で戦うアノン様を見つけたときは、言いようのない感情でいっぱいになりました。喜びと、アリオーシュへの憎悪がぐちゃぐちゃに入り混じったものですよ」
その表情に浮かぶものは、自分への侮蔑だった。絶望では言い表せないような悲しげな表情だ。
「守るはずだった、守るはずだったのに……私は……!」
言葉に嗚咽が混じり始める。初めて正面から向き合った、償いきれないほどの、やり直せない罪。純粋すぎる思いがもたらした悲劇。
吹き付ける風も、揺られる木の葉も、何も彼に言葉をかけようとはしない。
かける言葉が見つからない。
「きっとだが、ジャスティ様はお前の気持ちなんて見抜いていたと思うぞ。お前のだけじゃない、きっと私の気持ちも」
わずかに残るジャスティの記憶の残滓が、アノンにそんな言葉を言わせていた。北の神ジャスティは終戦協定の立案者であり、最も心優しき大将神だった。その彼が信頼するリューゲの気持ちを知らぬはずもなく、蔑ろにするはずもない。
「ジャスティ……! 私は、親友の信頼までも裏切ってしまったのか……!」
嘆く彼の前に、ゼロが進み出る。
「少しずつ償ってくしかないだろ。レイの身体を借りるでもなく、お前の力で。自覚があるなら、前に進めるはずだろ」
「アリオーシュ……」
剣でしか交わってこなかった両者が、初めて言葉を交え合う。
「もし、同盟軍としてお前と出会っていたならば、きっと俺も“偽神”などと呼ばれることはなかったのだろうな……」
敵として出会わなければ、肩を並べて戦う仲間だったかもしれない。互いの背中を預け合う仲になったかもしれない。リューゲという男の強さは精神状態が全うであればアリオーシュと比肩すると言っても過言ではなかったのだ。
ひとつの選択肢が、彼らを出会わせなかったのだ。
「めいわくをかけたな……。アノン様、私のこの命、彼の身体から解放されればどうなるのか分かりませんが、必ずや償い切れるまで、償って見せます。貴女をお守り出来ないのは悔やまれますが、どうかアリオーシュとともに、お元気で」
リューゲが立ち上がり、儚く悲しくも、アノンに笑顔を向けた。
「無論だ。あの時みたいに守られるだけの存在ではない。安心して償って来い」
彼女の言葉を聞くや否や、一瞬身体が夜の森を照らすほどに発光し、リューゲの雰囲気が薄れ、レイの雰囲気が戻ってくる。
「終わった、のかね」
ゼロの表情も緩む。だが。
「おりゃ!!」
「甘い!」
ゼロにとっては予想通りだったのか。だがアノンはわが目を疑った。戦いは、終わったはずだと思ったのだが。晴々とした表情の男二人が剣を合わせていた。
何がどうなっているのか全く分からない。
「感謝するでゼロ! こんなスッキリした気分、初めてや!」
言葉とは裏腹に剣に力を込める。それを巧みに受け流し、ゼロはレイの背後を取った。痛烈な蹴りが炸裂する。
「どういたしまして」
ニヤリと笑みを浮かべてレイに答える。ゼロの蹴りをまともに受けたはずのレイだが、そこまでダメージを負った様子もなく起き上がり、衣服についた土埃を払った。
「何故まだ戦うのだ?」
アノンが怪訝そうな表情で尋ねる。その質問はもっともだ。二人も苦笑する。
「リューゲから“解放”されたんや。やっと、ゼロと本気で力比べできるやろ?」
「そういうことだ」
言葉なんか必要ない。戦士同士だから、親友だからこそ伝わる考えだ。
一人溜息をつく。戦いは終わった。後少しで戻りたかった場所に戻れるというのに、それよりも力比べを優先させるというのか。
だが楽しそうな二人を見るのは悪い気はしなかった。命の削り合いではない、単純にどちらが強いかを確認するための戦い。男というものの馬鹿馬鹿しさに呆れるが、少しうらやましくも思った。
自分はあの中には入れない。自分の居場所はあそこではない。ゼロの隣にいる、それで十分なのだ。
「気付いてる、よな?」
幾度か剣を交えて、レイがゼロに問いかけた。
「残念ながらな」
「ほな、もう意味ないか」
レイが剣を納める。
リューゲから“解放”されたレイは、端的にいえば弱くなっていた。神の力を失ったからなのか、理由は明確ではないが、戦士としての二人の感覚がはっきりとレイの弱体化を捉えていた。
「鍛え直しかいな」
「日々鍛練することが大事なんだよ」
「お前に言われると何も言い返せんわ」
彼の表情に浮かぶ、少しだけ寂しそうな色が月光に照らされる。
ふらふらと歩いた先に横たわるもの。
「罪償って、またリューゲが出てきても負けへんくらい強なって、自分に自信持てるようなったら、西の城に行くわ」
殺してしまった命は戻らない。理性的でなかったとはいえ、自分が殺してしまったという事実は消せない。その罪は償わなければなるまい。
ビーナの亡骸を抱え、ひっそりと歩きだす。
もっと、話すことはあるはずなのだが、何か話せなかった。
歩き出すレイを止める言葉が、浮かばなかった。
「俺がお前にこの2年間世話になったのは変わらない事実だ。……戻ってくるの、待ってるぞ」
思い起こせばハチャメチャな2年間だった。突然の出会いと、避けられない戦いの数々。そのすべてで、レイは側にいてくれた。リューゲの影響だとはしても、彼が支えてくれたのは事実だ。親友としての思いは、変わらない。
月明かりが照らす森を、ただただ歩いて行く。その方向は西でも中央でもない、森の外へと向かう方向だ。
ゼロ自身エルフの森を出た先の世界は知らない。森がないとか、巨大な湖があるとか、砂しかない土地があるなどの話は聞いたことはあるが、自分の目では早々見れるものではない。興味がないわけではないのだが。
その方向へと進むということが、レイの決意を表していた。誰にも頼れない環境で、自分を見直していくのだろう。弱体化したとはいえ、彼の腕前は決して弱いものではない。森の下界がどのような世界かは知らないが、あの腕があれば生きていける、そう思う。彼の人柄もそれを助けるだろう。
「俺もこの2年、楽しかったで」
最後に振り返った笑顔は、ゼロの心にすっと入り込んで来たあの笑顔だった。
寂寞の思いは消えない。だが、自分は彼と同じ方向には進めない。
帰る場所がある。ずっと、ずっと帰りたかった場所が。
アノンとともに向かう先は、自分のホームだ。
ゼロたちもまた歩き出す。
フォレスト・セントラルでの冒険が、今終わりを告げた。
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