実録・サラリーマン時代

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July 24, 2006
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Vol.24「記憶に残る生徒たち」
 大月、富士吉田の両方をあわせると、自分が直接面談をして入会した生徒は200人位だが、
富士吉田には俺よりも先に既に在塾生だった生徒もいたので、更に100人弱が加わり、
 地味なところでは、東京でもH町と池尻大橋でそれぞれ一人ずつ面談して入れてたり、
極めつけは、韮崎教室で室長不在期間があり、それでいて入会面談のアポが入ってるという状況があって、
その時、緊急事態ということで俺が面談したこともあった。
高2の女子で韮崎高校だったのだが、「ニラ高の場合ですと、部活に専念する生徒と勉強に力を入れる生徒の差が激しくてですね・・・」とか、
「ニラ高」って略すことも含め(笑)直前に仕入れた情報を全ての頼りに、面談をした。
その子は当然俺がそこの教室長だと信じ込んでおり、可愛そうなことをしたと思っているが、


 さて、よく「活発な子供や、悪いことして目立ってた子供のほうが可愛い」などと言う先生たちがいるが、
そういう考えは絶対にしたくなかったし、またそういう気もない。
 しかし、記憶に残る、という点では確かに客観的に「目立つ」生徒がやはり多くなるのは否めない。

 俺が富士吉田に異動してきたときの教室状況としては、男子は古き良き悪ガキ、っていう感じでよかったが、
女子が厄介だった。あからさまに対立してる生徒がお互いのグループを作ってグチグチ言ってたり、
他の中学校同士で険悪にもなってみたり、女子の扱いというのは本当に難しかった。

 そんな中の一人で、授業中にいつも騒ぎ、最も他人からのクレームも多かった生徒のお父さんが、
逆に大クレームをつけてきたことがあった。
学校の先生から成績不振のことを言われ、お父さん自ら塾に乗り込んできた。
「高い金出してんのに、全く成績が上がんないのはどういうことなの?おたくはプロなんでしょ?
どんなにやる気のない子も結果を出すのが仕事でしょ!」と、怒号がまだ授業中の生徒や講師のところまで、響き渡った。

グイグイ引っ張ってくれたんですけどねぇ」と言うお母さんがいて、
内藤さんに電話で相談したら、「俺もいっつも文句ばっかり言われてたよ」と教えてもらったことがあり、
クレーマーというのはどこにでも存在するもんなんだなぁというのがつくづくわかった。

 あまり喋らない、静かではあるが、思い出深い生徒ももちろんいる。
 入会面談の時に、メッチャクチャ不機嫌で、どう考えても親に無理矢理連れてこられた、っていう子がいて、

中2の女子だったこの子は、お父さんに連れられて来て、
その子に対して発した俺の質問には全てお父さんが応える、といったやりとりが続き、
俺は、「お父様、この子と二人だけで話をしたいので、大変申し訳ありませんが、少し席を外していただけませんでしょうか」といい、お父さんには前代未聞の(!?)退席をしてもらった。
そして、その子と二人だけになり、「いい?今から少し直接話をしたいんだけど、予め言っておくと今日は塾に入る必要はないし、この後俺のほうからお父さんには言っておくから。それは約束するから安心して。」と先に言ってから、話を進めていくうちに、その子もある程度口は開くようになってきた。
将来はマンガ家になりたい、という話から、どういう漫画が好きなの?という問いに、
「言ってもわかんないから」と言われ、「一応言ってみてよ」と訊いてこたえてくれたその漫画はやっぱりわからず(笑)、「ゴメン、少女漫画はやっぱりわかんないや」と言い、
いろいろと二人共通の知ってる漫画をと思い、知ってそうなものを羅列していったら、「スラムダンク」は好きだったということになった。

そこからはひたすらスラムダンク話。そして、「スラムダンクの最終回覚えてる?山王工業戦で、ほとんどセリフがなく、白熱した試合の様子を絵だけで表現してて、
花道が勝負を決めるシュートをする時、(「左手は添えるだけ」)っていうたった一言だけ、っていうあの最終回は、漫画家たちの間でもすごい評判がよくて有名なんだよ。
俺もそれがすごい新鮮だったし、そもそも当時はバスケは全く流行ってない中でバスケを題材にしてあれだけおもしろい作品にするっていうのは、バスケに詳しいだけじゃダメで、
いろんな発想、手法や他の知識をたくさん身に付けたんだと思うよ。
あの作者、今はバガボンドっていうバスケとはこれっぽっちも関係ない宮元武蔵の話を書いて、大ヒットしてるわけで、やっぱりいろんなものへのアンテナの張り方が半端じゃないんだよ。
勉強は全然全てじゃないけど、いろんな知識を入れるのは大事なことだと思うよ。
それと勉強も大事だけど、本気でマンガ家になりたいんなら漫画に対しては遊びじゃないからね。
いろんな漫画を読んで、今から真剣に描いていくべきだから、その時間もしっかり確保するんだよ。」
 というようなことを、一気に言ってると、その子の目も明らかに変わって、笑顔も生まれた。
「それじゃお父さん呼んでくるからね」と言い、
「お父様、今二人でいろいろ話をして、本人も全くやる気がないわけじゃないのもわかってきました。
でも、こういうのは本人が自らの意志でスタートしないと続かないと思いますし、今の時点ではまだタイミングではないと思いますので、今日のところはいったん帰って、じっくり考えたほうがいいと思いますので、
今日のところはこれで。」と言い、俺のほうから席を立ったときはさすがにお父さんも唖然としてた(笑)。
 それから数日後、再びその親子が教室に来て、正式に入会することになった。
「大丈夫?頑張れる?」と俺。「もう腹はくくったんで。」と彼女。
「別にそんなたいそうなもんじゃなくて、明るく楽しくのびのびのんびりやりゃいいんだよ」と言った。

 この子のその後を見届けずに、塾をあとにしたのは心苦しいが、行く末は本当に気になる。
塾に入ってからは、やはりおとなしいキャラ(全然不機嫌じゃないけど)ではあったが、
この子のこともやっぱり一生忘れないんだろうな。

(つづく)





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Last updated  July 24, 2006 10:38:58 PM
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