
コンサート終了後、楽屋に彼をたずねる。
ステージをやり終えた安堵感と充実感からか、
表情はすこぶる明るい。
「全然アガってなかったね」と声をかけると、
「そう見えた?」とさわやかな笑顔が返ってきた。
(中略)
アルバム『beyond…』がヒット・チャートの1位となり、
現在もなおベスト・セラー中という状況はあるが、
彼にとってこの自信作が、
彼の耳にどんな評判となって、
実際に入っているのか、いきなり聞いてみた。
――やっぱり杉山くんにとって、
いちばんショックな意見、感想というのは、
"オメガトライブと
ぜんぜん変わってないんじゃない"って、
いわれることだよね。
杉山
「そう、いちばんイヤですね。
いい意味で、たとえば、同じくらい聞きやすいとか、
ポップだとかいわれるなら、
気にならないんですけどね。
さりげなくひと言で、
"オメガのころと、あまり変わらないね"って
いわれると、ズキっときますよ。(笑)」
――そうだよね。グループ解散後、
今年に入ってから、アルバム作るまで、
そのことにずっと頭を悩ませていたんだものね。
(中略)
――今だから聞くけど、正直にいって、
シングル、アルバムとも、
あんなに受け入れられるとは思っていた?
杉山
「思わなかった。自分でも驚いてる。
特に、『さよならのオーシャン』が
あんなにいくと思わなかった。
ソロになって当初、とりあえず、
アルバムで勝負だ、なんて思っていたけど、
シングルが売れたおかげで、
アルバムのほうも予想以上に多くの人に
聞いてもらえているみたいだしね。」
――そう思うとやっぱり「さよならのオーシャン」を
第1弾シングルにしてよかったわけだね。
「illusionを消した夜」じゃなくてね。
杉山
「それはむずかしい問題だね。
たしかにシングル向きといえば、
『さよならのオーシャン』のほうがピッタリだし、
結果もよかったからそうしてよかったとは
思っているけど……。
ただ、『illusionを消した夜』も
アレンジがすごく大胆でいいし、
アルバムの中で聞いても、
光っている曲でしょ。
でもやっぱり、シングルは
『さよならのオーシャン』でよかったんでしょうね。」
3月下旬に、彼がファースト・シングルにと悩んだ末、
書き上げたのが、実は「illusionを消した夜」だったのです。
でも、もっとよりインパクトの強い作品にと、
再び苦労して書いたのが、
「さよならのオーシャン」だったというわけなのです。
杉山
「『さよならのオーシャン』って、
今客観的に考えてみても、
じつにかっこいいロックだと思うね。
イヤみのない、ソリッドな感じで
決してハードでもなく、
ソフトでもないっていうか、
ディストーションが、
すごくいい感じで入ってくるしね。」
――男向き、女向きって感じのロックでもないしね。
杉山
「そう、そう。でも、あの曲って、
どちらかっていうと、
秋ごろに受け入れられそうな曲だよね。
もう1回、ヒットしてくれないかな。(笑)」
――そしたら、作る苦労がなくて、いいのにね。(笑)
ところで、セカンド・シングルは
そろそろ考えているんでしょ。
もしかしたら、『beyond…』からカットするの?
杉山
「いや、アルバムからのカットは
まったく考えてはいない。
とりあえず、出すとしても、
まったくの新曲になると思います。
気分的には、11月ごろに出そうと考えているけど、
いい作品ができなければ、
無理はしたくないなって気はしてますよ。」
(中略)
杉山
「今すぐに出そうと思えば、
曲のコストもあるからできるけど、
無理に出して、売れなかったら、
『さよならのオーシャン』のヒットが
水の泡になっちゃうし、
口の悪い人には、
"ホラ見ろ、2枚目はダメだったろ"
なんていわれそうじゃない。
自分の中では、セカンド・シングルは1枚目より、
もっと力を入れたい気がしているから、
慎重に運びたいですね。」

――7月の中野サンプラザでビックリしたんです。
「君のハートはマリンブルー」と
「ガラスのPALM TREE」を聞いて。
どうしてあの2曲を歌ったんですか?
杉山
「サービスですよ、正直言って。
実際、自分の中で
昔のオメガをひきずるようなことは
絶対やらないと思ってたの。
だけど、やっぱりやっちゃった……。
何でなんだかわかんないけど、いまだに。
でも今、オメガの1枚目のアルバムから
林さんの曲をやってるし、
固まり始めたら
こだわりがなくなってきたっていうか。
で、実際、今の新しいオメガの音を聞くと、
あ、やっぱり、前のオメガを
引っぱるのはオレだな、と。自分でね。
だから変にこだわりなく
やりたい曲があったらやっちゃうっていうね。
ただ、それは新しいカタチで
やらせてもらう。とりあえずは。
でも最初はやっぱりね、
サンプラの時も納得できなかったの。
やろう、と言ったもののね。
だけどあのとき音を出して、
やっぱりメンバーが変われば音も変わるわけでしょ?
で、実際オメガと全く同じに
演奏していたにもかかわらず、
音が違ったわけですよね、雰囲気が。
歌ってて、あ、何か違うな、と。
こういう違いが自分の中で感じられれば、
別にやっても全然問題ないわけで」
――イントロが始まったときに
ワッとすごい歓声が上がったのを聞いて、
杉山さんフクザツな心境じゃないかな、
と思ったんですが。
杉山
「(笑) フクザツはフクザツだけど、
でもそれだけいいものを残してるんだから、
いいと思いますよ。
昔の曲のカバー・バージョンを
やってる気持ちですからね」
(シンプジャーナル 1987年1月号
『最後のHOLLY NIGHT』リリース時インタより )

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