できるところから一つずつ

できるところから一つずつ

2025  (進行中)



(ルッキズム)が和製英語でないことを八十過ぎて初めて知りぬ

大修館の英和にありてオクスフォードの英英になき〈lookism 〉なり

高齢者同士となりて夫と我 喧嘩のやうな大声も出す

難聴が進みていつも不機嫌な夫を笑はす薬はないか

ホームランを打ちたるやうな心地せり 夫を爆笑させたる今朝は



コスモス2月号   木畑紀子選

「まるっきり予期しないでもなかった」とトランプ勝利を言ふ解説者

若年層に支持されたりと評される我武者羅さうなトランプ氏だが

アメリカに選挙権持つわが次男 誰に一票入れしものやら

大雨の後を吹きくる大風に濡れ落ち葉まで舞ひあがりたり

路面より一フイート上を水平にすっ飛んでゆく黄色の落ち葉



コスモス3月号 田宮朋子選)

五回ほど深呼吸して書き始む典子さんへの追悼文を

別れ際に「もういっぺんは会えそうね」と呟くやうに言ひましし友

いただきし釈迢空の『死者の書』をまだ読めぬまま本棚に置く

午後三時の銀杏並木の華やぎを今日も見に行く杖をたよりに 

今日つひに母の齢に追ひつきぬ さてこれからが未知なる日々だ



コスモス4月号詠草 (桑原正紀選)

トランプ氏の就任式を畏れをり日本人〈我(われ)〉もカナダ人〈Me(みい)〉も

アメリカとの国境近き街に住み朝夕に見るアメリカの山

歳晩に友より届く抹茶缶 日英両語のラベル貼られて

菩提寺で「おさがりですが」といただきし羊羹を切る 巳年正月

「墓じまひは思ひとどまりましたよ」と心の中で父母に告げたり



コスモス5月号 (影山一男選)

「飾らない短歌が心を打つのよ」が小島静子さんの教へなりしも

 「じゃあ、先に行ってるわね」と静子さんの声が聞こえるやうな気がする

過去形で静子さんとのお別れを詠みつつ我も過去に入りゆく

脳がすでに忘れてゐたる茶の点前 手が覚えゐておうすを点てる


コスモス6月号詠草 (木畑紀子選)

梅祭り三月二日に終了し待ちゐしごとく雨が降りだす

歌会と妣の命日かさなりて墓参は一日前に済ませる

「歌会なら私も行くわ」と言ひさうなコスモス会員なりしわが妣

気温六度 桜ぽつぽつ咲き初めぬ三月十日のバンクーバーに

冗談か駆け引きのカードかトランプ氏はカナダを自国に取り込みたさう



コスモス7月号 (田宮朋子選)

久々に松尾佳津予さんとデュエットす昔覚えし「われは海の子」

松尾さんの記憶に今も鮮やかな「われは海の子」アルトのパート

「お祈りは非課税です」と書かれありチャーチの前のサインボードに

アメリカの旅より戻り孫が言ふ「気まずい思ひはしなかったよ」と

アメリカで「政府が失礼している」と謝られたと孫に聞きたり


コスモス8月号

歌唱より発音のこつを教はりぬ移民の国の合唱クラス

合唱のクラスで今日も指摘さる「単語の語尾はぐっと吞み込め」

「I(アイ・) love(ラヴ・) you(ユー)」より「アー・ラー・ヴュー」がなめらかでやさしく響くと教へられたり

ユー・チューブにビートルズを聴き確認す ポールが〈I(アイ)〉を〈アー〉と歌ふを



コスモス9月号

踏ん張りて尾羽根ふるはせ家雀ひと声ごとを全身で鳴く

雨に濡れ青紫に咲きてゐき実家の庭の額あぢさゐは

中国語のネットの記事に見かけたる「大谷老婆」は真美子さんのこと

「大谷翔平老婆真美子」と書かれあり大谷夫妻の写真の横に



コスモス10月号  オーシャンドラム

ザザザザと波の寄せ來る音がするオーシャンドラムをそつと揺らせば

ピアニッシモに生まれて寄せる波の音クレッシェンドで近づいてくる

「大磯で初めて海を見せた時お前は泣いた」と父は言ひゐき

ゆつたりとオーシャンドラムの音に乗せ尺八を吹くヨガの先生

目をつぶり波音に身を任せたり 無念夢想になれずともよし




コスモス11月号

本の匂ひが好きで通ひし図書館に今日はウクレレ・セットを借りる

をさな孫を預かる夜は図書館の玩具(おもちゃ)セットを借りて遊びき

「ハイキングや釣りの道具も貸しますよ」奥の戸棚を司書が指さす

ユーチューブの入門講座に学びつつウクレレの弦整へてゆく

「新生児を抱くつもりで」と教はりぬウクレレを弾く構へのコツを

新生児をそつと抱きたる日ははるか そのぬくもりを腕が記憶す

左手の指の動きがままならずウクレレ習得頓挫の予感


コスモス12月号 (桑原正紀選)

「日本の降伏せし日」と報道す終戦の日のカナダのニュース

暮れ遅く夜の明けやすき北国の夏の朝空 鳥の領域

甲高く鳴き交はしつつ鴎たち夜明け間近な空を旋回

鴎らの去りたる空をわらわらと飛び来し鴉屋根に降り立つ

知らずしらず日向を選び歩きをり 九月の風は時に冷たく








支部歌会1月

音階とアルペジオとで終はりたり シニアクラブの歌のレッスン


支部歌会2月

駅前の商店街の放送に今日は"Love me tenter"を聞く


支部歌会3月

「親の介護の話題ばかり」と苦笑せりクラス会より帰りたる子が


支部歌会4月

夫の母の三十回忌に揃ひたり喜寿を超えたる五人の子供

支部歌会5月
十階のベランダに見る煙突の煙が今朝は北へたなびく

支部歌会6月

半日で一日分のエネルギーを使ひ果たして日の辻やすみ

支部歌会 7月 
幼き日に孫の使ひしお茶碗はいまの私に手ごろなサイズ

支部歌会 8月 休会

支部歌会 9月
「子らよりも何とか先に逝きたい」と一番元気な友がつぶやく

支部歌会 10月 題詠 動物を歌う
会話より自分の名前を聞き分けて耳をピクッとさせる家猫

11月



むさしのコスモス
 羽根木梅林

梅林となりて何年たつだらう 子供の遊び場なりし根津山

根津山の防空壕より空襲の火を見し記憶うつすらとあり

残りゐし防空壕の跡に来て早弁をせし中学時代

梅林の花の盛りを夫と訪ふ 汀女の句碑に挨拶もして

白梅の小枝を揺らし跳び移るあれは鶯・・・ではなくメジロ




TANKA for GUSTS 41

a thin layer of ice
cracks in the morning sun
trapping a red leaf,
like a memory of
old autumn days


One afternoon,
perching on a branch
in the shade of leaves,
a lonely owl is meditating
as if it were a part of the tree


At a lunch meeting in Tokyo
an elderly lady asked me
“Will Canada be
the 51st state of America?”
Lady!Canada is a sovereign country.

© Rakuten Group, Inc.
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