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2026年08月11日
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カテゴリ: 障がい福祉

対人関係療法でなおす5 トラウマ・PTSD 問題と障害の正しい理解から対処法、接し方のポイントまで [ 水島 広子 ]


複雑性PTSDの理解と回復 子ども時代のトラウマを癒すコンパッションとセルフケア / 原タイトル:A Practical Guide to Complex PTSD[本/雑誌] / アリエル・シュワルツ/著 野坂祐子/訳

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忘れられない記憶の苦しみと向き合うために 
私たちは日々、さまざまな出来事を体験しながら生活しています。 仕事や勉強で得た知識、友人や家族と過ごした楽しかった思い出など、ずっと覚えておきたいと感じる記憶はたくさんあるはずです。 
しかし、実際の生活ではどうでしょうか。 一生懸命に覚えようとした知識や楽しかった日の細かい思い出は時間が経つと薄れていくのに、過去に体験した嫌な出来事や恐怖を感じた記憶ばかりが、いつまでも頭から離れず苦しむことがあります。 
「なぜ、忘れたい出来事ほどはっきりと覚えているのだろう」 「どうして昔受けた心が傷つく体験が、今でも自分を苦しめるのだろう」 
このように自分を責めたり、一人で深く悩んだりしている人は決して少なくありません。 
過去の辛い出来事に縛られてしまう状態として、代表的なものに「PTSD(心傷的ストレス障害)」や「複雑性PTSD」という病気があります。 
この文章では、「なぜ人間はトラウマを忘れられないのか」という脳の仕組みを紐解き、PTSDと複雑性PTSDの違い、そして心が少しずつ楽になっていくための解決アプローチを、専門用語を使わずに誰が読んでも理解できるように解説していきます。 
第1章:脳はなぜ「嫌なこと」ほど強烈に記憶するのか? 
記憶をコントロールする海馬の働き 
人間が日々の体験を記憶するとき、脳の中にある「海馬(かいば)」という部分が大きな役割を果たしています。 
海馬は、毎日入ってくる大量の情報の中から「どの記憶を残して、どの記憶を捨てるか」を選別する仕分け係のような存在です。 海馬で一時的に保管された記憶のうち、生活に役立つ大切なものだと判断された情報は、脳の表面にある「大脳皮質(だいのうひしつ)」という記憶の引き出しに移され、長期的な記憶として保存されます。 
通常、勉強した知識や日常の出来事は、海馬を通って少しずつ整理され、時間が経つにつれて「生々しい体験」から「単なる思い出や過去の知識」へと変化していきます。 
しかし、トラウマを抱える状態になると、この記憶の処理システムがうまく機能しなくなってしまいます。 嫌な記憶が過去のものとして整理されないまま、まるで「たった今自分の身に起きたこと」かのように、生々しい状態のままで脳に残ってしまうのです。 
命を守るための防衛反応と現代社会での誤作動 
では、なぜ脳は「嫌な記憶」や「恐怖を感じた体験」をいつまでも消さずに残してしまうのでしょうか。 
その理由は、人間が生き残るために必要な脳の防衛反応だからです。 
はるか昔、人類が狩猟を行って生活していた時代を想像してみてください。 危険な野性動物に襲われた場所、崩落が起きた危険な崖、毒のある植物を食べた体験などは、絶対に忘れてはいけない命に関わる重要情報でした。 
もし恐怖の記憶を簡単に忘れてしまえば、再び同じ危険な場所へ近づいて命を落としてしまいます。 そのため人間の脳は、命の危険を感じたり強いストレスを受けたりしたときに、次のような手順で動作するように進化しました。 
強い恐怖や激しいストレスを感じる 
脳が「これは命に関わる大変な事態だ。絶対に忘れてはいけない」と判断する 
その記憶を忘れないよう、強烈で生々しい形として脳に刻み込む 
次に似た危険が迫ったとき、すぐに逃げ出せるように不安や恐怖の警報を鳴らす 
このように、嫌なことほど強く記憶に残るのは、人間という生き物が身を守るために備えてきた生き残りシステムなのです。 
しかし、現代社会では猛獣に襲われるような直接的な危険はほとんどありません。 その代わりに、人間関係のトラブル、家庭や学校での虐待、事故や事件、職場でのハラスメントなど、形を変えた強いストレスが人々に襲いかかります。 
脳の生き残りシステムは、こうした現代の社会的なストレスに対しても、大昔の命の危険と同じように過剰に反応してしまいます。 つまり、トラウマで苦しんでいる状態は、あなたの心が弱いからではなく、脳の守る仕組みが誤作動を起こし続けている状態と言えます。 
第2章:PTSDと複雑性PTSDの違いを正しく知る 
トラウマという言葉は日常的にもよく使われますが、精神医学においては、トラウマによって引き起こされる状態として「PTSD」と「複雑性PTSD」の2つに大きく分けられます。 
この2つは、原因となった出来事の性質や、身体や心にあらわれる症状に違いがあります。 
一度の大きな体験が残すPTSD 
PTSD(心傷的ストレス障害)は、命の危険を感じるような強烈な出来事を1回体験することによって起こる病気です。 
主な原因としては、次のようなものが挙げられます。 
地震や台風などの大きな自然災害 
悲惨な交通事故 
犯罪の被害や激しい暴行 
戦争やテロなどの悲惨な体験 
こうした人生を揺るがすようなショックな出来事を1度体験することで、そのときの恐怖や光景が自分の意志とは関係なく繰り返し思い出されてしまいます。 
たとえ一瞬の出来事であったとしても、脳にはとても大きな衝撃が加わるため、記憶の整理が追いつかず、脳内に深い傷として残ってしまいます。 
繰り返される出来事が残す複雑性PTSD 
一方で、近年注目されるようになったのが複雑性PTSDです。 
複雑性PTSDは、1回限りの出来事ではなく、逃げ出すことが困難な環境で何度も繰り返されたトラウマによって引き起こされます。 
具体的には、以下のような環境で長い期間過ごした人に多く見られます。 
幼少期から長期間にわたって受けた親からの虐待や育児放棄(ネグレクト) 
家庭内での配偶者からの暴力(DV) 
長期間続いた職場や学校での激しいいじめやハラスメント 
単発の衝撃が「一発の強いパンチ」だとすれば、複雑性PTSDの原因となるトラウマは「時間をかけて何度も体に打ち込まれるボディブロウ」のようなものです。 
繰り返される苦痛によって、心と脳には少しずつダメージが蓄積していきます。 その結果、単なるPTSDの症状だけでなく、自分自身の感情をうまくコントロールできなくなったり、他人との信頼関係を築くことが非常に難しくなったりするなど、人間関係や日常生活全体に深い影響を及ぼすのが特徴です。 
第3章:トラウマが心と体に引き起こす4つの主な症状 
トラウマの影響を受けると、心だけでなく身体の自律神経系にも大きな負担がかかります。 その結果として生じる代表的な症状には、大きく分けて4つの特徴があります。 
1. フラッシュバック(突然生々しく蘇る記憶) 
過去の恐ろしい体験や嫌な記憶が、自分の意思とは関係なく突然思い出されてしまう現象です。 
通常の思い出であれば、「昔こんなことがあった」と客観的に振り返ることができます。 しかし、トラウマによるフラッシュバックでは、記憶が過去のものではなく「今まさに目の前で起きている」かのような生々しい感覚を伴います。 
当時の音や匂い、特定の人影や声など、過去の体験と少しでも似た刺激(トリガー)に触れた瞬間、脳が一気に当時の恐怖状態へと引き戻されてしまいます。 
2. 過緊張(常に危険に備えて体が休まらない状態) 
身体と神経が常に警戒モードから抜け出せなくなっている状態です。 
本来、危険が去れば身体はリラックスした状態に戻ります。 しかし、脳が警報を鳴らし続けているため、「またいつ恐怖が襲ってくるかもしれない」「近くに危険が潜んでいるのではないか」と心が休まりません。 
その結果、音や人の動きに過敏に驚いてしまったり、常に肩こりや頭痛が続いたり、夜になっても気が張って眠りが浅くなったりします。 本人は安全な場所にいるつもりでも、体が常に防衛姿勢をとっているため、毎日のように激しい疲労感を抱えることになります。 
3. 感情の麻痺(感情が湧かなくなる状態) 
過度な恐怖やストレスに長期間さらされると、脳は自分自身の心を守るために「感情を麻痺させる」という反応をとることがあります。 
強い苦痛を感じ続けないように心を麻痺させる仕組みですが、これによって悲しみや恐怖だけでなく、「楽しい」「嬉しい」「美味しい」といった前向きな感情まで感じにくくなってしまいます。 
周囲からは冷たく見えてしまうこともありますが、これは過剰なストレスから心が潰れないようにするための、大切な防衛メカニズムの一つです。 
4. 回避(トラウマに関連するものを避ける) 
トラウマとなった記憶や恐怖を呼び覚ますような出来事、場所、人物、会話などを徹底的に避けようとする行動です。 
事故に遭った道路を通れなくなったり、特定の服装や声の人物に近づけなくなったり、辛いニュースを見ることができなくなったりします。 
恐怖から身を守るためには自然な行動ですが、避ける対象が増えすぎると、毎日の外出や仕事、人間関係に支障をきたすようになります。 
第4章:トラウマ治療の難しさと当事者が抱える心の葛藤 
トラウマのケアを進める上では、単に医学的な説明を受け入れるだけでなく、当事者が抱える複雑な感情や現実的な問題にも目を向ける必要があります。 
特効薬が存在しない現実 
風邪のように「この薬を飲めば数日で治る」という特効薬は、現在の精神医学においてトラウマに対して存在しません。 
強い不安や睡眠障害に対して薬を使うことはありますが、これらは辛さを和らげるためのものであり、脳に刻まれた記憶そのものを直接消し去るものではありません。 そのため、時間をかけてゆっくりと記憶の捉え方を変化させていく取り組みが必要になります。 
心の葛藤と環境の整理 
医学的に「脳の誤作動」と説明されても、被害を受けた当事者にとっては「理不尽な害を受けた体験」を単なる脳の不具合として片付けられることに強い納得のいかなさを感じることがあります。 「なぜ自分だけがこんな目に遭わなければならなかったのか」という怒りや悲しみは自然な感情であり、時間をかけて尊重されるべき大切な気持ちです。 
また、複雑性PTSDの場合は、家庭内の問題や職場のハラスメントなど、生活環境そのものが現在進行形で崩れているケースも多くあります。 安心して心を休められる安全な環境を整えることや、周囲のサポートを得ることが、回復のための第一歩となります。 
第5章:心が楽になるための実践的なアプローチ 
トラウマからの回復は、ある日突然完了するものではなく、波を繰り返しながら少しずつ和らいでいくプロセスです。日常の中で取り組める現実的なアプローチをご紹介します。 
1. 日常の小さなストレスを減らす 
トラウマの記憶は、日々の疲れや精神的ストレスが溜まっているときに引き出されやすくなります。 
いきなり過去の大きな傷に向き合おうとする必要はありません。 まずは通勤ラッシュを避けたり、苦手な人間関係から距離を置いたり、睡眠リズムを整えたりするなど、日常の負担を減らすことから始めましょう。全体のストレス量を下げるだけでも、脳の過緊張がゆるみ、フラッシュバックの頻度を減らす効果が期待できます。 
2. 多角的なサポートを活用する 
回復への道のりを一人で抱え込む必要はありません。専門のカウンセラーによる心理療法(身体の感覚にアプローチするEMDRなど)を受けたり、同じ悩みを持つ人同士で気持ちを分かち合ったりすることが力になります。 
また、人に話しにくい本音や感情をノートに書き出したり、文章作成ツールやAIを活用して気持ちを整理したりすることも、頭の中を客観的に見つめ直す有効な手段です。 
3. 自分の人生の物語をゆっくり再構築していく 
嫌な記憶ほど強く心に残るため、「自分の人生は辛いことばかりだった」と感じてしまいがちです。 
しかし実際には、辛い出来事の合間にも、美味しい食事を楽しんだ時間や誰かが見せてくれた優しさなど、心穏やかな瞬間もあったはずです。 
無理に過去の出来事を肯定する必要はありません。「悲惨な体験もあったけれど、それだけの人生ではなかった」「これからの人生は自分で選んでつくっていける」と、少しずつ自分のペースで新しい意味づけを行っていくことが、回復へと繋がっていきます。 
あきらめずに、あなたのペースで歩むために 
トラウマによる苦しみは目に見えないため、周囲から理解されにくく、心ない言葉に傷つくこともあるかもしれません。 
しかし、心が悲鳴を上げているのは、あなたの脳があなたの命を守ろうとして必死に働いてきた証拠であり、決して恥じるべきことではありません。 
一跳びで良くなろうとする必要はありません。調子が良い日もあれば、急に昔の記憶が蘇って落ち込んでしまう日があって当然です。 
日常の負担を減らし、安心できる環境を整えながら、一歩ずつ自分のペースで進んでいきましょう。あなたが過去の傷に振り回されず、心穏やかな日常を取り戻していけることを応援しています。 
第6章:トラウマ克服に向けた具体的・実践的ステップ 
トラウマやPTSDの苦しみから抜け出すための道のりは、何か特別な魔法のような方法で一瞬にして解決するものではありません。 
日々の生活の中で、自分の脳と身体に「今はもう安全である」という感覚を少しずつ取り戻させていく地道なプロセスの積み重ねです。 
ここでは、日常の中で自分一人でも取り組める具体的なアプローチから、専門的なケアまで、順を追って実践できるステップを詳しく解説していきます。 
1. 身体感覚から脳へ働きかける「身体的アプローチ」 
トラウマの記憶が生々しく蘇るとき、脳だけでなく身体全体が「危険状態」に突入しています。 呼吸が浅くなり、心拍数が上がり、筋肉が強張るなどの変化が起こります。 
このように身体が警戒モードに入っているとき、言葉や論理だけで「大丈夫だ、落ち着こう」と自分に言い聞かせても、脳の深い部分にある警報システムを止めるのは困難です。 
そこで有効になるのが、身体の感覚を通じて脳へ「安全」のサインを送るアプローチです。 
グラウンディング(今・ここに意識を繋ぎ止める技法) 
フラッシュバックや強い不安に襲われたとき、心は過去の恐ろしい体験にタイムスリップしています。 これを「今、この場所は安全だ」という現実の時間軸へと引き戻す方法がグラウンディングです。 
最も簡単で効果的な方法として「5-4-3-2-1法」という五感を使ったテクニックがあります。 強い不安を感じたら、周囲を見回して次の作業を順番に行ってみてください。 
目に見えるものを5つ心の中でつぶやく(例:時計、机、観葉植物、自分の手、窓) 
実際に触れられるものを4つ確認する(例:着ている服の生地、椅子の背もたれ、スマホの画面、足の裏が触れている床) 
耳から聞こえる音を3つ探す(例:エアコンの音、遠くの車の音、自分の呼吸音) 
匂いを2つ感じる(例:コーヒーの香り、部屋の空気の匂い) 
味を1つ確認する(例:お茶を一口飲む、口の中に残る味を感じる) 
このように意識的に五感を使わせることで、過去の記憶に奪われていた脳の処理能力を「今の現実」へと強制的に連れ戻すことができます。 
腹式呼吸とバタフライハグ 
過緊張状態の身体をリラックスさせるには、自律神経の「副交感神経」を優位にする必要があります。 
息を吸う時間よりも「吐く時間」を2倍長くする深呼吸を試してみましょう。 4秒かけて鼻から息を吸い、8秒かけて口からゆっくりと息を吐き出します。これを数分間繰り返すだけで、高ぶっていた脈拍が落ち着き、脳へ安心感が伝わります。 
また、胸の前で両腕を交差させ、自分の肩や上腕を交互にパタパタと優しく叩く「バタフライハグ」という手法も効果的です。 左右交互の軽い刺激を与えることで、パニック状態になった脳の興奮を落ち着かせる効果があります。 
2. 思考と記憶を整理する「認知・文章的アプローチ」 
身体の緊張が少し和らいできたら、次は頭の中にある混ざり合った感情や記憶を整理していくステップに進みます。 
トラウマを抱えていると、「自分が悪かったのではないか」「自分は一生この苦しみから抜け出せないのではないか」といった極端でネガティブな思考にとらわれやすくなります。 
ジャーナリング(感情の書き出し療法) 
頭の中でぐるぐると回り続けている不安や嫌な記憶は、ノートなどの紙にそのまま書き出してみるのが非常に有効です。 
文法や綺麗な文章を気にする必要はありません。浮かんできた感情や言葉を、ありのまま紙にぶつけるように書き出していきます。 
自分の内側にあるドロドロとした感情を外の紙に移すことで、頭の中のメモリ(空き容量)が解放されます。 さらに、書き終わった文章を客観的に眺めることで、「自分はこんなことに恐怖を感じていたのだな」「これは過去の出来事であって、今の自分を直接傷つけるものではないな」と、感情と自分自身との間に適切な距離を置くことができるようになります。 
AIツールや文章作成ツールの安全な活用 
家族や友人、カウンセラーであっても「こんな惨めな体験や汚い感情を話したら嫌われるかもしれない」と躊躇してしまうことがあります。 
そのような場面では、AIや文章作成ツールを活用するのも一つの現代的な選択肢です。 
AIは人間と違って感情的にならず、あなたを否定したり評価したりすることもありません。 誰にも言えなかった過去の出来事や、支離滅裂な感情の吐露であっても、文句を言わずに受け止めてくれます。 
自分の気持ちを文字にしてAIに入力し、客観的な返答を得たり、文章を整理してもらったりする作業を通じて、安全な環境で自分の体験を振り返り、整理していくことが可能になります。 
3. トラウマケアに特化した「専門的心理療法」 
セルフケアだけではどうしてもフラッシュバックや過緊張が改善しない場合は、トラウマ治療を専門とする精神科医や臨床心理士などのサポートを受けることが望ましいです。 
トラウマ治療には、通常のカウンセリングとは異なる特殊なアプローチがいくつか存在します。 
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理療法) 
EMDRは、トラウマ治療において世界的に高い効果が認められている心理療法の一つです。 
治療者が差し出す指の動きに合わせて患者が眼球を左右に動かしながら、過去のトラウマ体験を思い出します。 
脳に左右交互の刺激(両側性刺激)を与えながら記憶を想起することで、海馬で処理が止まっていた「生の恐ろしい記憶」が再処理され、「終わった過去の出来事」として脳に保存し直される仕組みです。 言葉で詳しくトラウマを語る必要が少ないため、喋ること自体が辛い方にとっても負担が少ないアプローチです。 
持続暴露療法(PE療法)や認知処理療法(CPT) 
専門家の安全な管理のもとで、避けていたトラウマの記憶や、恐怖を感じる場所・状況に少しずつ段階的に触れさせていく治療法です。 
「恐怖の対象に触れても、実際には今危険は起きない」という体験を脳に上書き学習させることで、過剰な警戒反応を消去していきます。 
焦って行うと症状が悪化するリスクもあるため、信頼できる専門家としっかりとした信頼関係を築いた上で行うことが前提となります。 
第7章:周囲の人間関係と環境の調整 
トラウマからの回復を支える上で、患者本人の努力と同じくらい重要なのが「置かれている環境」と「周りの人々との関わり方」です。 
どれほど効果的な心理療法を行っていたとしても、日々の生活環境が脅かされていたり、周囲からの無理解な言動に晒されたりしていては、心身の警戒モードを解除することはできません。 
当事者を支える周囲の人が知っておくべきこと 
トラウマを抱えた家族や友人と接する際、良かれと思ってかけた言葉が、かえって相手を深く傷つけてしまうことがあります。 
正しく支えるために知っておくべき大切な視点があります。 
「忘れなさい」「気にしすぎだ」は逆効果 
トラウマによる記憶の蘇りは、本人の意志や根性でコントロールできるものではありません。第1章で解説した通り、脳の生き残りシステムが誤作動を起こしている生理的な反応です。 
そのため、「もう終わったことなんだから忘れなさい」「気にしすぎるから辛くなるんだ」「気合いが足りない」といった言葉は、当事者に「自分の苦しみは理解してもらえない」「自分が弱いからダメなんだ」という強い孤立感と罪悪感を与えてしまいます。 
必要なのは励ましやアドバイスではなく、「辛かったね」「今はもう安全だよ」という静かな共感と安全性の保障です。 
安全で予測可能な環境を提供する 
過緊張状態にある人は、不確実なことや予期せぬ変化に対して非常に強い恐怖を感じます。 
大きな音を立てない、急に背後から近づかない、予定の変更がある場合は早めに伝えるなど、生活の中での「予測可能性」を高めてあげることが、相手の脳をリラックスさせることにつながります。 
また、フラッシュバックが起きて苦しんでいるときは、無理に話を聞き出そうとせず、本人が落ち着くまで静かにそばで見守るか、一人になれる安全なスペースを確保してあげることが大切です。 
環境そのものを変える決断 
特に「複雑性PTSD」を抱えている場合、トラウマの原因となった人や場所が、今なお生活のすぐ近くに存在しているケースが多く見られます。 
ハラスメントが横行する職場、暴力を振るう配偶者、過干渉や虐待を続ける親などとの関係が継続している状態では、心が休まる暇がありません。 
このような場合、心理的なアプローチよりも先に「物理的な距離を置くこと」が最優先課題となります。 
休職や転職をして環境を変える、引っ越しをして連絡を絶つ、公的な支援機関や専門の相談窓口を頼ってシェルターや安全な住まいへ避難するなど、自分自身を危険から遠ざけるための具体的な行動が、回復のための絶対的な土台となります。 
第8章:焦らず「波」と共に生きていくためのマインドセット 
トラウマからの回復の道のりは、右肩上がりに一直線で良くなっていくものではありません。 
良かったり悪かったりを繰り返しながら、全体として少しずつ楽になっていく「波」のようなプロセスを辿ります。 
「揺れ戻し」を恐れない 
順調に回復しているように見えても、天候の変化、仕事の疲れ、ふと目にしたニュースの映像などをきっかけに、突然激しい不安やフラッシュバックが再発することがあります。 
これを「揺れ戻し(リラプス)」と呼びます。 
揺れ戻しが起きると、「あんなに頑張ったのに振り出しに戻ってしまった」「やっぱり自分は治らないのではないか」と強い絶望感に襲われがちです。 
しかし、揺れ戻しは回復の過程で誰にでも起こるごく自然な現象です。 振り出しに戻ったのではなく、脳が溜まった疲れやストレスを排出しようとして一時的に警報を鳴らしているだけです。 
「今日は波が来ている日だな。無理をせず温かいものを飲んでゆっくり休もう」と、波が過ぎ去るのを静かに待つ姿勢を持つことが、心の負担を大きく減らしてくれます。 
過去を消すのではなく、未来のページを増やす 
多くの人が「トラウマを完全に消し去って、事件や事故が起きる前の自分に戻りたい」と願います。 
しかし、一度脳に刻まれた大きな体験や記憶そのものを、綺麗サッパリ消しゴムで消すように無くすことは、現在の医学では不可能です。 
トラウマの真の回復とは、過去の記憶を消すことではありません。 「記憶自体は残っているけれど、それを思い出しても強い恐怖や身体の痛みを感じなくなり、自分の人生の主導権を取り戻した状態」になることです。 
辛い過去という本の一章を破り捨てることはできなくても、その後の新しい章を自分の手で書き書き足していくことはできます。 
「辛い体験もあったけれど、今の自分には心地よい時間や大切な存在もある」と思える瞬間を少しずつ増やしていくことこそが、心が真に解放されるということなのです。 
〇 
あなたのペースで、新しい一歩を 
忘れたい記憶ほど強く頭に残ってしまうのは、あなたの心が弱いからでも、過去に執着しているからでもありません。 太古の昔から人類が生き残るために受け継いできた脳の防衛システムが、あなたを守ろうとして過剰に働き続けている証拠です。 
自分の脳が自分を守ろうとして努力してきた結果なのだと理解することから、回復の第一歩が始まります。 
過去の傷跡に振り回される日々から抜け出し、穏やかな日常を取り戻すためには、焦りは禁物です。 
日常の小さなストレスや負担を減らすこと 
五感を使って「今・ここ」の安全を確認すること 
感情を紙やツールに書き出して整理すること 
必要なときは迷わず専門家や身近なサポートを頼ること 
これらを少しずつ、自分のペースで試してみてください。 









#障害者 #ピアカウンセラー #パソコンインストラクター #出張 #福祉用品 #ニュース今日の報告です  

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最終更新日  2026年08月11日 06時33分54秒
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