1990年 まあと私の仲 2
学校も終わり近くなって、暇になってきたので毎日プールで日焼け。
帰国が近くなってきて、なんだか考え込む日が多くなった。
学校の、卒業パーティーに招待された。
卒業生ではないけど、留学生なので特別に招待されたのだ。
ホストシスターとドレスを選びに行き、美容院も予約。
さあ、つぎはお相手探し…
しかし、もちろんのこと、一学年下の私はパーティーに参加する学生たちを誰も知らなかった。
そのため、友達の仲から誰か一緒にいってくれる人を探さなければならなかったのだ。
パーティーに付き合ってくれる人ぐらいすぐに見つかるだろうと
高をくくっていると、同学年の友達はみーんなＮＯ。
なぜなら、彼らだって知らない人ばかりのパーティーなんか、しかも
来年自分たちの番が待っているのだから嫌がったのだ。
パーティーの日が近づくにつれてだんだんとあせりだす私。
さあどうしよう…
そうだ！ 留学生仲間がいるじゃないか！
一番先に頭に浮かんだのはまあだった。
私に気があるみたいだし、私自身も、彼とはすごく気があって一緒にいると楽しい。
彼ならきっとすぐにＯＫしてくれるはず…
すぐに電話してみると、彼が出た。
“学校のパーティーに招待されてね、行きたいと思うんだけど、
一学年上の人ばっかりでね、誰も知らないのよ。一緒に来てくれない?”
思ったとおり彼は、
“もちろんだよ、喜んで行ってあげるよ。 いつ？”
“今度の日曜日”
しかし、日曜日だと聞くと彼の声がすぐに曇ったのだった。
“日曜日かぁ。家族と出かけなきゃいけないんだ…”
“でもちょっと聞いてみるから、まってて。”
家族に相談しに行ったまるは、受話器口にもどってくるといっそうくらい声で
“帰国前の最後の機会だから絶対に一緒に行かないとだめだって…”
そうか、まるは半年のプログラムだから私たちより一足先に帰るんだ。
“しょうがないよ、誰か他の人探してみる。”
“ほんとにごめんね…”
結局他の留学生たちもみんな予定が詰まっており、パーティーにはひとりで行く羽目に。
幸いなことに、一緒のテーブルに座った学生たちはとても親切で楽しくて、
独りになることはなかったが、それでもかなりの孤独感を感じてしまった。
パーティー後の月曜日、まあから電話があった。
“パーティー、誰と行ったの?”
“誰とも。ひとりで行ったよ。”
“ごめんね…お詫びに、映画一緒に見に行かない?”
“いつ?”
“あしたはどう？”
“いいよ”
そうして、わたしたちは二人で映画を見に行った。
見たのは、その時期放映されたばっかりの、“ゴースト”。
じつは、その前の金曜日に家族と一緒にすでに見ていたのだが、
“笑えるわーこの映画！！！”と、涙どころか大笑いしていたホストマザーに
しらけてしまった私はまるのリクエストをあっさりとのんだ。
映画を見終わった私たちは、お互いの別れが近づいていることもあってなんだかしょんぼり。
帰国したら何がしたいとか、ずっと友達でいようとか、絶対に再会しようとか、
いろんなことを語り合いながら、心のなかで私は
“遠くに離れていなければ、ほんとに好きになっちゃったかも”
とひそかに思っていたのだった。
つづく
© Rakuten Group, Inc.
