踊螺木偶 ・ 無目的

踊螺木偶 ・ 無目的

それから



「このボールって…?」
「お前さんと一緒に箱の中に入れられていたんだと。」



 日に三度、玩具のような注射器で薬を与えなければいけない。
 一日、二日は仕事先に連れてゆきなんとか過ごしたが…あまり連れ歩くのも体力的に不安がある。
 子供達が見つけると言っていた「飼い主」も、未だ姿を見せない。 

 …だが、意外なところから救いの手は差し伸べられた。

 「猫は嫌いだ、絶対に飼わないからねっ!」

 と言っていた子年の母が見かねて、面倒を引き受けてくれたのだ。

 「早く飼い主を見つけておいで!」

 …と言う台詞も一週間も過ぎないうちに聞かれなくなった。
 その頃には母が我が家で一番の猫っ可愛がり手になっていたからだ。




「おふくろさんには、本当に世話になったなぁ…」



 …愛情たっぷりの看護の甲斐もあり、体調も持ち直し食事もすすんだ。
 身体も大きくなり体重も増えた。
 もう、すっかり家族の一員のような顔だ。




「げふ~…ZZZzz」
「そこ…俺の寝床なんだが…」



 いや…家族以上か…。










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