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【現代調査研究所】という冴えない事務所にやってきた城子(くにこ)。
岡坂神策を名指しして、黄ばんだ新聞記事を取り出した。
「第二次大戦中、スペインが日本のためにアメリカでスパイ活動を行った、という話を聞いたことはありませんか」
スパイ組織の実体と、氏名不詳のボスの正体を突き止めてくれという依頼だった。

『謀略のマジック』他4作収録連作中編集。

岡坂神策は、探偵まがいの事務所をひらき、何でも屋のようなことをやる。
さらにはフリーライターでもあり(本業?)、【スペイン内戦】に並々ならぬ関心をそそぎ、研究している。何やらはっきりしない、微妙な設定。

【スパイ】を扱っている割には、順調に真相に近づくなぁーと思っていると、
そう簡単にはいかず。同僚である松川の不穏な動き、ちらつく怪しい外国人。


最近あまり読んでいなかったハードボイルドっぽい仕上がりであるということと、調査過程が細かく書かれている点がなかなか楽しめました。資料探索などは逢坂氏の実体験らしく、やけに現実味があるのも納得です。

他の作品、いづれも岡坂が登場し、【スペイン内戦】が関わってくる。

『遠い国から来た男』
いきなり何処かの外国にいる岡坂(なんでよ?笑)。
スペイン内戦に関わった一人の日本人とあるスパイの物語。内戦時の緊張感と結末の意外性。本領発揮!といったところでしょうか。

『オルロフの遺産』
ある出版社から、【オルロフ】についての執筆を依頼される岡坂。スペイン内戦、スパイ戦史の研究者にとって見過ごすことの出来ない、その人物の資料をようやく見つけたが・・・

『幻影プルネーテに消ゆ』
舞台はスペインへ。これと『遠い国から~』は文庫化の際に“岡坂もの”に改稿されたとのこと。道理で唐突だと思ったよ。この話にはミステリファンにとって意外な人物が登場します。(スペイン内戦に絡んでいるのは有名な話なのかな?)

そして表題作『クリヴィツキー症候群』。
ソ連大使館員が殺された。被害者はKGBの将校だという噂がある。


筒井さんに似たような話があったような・・・
あちらも【将軍】だと名乗っていたっけ(『将軍が目醒めた時』かな)
この話が一番ミステリーの要素が強いでしょうか。これが読みたくてこの本を選んだのですが、むしろ外国が舞台のもののほうが面白かった。全体的に、好きなことを書いているんだという喜びというか情熱が感じられるし、【スペイン内戦】に関しての興味も出てきた。(この題名を聞いてロシア系の話かと勝手に思っていたけど)
騙し騙されの【スパイ】ものは面白い。何が、誰が真実なのか?独特の雰囲気があります。その背景をもっと詳しくわかっていれば、それぞれの思惑がさらに理解しやすいだろうし、興味が倍増するのだろうな。『百舌の叫ぶ夜』と比べてしまうと、物足りなさを感じてしまうが、実在の人物を“ふんだん”に扱うことによる説得力、+物語性で質の良いハードボイルドの出来上がり、という感じでしょうか。(ただご本人がモデルで遠慮したのか(笑)主人公の魅力はもう一つという感じでした。)

このペンネーム(本来【逢】のしんにょうは点がもう一つ付くようですが)


『クリヴィツキー症候群』 逢坂剛 新潮文庫 (平成2年1月発行)





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最終更新日  2003年11月26日 19時04分36秒
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