全255件 (255件中 1-50件目)
鑑賞日:2024年5月26日(日)14:00開演入場料:6,000円(B席/2階 11列)【主催】(財)東京二期会【共催】(財)目黒区芸術文化振興財団二期会ニューウェーブ・オペラ劇場オペラ「デイダミーア」台本:パオロ・アントニオ・ロッリ作曲:ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付会場:めぐろパーシモンホール大ホールスタッフ指 揮 :鈴木秀美演 出 :中村 蓉装 置 :原田 愛衣 裳 :田村香織照 明 :喜多村 貴合唱指揮:根本卓也声楽アドバイザー、原語指導:櫻田 亮ドラマトゥルク:萩原里香演出助手:根岸 幸舞台監督:幸泉浩司公演監督:大島幾雄公演監督補:永井和子合 唱 :二期会合唱団管弦楽 :ニューウェーブ・バロック ・オーケストラ・トウキョウ(NBO)出演:デイダミーア:清水理沙ネレーア :田中沙友里アキッレ :渡辺智美ウリッセ :武藤あゆみフェニーチェ:室岡大輝リコメーデ :水島正樹ダンサー:北川 結、田花 遥、中川友里江、安永ひより、長谷川 暢、望月寛斗感想 二期会ニューウェーブ・オペラ劇場と称して若手を集めたバロック・オペラ公演を数年おきに行っており、今年はヘンデル最後のオペラ作品「デイダミーア」の公演があるとのことで、初夏を思わせる晴天の下、目黒まで出掛けた。 めぐろパーシモンホールは1,200席のキャパで、今回オケピットと舞台側2階席左右に合唱を入れたため、実質的に1,000人程度。 バロックオペラ公演に合っている大きさと言える。 オケピットの指揮台前にはチェンバロ2台が並べて置かれ、その奥に大きなテオルボ、その周りをバイオリン、チェロで囲み、上手にナチュラルホルン、下手にリコーダーの配置。古楽器でまとめられており、NBOのピリオド奏法の音楽を楽しむことが出来た。 全3幕の作品だが、1幕と2幕途中まで続けて演奏、休憩挟み2幕「狩り」の場面から3幕フィナーレまで連続演奏され2部構成になっている。曲数も全36曲→24曲までカットされ、休憩入れ2時間強に収まっていた。 第1部は舞台上に正面と左右を囲むコの字の壁が設置され、奥と左右に出入り口が設けられている。小道具は人がまたがる凹型の造形物が3台、場面に合わせ色々な位置に動かされる。またコの字壁の上部は2階の位置づけて、場面によっては隠れて下を覗く位置にもなっていた。第2部はその左右の壁に階段が付けられ、上下の移動が加わる。 その壁や床へ照明が当てられ、次々と色が変化して行く。床面も白黒のチェックになったり、2階から大きな赤玉が落とされると床面にヒビが入ったりと、工夫されて面白い。 歌手がアリアを歌う場面では、ダンサーが舞台に広がり、歌手たちも加わって、音楽に合わせて踊りが繰り広げられる。アリアの繰り返しの単調な面をじゃませず補っていたと感じた。 あと演出ではフィナーレの所で、出兵したアキッレ(アキレウス)がその後トロイ戦争で撃たれてしまう場面を付け加えていたが、音楽は明るい曲調のため、少々蛇足か。 合唱は16人(各パート4人ずつか)で第2部オケピット内の舞台側に黒い衣装で1列に並び、「狩り」の場面では黒い左右に角が出たものを被り歌う。途中でオケピットから退出し、フィナーレでは左右2階席の舞台側に各8人ずつ並び歌い、盛り上げていた。 今回歌手はアキッレ役はソプラノ設定通りで、ウリッセ役はカストラード/カウンターテナー設定をソプラノに割り当てており、3年前の「セルセ」のようにテノールに割り当てオクターブ下で歌わせるような無謀な変更はなく、バロック・オペラとしてそれなりに聴くことが出来た。 ただ登場人物がほとんどソプラとなり、同じような声質の歌声の方々であったため、変化に乏しく、歌い方もただ歌っているように単調に聞こえて来たのが残念。もう少し場面や役の心情が伝わるような歌い方であれば、もっと楽しめたのだが。周囲の客席も途中、夢の中の人が多かった。 その中でリコメーデ王役の水島正樹は、バスの深い歌声で王の威厳とアキッレやデイダミーアを気遣う心遣いが伝わって来た。 コンパクトにまとめられたことで、バロック・オペラを最後まで、それなりに楽しむことが出来た公演だった。End
2024.05.26
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鑑賞日:2024年5月3日(金・祝)ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024ORIGINES(オリジン) ――すべてはここからはじまった【主催】ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024 運営委員会 (三菱地所株式会社/株式会社東京国際フォーラム/株式会社KAJIMOTO) LFJ-TOKYOは昨年再開し、今年もGWに行うとのことで、山の神と有楽町へ出掛けた。 今年はコンサート会場にG409、マスタークラスにB5が加わり、更に地下ホールEのキオスクステージも再開したことで見所が増えている。ホールEでは、楽器メーカーの制作デモや楽器体験コーナー、帝国ホテルの出店、グッズ売り場もあり。ホールEの復活で地上広場の混雑も緩和されていた。 公式CDは20周年記念の過去の寄せ集めで、今年の出演者のナントでの録音CDは無し。ガラス棟の吊り下げポスターは1枚のみ。 今回も海外からのオーケストラや合唱の公演はなく、天羽明惠の公演とア・カペラ トリオのレ・イティネラントが面白そうなので、時間の合った「ルネ・マルタンのル・ク・ド・クール」を選択。 ホールEでの洗足学園音楽大学サクソフォーン・オーケストラによる「ダッタン人の踊り」を聞いて、ガラス棟のG409へ。 ホールEのステージが壁側に変更されたことで、客席広くなり、客席側の移動もスムーズになったのは良かった。公演番号:143/すべてはモーツァルトから始まった! 日時:2024年5月3日(金・祝) 13:30~14:15 会場:東京国際フォーラム ホールG409 入場料:¥2,700(指定席2列目)出演ソプラノ:天羽明惠ピアノ :村上寿昭曲目モーツァルト:すみれ K.476、ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いたとき K.520シェーンベルク:4つの歌曲 op.2 から 1.期待、2.僕に君の金の櫛を贈ってくれーイエスの懇願ベルク:7つの初期の歌 から 葦の歌、夜うぐいすツェムリンスキー:バラのイルメリン op.7-4、民謡 op.22-5ウェーベルン:4つの歌曲 op.12 から 1.日は暮れて、4.似た者同士ウルマン:5つの愛の歌 op.26 から 1.お前はどこからその全ての美を受けたのだ、2.ピアノを弾きながら、5.おお、美しい手よ 感想 客席は満席、入口壁付近の2列目で聴く。昨年はベートーヴェンの歌曲だったが、今回はモーツァルトから始まり、その後はドイツ近代作曲家の歌曲。 シェーンベルクは合唱曲「グレの歌」、ベルクはオペラ「ヴォツェック」「ルル」、ツェムリンスキー「フィレンツェの悲劇」を聞いたことあるが、ウェーベルン、ウルマンになると初めて聞く作曲家。だんだんと12音階や無調性に進んでいく。 G409は天井が低く、下が絨毯で、全く反響しないため声楽には不向きな会場だが、天羽明惠さんは、正確な音程と美しいドイツ語の歌声で、心地よく聞くことが出来る。入口で配られた歌詞カードを見ながら聞くと、更に曲の内容が伝わって来る。 アンコールでモーツアルト歌曲を1曲歌われて、ほぼ時間通りに終了。 公演終了後、ホールEに移動し、帝国ホテルのキーマカレー・ナン付で遅めのランチを済まし、展示ブースやグッズ売り場、DJブースを覗いて、ホールCへ。ホールEはこの後公演のカルメンの場当たり中。楽器ブースではコントラバスの削り出し実演あり。 公演番号:124/ルネ・マルタンのル・ク・ド・クール ~ハート直撃コンサート~ 日時:2024年5月3日(金・祝) 16:10~16:55 会場:東京国際フォーラム ホールC 入場料:¥3,000(S席5列目)出演イリス・シャロム (ヴァイオリン)クシシュトフ・ミハルスキ (チェロ)アントナン・ホ゛ネ (ピアノ) 曲目:ラヴェル/ピアノ三重奏曲 イ短調から第1,2楽章ヴァランティーヌ・ミショー (サクソフォーン)ガブリエル・ミショー (パーカッション) 曲目:ピアソラ/失われた小鳥たち、ビートルズ/ブラックバードレ・イティネラント (ア・カペラ トリオ)ティエリー・ゴマール (パーカッション) 曲目:伝統曲/ウォーキング・ソング、アデス・キリイ、ボン/水の月、 ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女エリプソス四重奏団 (サックス四重奏) 曲目:ディ・バッコ/パリの4本のサックス感想 客席は満席。ルネ・マルタンが選出した、LFJ初参加の若手注目の演奏家を集めたコンサート。 最初にルネ・マルタンが登壇し、4組の演奏家のプロフィールを紹介。 1組目は比較的オーソドックスだったが、2組目以降は、曲をグループに合うようアレンジしての演奏で面白い。 3組目のレ・イティネラントは、民族曲風のアレンジで途中「荒城の月」のメロディーも聞こえてきた。女声3人の声にそれぞれ特徴があり、重なった時の倍音の響きが美しい。パーカッションは、目立たず、コーラスを補うように演奏され、心地よい。 4組目のエリプソス四重奏団はサックス4重奏。ラプソイン・ブルーのメロディーも聞こえ、途中サックス演奏を止めて急にコーラスが始まった所が斬新で楽しい。 レ・イティネラント単独の演奏を聞きたかったが、5/3,5の夜だったため時間合わず残念。 去年復活し、今年はホールも増えて選択肢が増えたことは喜ばしい。新型コロナの影響は無くなったものの、円高の影響で海外からのオケや合唱は呼びにくい状況だと思われるが、ぜひ来年はナントと同じ演奏家の公演が増えることを期待。End
2024.05.03
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鑑賞日:2024年4月27日(土)14:00開演入場料:4,000円(C席/3階 4列)【主催】(財)日本オペラ振興会藤原歌劇団創立90周年記念公演歌劇「ラ・チェネレントラ」ロッシーニ作曲全2幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:テアトロ・ジーリオ・ショウワスタッフ指 揮 :鈴木恵里奈演 出 :フランチェスコ ベッロット演出補 :ピエーラ ラヴァージオ合唱指揮:山舘冬樹美 術 :アンジェロ サーラ衣 裳 :アルフレード コルノ照 明 :クラウディオ シュミット舞台監督:菅原多敢弘副指揮 :小松拓人、森田真喜総監督 :折江忠道 合 唱 :藤原歌劇団合唱部 管弦楽 :テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ 出演アンジェリーナ :但馬由香ドン・ラミーロ :小堀勇介ドン・マニーフィコ:押川浩士ダンディーニ :岡昭 宏クロリンダ :楠野麻衣ティーズベ :米谷朋子アリドーロ :久保田真澄感想 王子役で小堀勇介が出演するとのことで、GW初日の夏日の中、久しぶりに新百合ヶ丘まで出掛けた。 今回の演出は2018年の再演とのことだが当方は観ておらず初見。 舞台中央に大きな童話の本が置かれ、その周囲にネズミたちがチーズを取り合っている。序曲の後にネズミたちが本を開きその中から、出演者が次々と登場して、童話の世界として演技し、歌う演出。 哲学者・教育係のアリドーロが魔法使いになり、ガラスでは無いもののハイヒールの忘れ物も登場。馬車がスポーツカーになっている等、分かりやすい演出で楽しめた。 歌手はラミーロ王子役の小堀勇介が期待通りで良かった。明るく明瞭な歌声で低音から高音まで歌い、アジリタの音程も完璧でかつ滑らか。 見せ場のアリア「誓って彼女を見つけ出す」ではハイCを超えて、E位まで出ていて素晴らしい。拍手は続いたがアンコールは無し。 アンジェリーナ役の但馬由香もアジリタ含め良く歌えていたが、中域以下の歌声が少々暗めだった。最後のアリアは短く感じ、一部カットされたか。 オケは安定した演奏で、ロッシーニ・クレッシェンドも盛り上がって良かった。 全体としてまとまっている公演で、演出含め楽しむことが出来た。 End
2024.04.27
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鑑賞日:2024年4月21日(日)15:00開演入場料:10,500円(D席/3階 L4列)【主催】東京・春・音楽祭実行委員会【共催】読売日本交響楽団東京・春・音楽祭2024歌劇「エレクトラ」op.58<演奏会形式>リヒャルト・シュトラウス作曲全1幕(ドイツ語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :セバスティアン・ヴァイグレ管弦楽 :読売日本交響楽団コンサートマスター:長原幸太合 唱 :新国立劇場合唱団合唱指揮:冨平恭平出演エレクトラ :エレーナ・パンクラトヴァクリテムネストラ:藤村実穂子クリソテミス :アリソン・オークスエギスト :シュテファン・リューガマーオレスト :ルネ・パーペ第1の侍女 :中島郁子第2の侍女 :小泉詠子第3の侍女 :清水華澄第4の侍女/裾持ちの侍女:竹多倫子第5の侍女/側仕えの侍女:木下美穂子侍女の頭 :北原瑠美オレストの養育者/年老いた従者:加藤宏隆若い従者 :糸賀修平召使:(新国立劇場合唱団)前川依子、岩本麻里、小酒部晶子、野田千恵子、立川かずさ、村山舞感想 東京春祭の千秋楽にR.シュトラウス「エレクトラ」の公演があるとのことで、すっかり葉桜となった上野へ出掛けた。 ヴァイグレ指揮読響の「エレクトラ」は2022年読響定演に企画されたが、新型コロナ感染の影響で中止になった公演を企画時のキャストを揃えて行うもの。 本公演チケットも発売初日WebアクセスしたがE席が取れず、D席となり1万円を超えてしまった。 なお「東京・春・音楽祭」の前身である「東京オペラの森」2005年第1回公演のオープニングが「エレクトラ」であり、その指揮が先日亡くなった小澤征爾であったのも繋がりを感じる。 客席は空席少なくほぼ満席。舞台は反響板で囲まれ、張り出しが出されいるが、照明等含み演出は一切なし。 舞台上にはオケの一部が既に座って楽器の音出しをしている。開演時間のブザーと共に、コンマス含め残りのオーケストラメンバーが舞台へ登場し、チューニング。8プルト4管編成で約100名で壮大。 指揮者登場し、演奏が始まるとその大音量の音楽に圧倒される。その中で歌う歌手は大変であるが、皆さん素晴らしい。 まずは侍女5人が黒いドレスで登場し、エレクトラの噂を歌い始める。日本では主役を歌う方々で、しっかり聞こえる。会話の演技も上手い。 タイトルロールのエレーナ・パンクラトヴァはほぼ出ずっぱりで歌い続けるが、強靭ではないもののよく響く歌声で最後まで歌いきった。 エレクトラの妹クリソテミス役のアリソン・オークスは、圧倒的な声量でかつ輝くような歌声でオケがfでも十分に聞こえて来て素晴らしい。 クリテムネストラ役の藤村実穂子は、落ち着いた中にも不気味さを感じさせ、役に成り切った歌声で流石です。 出番は少ないが、エギスト役シュテファン・リューガマー、オレスト役ルネ・パーペもよく響く歌声で素晴らしい。 ルネ・パーペだけが譜面を見ていたが、その他の皆さんは暗譜で身振りの演技もあって良かった。 合唱は、召使で女声6人が少し舞台に登場したのみで、あとは裏歌。カーテンコールで登場し、男女各8人位。裏歌ではPAが使われていた。 一番良かったのはオーケストラ。大人数、大音量でありながらも、細部までバランスの良い演奏で、複雑で分厚いR.シュトラウスの音楽を表現していた。 特に指揮者セバスティアン・ヴァイグレは体を上下左右めいっぱい使って指示を出し、オケもそれに合わせた演奏で、エンディングの盛り上がりには圧倒された。途中ヴィオラからヴァイオリンへの持ち替えを直接見られるもの演奏会形式ならでは。 R.シュトラウス「エレクトラ」はMETライブビューイングで見たことあるものの、生演奏は初めて。演奏時間は約100分。飽きること無く、緊張感が持続した演奏を楽しむことが出来た。 これで今年の東京・春・音楽祭は終了。来年の音楽祭ではキャスト・オーディション募集で東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.16「パルジファル」(演奏会形式/字幕・映像付)のアナウンスが既に出ている。今回同様にR.シュトラウス作品も取り上げてほしいく、来年もレベルの高いオペラ公演をぜひ聞きたい。End
2024.04.21
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鑑賞日:2024年4月14日(日)10:00開演入場料:1,300円(シニア料金/K列)ブルックリンでオペラを/She Came To Me劇場:ヒューマントラストシネマ有楽町・シアター1上映時間:102分 / 製作:2023年(米) / 配給:松竹監督・脚本・プロデューサー:レベッカ・ミラー音楽:ブライス・デスナー主な出演者:スティーブン(作曲家):ピーター・ディンクレイジパトリシア(スティーブンの妻、精神科医) :アン・ハサウェイカトリーナ(タグボートの船長) :マリサ・トメイ マグダレナ(パトリシアの家政婦) :ヨアンナ・クリークトレィ(マグダレナの夫、裁判所速記者) :ブライアン・ダーシー・ジェームズジュリアン(パトリシアの息子):エヴァン・エリソンテレサ(マグダレナの娘、ジュリアンの恋人) :ハーロウ・ジェーン感想 アン・ハサウェイが主役扱いで宣伝・紹介されているが、本作品の主役はあくまで作曲家スティーブン役のピーター・ディンクレイジであり、アン・ハサウェイは一切歌わない。 5年程スランプでオペラ作曲出来ず、脚本家にも見放され、パトリシアから無理に犬の散歩に出掛けさせられたことで、女船長に会い、翻弄され、それを機会にオペラをつくり、大絶賛。その後は、子供達の恋愛事件で救世主となり・・・・。身長132cmでいい味出してる。 オペラ場面は少ないのだが、細部へのこだわりが凄い。 冒頭パーティー場面で、MET他多くのオペラ作品に出演しているカウンターテナーのアンソニー・ロス・コスタンツォがオペラ「カルメン」の“ハバネラ”を歌う。 カウンターテナーに歌わせることで、本作品が通常のラブストーリーとは違うことを暗示させる。 そしてタグボート船長のカトリーナからヒントを得て5年振りに作曲した「She Came To Me」の演出指導シーンでメゾソプラノのイザベラ・レナード登場。素晴らしい歌声と容姿だが、同席しているスティーブンの細かい注文に切れて追い出してしまう演技も上手い。 そしてラストのオペラ「Hurry, Hurry」はスペース・オペラ風でMET出演のデビット・サンチェスやジャズやブロードウェイで活躍のアリシア・ホール・モラン他の出演で本格的。 音楽のブライス・デスナーは、ロックミュージシャンでありながら、クラシック作曲、映画音楽も作り多才。BAMのあるブルックリンで演奏されそうな聞きやすい現代オペラ音楽に聞こえた。 予告編や宣伝とは大きなギャップを感じたが、そこが面白く、現代アメリカ社会の問題とともに、アメリカオペラ世界を少し感じられる作品でもあった。End
2024.04.14
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鑑賞日:2024年3月30日(土)15:00開演入場料:11,500円(D席/3階 L4列)【主催】東京・春・音楽祭実行委員会【共催】NHK交響楽団東京・春・音楽祭2024東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.15楽劇「トリスタンとイゾルデ」<演奏会形式>ワーグナー作曲全3幕(ドイツ語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :マレク・ヤノフスキ管弦楽 :NHK交響楽団ゲストコンサートマスター:ベンジャミン・ボウマン合 唱 :東京オペラシンガーズ合唱指揮 :エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩音楽コーチ:トーマス・ラウスマン出演トリスタン :スチュアート・スケルトンマルケ王 :フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒイゾルデ :ビルギッテ・クリステンセンクルヴェナール:マルクス・アイヒェメロート :甲斐栄次郎ブランゲーネ):ルクサンドラ・ドノーセ牧童 :大槻孝志舵取り :高橋洋介若い水夫の声 :金山京介感想 東京春祭ワーグナー・シリーズの公演があるとのことで、桜がまだほとんど咲いてないが花見客で混雑する上野へ出掛けた。 東京春祭での「トリスタンとイゾルデ」公演は2020年に予定されていたが、新型コロナの影響で中止となり、4年ぶりの公演。 これでワーグナー楽劇の主要10作品が全て演奏されることになる。 本シリーズの入場料料金は、昨年より更に500円アップ。発売初日WebアクセスしたがE席が取れず(座席範囲が減った?)、D席となり1万円を超えてしまった。 客席は空席少なくほぼ満席。舞台は張り出しが出され、後部は反響板あり。昨年同様映像がく、色付き照明の演出のみ。 開演時間となり、男声合唱約40人が入場し、続いてオケ入場、最後にMETコンマスのベンジャミン・ボウマンが舞台上に登場しチューニング。6プルト3管編成で約80名。指揮者登場し、前奏曲が大音量で奏でられ分厚い音楽に圧倒される。更に2幕では、裏からバンダの管楽が加わる。 合唱は1幕のみだが、人数の割に存在感在り。 タイトルロールの歌手2人は、少々パワー不足。2幕の延々と続く二重唱はオケの音が小さくなったこともあり少し良くなったが。トリスタン役スチュアート・スケルトンは歌声は聞こえて来るものの、声に輝きがなく勇ましく聞こえない。イゾルデ役ビルギッテ・クリステンセンは譜面台の楽譜に釘付け状態でただ歌っている様に聞こえた。 マルケ王のフランツ=ヨゼフ・ゼーリヒは、いかにも王様風で迫力十分だった。 ワーグナー楽劇を演奏会形式で演奏するのは、歌手に取っては大変でしょう。 所要があり残念ながら2幕終了時点で帰宅。 春祭千秋楽の「エレクトラ」も聞きに行く予定。End
2024.03.30
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鑑賞日:2024年3月3日(日)14:00開演入場料:2,000円(E席/ 5階L2列)【主催】(財)東京二期会、(社)日本演奏連盟2024都民芸術フェスティバル 参加公演フランス国立ラン歌劇場との提携公演東京二期会オペラ劇場楽劇「タンホイザー」台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー(パリ版準拠(一部ドレスデン版を使用)にて上演)全3幕(ドイツ語上演/日本語字幕付)会場: 東京文化会館 大ホールスタッフ指 揮 :アクセル・コーバー演 出 :キース・ウォーナー演出補 :カタリーナ・カステニング装 置 :ボリス・クドルチカ衣 裳 :カスパー・グラーナー照 明 :ジョン・ビショップ振 付 :カール・アルフレッド・シュライナー映 像 :ミコワイ・モレンダ合唱指揮:三澤洋史音楽アシスタント:石坂 宏演出助手:彌六舞台監督:幸泉浩司公演監督:佐々木典子公演監督補:大野徹也合 唱 :二期会合唱団管弦楽 :読売日本交響楽団キャストヘルマン :狩野賢一タンホイザー:片寄純也ヴォルフラム:友清 崇ヴァルター :前川健生ビーテロルフ:菅原洋平ハインリヒ :伊藤 潤ラインマル :倉本晋児→水島正樹エリーザベト:梶田真未ヴェーヌス :土屋優子牧 童 :七澤 結4人の小姓 :本田ゆりこ、黒田詩織、実川裕紀、本多 都感想 2021年と同じ演出の「タンホイザー」が再演されるとのことで、安価席が取れたこともあり、上野のインバウンドの人混みを抜けて東京文化会館へ。 客席は1階左右と後部、2、3階にも空席多く、7割程度の入りか。 3年前は新型コロナの影響で色々と制約があり、影響がなくなった状況での公演をとの希望も再演された理由の一つと思われる。 指揮者は前回来日できなかったアクセル・コーバーが登場。バイロイト音楽祭でも振っているようで、オーソドックスなダイナミックスとテンポで安心して聞くことが出来た。 オケピット内の人数制限もなくなり、安定した演奏。読響はセバスティアン・ヴァイグレが常任指揮者になってから、ドイツ物は演奏機会も増え、ホルン始め異音もほとんど無くワーグナーの音楽を楽しめた。 合唱の方は、歌としては良かったが演出が? 舞台上の制約も無くなったとは言え2幕の大行進曲「歌の殿堂をたたえよう」の歌が始まる前に女性たちが置かれた椅子の周囲を早足でひたすら回ったり、途中男性兵士たちが椅子を頭上に掲げて歌ったりとやたら意味不明な動きを加えられていた。 行進曲だからと言って無理に動かせる必要はなく、観客側も落ち着いて聞くことが出来ない。 あと演出の方は、前回同様ヴェーヌスと一緒に子供が出てくるが、意味不明なのは前回と同じ。 タンホイザー役は本日の片寄純也とダブルキャスト側がしばらく未定となっていたが、二期会会員ではなく海外からサイモン・オニールを招聘。 片寄純也は前回も同役を歌っており、前回のもう一人のキャストよりは歌えていたが如何にも大変そう。ヘルデンテノールは日本人には難しいのでしょう。 ヴェーヌス役の土屋優子、ヘルマン役の狩野賢一は良かった。 それなりにワーグナーの音楽を楽しめた公演だった。 4月に東京春音楽祭でヴァイグレ指揮の読響で「エレクトラ」(演奏会形式)が予定されており、今から楽しみに。End
2024.03.03
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鑑賞日:2024年1月3日(水)19:00開演入場料:無料(申込抽選)(2階12列)【主催】日本放送協会(NHK)第66回 2024NHKニューイヤーオペラコンサート会場:NHKホール出演:ソプラノ:砂川涼子、田崎尚美、船越亜弥、 森麻季、森谷真理メゾ・ソプラノ :谷口睦美カウンターテナー:藤木大地テノール:笛田博昭、福井敬バリトン:青山貴、大西宇宙、黒田博、須藤慎吾バ ス :斉木健詞、ジョン・ハオ、妻屋秀和合 唱 :新国立劇場合唱団、二期会合唱団、 びわ湖ホール声楽アンサンブル、藤原歌劇団合唱部管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団指 揮 :沼尻竜典舞 踊 :上山榛名、水城卓哉、宮本萌チェロ :遠藤真理ピアノ :松田華音司 会 :礒野佑子(NHKアナウンサー)曲目:1.「メサイア・ファンタジー」 ヘンデル作曲 吉松隆・上田素生 編曲 ※世界初演 大西宇宙、合唱2.歌劇「アイーダ」から「清きアイーダ」 ヴェルディ作曲 笛田博昭3.歌劇「ジュリアス・シーザー」から「この胸に命ある限り」 ヘンデル作曲 森 麻季4.歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」から「なんとつらい時間 残酷な運命」 ~「エウリディーチェを失って」 グルック作曲 藤木大地、砂川涼子 5.歌劇「タンホイザー」から「私の歌は君のためのもの」~「裏切り者よ 出ていけ」 ワーグナー作曲 福井 敬、谷口睦美6.歌劇「オテロ」から「無慈悲な神の命ずるままに」 ヴェルディ作曲 黒田 博7.歌劇「トスカ」から「テ・デウム」 プッチーニ作曲 須藤慎吾、合唱幕間 「鏡の中の鏡」アルヴォ・ペルト作曲 / 大石裕香 振付 ※世界初演 【上山榛名、水城卓哉、宮本 萌{貞松・浜田バレエ団}】(舞踊) 遠藤真理、松田華音8.歌劇「ボリス・ゴドノフ」から「戴冠式の場」~「私は最高の権力を手に入れた」 ムソルグスキー作曲 妻屋秀和、合唱9.歌劇「ドン・カルロ」から「ひとり寂しく眠ろう」 ヴェルディ作曲 ジョン・ハオ10。楽劇「サロメ」から「どうして私を見てくれないの?」 リヒャルト・シュトラウス作曲 森谷真理11.楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「優しくかすかな彼のほほえみ」ワーグナー作曲 田崎尚美 12.歌劇「ドン・ジョヴァンニ」から「食事のしたくができた」モーツァルト作曲 大西宇宙、斉木健詞、青山 貴、船越亜弥、黒澤明子、山際きみ佳、 清水徹太郎、迎 肇聡、男声合唱 13.オラトリオ「メサイア」から「ハレルヤコーラス」ヘンデル作曲 ソリストおよび合唱全員 NHKニューイヤーオペラコンサートは、毎年1月3日に有料で行われて来たが、昨年NHKホールの改装が終わってから無料抽選方式に変更。 珍しく抽選に当たって山の神とインバウンドで賑わう渋谷駅からNHKホールへ向かった。 今回オーケストラはオケピットに入り、舞台上には階段状のセットが置かれ、曲に合わせて、セットの変更や照明が加わりオペラの場面を再現する。衣装、メイキャップも、各オペラに合わせたものになっている。 今回テーマが「対の歌声、終わらない世界」となっており、1つのオペラから2人で続けて歌うか全く異なるオペラを2人で続けて歌う構成になっており、始まる前にスタッフから2曲終わってから拍手をするよう注意のアナウンスもあり。 全体的な印象としては、とにかく暗い。選曲や構成はウクライナ戦争やガザ地区戦闘を受けて制作されたと思うが、元旦早々の能登半島地震、羽田空港事故もあり、より暗い気持ちになった。終演後の観客からも晴れやかな顔や楽しそうなおしゃべり声は聞こえず。 多くのアリアが死や死を連想させる曲になっており、ラスト「ハレルヤ」の前の「ドン・ジョヴァンニ」は地獄堕ちの場面を再現する徹底さ。 コンサート名に「ガラ」はなく、全体として1つのテーマ性は感じられたが、新年早々の公演であるのに今年への希望、救いの面は聞こえてこなかった。 ただ個々のアリアとしては日本で今歌ったら一番であろう歌手たちを出演させており、いずれも素晴らしい。 森麻季のクレオパトラのアリアは細部まで完璧で、昨年のBCJ公演を思い出した。森谷真理のサロメ、田崎尚美のイゾルテも役に成り切った歌いっぷりでもっと聞きたいと思わせる。砂川涼子エウリディーチェと藤木大地オルフェオもオペラの場面に引き込まれるような歌唱だった。 オケは多種多様な曲を歌手と完璧に合わせ、全体のバランスも素晴らしく、指揮者ドラゴン沼尻の功績でしょう。 合唱もプロ4団体からで迫力もあり良かった。エンディングの「ハレルヤ」は、最後の歌詞が英語でなくドイツ語?だったのはなぜか。 ニューイヤーとしての選曲、構成には疑問あるものの、個々のオペラアリアとしては楽しめた公演だった。End
2024.01.03
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鑑賞日:2023年11月26日(日)14:00開演入場料:6,000円(S席 1階8列)【主催】(財)藤沢市みらい創造財団 芸術文化事業課藤沢市民オペラ50周年記念オペラ「オテッロ」G.ロッシーニ作曲全3幕(演奏会形式・イタリア語上演・日本語字幕付)会場:藤沢市民会館スタッフ指 揮 :園田隆一郎合唱指揮:浅野深雪管弦楽 :藤沢市民交響楽団合 唱 :藤沢市合唱連盟副指揮 :松川智哉/柴田慎平出演オテッロ :宮里直樹デズデーモナ:砂川涼子エルミーロ :妻屋秀和ロドリーゴ :小堀勇介イアーゴ :山本康寛エミーリア :中島郁子ルーチョ/ゴンドラ漕ぎ:石井基幾総 督 :平尾啓ナビゲーター:朝岡聡感想 藤沢市民オペラでロッシーニの「オテッロ」を取り上げ、今売出し中テノールの宮里直樹、小堀勇介が出演とのことで気温10℃以下の寒空の下、藤沢に向かった。 客席は空席が見られず本当の満席。座席は8列の中央だが、舞台張り出しと前2列は空席にしてあるので、実質3列目。歌手の表情がよく見える。 演奏会形式なので、指揮者の左右に譜面台が3台ずつ置かれ、歌う場面で歌手が登場し、譜面台に楽譜を置いて歌う。 3幕は指揮台の横に椅子が置かれ、デズデーモナが殺されるとそこへ静かに座る演出になっていた。 ヴェルディの「オテロ」は、オテッロ、ロドリーゴがテノールで、悪役イアーゴがバリトンだが、本作品はいづれもテノールで配役されている。小堀勇介と山本康寛はロッシーニ作品を多く歌っており、アジリタ含め完璧。特に小堀勇介は、第2幕のアリアではハイC以上の高音のアドリブも入って絶好調。そこへヴェルディやプッチーニ作品を多く歌う少し重めの宮里直樹の迫力あるテノールの歌声が絡んでいく。 第1幕フィナーレの3重唱は、合わせるというより正にバトル。音楽の作りの巧みさを満喫できる演奏だった。 デズデーモナ役の砂川涼子も絶叫部分もあるものの素晴らしい歌声で、3幕「柳の歌」はハープとの重唱で、その悲しみが十分に伝わる。 エミーリア役の中島郁子、エルミーロ役の妻屋秀和はいつも通りの安定した歌声で、支える。 オーケストラは、前回聞いたよりも弦のばらつきが少なく、管楽器のミスも気にならない程度で上手くなっている。ロッシーニ・クレッシェンドも安定して表現されて良かった。合唱も男声が多く、迫力があった。 歌手の配役含め、これだけロッシーニの音楽の素晴らしさを表現出来たのは、指揮者の功績でしょう。ロッシーニ歌手とヴェルディ歌手を融合させて、より豊かな音楽を醸し出した、あっと言う間の4時間弱(15分程度の休憩2回含む)の演奏だった。 そして演奏会形式を補い、よりオペラ音楽を楽しむことが出来たのも、的を得た朝岡聡のナレーションの力も大きいと感じた演奏会だった。 来年11月に藤沢市民オペラによるモーツアルト「魔笛」の4日間公演が予定されており、今から楽しみに。End
2023.11.26
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鑑賞日:2023年11月12日(土)14:00開演入場料:10,800円(S席:セット券 1階M列)【主催】(財)ニッセイ文化振興財団[日生劇場]日生劇場開場60周年記念公演NISSAY OPERA 2023オペラ「マクベス」ヴェルディ作曲全4幕(イタリア語上演・日本語字幕付)会場:日生劇場スタッフ指 揮 :沼尻 竜典演 出 :粟國 淳美術・衣装:アレッサンドロ・チャンマルーギ照 明 :大島 祐夫(A.S.G)振付・ステージング:広崎 うらん合唱指揮:須藤 桂司演出助手:上原 真希舞台監督:幸泉 浩司(アートクリエイション)副指揮 :喜古 恵理香・ 松村 優吾コレペティトゥア:平塚 洋子・経種 美和子管弦楽 :読売日本交響楽団合 唱 :C.ヴィレッジシンガーズ出演マクベス :大沼 徹マクベス夫人:岡田 昌子バンクォー :妻屋 秀和マクダフ :大槻 孝志マルコム :髙畠 伸吾侍 女 :藤井 麻美マクベスの従者・第⼀の幻影:後藤 春馬マクベスの従者・第⼀の幻影:金子 慧⼀第二の幻影 :田浦彩夏第三の幻影 :大木美枝ダンサー :西田 健二、吉﨑 裕哉、中村 駿、鈴木 遼太、 永森 祐人、高橋 佑紀、小川 莉伯感想 日生劇場で「マクベス」公演があるとのことで、急に寒くなった曇り空の下、日比谷へ向かった。 今年6月公演の「メデア」とのS席セット券を購入したもの。客席は満席。 時間となり客席暗転。指揮者登場で前奏曲が始まる。前面の赤幕が開くと黒幕となり、前奏曲が終わる頃に黒幕が上がり森の場面となる。枯れた大きな木が横たわっており、この後の室内の場面でも枯れ木を吊り上げ壁面にしたり、空中に浮かせたりする。 室内の場面では机や椅子、ベッドが並べられているのみで、壁などはなく暗い状態で、出演者にスポットが当てられ、浮かび上がらせる演出。魔女の森の場面では数mある大きな人形を3体登場させ、動きが入ることでより不気味さを表し,ダンサー達の踊りも効果あり。 歌手は皆さん役に合った歌声で良かった。特にマクベス夫人役の岡田昌子が迫力ある歌声と4幕の夢遊状態での殺人を恐れる様子を表していた。合唱も場面に合わせ魔女の森では少しユーモアを入れたり、フィナーレはしっかり締まった歌声で良かった。 オケは、全体的にテンポ良く、ラストへ向かっての盛り上げも大きく、退屈しない演奏だった。指揮者の功績でしょう。 来年の日生オペラは11月に、ドニゼッティ作曲の「連隊の娘」と「ピーア・デ・トロメイ」のベルカントオペラが予定されており、今から楽しみに。End
2023.11.12
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鑑賞日:2023年10月15日(日)14:00開演入場料:6,000円(D席/5階 R1列)【主催】(財)東京二期会《二期会創立70周年記念公演》シュトゥットガルト州立歌劇場との提携公演東京二期会オペラ劇場歌劇「ドン・カルロ」ヴェルディ作曲全5幕(イタリア語上演/日本語および英語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :レオナルド・シーニ演 出 :ロッテ・デ・ベア演出補 :カルメン・クルーゼ舞台美術:クリストフ・ヘッツァー照 明 :アレックス・ブロック振 付 :ラン・アーサー・ブラウン合唱指揮:佐藤 宏演出助手:太田麻衣子舞台監督:村田健輔公演監督:大野徹也公演監督補:永井和子合 唱 :二期会合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演フィリッポII世:ジョン ハオドン・カルロ :樋口達哉ロドリーゴ :小林啓倫宗教裁判長 :狩野賢一修道士 :畠山 茂エリザベッタ :竹多倫子エボリ公女 :清水華澄テバルド :中野亜維里レルマ伯爵&王室の布告者:前川健生天よりの声 :七澤 結6人の代議士 :岸本 大、寺西一真、外崎広弥、宮城島 康、宮下嘉彦、目黒知史感想 余り上演機会が多くないヴェルディ「ドン・カルロ」の公演があるとのことで、小雨降る中、上野まで出掛けた。 東京二期会主催で東京文化会館周辺で「Tokyo Opera Days」10月9日〜15日開催されているらしく、大ホールホワイエでは、「マリア・カラス生誕100年記念展」として、当時のポスター、衣装や、レコードが展示されていた。 客席は1階S席の中央は埋まっているが、左右両側と後ろはほとんど空席。2~3階も空席が多く、6割程度の入りで日曜日としては寂しい。 チューニングの後、客席暗転、指揮者登場で直ぐに始まる。幕が開くと、灰色の大きな壁が舞台前に表れ、壁が回転することで次の場面が舞台上に表れる。舞台上は、机、椅子が置かれれる程度でミニマムな演出。 1,2幕が連続して上演されたが、歌手は取り敢えず大きな声で歌っているようにしか聞こえてこず、オケも単調に感じ、演出もミニマムで観る所無く、当方の体調も今一で、2幕終わった所で帰ることに。 ヴェルディ作品は、歌手が上手いか、特徴あるオケの演奏や演出が入らないと、つまらなくなる典型的な上演に思った。End
2023.10.15
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鑑賞日:2023年10月16(土)15:00開演入場料:11,000円(12列)【主催】神奈川県立音楽堂((財)神奈川芸術文化財団)音楽堂室内オペラ・プロジェクト第6弾鈴木優人指揮バッハ・コレギウム・ジャパン歌劇「ジュリオ・チェーザレ」(セミ・ステージ形式)ヘンデル作曲全3幕(イタリア語上演・日本語字幕付)会場:神奈川県立音楽堂スタッフ:指揮・チェンバロ:鈴木優人管弦楽 :バッハ・コレギウム・ジャパン演 出 :佐藤美晴衣 装 :臼井梨恵照 明 :稲葉直人出演:クレオパトラ:森 麻季セスト :松井亜希チェーザレ :ティム・ミードトロメーオ :アレクサンダー・チャンスコーネリア :マリアンネ・ベアーテ・キーラントニレーノ :藤木大地クーリオ :加藤宏隆アキッラ :大西宇宙感想: 神奈川県立音楽堂の室内オペラ・プロジェクト第6弾はBCJによるヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」の公演があるとのことで、ようやく少し涼しくなった秋空の下、紅葉坂を登って音楽堂へ。 開演30分前に、指揮者の鈴木優人と演出家の佐藤美晴によるプレトークが有り。2020年10月のBCJ「リナルド」は、新型コロナの影響で海外歌手が来日できなかったが、今回はすべて予定通りの配役となり、本オペラは先の2公演(10/7兵庫芸術文化センター、10/10東京オペラシティー)は素晴らしい歌手の出来とのことで、本日の最終公演が更に楽しみに。チケットはSould-Outで当日券無し。 今回セミ・ステージ形式で舞台は張り出しで幕は無し。オケの周りを囲むように四方に山台を配置。舞台左右は直接舞台裏が見えないよう衝立が置かれている。山台側面には赤色のギリシャ象形文字が貼られ、公演前や休憩時間は舞台袖の字幕装置にも表示されていた。 舞台左右には松明の明かりが4つのみ。その他ナイフや剣などの小道具以外に装置は使わず、照明を使って、影絵の様に庭や牢屋、海岸を表し場面転換を行っていた。瞬時に次の場面に移り、音楽が途切れること無く、大変良かった。 衣装は、ローマ側は白色を基調に、エジプト側は金色や青色などカラフルな色を使いそれらしい形状。クーリオとアキッラの二人は、ヤンキー的な危なっかしいもので面白い。 歌手は海外、日本の方含め全て良かった。特にタイトルロールのティム・ミードは素晴らしいカウンターテナーの歌声。場面や心情に合わせ、戦いの場面では見栄を切った様な切れのある強い歌声で、アジリタも完璧に、消え入るような弱音も最後まで聞こえて来る。クレオパトラとの重唱も実に美しい。昨年の新国立も歌ってほしかった。 トロメーオ役のアレクサンダー・チャンスもカウンターテナーで、柔らかな歌声の中にも、姉への恨みやチェーザレへの敵対心など強い声もあり、悪役としての演技も良い。 昨年の新国立でタイトルロールを歌ったマリアンネ・ベアーテ・キーラントがコーネリアの女性役。落ち着いたコントラルトの歌声で、低音も十分に聞こえ、夫を殺された妻の悲しみが伝わってくる。 日本人歌手ではクレオパトラ役の森麻季が美貌と抜群のスタイルを強調する衣装で正しく女王の容姿。2幕冒頭の美徳の女神の姿でチェーザレを誘惑する「優しい眼差しよ」の場面では、下手山台奥からハープ他の4名が後部山台に上がったバンダと共に歌い、チェーザレを虜に。 3幕「この胸に息のある限り」もその愛と悲しみが歌から伝わり素晴らしかった。 セスト役の松井亜希も多くのアリアを丁寧に歌えて良かった。今回ほとんどカット無しとのことで、前回の新国立ではカットが多かったと思われる。 低音のアキッラ役の大西宇宙、クーリオ役の加藤宏隆も、演技含め迫力のある歌声だった。 一番驚いたのは、ニレーノ役の藤木大地で、2幕始まる前のシューニング時に登場してチェンバロを鳴らし笑いを誘い、歌う以外の場面でも登場して演技を加え、舞台の盛り上げに一役買っていた。歌はいつものように明るく素晴らしい。このような端役に使うとは贅沢な布陣。 あと3幕フィナーレの合唱は、出演者全てが舞台上に登場して歌っていた。プログラムにも合唱の表記ないことから、1幕他の影歌の合唱も出演者皆さんで歌っていたと思われる。 オケはチェンバロ3台が中央と左右に置かれ、鈴木優人が中央のチェンバロでレチタティーヴォ部分の多くを演奏。デオルボ、リュートなど古楽器もあり、バロックの響きを楽しめた。途中歌手の旋律とエコーになる所では、その楽器演奏者が立ち上がって演奏し臨場感が生まれた。 冒頭や戦いの部分では4本(2調性x2本)のナチュラルホルンが加わり、力強い響きに。視覚含め端々まで考えられた演奏で流石BCJ。 そして、全てバランス良く聞こえて来るのは、1,000人規模、1階席のみで木製の神奈川県立音楽堂ホールの音響のためであり、入場料も高く感じられない。これが新国立劇場のような規模のホールだと音量不足等で音楽のバランスが崩れるだろう。 休憩2回入れて4時間30分越えの演奏だったが、全く退屈せず。 ぜひ、今後も当ホールでバロックオペラの公演を続けて欲しい。End
2023.10.14
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鑑賞日:2023年10月1日(日)14:00開演入場料:6,930円(C席 4階1列)【主催】(財)新国立劇場令和5年度(第78回)文化庁芸術祭オープニング・オペラ新国立劇2023/2024シーズンオペラ「修道女アンジェリカ」プッチーニ作曲全1幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉オペラ「子どもと魔法」ラヴェル作曲全2部〈フランス語上演/日本語及び英語字幕付〉会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :沼尻竜典演 出 :粟國 淳美 術 :横田あつみ衣 裳 :増田恵美照 明 :大島祐夫振 付 :伊藤範子舞台監督:髙橋尚史合唱指揮:三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団児童合唱:世田谷ジュニア合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演『修道女アンジェリカ』 アンジェリカ:キアーラ・イゾットン 公爵夫人 :齊藤純子 修道院長 :塩崎めぐみ 修道女長 :郷家暁子 修練女長 :小林由佳 ジェノヴィエッファ:中村真紀 オスミーナ :伊藤 晴 ドルチーナ :今野沙知恵 看護係修道女:鈴木涼子 托鉢係修道女1:前川依子 托鉢係修道女2:岩本麻里 修練女 :和田しほり 労働修道女1 :福留なぎさ 労働修道女2 :小酒部晶子『子どもと魔法』 子ども :クロエ・ブリオ お母さん :齊藤純子 肘掛椅子/木 :田中大揮 安楽椅子/羊飼いの娘/ふくろう/こうもり:盛田麻央 柱時計/雄猫 :河野鉄平 中国茶碗/とんぼ :十合翔子 火/お姫様/夜鳴き鶯:三宅理恵 羊飼いの少年/牝猫/りす:杉山由紀 ティーポット :濱松孝行 小さな老人/雨蛙 :青地英幸感想 新国立劇場の2023/2024シーズン開幕でダブルビルの新制作公演があるとのことで、夏日の中、初台まで出掛けた。 いきなり入り口で手荷物検査がるとの表記があり、階段に赤絨毯は無く、誰が来られるかと思っていたら、秋篠宮皇嗣同妃両殿下がご来場とのアナウンスあり。2階席は、客席に入る廊下の両サイドに机が出され、チケットの再チェックをしていた。 開演時間になると、文化庁長官の都倉俊一氏による文化庁芸術祭オープニングの挨拶があり、ようやく「修道女アンジェリカ」の公演スタート。 幕が開くと修道院の室内や庭の設定で、白や黒を基調とした壁や床はあるが天井は設けられておらず、その装置と人々が左右に動くことで、瞬時に次の部屋に転換されていく。衣装も白と黒を基調。 最後の演出は黒い十字が描かれた奥の壁が斜めに手前倒れて来て、その中央から赤い光がアンジェリカに注ぐことで、天に召されたことを表していた。 長めの休憩の後の「子どもと魔法」は打って変わって、誇張された衣装を着た登場人物達の周りを色取り取りの大小の造形が動き、映像と組合せてメルヘンの世界を表現している。 劇場の装置を上手く使って、瞬時に場面が変わるので、途中で幕は降りず、音楽が途切れない。 演出に費用と時間が掛かっていると思われる。 通常ダブルビル公演は、歌手も両作品に出演することが多いが、今回は齊藤純子が公爵夫人とお母さん役で出ている以外、全て別な歌手になっている。 両作品とも主役は海外の歌手を呼んで来ている。アンジェリカ役のキアーラ・イゾットンは、修道女たちとの重唱では、声が異質に感じたが、後半の独唱では生き別れた子どもを思う心境をドラマチックに歌い良かった。子ども役のクロエ・ブリオはお得意の役らしく、子どものわがままや不安な心境を演技と歌声で上手く表現出来ていた。 その他の日本人歌手の皆さんも、日本のオペラでは主役や重要な役を歌う方も多く、これだけ揃えられたのは新国立劇場の力(財力、補助金)でしょう。 音楽もプッチーニとラヴェルでは随分違うが、それぞれの良さを聴けたように思う。 ダブルビルのオペラ公演は、同じ作曲家の作品であったり、同じ国(言語)の作品であったり、「道化師」と「カヴァレリア・ルスティカーナ」のように同時代でストーリーが近い作品を並べることが多いが、今回はストーリーに母親と子どもが出てくる共通点はあるものの、それ以外は関連性が無い。 関連性の無い作品を歌手、演出もあえて関連性を持たぜず別物として上演することで、オペラの多様性を楽しめる贅沢な公演だったと言えるでしょう。 End
2023.10.01
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鑑賞日:2023年9月10日(日)14:00開演入場料:3,000円(E席/4階 4列)【主催】(財)日本オペラ振興会藤原歌劇団公演共催:新国立劇場・東京二期会歌劇「二人のフォスカリ」ヴェルディ作曲全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :田中祐子 演 出 :伊香修吾美 術 :二村周作照 明 :齋藤茂男衣裳コーディネーター:小野寺佐恵振 付 :伊藤範子舞台監督:菅原多敢弘副指揮 :山舘冬樹、大森大輝演出助手:手塚優子 合唱指揮:安部克彦合 唱 :藤原歌劇団合唱部/新国立劇場合唱団 /二期会合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演フランチェスコ・フォスカリ:上江隼人→押川浩士ヤコポ・フォスカリ :海道弘昭ルクレツィア・コンタリーニ:西本真子ヤコポ・ロレダーノ :杉尾真吾バルバリーゴ :黄木 透ピザーナ :加藤美帆感想 藤原歌劇団の2023-24シーズンの初演公演、ヴェルディの初期作品とのことで台風一過の真夏日の下、初台まで出かけた。 初めて観る演目のため事前にストーリーを読んでいったが、動きの少ない台本。 ヴェネツィア総督の息子ヤコボが無実の罪で再審され、流刑が結審し、クレタ島へ送られ、そこで死を迎える。それを聞いた十人委員会により総督フランチェスコが辞職させられ、死を迎える。 舞台は壁がない、奥に向かって高くなっていく台上で演じられ、照明や中央に降ろされた幕と、椅子等の最小限の小道具により、宮殿の大広間、牢獄、サンマルコ広場、総督の部屋に転換されるので時代は不詳。 衣装は、男女とも現代的な黒のスーツ、スカート、シャツ。総督が唯一赤いマントを羽織り、3幕のサンマルコ広場でのゴンドラレースの場面のみ、民衆が白を基調にしたシャツやスボン、スカートを履いている。 総督フランチェスコ、息子ヤコボ、その妻コンタリーニの3人が中心で、それぞれの心境を歌い上げる。 総督フランチェスコ役の押川浩士は、その立場から息子の流刑を認めざるを得ない苦悩、最後は辞職させられてしまう無念をコントロールされた歌声で歌い、想いが伝わって来て良かった。 息子ヤコボ役の海道弘昭は、高音部で一部届かない部分もあったが、中音域はよく響く柔らかい声で歌えていた。 妻コンタリーニ役の西本真子は強目の歌声で高音域まで歌えているものの、ビブラートが多く余り美しく聞こえてこない。 幕終わりのフィナーレ含め合唱場面が多く、3団体の合同で迫力があり良かった。 全体的にテンポを落とさずにきびきびした演奏で、イル・トロヴァトーレのような前奏や美しい旋律のアリアなどヴェルディらしい音楽が聞こえて来て、フィナーレに向かって盛り上げた所は、オケと指揮者の功績でしょう。 台本的に息子ヤコブの冤罪や総督が周囲から恨まれている原因などは舞台上で一切演じられず、観客としては最後の悲劇に共感まで至らない。そこが演奏される機会が少ない理由なのでしょう。End
2023.09.10
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鑑賞日:2023年5月28日(日)14:00開演入場料:7,920円(C席 4階1列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2022/2023シーズンオペラ「リゴレット」ヴェルディ作曲全3幕(イタリア語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :マウリツィオ・ベニーニ演 出 :エミリオ・サージ美 術 :リカルド・サンチェス・クエルダ衣 裳 :ミゲル・クレスピ照 明 :エドゥアルド・ブラーボ振 付 :ヌリア・カステホン舞台監督:髙橋尚史合唱指揮:三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演リゴレット :ジョルジュ・ペテアン →ロベルト・フロンターリジルダ :ハスミック・トロシャンマントヴァ公爵 :イヴァン・アヨン・リヴァススパラフチーレ :妻屋秀和マッダレーナ :清水華澄モンテローネ伯爵:須藤慎吾ジョヴァンナ :森山京子マルッロ :友清 崇ボルサ :升島唯博チェプラーノ伯爵:吉川健一チェプラーノ伯爵夫人:佐藤路子小 姓 :前川依子牢 番 :高橋正尚感想 新国立劇場で新制作の「リゴレット」が上演されるとのことで、梅雨が近づき少々蒸し暑い曇天の下、初台まで出掛けた。 新制作となっているが、スペインのビルバオ・オペラとリスボン・サン・カルロス歌劇場の共同制作で初演された演出をそのまま持って来てるもの。 舞台の左右と奥に囲むように壁を配置し、中央部の台・装置を入れ替えて、マントヴァ公爵邸の大広間、リゴレットの住居・街並み、河畔の居酒屋を表す。抽象的だが、時代設定は変えず、音楽を邪魔するものではない。2幕と3幕は休憩を入れず、幕を開けたまま暗転の状態で場面転換を行い、オペラの連続性を維持出来ていた。 歌手は主役3人がそれなりに歌えていたが、感動するまでには至らず。客席からは盛んに「ブラボー」等の掛け声が出ていたが、それほどとは思えず。 タイトルロールのロベルト・フロンターリは役にあった歌声だが、せむし男の道化師的な動きには見えず、マントヴァ公爵への復讐する恨みやジルダを失った時の嘆きなど十分には伝わって来ず。有名作品のため過去の名演と比べてしまうのは致し方なし。当初発表のジョルジュ・ペテアンではどうだったか。 ジルダ役のハスミック・トロシャンは、リリコのソプラノで、アカペラのコロラトゥーラは美しく響いていた。 マントヴァ公爵のイヴァン・アヨン・リヴァスは、高音は出るもののアタック気味、中音域は少々こもるため、心地よく聞こえて来ない。 オケは歌わせる所はゆっくりと歌手にピッタリと合わせ、音楽を盛り上げる所は、テンポ、音量を上げて、ダレさせない。 スカラ座やMETでも振っているイタリア人マエストロ、マウリツィオ・ベニーニの功績でしょう。 新国立劇場の今シーズン鑑賞は「ラ・ボエーム」をパスで、本日で終了。来シーズンは新制作少なく、シーズンオフの「スーパーエンジェル」等の実験的公演もなく寂しい。 End
2023.05.28
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鑑賞日:2023年6月27日(土)14:00開演入場料:10,800円(S席:セット券 1階M列)【主催】(財)ニッセイ文化振興財団[日生劇場]日生劇場開場60周年記念公演NISSAY OPERA 2023オペラ「メデア」ケルビーニ作曲全3幕(イタリア語上演・日本語字幕付)会場:日生劇場スタッフ指 揮 :園田隆一郎演 出 :栗山民也美 術 :二村周作衣 裳 :前田文子振 付 :田井中智子字幕・翻訳:本谷麻子舞台監督 :大澤 裕副指揮 :大川修司、粟辻 聡、矢野雄太照 明 :勝柴次朗ヘアメイク:鎌田直樹音 響 :佐藤日出夫演出助手 :橋詰陽子合唱指揮 :キハラ良尚コレペティトゥア:平塚洋子、星 和代、髙田絢子管弦楽 :新日本フィルハーモニー交響楽団合 唱 :C.ヴィレッジシンガーズ出演メデア :岡田昌子ジャゾーネ:清水徹太郎グラウチェ:小川栞奈ネリス :中島郁子クレオンテ:伊藤貴之第一の侍女:相原里美第二の侍女:金澤桃子衛兵隊長 :山田大智感想 日生劇場で「メデア」日本初演公演があるとのことで、コロナ制限が無くなり人出が増えた中、日比谷へ向かった。 今回11月公演とのS席セット券が先行発売され、岡田昌子さん期待で「マクベス」とのセット券を購入。東京二期会「午後の曳航」は演出が宮本亜門なのでパス。 「メデア」はマリカ・カラスが復活させたオペラらしいとは知っていたが、今回日本初演で当方も初見となる。METラーブビューイングでも今シーズン上演されたが、メトロポリタン歌劇場としても初演とのこと。タイトルロールが高音が連続しドラマティコが要求される難役であることと、ギリシャ悲劇で最後に自らの子供をその手で殺してしまう残酷なストーリーのため上演機会が少ないのでしょう。 5分押しでオケ・チューニング、指揮者登場し、序曲を演奏。プログラムに記載あるように、作曲家ルイージ・ケルビーニ(1970~1842年)は、ハイドンやベートーヴェンと同時代で、確かに序曲もベートーヴェンの交響曲を感じられる。 序曲中は紗幕に子供二人の影を遠近を使って、遊んでいる情景を映す。 幕が開くと舞台は暗い灰色の壁に囲まれ、中央は階段状になっている。左の壁から斜めに廊下が降りてきて、宮殿内の設定。次に階段上部の壁が上に上がり、アルゴー号が港に着いて、宝物が運ばれる場面になる。その後も階段の前を壁が塞ぎ、宮殿の内部に戻る。右側の壁は半透明の幕で、明るくなるとメデアの影を写し苦悩を表す。大きな装置転換はないが、照明を上手く使い、場面や登場人物の心境を表している。3幕最後、舞台上部右側の壁が動き、火災を表す赤い照明の中、血の付いた子供の亡骸を前に掲げメデアが降りてくる場面は、思わずこちらもゾッとして、鳥肌が立った。 歌手は、タイトルロールの岡田昌子が圧巻。圧倒的な歌声で、最後まで歌いきった。特に3幕の子供たちへの愛情から、ジャゾーネへの恨みが上回り、呪うために遂に子供たちを自らの手で殺そうと決心をするまでの心の変化を歌声と演技、張り詰めた緊張感で最後まで表現していた。ジャゾーネ役の清水徹太郎はメデアへの仕打ちの後悔と恐れを、グラウチェ役の小川栞奈はジャゾーネへの愛情を、侍女ネリス役の中島郁子はメデアをどうにか止めようとする苦悩を、クレオンテ王役の伊藤貴之は王の威厳と娘への心配を歌えていた。 合唱も少ないながらも、演技含め十分に歌えていた。とくに結婚式での裏歌が美しい。 一番の功績は園田隆一郎マエストロでしょう。3幕のバンダや裏歌はまったくズレがなく完璧。全体を通して、全てを統率していることが伝わる。3幕エンディングのテンポアップと盛り上げも素晴らしかった。 これだけのハイレベルの公演を出来るのは、日生劇場がオーディションで歌手を選び、自主運営で十分な準備が出来ているからでしょう。11月の「マクベス」も楽しみに。 End
2023.05.27
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鑑賞日:2022年4月16日(日)15:00開演入場料:10,000円(D席/3階 R4列)【主催】東京・春・音楽祭実行委員会【共催】読売日本交響楽団東京・春・音楽祭2023東京春祭プッチーニ・シリーズ vol.4歌劇「トスカ」<演奏会形式>プッチーニ作曲全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :フレデリック・シャスラン管弦楽 :読売日本交響楽団コンサート・マスター:長原幸太合 唱 :東京オペラシンガーズ児童合唱 :東京少年少女合唱隊合唱指揮 :仲田淳也児童合唱指揮 :長谷川久恵出演トスカ :クラッシミラ・ストヤノヴァカヴァラドッシ :ピエロ・プレッティ→イヴァン・マグリスカルピア :ブリン・ターフェルアンジェロッティ:甲斐栄次郎堂 守 :志村文彦スポレッタ :工藤翔陽シャルローネ :駒田敏章看 守 :小田川哲也羊飼い :東京少年少女合唱隊メンバー感想 昨年のトゥーランドットが良かったので、今年も東京・春・音楽祭のプッチーニ・シリーズを聞きに、突然の雷雨の中、上野まで出掛けた。 客席はB,C席に空きが多く見られ、全体では6~7割程度の入りか。新型コロナの高齢者外出控えの残像とチケット価格アップの影響もあるのでは。 今回最安値E席¥7,000が売切れで、しょうがなくD席¥10,000を購入。演奏会形式で1万円だと高額に感じる。 時間となり、オケ、合唱が登場。オケは舞台上7プルトの総勢約80人。合唱は奥の山台に70人。児童合唱は、1幕歌う場面近くに、オケと合唱山台の間に14人が白い衣装で登場し、横に並んで曲に合わせて動きを入れる。 冒頭から大迫力のオケで圧倒される。2幕スカルピアが殺された後の消え入りそうなP、3幕冒頭の揃ったホルンの音など素晴らしい演奏でイタリア人指揮者の功績とヴァイグレ指導の影響か。 3幕冒頭の鐘の音は、シンセで出していた。 合唱は1幕山台貼り付けで、大迫力のテ・デウムを歌唱。2幕はスカルピアの公邸室内で、屋外の祝賀会でトスカと合唱の歌声が窓から聞こえる設定のため、オペラでは裏歌で歌う場面だが、合唱は山台に張り付き。但し、楽譜を顔の前に立てP感を出している。トスカは裏歌。合唱は歌い終わると退場。 3幕は、途中男性が20人程山台に現れ、兵士達の「あ~。スカルピアが刺された」の台詞を言って退場。 3幕冒頭は東京少年少女合唱隊から一人の少女が制服を着て合唱の山台中央に登場し羊飼いを歌い、らしく聞こえて来た。 歌手はタイトルロールのクラッシミラ・ストヤノヴァが少々ご年配でビブラートは多いものの、終始コントロールされた歌声でトスカの心情を歌う。見せ場の2幕アリア「歌に生き恋に生き」は指揮台に座り、手すりに掴まりながら、その想いを歌い素晴らしい。 カヴァラドッシ代役のイヴァン・マグリは、チラシやプログラムの長髪と異なり、オールバックに眼鏡を掛けて登場し、唯一楽譜を見ての歌唱。大音量のオケの前でも歌声は聞こえ、トスカとの重唱も良い。アリア「妙なる調和」「星は光りぬ」の最高音も問題なく、歌唱後はオケが止まり、ブラボーの掛け声が掛かっていた。 何と言ってもスカルピア役ブリン・ターフェルが圧巻。1幕終わりのテ・デウムでの歌唱は、大音量のオケや合唱の中でも十分に聞こえ、その歌声は正にスマートでかつ策略家の悪役スカルピアそのものに思えた。2幕トスカに迫る所の歌声と小芝居もぞっとさせて上手い。 演出は、舞台壁への照明のみで、3幕は城壁ような映像の照明あり。2幕殺された後のスカルピア、3幕カヴァラドッシは、指揮台の横に後ろ向きに立っていることで死んでいることを表していた。3幕飛び降りるトスカは、右手を上げていた。 先日の「マイスタージンガー」はがっかりしたが、本日の「トスカ」は演奏会形式ながらも十分にオペラの情景を表現出来ており、やはり主役歌手のレベルが重要。 来年の東京春祭は、インタビュー記事で、マレク・ヤノフスキ指揮「トリスタンとイゾルデ」、セバスティアン・ヴァイグレ&読響「エレクトラ」、プッチーニ・シリーズ「ラ・ボエーム」、リッカルド・ムーティの演奏会やアカデミー公演が予定されているとのことで、楽しみに。End
2023.04.16
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鑑賞日:2022年4月9日(日)15:00開演入場料:8,000円(E席/5階 R2列)【主催】東京・春・音楽祭実行委員会【共催】NHK交響楽団東京・春・音楽祭2023東京春祭ワーグナー・シリーズvol.14楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」<演奏会形式>ワーグナー作曲全3幕(ドイツ語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :マレク・ヤノフスキ管弦楽 :NHK交響楽団ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル合 唱 :東京オペラシンガーズ合唱指揮 :エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩音楽コーチ:トーマス・ラウスマン出演ハンス・ザックス :エギルス・シリンスファイト・ポークナー :アンドレアス・バウアー・カナバスクンツ・フォーゲルゲザング:木下紀章コンラート・ナハティガル :小林啓倫ジクストゥス・ベックメッサー:アドリアン・エレートフリッツ・コートナー :ヨーゼフ・ワーグナーバルタザール・ツォルン :大槻孝志ウルリヒ・アイスリンガー :下村将太アウグスティン・モーザー :髙梨英次郎ヘルマン・オルテル :山田大智ハンス・シュヴァルツ :金子慧一ハンス・フォルツ :後藤春馬ヴァルター・フォン・シュトルツィング:デイヴィッド・バット・フィリップダフィト :ダニエル・ベーレエファ :ヨハンニ・フォン・オオストラムマグダレーネ :カトリン・ヴンドザム夜 警 :アンドレアス・バウアー・カナバス感想 昨年に引続き東京春祭ワーグナー・シリーズの公演があるとのことで、すっかり花が散って緑の葉に覆われた桜の木が並ぶ上野へ出掛けた。 東京・春・音楽祭も今年から入場料が上がり、演奏会形式ワーグナー・シリーズは昨年23,000~5,000円が今年26,000~8,000円に。 客席は1階左右後方に一部空きがあるもののほぼ満席。舞台は張り出しが出され、昨年同様映像がないため後部は反響板あり。 映像が無い代わりに場面毎に照明で色が付けられ、これでも十分効果あり。 開演時間となり、コンマスのキュッヒル氏初めオケが舞台上に登場しチューニング。7プルト3管編成で約80名。指揮者登場し、前奏曲が大音量で奏でられ分厚い音楽に圧倒される。 合唱は1幕は裏歌、2幕は舞台上手に集まり歌唱、2幕最後に舞台奥の山台に並び約70人。オケ含め出演者のマスクは無し。 歌手は、ザック役エギルス・シリンスはじめ安定した歌声で、特にベックメッサー役のアドリアン・エレートはコミカルな部分含め表現豊かな歌声で楽しめた。 ところが、ヴァルター役デイヴィッド・バット・フィリップの歌声が響きに乏しく埋もれてしまう。1幕のマイスターの資格試験で、従来形式ではないがザックスが感じたような新しい芸術はとても感じられず、試験に落ちてもしょうがないように聞こえる。これでは、ザックスがエファへの想いを諦め、ヴァルターに託すことが出来ない。 プロフィールを見てもワーグナー作品は昨シーズンのローエングリンだけで、人選ミスと思えてしまう。 演奏会形式の場合、主役の歌唱力が落ちると段々と不満が募り、聞いて居られなくなる。結局3幕を聞かず、2幕終了時点で帰ることに。 来週の「トスカ」も聞きに行く予定だが、カヴァラドッシ役に変更があり、今から不安に。End
2023.04.09
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鑑賞日:2023年3月19日(日)14:00開演入場料:4,950円(D席 4階1列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2022/2032シーズン歌劇「ホフマン物語」オッフェンバック曲全5幕(フランス語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :マルコ・レトーニャ演出・美術・照明:フィリップ・アルロー衣 裳 :アンドレア・ウーマン振 付 :上田 遙再演演出 :澤田康子舞台監督 :須藤清香合唱指揮 :三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団管弦楽 :東京交響楽団出演ホフマン :レオナルド・カパルボニクラウス/ミューズ:小林由佳オランピア :安井陽子アントニア :木下美穂子ジュリエッタ :大隅智佳子リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:エギルス・シリンスアンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ :青地英幸ルーテル/クレスペル:伊藤貴之ヘルマン :安東玄人ナタナエル :村上敏明スパランツァーニ :晴 雅彦シュレーミル :須藤慎吾アントニアの母の声/ステッラ:谷口睦美感想 2020年4月公演が新型コロナにより中止となり、3年振りに演奏されるとのことで、桜が咲き始めた中、新宿初台まで出掛けた。 入場時のカメラによる体温測定、クローク閉鎖、客席前2列空席は残っているが、ドリンクサービスは復活し、客席はマスク無しの観客もチラホラ。 終演時の「ブラボー」も数人あり。 第1幕と2幕を連続して演奏し、休憩の後3幕、2回目の休憩が入った後に4,5幕が演奏される。 本演出は新国立で5シーズン目で、前回の2018年4月の公演を観ている。 その際の印象通りで、音楽に合わせた、おしゃれで解りやす演出で衣装、メイキャップが面白い。 オケは、可もなく不可もなしで、安全運転の演奏に感じられた。 歌手の方はタイトルロールのレオナルド・カパルボは声は高音まで出ているものの、ぎくしゃくした歌い方で、若干聞きづらい。 ソプラノ3人はそれぞれ役に合った歌声。オランピア役の安井陽子はお得意のコロラトゥーラで、アントニア役の木下美穂子は若干ビブラートはあるが美しい高音を響かせ、ジュリエッタ役の大隅智佳子はストレートな高音で合唱の中でも良く聞こえ、舟唄の二重唱はバランスを取った歌声で素晴らしかった。 全体的にバランスの良い公演で、ホフマン物語の世界を楽しむことが出来た。 先に2023/2024シーズンの公演予定が発表されたが、最近の再演が多く、プレミエは2公演のみ。大野芸術監督が続けてきた委嘱新作公演やバロックオペラもなく新鮮味に欠ける。 新型コロナによる赤字の影響も推測され、元々の補助金頼みの体制では仕方ないかと思われるが、自主運営で新型コロナ禍でも着々と準備を進め、再開すると次々に新作を繰り出すメトロポリタン歌劇場とは大きな差を感じる。End
2023.03.19
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鑑賞日:2023年3月5日(日)11:00開演入場料:¥3,700 (シアター2/J列)【配給】松竹株式会社METライブビューイング2022-2023シーズン歌劇「フェドーラ」作曲:ウンベルト・ジョルダーノ全3幕(イタリア語/字幕付)会場:横浜ブルグ13指 揮:マルコ・アルミリアート演 出:デイヴィッド・マクヴィカー美 術:チャールズ・エドワーズ衣 装:プリギッタ・ライフェンシュトゥール照 明:アダム・シルバーマン合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団出演:フェドーラ :ソニア・ヨンチェヴァロリス・イパノフ:ピョートル・ベチャワオルガ :ローザ・フェオラデ・シリエ :ルーカス・ミーチェム上映時間:2時間42分(休憩1回)MET上演日:2023年1月14日感想 テノール・アリアが有名だが、まだ観たことのないジョルダーノ作曲「フェドーラ」がMETライブビューイングで上演されるとのことで、「めぐりあう時間たち」に引続き、横浜みなとみらいの映画館まで出掛けた。 客席は98席のシアターに20人程度の入りで、珍しい演目のためか少な目。 METでは25年振りの公演とのこと。調べてみると前回公演は指揮がアバド、主役歌手はフレーニ、ドミンゴらしい。 今回もこれからの映画紹介、METスポンサーコマーシャルが続き、約15分後にようやく本編が開始。 中継車の中からMET「ワルキューレ」のブリュンヒルデ役クリスティーン・ガーキーにMET総裁ピーター・ゲルブ氏が加わり作品の紹介の後、指揮者登場ですぐに演奏が始まる。 第1幕サンクトペテルブルクの屋敷、第2幕パリの社交場、第3幕はスイスアルプスの別荘で衣装含め原作通りの舞台設定。第1幕と2幕は連続して演奏され、休憩時にインタビューやこれからの演目紹介が入って第3幕上演となった。 第1幕はロシア皇女フェドーラの婚約者が殺害され、その犯人がロリス伯爵と疑われ、必ず突き止めると決意する。幕が降りると舞台装置を手際よく入れ替え、第2幕のパリの社交場に。フェドーラは気がある振りをしてロリスに真相を聞き出し、告発する手紙をロシアに送ってしまう。その後にロリスから婚約者がロリスの妻と逢引きをしている所に乗り込んで、もみ合う内に正当防衛で銃を射ってしまったことを聞き、更に互いの愛を確かめ、追手から逃れるため二人してスイスのオルガ伯爵夫人の別荘へ。 第3幕は、幸せそうな二人へロシアからロリスへ手紙が届き、先の告発文からロリスの弟が捕まり監獄で死亡、更に母親まで亡くなったこと知り、告発者を見つけ出して復讐すると。フェドーラは服毒し、告発者が自分で有ることを告げて亡くなるところで幕。 幕毎に二人の立ち位置と感情が大きく変わるので、それを観客に納得させる歌声と演技が必要。 タイトルロールのヨンチェヴァの歌声は素晴らしく、中域から高音まで柔らかくもしっかりとした歌声で録音のスピーカー越しでも高音で鼓膜が震える。皇女の気品を保ちながらも、熱烈なキスシーン、3幕での幸せそうな笑顔から苦悩の表情への変化が映像から十分に伝わってくる。 相手役のベチャワも素晴らしく力強い高音で、2幕でのアリア「愛さずにはいられないこの思い」はゆっくりとしたテンポながらも、感情を入れながら最後まで歌いきった。インタビューでも、これまでの声のトレーニングで「制御できる全力」を心掛けているとのこと。 このアリアの旋律は、途中の間奏曲や終曲に用いられている。 3幕は正しく主役二人の歌声のバトル状態。 カーテンコールでは、1階客席はほぼスタンディングオベーションで、多くの観客が満足している様子が覗える。 第2幕では舞踏会上のピアノ演奏に合わせて歌が入ったり、バンダの演奏が加わったりとオペラとしては工夫されている作品。なかなか上演されないのは、主役二人へ高い技量が要求されるためかと思われた。 素晴らしい歌手、オーケストラ、舞台装置と演出、衣装と全てを揃えて、四半世紀振りに上演するMETの意気込み、底力を感じさせる公演だった。 End
2023.03.05
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鑑賞日:2023年2月26日(日)14:00開演入場料:2,000円(E席/5階 L1列)【主催】(財)東京二期会、(社)日本演奏連盟2023都民芸術フェスティバル 参加公演《二期会創立70周年記念公演》ジュネーヴ大劇場との共同制作東京二期会オペラ劇場歌劇「トゥーランドット」プッチーニ作曲(ルチアーノ・ベリオによる第3幕補作版)全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :ディエゴ・マテウス演 出 :ダニエル・クレーマーセノグラフィー、デジタル&ライトアート:チームラボステージデザイン:チームラボアーキテクツ衣 裳 :中野希美江照 明 :シモン・トロッテ振 付 :ティム・クレイドン演出補 :デレク・ウォーカー合唱指揮:佐藤 宏演出助手:島田彌六舞台監督:幸泉浩司公演監督:大島幾雄公演監督補:佐々木典子合 唱 :二期会合唱団児童合唱:NHK東京児童合唱団管弦楽 :新日本フィルハーモニー交響楽団出演トゥーランドット姫:土屋優子皇帝アルトゥム :川上洋司ティムール :河野鉄平王子カラフ :城 宏憲リュー :谷原めぐみ大臣ピン :大川 博大臣パン :大川信之大臣ポン :市川浩平役 人 :井上雅人感想 新春恒例の都民芸術フェスティバルは藤原「トスカ」に続いて、東京二期会「トゥーランドット」の公演があるとのことで上野まで出掛けた。 客席はS,A席に若干空きが見られものの、3階以上は、ほぼ満席状態。またホール空間は全体が少々煙っている状況。 今回の特徴はチーム・ラボのレーザー光他の光の演出とベリオによる第3幕補作版であること。 舞台幕が開くと、舞台上半分に白い半透明の横長の箱があり、女性が白い衣装を来て入っており、その中で合唱が歌われる。男性は箱の下、反対に暗転の中黒い衣装で歌う。 また中央の大きな三角形の装置が回転し、場面に合わせて、鮮やかな彩りに変化する。 更に舞台上下左右から空間や、客席に向かってレーザー光が照射され、空中やホール壁面、天井に図形を描く。これまでのオペラ公演では見たことがない、新しい演出。 チーム・ラボの特設Webサイトにジュネーブ劇場での映像がある。 きっとオペラのストーリーに合っていない、邪魔だとの批判は出るだろうが、これまでに無いエンターテイメント・ショーとして楽しめた。 個々の演出は、最初ティムールとカラフが喧嘩をしていたり、リューが白い箱に入って離れていたり、最後はティムールまで自害し、大臣が殺し合ったりと、?な所が結構有り。 通常のアルファーノ補作版では第3幕が短いために、第1幕で休憩が入り、第2幕と第3幕を連続して演奏されることがあるが、今回のベリオ版は1,2幕を連続で演奏した後に休憩が入り、3幕が単独に上演となった。 ベリオ補作版は初めて聴いたが、謎解の後、それまでの旋律を持って来てリューの死とトゥーランドットの心変わりの場面を長くしてPで終わるが、結局心変わりの所は解りづらく蛇足に感じた。一般的なアルファーノ版の大合唱のフィナーレで華々しく終わってほしかった。 歌手は、タイトルロールの土屋優子が、最後まで高音域を保ち歌えていた。王子カラフ役の城宏憲も一部オケに消される所があったが、「誰も寝てはならぬ」他、決める部分はしっかり聞こえてきた。リュー役の谷原めぐみ、ティムール役の河野鉄平も役に合った歌声だった。 何と言っても「トゥーランドット」は合唱のウエイトが大きく、二期会合唱団は、裏歌含めよく歌えており、オペラ全体を盛り上げていた。 やはりマスク無しでないと。 オケは可もなく不可もなし。但し、第1部の静かな場面で、大きな音が。オケピットで何か落とした? ワーグナーの指輪などで今回の光の演出が入ったら面白そうで、今後も、新しい演出・舞台技術を取り入れたオペラも観てみたい。End
2023.02.26
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鑑賞日:2023年2月11日(土)14:00開演入場料:4,950円(D席 4階3列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2022/2032シーズン楽劇『タンホイザー』ワーグナー作曲全3幕(ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :アレホ・ペレス演 出 :ハンス=ペーター・レーマン美術・衣裳:オラフ・ツォンベック照 明 :立田雄士振 付 :メメット・バルカン再演演出 :澤田康子舞台監督 :髙橋尚史合唱指揮 :三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団バレエ :東京シティ・バレエ団管弦楽 :東京交響楽団出演領主ヘルマン:妻屋秀和タンホイザー:ステファン・グールドヴォルフラム:デイヴィッド・スタウトヴァルター :鈴木 准ビーテロルフ:青山 貴ハインリヒ :今尾 滋ラインマル :後藤春馬エリーザベト:サビーナ・ツヴィラクヴェーヌス :エグレ・シドラウスカイテ牧 童 :前川依子4人の小姓 :和田しほり/込山由貴子/花房英里子/長澤美希感想 本公演の千秋楽、本演出は2013年2月に観ているがタイトルロールの歌手が代役で今一だった記憶あり。今回は新国立指輪のジークムント、ジークフリート役を歌ったステファン・グールドがタイトルロールとのことで期待して冬晴れの下、初台まで出掛けた。 序曲の後に幕が上がりバレエが入る。体にピッタリの衣装だが、透けてはおらず、節度があって?日本的。 演出は、舞台上部まである半透明の複数本の柱の位置や照明で色を変え、舞台奥の映像と合わせて、ヴェーヌスベルク、ヴァルトブルク城、近くの谷の情景を表す。衣装も特異な物でなく、違和感なく観ることが出来た。 オケは、海外オペラ公演に比較すると若干のミス音、入りや切際のズレが気になったが、日本のオケではこんなものでしょうか。バンダはしっかり聞こえて来た。 歌手は、タイトルロールのステファン・グールドは、以前聞いた指輪の時よりも声量が落ちたように感じたが、舞台が進むに連れて声が出て来て、歌合戦、ローマ語りも満足する出来でした。 エリーザベト役のサビーナ・ツヴィラクは安定した歌声で特に3幕冒頭pの歌唱がエリーザベトの心情を表し素晴らしかった。ヴェーヌス役のエグレ・シドラウスカイテも歌声と容姿含め役に合っていた。日本人歌手の方も概ね良かった。牧童役の前川依子の歌声も美しく響いていた(1/28の藤原「トスカ」の牧童とは大違い)。 一番良かったのは合唱で「巡礼の合唱」、「大行進」他、裏歌も含めてバランス良く、大迫力で良かった。やはりマスク無しでないとオペラにはならない。 主役の歌手が揃うとワーグナーの音楽を楽しめる。4月の東京春祭「マイスタージンガー」も楽しみに。 End
2023.02.11
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鑑賞日:2023年2月4日(土)11:00開演入場料:¥3,700 (シアター2/J列)【配給】松竹株式会社METライブビューイング2022-2023シーズン歌劇「めぐりあう時間たち」(The Hours)作曲:ケヴィン・ブッツ台本:グレッグ・ピアス原作:マイケル・カニンガム 全2幕(英語/字幕付)会場:横浜ブルグ13指 揮 :ヤニック・ネゼ=セガン演 出 :フェリム・マクダーモット美術・衣装:トム・バイ照 明 :ブルーノ・ポエットプロジェクション:フィン・ロス振 付 :アニー=B・パーソンドラマツルギー:ポール・クリーモー出演:クラリッサ・ヴォーン:ルネ・フレミングローラ・ブラウン :ケリー・オハラヴァージニア・ウルフ:ジョイス・ディドナートリチャード :カイル・ケテルセンサリー :デニース・グレイブスバーバラ/ミセス・ラッチ:キャスリーン・キムアーチの下の男、ホテルの従業員:ジョン・ホリデー上映時間:3時間19分(休憩1回)MET上演日:2022年12月10日感想 メトロポリタン・ライブビューイングで3大ディーバが共演し、新作が上演されるとのことで、久しぶりの鑑賞のため横浜みなとみらいの映画館まで出掛けた。 客席は98席のシアターに30人程度の入りで、首都圏と言えども新作ものはこの程度の集客なのでしょう。 開演時間の11時になって最初の10分はこれから上映映画のPRが続き、ようやくMETのインサートが入ったが今度はMETスポンサーのコマーシャルが5分ほど続いて、やっと本編が始まった。 冒頭は女優のクリスティーン・バランスキーにMET総裁ピーター・ゲルブ氏が加わり作品紹介の後、柄の入ったシャツを着た指揮者ヤニック・ネゼ=セガン登場となり始まる。 原作はマイケル・カニンガムの小説で2002年に映画になり、アカデミー賞やゴールデングローブ賞を受賞しているもの。 3つの異なった時代、場所にいる女性3人(1923年イギリス・リッチモンド/作家ヴァージニア・ウルフ、1949年ロサンゼルス/妊婦ローラ・ブラウン、1999年ニューヨーク/編集者クラリッサ・ヴォーン)の苦悩をそれぞれ描き、最後にその3人の関連性が明かされる。 音楽は調が定まらず、ほぼセリフに音程が付いてどんどん変化していくが、不協和音にはならず、聞きやすい。ピアノ演奏に弦楽が付いたり、パーカッションがジャスになったりと色々な音楽が組み合わさって聞こえてくる。また途中に「魔笛」の夜の女王のアリアや「ばらの騎士」の旋律が聞こえてくる所が楽しめる。 主役3人の歌声は安定しており、更に感情が伝わってくる。作曲者、台本作家のインタビューの中でも、3人からフレーズや長さの変更の意見が出されて取り入れたとのことで、歌手たちも入って作り上げられた作品になっているのでしょう。 ダンサーや合唱は、一部街の人や花屋のお客等実在の人物になる所があるが、ほとんど背景の一部として舞台に入り込んで踊り、歌を加えている。 その中でもホテルのドアマン役他のジョン・ホリデーのカウンターテナーのヴォカリーズが美しく響いていた。 第1幕は、それぞれ3つの時代の舞台が暗転で転換され演じられていたが、第2幕からは各時代の舞台を小さくして、左右、上部からも表れその中で歌い、更に同時に2つの時代の舞台を並べ、主役たちがそれぞれの想いの言葉で重唱する。そして最後は3つの時代の舞台が出現し、舞台中央の椅子に3人が座り、「ばらの騎士」を彷彿とさせる3重唱となって幕。 時間、空間を飛び越えて、登場することは映画や演劇では非現実的(SF?)になるが、今回3重唱となっても違和感を感じないのは、オペラではこれまでも行われて来た技法だからでしょう。 本作品はルネ・フレミンが発案し、作曲家のケヴィン・ブッツと台本作家のグレッグ・ピアスとで作り上げられたとのこと。そのルネ・フレミングのインタビューで「新型コロナによって油の乗っている歌手たちが数年間歌う機会を失ったことが残念」との発言が印象的だった。 新作でエイズや同性愛等の現代のアメリカの苦悩をテーマに取り上げ、素晴らしい歌手だけでなく、新しい音楽や演出を取り入れながらも、オペラの伝統的な要素もあり、それら全体のバランスの良さは、さすがメトロポリタン歌劇場と言えるでしょう。 新国立劇場の次期シーズンはじめ、日本でも質の高い新作オペラを期待したい。End
2023.02.04
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鑑賞日:2023年1月28日(土)14:00開演入場料:2,500円(E席/4階 R3列)【主催】(財)日本オペラ振興会、(社)日本演奏連盟2023都民芸術フェスティバル参加公演藤原歌劇団公演歌劇「トスカ」プッチーニ作曲全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :鈴木恵里奈演 出 :松本重孝総監督 :折江忠道美 術 :大沢佐智子衣 裳 :前岡直子照 明 :成瀬一裕舞台監督:菅原多敢弘演出助手:手塚優子 合唱指揮:安部克彦 合 唱 :藤原歌劇団合唱部児童合唱:多摩ファミリーシンガーズ管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演トスカ :小林厚子カヴァラドッシ :澤﨑一了スカルピア :折江忠道アンジェロッティ:伊藤貴之堂 守 :押川浩士スポレッタ :松浦 健シャルローネ :龍 進一郎看 守 :坂本伸司牧 童 :網永悠里感想 新春恒例の都民芸術フェスティバルとして藤原歌劇団の「トスカ」の公演が開催されるとのことで上野まで出掛けた。 客席は1階席両サイドに少し空席が見られるが、ほぼ満席状態で、昨年の「トロヴァトーレ」の6~7割程度と比較すると、ようやく日常が戻った印象。但し、ロビーでのドリンクサービスは中止のまま。 今回新演出となっているが、基本的に原作通りで、何処かの公演で観たようなオーソドックスな舞台装置と衣装で違和感なし。 第1幕の教会は、舞台上斜めに設定され、遠近感で奥行きを感じさせる。客席側に祭壇がある設定で、第1幕フィナーレの「テ・デウム」の合唱が直接客席に向かうことになり、迫力を出せる演出。第3幕のサンタンジェロ城の屋上は舞台奥に城壁があり、左右から階段が設けられているが、天使像は無し。 演技もオーソドックスだったが、合唱、児童合唱、助演は全員マスク姿だったのは違和感あり。第1幕の「テ・デウム」も残念ながら迫力十分とは言えない演奏になってしまった。 歌手の方は、カヴァラドッシ役の澤﨑一了が期待通りの歌声。中低域から明る目の歌声で、高音域もそのままリリコの歌声で素晴らしい。第1幕「妙なる調和」は最高音部分で若干声が固くなったが、第3幕「星は光りぬ」は素晴らしかった。 タイトルロールの小林厚子は第2幕「歌に生き、愛に生き」は良かったものの、それ以外は中低音域は暗めの発声で、高音は少々金切り声気味になり、残念だった。 スカルピア役の折江忠道は、歌声が一本調子的で凄みや悪人的な所を感じることが出来なかった。 有名なオペラ作品のため、世界中で公演され、名演の記録も多く、比較される歌手の方は大変ではあるが。 オケは全体的に安全運転的だったが、第3幕の冒頭のP部分等しっかり抑え、第1、3幕のフィナーレのFが際立って、歌手との関係含めバランスの取れた演奏だった。 指揮者の功績でしょう。 藤原歌劇団の2023-2024シーズンは、ドニゼッティ作曲「劇場のわがままな歌手たち」、ヴェルディ作曲「二人のフォスカリ」、グノー作曲「ファウスト」等、珍しい演目が予定されており、楽しみに。End
2023.01.28
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鑑賞日:2022年10月30日(日)15:00開演入場料:10,000円(B席 30列)【主催】神奈川県立音楽堂(指定管理者:(財)神奈川芸術文化財団)音楽堂室内オペラ・プロジェクト第5弾ファビオ・ビオンディ指揮 エウローパ・ガランテ歌劇「シッラ」(日本初演)ヘンデル作曲全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:神奈川県立音楽堂スタッフ指揮・ヴァイオリン:ファビオ・ビオンディ管弦楽 :エウローパ・ガランテ演 出 :彌勒忠史美 術 :tamako☆衣 裳 :友好まり子照 明 :稲葉直人(ASG)立 師 :市川新十郎台本・字幕翻訳 :本谷麻子舞台監督 :大澤裕(ザ・スタッフ)出演ローマの執政官シッラ :ソニア・プリナローマの騎士クラウディオ:ヒラリー・サマーズシッラの妻メテッラ :スンヘ・イムローマの護民官レピド :ヴィヴィカ・ジュノーレピドの妻フラヴィア :ロベルタ・インヴェルニッツィシッラの副官の娘チェリア:フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ神 :ミヒャエル・ボルススカブロ :神谷真士(黙役)天使ほか(エアリアル) :桧山宏子/板津由佳兵士ほか(殺陣) :片岡千次郎/亀山敬佑感想 神奈川県立音楽堂主催のオペラ。2年前には出演者が来日、リハーサルまで行われたが、公演直前に新型コロナ感染で中止となった公演。同じメンバーで遂に日本初演されるとのことで、秋晴れの下、桜木町駅から紅葉坂を登って音楽堂へ向かった。 開演前の14:15分からファビオ・ビオンディと彌勒忠史によるプレトークがあり、本作品とその演出についての紹介があった。 ストーリーは音楽堂HPに記載あり。 神奈川県立音楽堂は戦後国内初めての音楽ホールとして1954年(昭和29年)に開館したこともあり、舞台裏にほとんどスペースなく、舞台上のバトンも少ない等の制約が多い中、色々工夫されていた。 舞台上は3段の黒い階段状になっており、各段に幅1m、高さ3m程の赤い枠が2つずつ置かれている。場面に応じて位置がかわり、宮殿の壁になったり、牢屋になったりする。更に白い布(スクリーン)が降りてきて、そこへ木々、動物、人影等の映像が映される。舞台前はオケピットで中央にチェンバロが置かれており、その下手側に張り出しの舞台も設けられ、海へ航海に出る場面での岸辺等に用いられていた。 今回歌舞伎の演出を取り入れたとのことで、衣装は、武将の鎧兜と着物、女性は鮮やかな色の着物で無国籍的。 2幕の神殿の場面は舞台奥の反響板に浮世絵的な富士山を大きく映し出し、山岳信仰との位置づけか。第3幕フィナーレの軍神マルス登場の場面は、舞台上部から2本の白い布が下がり、二人の女性によるシルク・ドゥ・ソレイユの様なエアリアルの演技が入り、まあ神様登場と言う事なのでしょう。 カーテンコールの演出者登場で満席の客席から一人だけ大きなブーイングを出していたが、他の観客は大きな拍手とスタンディングオベーションで満足出来た様。 管弦楽はバロック楽器が使われ、ファビオ・ビオンディがヴァイオリンを弾きながら指揮をする。最初は楽器毎の音程のバラツキを感じたが、段々と気にならなくなったのは、楽器が温まって来たためか、こちらの耳が慣れて来た影響か? 今回歌手は神役以外すべて女声だったが、タイトルロールのソニア・プリナとクラウディオ役ヒラリー・サマーズのコントラルト二人の低音がよく響いて聞こえて来た。日本人アルトでは、ほとんど聞こえて来ない音域でしょう。妻メテッラ役スンヘ・イムや娘チュリア役フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリのソプラノ二人のアリアもアジリタ含め美しい歌声だった。 また音楽堂のホールは1階席のみの1,000人収容規模で、壁、天井が木製のため音響も良く、バロックオペラの公演には合っていた影響もあり。 日本初演で初めて聞くオペラだったが、先日聞いた「ジュリオ・チェーザレ」や「リナルド」、「セルセ」等と比較しても、けして劣らない美しい旋律のアリアが盛り沢山。特に2幕のクラウディオとチェリア、レトピとフラヴィアの二重唱が、輪唱的な部分もあって美しい。同声で揃えた効果も出ていた。 また演奏時間としては2時間強のため、退屈することなく聞くことが出来た。機会があれば、またぜひ聞いてみたい作品。 音楽堂の室内オペラ・プロジェクトの次の演目は、もらったチラシの中に来年10月にBCJによる「ジュリオ・チェーザレ」公演が載っており、クレオパトラ役が森麻季とのことで、今から楽しみに。End
2022.10.30
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鑑賞日:2022年10月9日(日)13:30開演入場料:4,000円(C席 3階11列)【主催】神奈川県民ホール(指定管理者:(財)神奈川芸術文化財団)神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズVol.1オペラ「浜辺のアインシュタイン」フィリップス・グラス作曲ロバート・ウィルソン初演演出全4幕(歌詞:原語、台詞:日本語上演)会場:神奈川県民ホール 大ホール原作音 楽 :フィリップス・グラス台 詞 :クリストファー・ノウルズ、サミュエル・ジョンソン、ルシンダ・チャイルズ翻 訳 :鴻巣友季子 スタッフ演出・振付:平原慎太郎指揮 :キハラ良尚演出補 :桐山知也空間デザイン:木津潤平衣 裳 :ミラ・エック(Mylla Ek)照 明 :櫛田晃代音響デザイナー:佐藤日出夫映 像 :栗山聡之ヘアスタイリスト:芝田貴之メイク :谷口ユリエプロダクション・マネージャー:横沢紅太郎舞台監督 :藤田有紀彦 山口英峰音響アソシエート・デザイナー:西田祐子衣装補助 :柿野彩電子オルガンアドバイザー:有馬純寿演出助手 :日置浩輔振付助手 :田﨑真菜コレペティトゥア:石野真穂 矢田信子副指揮 :森田真喜ステージマネージャー:根本孝史ライブラリアン:塚本由香出演メッセンジャー:松雪泰子トラベラー :田中要次プライド :中村祥子ヴァイオリン :辻󠄀彩奈電子オルガン :中野翔太、高橋ドレミフルート:(マグナムトリオ)多久潤一朗、神田勇哉、梶原一紘バスクラリネット:亀居優斗サクソフォン :本堂誠、西村魁合 唱 :東京混声合唱団ダンサー:Rion Watley、青柳潤、池上たっくん、市場俊生、大西彩瑛、 大森弥子、倉元奎哉、小松睦、佐藤琢哉、東海林靖志、 杉森仁胡、鈴木夢生、シュミッツ茂仁香、城俊彦、高岡沙綾、 高橋真帆、田中真夏、鳥羽絢美、浜田純平、林田海里、 町田妙子、村井玲美、山本悠貴、渡辺はるか感想 毎年行われる神奈川県民ホール主催のオペラが今年はミニマム音楽の作曲家フィリップス・グラスの「浜辺のアインシュタイン」を上演するとのことで、CSでごった返す横浜スタジアム周辺を抜けて、山下公園沿いの神奈川県民ホールへ出掛けた。 フィリップス・グラスと言えばメトロポリタン歌劇場のライブビューイングでオペラ「アクナーテン」が公開されたミニマル音楽の巨匠。本作品は4幕設定だが、今回2部構成で1,2幕と3、4幕は連続で演奏されその間に休憩が入いる。当初5時間予定と書かれていたが、一部繰り返しを省略し、休憩入れ4時間になっていた。 客席に着くと幕は上がっており、舞台上には上下一杯に階段が置かれ、数段毎に2~3m程の踊り場が設けられている。舞台前には上下に黒い張り出し舞台があり、挟まれる所に楽器、合唱が並ぶ。開演5分前に着席したが、すでに電子オルガンの低音の繰り返しが演奏され、舞台上にはダンサー2人が居てモップと台車で清掃中の状況。 開演時間となり客席暗転で指揮者登場。指揮者の前に液晶モニターが置かれ、そこに「#1」と表示され曲が進むとNoが増え♭が付いたりする。鏡の演出で同じNoが写っており、舞台上にもモニターが設置されていることが分かった。通常のオペラなら音楽を聞いて舞台の出入り、演技の入等が分かるが、ミニマム音楽は繰り返しばかりなので聞き分けることは困難で、予め音楽にNoを振って演奏者、演技者へ表示しているのでしょう。 舞台上は20人を超えるダンサーが、演技を行う。音楽に合わせて上手から下手、下手から上手へ踊りながら通り抜けたり、複数の集団を作りダンスを行う。1部では少女、少年と両親の家族が観ている情景があり、2部最後は、大友克洋氏作画のポスターの様に少年がヴァイオリンを持って舞台中央に後ろ向きに立ち、その後ろから少女が観ている情景で幕(暗転)。 メッセンジャー役の松雪泰子は黒の衣装で裁判官として舞台に登場し、大きな動きはなく、台詞を喋りながら稼働式のテーブルを押し舞台を左右に動く。トラベラー役の田中要次朗は大きなトランクを持ち帽子を被った旅行者の姿で舞台前下手の張り出し舞台の上ベンチに座り、時に立ち上がって語る。前半音響の関係で田中要次朗の台詞が聞き取りにくかった。 演奏は主に電子オルガン中心で、曲によって、他の楽器、混声合唱16人が加わる。合唱は一人ひとりマイクが設けられ、「ドレミ・・・」や「1,2,3・・・」や単語を歌い、通常オペラのようなアリアや歌詞は全くない。途中合唱のみのアカペラ部分ではエコーも加えられていた。2部後半にヴォカリーズがあり、下手張り出しの舞台上でソプラノ1人で歌われた。プログラムに個人プロフィール紹介は無かったが素晴らしい歌声だった。 ヴァイオリンの辻󠄀彩奈は1部では上手張り出し舞台でシルバーの衣装で演奏、2部では赤い鮮やかな衣装で舞台上でダンサーに囲まれて演奏。 ミニマム音楽なので繰り返しが重なるが、その中にも変拍子が入ったり、転調したりと変化があり、また電子オルガンはシンセサイザーの音も加わり、プログレッシブ・ロックにも聞こえ、眠る事なく最後まで楽しむことが出来た。本作品は1976年初演なので、プログレッシブ・ロックとの関係も頷ける。 題名の「浜辺のアインシュタイン」の意味は、原子爆弾にも関連した天才物理学者との関係らしい。1976年と言えばようやくベトナム戦争が終わり、東西冷戦時代に突入し、より核兵器が身近になっていた時代。現在ウクライナ侵略戦争で再び核兵器が身近になっている。残念ながらその意味合いを直接感じることは出来なかったが、ダンス、朗読、音楽の融合で楽しめれば良いかなと。 観客席は1階左右は空席多く、中央はほぼ満席、3階席はC席部分は満席で全体としては6~7割程度か。また通常のオペラと異なり、年配者は少なく、若者、女性が多く観られた。 神奈川県民ホールは、一柳慧氏が理事、芸術総監督を長らく務められ、他の地方ホールはもちろん、東京でも観られないような独自の音楽公演を主催されて来たが、先日逝去されたとのことで誠に残念。 本日のプログラムと同封のチラシにサルヴァトーレ・シャリーノ作曲「ローエングリン」の現代オペラ公演を2024年度開催とのこと。 ぜひ、ホール独自のオペラ公演を続けて頂くことに期待。End
2022.10.09
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鑑賞日:2022年10月2日(日)14:00開演入場料:4,950円(D席 3階L列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2022/2032シーズンオペラ『ジュリオ・チェーザレ』ヘンデル作曲全3幕(イタリア語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :リナルド・アレッサンドリーニ演出・衣裳:ロラン・ペリー美 術 :シャンタル・トマ照 明 :ジョエル・アダムドラマトゥルク:アガテ・メリナン演出補 :ローリー・フェルドマン舞台監督 :髙橋尚史合唱指揮 :冨平恭平合 唱 :新国立劇場合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団通奏低音 :チェンバロ)桒形亜樹子 チェロ)懸田貴嗣 テオルボ)上田朝子、瀧井レオナルド出演ジュリオ・チェーザレ:マリアンネ・ベアーテ・キーランドクーリオ :駒田敏章コルネーリア:加納悦子セスト :金子美香クレオパトラ:森谷真理トロメーオ :藤木大地アキッラ :ヴィタリ・ユシュマノフニレーノ :村松稔之感想 2020年4月当時チケットを取り楽しみにしていた本公演、リハーサル直前まで行って新型コロナ感染の影響で中止となったバロック・オペラ「ジュリオ・チェーザレ」の公演があるとのことで、夏日の中、初台まで出掛けた。 客席は1階前2列の空席を除き満席。オケピットにはチェンバロ、テオルボ、リコーダ等のバロック楽器が入っている。 暗転、指揮者が楽譜を持って登場。指揮者のリナルド・アレッサンドリーニはコンチェルト・イタリアーノの主催者でチェンバロ奏者でもあり、歌手が歌った後の間のとり方も絶妙で音楽をどんどん進めていく。弦楽は現代楽器をピリオド奏法。3幕冒頭のホルンが危なそうだったが、大きな事故もなく、演奏されていた。 今回の演出はロラン・ペリーの2011年パリオペラ座初演のもので、現代の博物館の倉庫が舞台。博物館の職員達により大きな彫像が運びこまれ、動かされる中で歌手が登場し当時の衣装でアリアを歌う。大きなエジプト彫像が本物の様に見え、その彫像に絡んで歌うのでエジプトが思い浮かべて来て違和感なく聞こえる。博物館職員は衣装を変えずに、場面に合わせ宮廷の家来や兵士を演じる。 2幕では大きな絵画が運び込まれ、クレオパトラがその風景画の前でポーズを取る、更に額縁が前にずれて、額縁と絵画の間に入るので、そのまま絵画の中に描かれている様に見せる。 更に絵画の後ろから華やかなドレスを着た女性のバンダが登場し、バロック楽器を使って演奏をすると、中世宮廷の広間で演奏を聞いている気分にさせる。 2幕でオケピット内の人数が少々減ったと思っていたら、そのまま衣装に着替えてバンダで舞台に登場されたようで、皆さんお美しいのに驚かされた。 博物館の演出はユーモアが散りばめられており、1幕では机上の頭部の彫像の口が合唱に合わせて動いて歌っている様に見せる。ポンペーオの首が大きな頭部の彫像が木枠に吊るされ、その周囲でコルネーリアとセストが泣き悲しみ復讐を誓うアリアを歌う。 2幕の絵画の中にヘンデルの肖像画があったり、3幕クレオパトラ軍とトロメーオ軍との戦いは椅子に座った、クレオパトラとトロメーオを博物館職員が騎馬戦のように担ぎ、左右に動くことで戦闘を表す。トロメーオがセストに刺される場面ではあっけなく倒れ、更にフィナーレで全員で歌うところでは、運搬台車に載せられたトロメーオの死体も歌っていた。 場面転換も歌手がアリアを繰り返している最中に彫像や絵画を動かし、歌い終わったら直ぐに次の場面へ。METライブビューイングで本オペラを観たが、その際は舞台を2,3箇所に分けて、歌手が次々と移動することで場面転換を行い大変そうで、今回の演出の巧さを感じた。 同じ博物館設定で意味不明の演出だった先日の某オペラとは大きな違い。 歌手は皆さん良く歌えていた。タイトルロール役のマリアンネ・ベアーテ・キーランドは、本来カストラート設定のため、1幕は音域低く聞こえづらかったが、2幕、3幕と進む程に良くなり、繰り返しの装飾技巧は素晴らしかった。また精悍な顔つきとスタイルでシーザー役に合っていた。クレオパトラ役の森谷真理は、顔立ち、スタイルがぴったり。METでもナタリー・デセイが演じており、やはり美人でないと。歌の方は、繰り返し部分で一部ベルカントの様に歌い上げてバロック的でなかったが、装飾部分なので良いのでしょう。一番良かったのはトロメーオ役の藤木大地で、素晴らしい歌声。やはり音域的にカウンターテナーが合う。同じくカウンタテナーのニレーノ役の村松稔之も良かった。 バロックオペラは歌手がレチタティーヴォの後にダ・カーポ・アリアを歌い、繰り返しが多く、時間も長い(今回休憩入れ約4時間半)ので退屈になりそうだが、演出が工夫され最後まで楽しんで聞くことが出来た。 月末には神奈川県立音楽堂でファビオ・ビオンディ指揮のエウローパ・ガランテで「シッラ」日本初演を聞く予定で今から楽しみに。End
2022.10.02
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鑑賞日:2022年7月17日(日)14:00開演入場料:6,000円(BC席シーズンセット券/4階R1列)【主催】(財)東京二期会【共催】(財)読売日本交響楽団《二期会創立70周年記念公演》フランス国立ラン歌劇場との共同制作公演東京二期会オペラ劇場楽劇「パルジファル」(全3幕、ドイツ語上演/日本語、英語字幕付)台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :セバスティアン・ヴァイグレ演 出 :宮本亞門装 置 :ボリス・クドルチカ衣 裳 :カスパー・グラーナー照 明 :フェリース・ロス映 像 :バルテック・マシス合唱指揮:三澤洋史演出助手:三浦安浩、澤田康子舞台監督:幸泉浩司公演監督:佐々木典子公演監督補:大野徹也合 唱 :二期会合唱団管弦楽 :読売日本交響楽団出演アムフォルタス:清水勇磨ティトゥレル :長谷川 顯→清水宏樹グルネマンツ :山下浩司パルジファル :伊藤達人クリングゾル :友清 崇クンドリ :橋爪ゆか第1の聖杯の騎士:新海康仁第2の聖杯の騎士:狩野賢一4人の小姓 :宮地江奈、川合ひとみ、高柳 圭、相山潤平花の乙女たち :宮地江奈、松永知史、杉山由紀、雨笠佳奈、川合ひとみ、小林紗季子天上からの声 :小林紗季子感想 東京二期会の今シーズン最後のオペラ公演が東京文化会館であるとのことで、真夏日の中、上野まで出掛けた。 客席1階、2階席左右がほとんど空席で6~7割の入り。当方座った4階席後列は学生さんが多く、チケット販売は苦戦模様か。 オケボックス内は両端に空きスペースがあり、バイオリンが少ない。これは新型コロナ対策か歌手との音量バランスのためか? 5分押しで指揮者登場。譜面台上には楽譜無く、印刷物が1枚置かれ、演出の指示事項か? 前奏曲頭でホルン外れるも、その後安定しており、途中に緩むこと無く、指揮者がどんどん音楽を引っ張っていく印象。 舞台上は現代の美術館+博物館の設定。パルジファルの側に男の子、クンドリに女性(子供の母親?)の黙役が着いて進んでいく。 ティトゥレルが剥製orミイラ状態で聖杯でその血を飲んだり、兵士たちがゾンビの様に見えたりと意味不明。ナイトミュージーアムの世界か。 所要があり2幕で退席し3幕を見てないため演出を云々言うべきでないとは思うが、どこが聖杯伝説、舞台神聖祝典劇だったかが全く解らず。 本演出に関してプログラムの演出家インタビューに中に若干の記述がある程度、その他補足なく意味不明のまま。 歌手の方は主役二人がワーグナー音楽に聞こえず。2010年東京春祭の海外歌手とは大きな違い。やっぱり日本人には難しいのか。 裏歌の合唱はPAが入っていたように聞こえた。 オケが良かっただけに、歌手、演出が?で残念。会場に空席が多かった理由も分かる。 東京二期会来シーズン公演は、「蝶々夫人」「天国と地獄」「トゥーランドット」「椿姫」と超ベタ演目ばかりで興味湧かず、シーズンセット券は購入せず。 唯一、R.シュトラウス「平和の日」はまだ聞いたこと無く、観劇はこれだけになりそう。End
2022.07.17
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鑑賞日:2022年7月9日(土)14:00開演入場料:7,920円(C席 4階2列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2021/2022シーズンオペラ『ペレアスとメリザンド』ドビッシー作曲全5幕(フランス語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :大野和士演 出 :ケイティ・ミッチェル美 術 :リジー・クラッチャン衣 裳 :クロエ・ランフォード照 明 :ジェイムズ・ファーンコム振 付 :ジョセフ・アルフォード演出補 :ジル・リコ舞台監督:髙橋尚史合唱指揮:冨平恭平合 唱 :新国立劇場合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演ペレアス :ベルナール・リヒターメリザンド:カレン・ヴルシュゴロー :ロラン・ナウリアルケル :妻屋秀和ジュヌヴィエーヴ:浜田理恵イニョルド:九嶋香奈枝医 師 :河野鉄平感想 新国立劇場2021/2022シーズンのラストは芸術監督の大野和士氏自ら指揮をしてフランスオペラ「ペレアスとメリザンド」の公演があるとのことで、蒸し暑い夏の曇天の下、初台まで出掛けた。 本公演から煩わしい来場者カードの記入が不要となり、ロビーの椅子間隔空けやクローク閉鎖は残るものの、ドリンクサービス等、平常に近づいて来た感あり。 本演出は新制作ではあるが、2016年エクサンプロヴァンス音楽祭のプロダクションを持って来たもの。 舞台を左右1/3と2/3に分け、更に上下に分けた4箇所を場面に応じて組合せて幕を開け、締めている間に転換設定される。 1~3幕を1部、4~5幕を2部として上演され、各部内では切れ目なく演奏された。 今回チケット購入に少し出遅れD席が取れずC席4階中央付近になったが、4箇所全て見通すことが出来て良かった。 時間となり場内暗転、指揮者登場の後、音楽が始まる前に舞台の一箇所の幕が開き、メリザンドがウエディングドレスを来て寝室に登場し、何故か鼻血を出して、それを止めながら眠りにつく所から音楽が始まる。つまりは、これから始まる物語は全てメリザンドの夢の中の出来事との設定で、原作で出演しない場面でも舞台に登場したままで見ており、さらに本人の分身(黙役)を俯瞰する場面(幽体離脱?)まである。時代設定は不明だがほぼ現代でしょう。 全て屋敷と庭との設定で「盲目の泉」は室内プール、城の塔の窓辺は寝室のベッド等に置き換わっている。 歌手はタイトルロール2人とゴローがフランス人、スイス人でお得意の役らしくいずれも素晴らしい。けして張り上げて歌うことはないが、4階席までよく聞こえて来て、ドビッシーの感覚的な音楽世界を歌っていた。メリザンド役カレン・ヴルシュの3幕「私は日曜の正午の生まれ」はアカペラで美しく、メリザンドの不安な気持ちが伝わる歌声だった。日本人歌手もバランスを崩すこと無く良かった。 合唱は舞台には登場せず、PA経由で歌声を流していたように思われる。 またオケも丁寧な演奏で良かった。 残念だったのは演出で、下着姿での抱擁が多々有り、セックスを直接表すよな演技が多く出てきた。メリザンドが最期に「愛したけれど、罪は犯していない」と答えたこととは相反しており、夢の世界の設定なので欧州劇場でよく観られるような直接的な演出にしたように思われる。 これではワーグナーと反対位置にあるドビッシーの「印象主義音楽」ではなく、下世話なワイドショー的不倫劇になってしまったように思えた。 新国立劇場の今シースンのオペラ公演は本作品で終了。来シーズンは2020年に取りやめになったバロックオペラ「ジュリオ・チェーザレ」が予定されており、今から楽しみに。End
2022.07.09
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鑑賞日:2022年6月13日(日)14:00開演入場料:10,000円(S席 1階F列)【主催】(財)ニッセイ文化振興財団[日生劇場]NISSAY OPERA 2022オペラ「セビリアの理髪師」ロッシーニ作曲全2幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:日生劇場スタッフ指 揮 :沼尻 竜典演 出 :粟國 淳美 術 :横田 あつみ照 明 :大島 祐夫衣 裳 :増田 恵美振 付 :伊藤 範子舞台監督:幸泉 浩司演出助手:上原 真希、橋本 英志合唱指揮:及川 貢副指揮 :大川 修司、鈴木 恵理奈、石崎 真弥奈、 松川 智哉コレペティトゥア:平塚 洋子、星 和代、湯浅 加奈子管弦楽 :東京交響楽団ギター :黄 敬チェンバロ :平塚 洋子合 唱 : C.ヴィレッジシンガーズ出演アルマヴィーヴァ伯爵:小堀 勇介ロジーナ :山下 裕賀フィガロ :黒田 祐貴バルトロ :久保田 真澄ドン・バジリオ :斉木 健詞ベルタ :守谷 由香フィオレッロ :川野 貴之感想 日生劇場で「セビリアの理髪師」公演があるとのことで、楽譜購入で銀座に寄った後、霧雨の降る中、日比谷へ向かった。 ロッシーニ・テノールの小堀さんが伯爵を歌うとのことで、発売日にS席を確保。一列目は無観客で5列目となり、双眼鏡無しで細かい動きまでよく見える。 舞台上には赤い幕が描かれた大きな木板が円形の台の上に置かれている。舞台左右には手巻きの付いた高い木の柱が置かれ、民衆役の合唱人が手巻きを動かすことで、幕が開いたり、舞台が回転し、正しく芝居をしているとの設定。 違和感のない良い演出で、2016年に観たことを思い出した。 ただ、演技中、部屋に入るシーンで手をアルコールで消毒したり、魔笛の夜の女王のアリアを入れたりと、今回独自のアドリブが入り笑いを誘う。 この後、11月に滋賀びわ湖ホール、12月に大阪フェニーチェ堺、山形やまぎん県民ホールで公演予定となっている。 指揮者登場で序曲が始まる。オケは全体的にテンポは極端に早くなることがないが、強弱付けられ、安定した演奏。 レスタティーヴォはチェンバロで。2幕「嵐の場面」では雷板、ウインドマシーンが舞台上下に置かれ演奏されていた。 今回歌手の皆さんが総じて素晴らしい。 タイトルロール・フィガロ役の黒田祐貴は父親似の背の高い2枚目だが、「おいらは街の何でも屋」ではよく響く歌に加え、ミュージカルの様に動き回る演技でバッチリ決めて拍手喝采。 ロジーナ役の山下裕賀は安定した歌声でアジリタも軽々とこなす。演技含め勝ち気なロジーナを上手く表現していた。 バルトロ役の久保田真澄は早口の「わしのような医者に向かって」も難なく歌い、演技も良く、高齢で欲深な医者を演じていた。 ドン・バジリオ役の斉木健詞は超低音のバスの歌声で「中傷とはそよ風です」はコミカルさも加わり楽しい。 ベルタ役の守谷由香はよく通るソプラノの歌声でアリアに加え、男声ばかりのフィナーレでもよく聞こえた。 何と言っても素晴らしかったのはアルマヴィーヴァ伯爵役の小堀勇介。最初は少々抑え気味に聞こえたが、場面が進むに連れて声がどんどん出て来る。本作品は伯爵はほぼ出突っ張りで、歌う部分がやたら多いが、最後まで音程やテンポのズレも無い。1幕では自らギターを弾いて歌う。省略されることも多い2幕フィナーレ前の大アリア「もう逆らうのをやめろ」はハイCも決め、アジリタも遅れることなく自然に聞こえて最高!S席を購入した甲斐があった。 唯一残念だったのは、合唱団が全員マスク着けていたいたこと。せっかくの舞台上の芝居の演出も現実に戻された気分になり興ざめに。 逆に、歌手、指揮者、演出家皆さんで手を取り合ってのカーテンコールとなり、盛り上がった。こうでなくては。 やはり歌手が揃うと相乗効果で音楽がどんどん良くなり、作品本来の楽しさが倍増され、あっと言う間の3時間強。分かりやすい演出や安定したオケも加わり、久しぶりに満足出来たオペラ公演だった。End
2022.06.12
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鑑賞日:2022年5月22日(日)14:00開演入場料:4,950円(D席 4階2列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2021/2022シーズンオペラ『オルフェオとエウリディーチェ』グルック作曲全3幕(イタリア語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :鈴木優人演出・振付・美術・衣裳・照明:勅使川原三郎アーティスティックコラボレーター:佐東利穂子舞台監督:髙橋尚史合唱指揮:冨平恭平合 唱 :新国立劇場合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団コルネット(ツィンク):上野訓子、得丸幸代シャリュモー:満江菜穂子チェンバロ :重岡麻衣出演オルフェオ :ローレンス・ザッゾエウリディーチェ:ヴァルダ・ウィルソンアモーレ :三宅理恵ダンス :佐東利穂子、アレクサンドル・リアブコ、高橋慈生、佐藤静佳感想 新国立劇場でバロックオペラを公演するとのことで、初夏を思わせる天候の中、初台まで出掛けた。 GWも無事過ぎ新型コロナまん延防止も再発令されないなか、来場者カード記入、検温、手の消毒、チラシピックアップはこれまで通り。客席は舞台前2列除きZ席まで全て販売され、ほぼ満席の状況。屋内ホワイエでのドリンクサービス無いものの、1階屋外、2階屋外渡り廊下でアルコール含めたドリンクサービスあり。厚労大臣の屋外マスク不要発言や海外からの渡航者入国緩和で新型コロナ前の日常まであと少しか。 今回バロックオペラのため、オケボックス内人数は少な目。指揮者真向かいにチェンバロが置かれ、クラリネットは無く、ツィンク、シャリュモーが見られる。ホルン、オーボエ、トランペット、トロンボーンは現代楽器のよう。雷用の鉄板、ウィンドマシーンもあり。3幕になると、トランペット、トロンボーン、縦笛も居なくなり更に小規模に。 時間となり暗転、指揮者登場で序曲が始まる。ピリオド奏法なのだが、どうも金管楽器とのバランス悪く、上手く音が嵌らない様に聞こえる。 ホールの大きさのため、新型コロナのためオケピットが深いため、楽器の違い等の影響か。せっかくなら全部古楽器で舞台上でBCJが演奏した方が良かったか。 幕が開くと中央に大きな白い円形の舞台が置かれ中央やや下にあじさいの花が四角く置かれ、エウリディーチェの墓になっている。その前に濃いえんじ色のコートを着たオルフェオが立ち亡くなった妻への愛を歌い続ける。変形舞台の周りに黒い衣装、被り、目元マスクを付けた合唱が妖精や羊飼いとして歌う。その円形舞台の前にダンサーが登場し、曲に合わせて踊る。1人は白い衣装で3人は青い衣装。白い衣装の女性はエウリディーチェの位置付けか。 オルフェオが亡き妻を黄泉の国から連れ戻すと神々に言うと、アモーレが表れ手助けをする。 1幕終了で幕が降り、客席暗転のまま続けて2幕へ。 舞台奥に大きな黒っぽいユリの花が重なったものが2つ置かれ、そこが黄泉の国への洞窟の入り口になっている。復讐の女神とオルフェオのやり取り中に舞台奥下手側に6人のバンダが登場。バンダはバイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、バロックハープ各1の編成。 再び暗転となり、白い大きなユリの花が左右に並べられエリゼの園に。ここで青いドレスを着たエウリディーチェを見つけた所で幕。 25分の休憩を挟み第3幕へ。 3幕は再び大きな白い円形の舞台上で周囲を白いユリが囲む。オルフェオがエウリディーチェの手を、引き顔を合わせずさまよう。エウリディーチェの不安が募り、遂に互いに顔を見合わせ抱擁した所で、エウリディーチェが崩れ落ち息を引き取る。 ここでオルフェオがアリア「エウリディーチェを失って」(Che faro senza Euridice?)を歌い終わり、音楽が止まった所で、客席から唯一の拍手。再びアモーレが表れ、エウリディーチェが生き返り、羊飼いや妖精たちとアモーレに感謝しフィナーレ。 言葉で書いても解りづらいので、新国立劇場HPの画像で。 現代舞踊家の勅使川原三郎氏の演出だけあって、ダンスとオペラを複合した演出で、衣装、照明、舞台装置とも上手く整合が取れ、黄泉の国を表した作品になっていた。 歌手は、3人伴素晴らしい。オルフェオ役ローレンス・ザッゾはカウンターテナーながら、よく響く歌声で、音楽表現も豊か。広いオペラパレスの4階席まで十分に聞こえる歌声だった。エウリディーチェ役のヴァルダ・ウィルソンは、容姿含め役にピッタリの落ち着いた歌声。アモーレ役の三宅理恵も、役に合う明るいソプラノの歌声だった。 新国立劇場でバロックオペラを聞くのは始めて。オケとのバランスを考えると、もう少し小さな劇場の方が良いのではと思えた。記録を見ると2000年に小劇場で公演されている。 次シーズンには新型コロナで中止になった「ジュリオ・チェーザレ」が予定されており、楽しみに。End
2022.05.22
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鑑賞日:2022年4月24日(日)14:00開演入場料:6,000円(BC席シーズンセット券/3階2列)【主催】(財)東京二期会、Bunkamura【後援】イタリア大使館、イタリア文化会館《二期会創立70周年記念公演》東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ オペラ「エドガール」(セミ・ステージ形式上演)全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)原作:アルフレッド・ド・ミュッセ『杯と唇』台本:フェルディナンド・フォンターナ作曲:ジャコモ・プッチーニ会場:Bunkamuraオーチャードホールスタッフ指 揮 :アンドレア・バッティストーニ舞台構成:飯塚励生映 像 :栗山聡之照 明 :八木麻紀舞台監督:幸泉浩司公演監督:大野徹也公演監督補:佐々木典子合唱指揮:粂原裕介合 唱 :二期会合唱団、TOKYO FM 少年合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演エドガール :樋口達哉グァルティエーロ:清水宏樹フランク :杉浦隆大フィデーリア :大山亜紀子ティグラーナ :成田伊美感想 東京二期会の演奏会形式のオペラ公演がオーチャードホールであるとのことで、小雨模様の中、渋谷まで出掛けた。 渋谷駅の若者達の密集をかき分け、Bunkamuraへ着くのに一苦労。更に3階席まで階段をひたすら登り大変。なお当ホールは来年春より隣の百貨店建替えと合わせて大規模修繕のため長期休館のとのことで、ぜひエレベータ、エスカレータ等のバリアフリー導入をお願いしたい。 入り口での体温測定、アルコール消毒、プログラムの自身ピックアップはあったものの、ロビー椅子の間空ける表示は無し。また2Fのビッフェも営業していた。客席は舞台張り出しの前まで空き席を設けてなかったが、1階席奥、2階席に空き席があり、7~8割程度の入り。 舞台張り出しの部分に黒い山台が7つ程置かれ、歌手はそこで多少の演技を加えて歌う。児童合唱20人もその都度舞台に登場しその山台で歌う。その後ろに管弦楽が位置し、紗幕を挟んで更に後ろに2階建てで合唱が1m間隔で1列に並ぶ。1階、2階とも男声、女声各9人で合計36名。紗幕で見えずらかったがマスクは着けてない。唯一3幕に入る前の暗転中に山台中央へ祭壇のような棺桶が置かれる。あと2幕の間だけ山台4箇所にモニタースピーカーが置かれていたが、これは指揮が見えない歌手へのサポート用だったのか。 オケと合唱の間の紗幕に場面に合わせた映像が映し出される。絵画調の絵が多く、花、街並み、教会等。火災の場面で炎、戦いに向かう場面で国旗がはためくCGが映され物語の理解に役立つが、直ぐに切り変わってしまう所がかえって目障りで、もう少し切り替えを減らしても良いと思われた。 舞台真ん中で指揮者バッティストーニが大きな身振りでオケを引っ張っていく。テンポや音量の差など、イタリア・オペラを盛り上げるのは上手い。オケはチェロの独奏等それなりに良かったが、バンダのトランペット等で所々コケるところが残念。 歌手は、男声陣は総じて良く、女声陣はビブラート、音程不安定、怒鳴るような発声があり残念。一番良かったのはフランク役の杉浦隆大の歌唱で、久しぶりに艶のあるバリトンの歌声を聞けた。タイトルロールの樋口達哉もよく届く歌声で良かった 本作品を聞くのは初めて。プッチーニ2作目に当たり、本作曲の後に『マノン・レスコー』、『ラ・ボエーム』、『トスカ』、『蝶々夫人』が続くことになる。 3幕ものだが、休憩は1幕後1回のみ、2幕が10分程度で短く3幕と続けて演奏され、演奏時間は全体で2時間弱と短め。 主人公エドガールは1幕でムーア人のティグラーナに対し民衆から蔑まれた言葉を掛けられたことに腹を立てて自宅に火を付け、駆け落ち。2幕ではいきなりティグラーナとの恋愛に飽きて戦場へ、3幕では自身が戦場で亡くなりその葬儀の設定で神父に成りすまし、ティグラーナを真珠の宝石で釣って「エドガールが裏切り者」と言わせて、その後正体を明かし民衆となじる。なんとも身勝手な主人公になっている。 ヒロインのフィデーリアとの恋愛感も余り感じられず、悪女ティグラーナの扱いもはっきりしない。 観客には共感が困難な台本なので、余り演奏機会が無いのでしょう。ただ音楽は美しく2幕冒頭のエドガールの故郷を想うアリアは、トスカの「妙なる調和」を思わせるメロディー。3幕のミサ曲も美しかった。 全体としては、オペラ「エドガール」を聞ける貴重な機会であり、その後の作品に続くプッチーニの音楽の美しさを感じることが出来た。東京二期会の今シーズン公演は7月「パルジファル」を残すのみで、ヴァイグレ指揮の読響を楽しみに。End
2022.04.24
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鑑賞日:2022年4月17日(日)15:00開演入場料:5,000円(E席/5階 L2列)【主催】東京・春・音楽祭実行委員会【共催】(財)東京都歴史文化財団 東京文化会館【後援】イタリア大使館東京・春・音楽祭2022東京春祭プッチーニ・シリーズ vol.3歌劇「トゥーランドット」(演奏会形式/字幕付)全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :ピエール・ジョルジョ・モランディ管弦楽 :読売日本交響楽団合 唱 :東京オペラシンガーズ児童合唱:東京少年少女合唱隊合唱指揮:宮松重紀児童合唱指揮:長谷川久恵出演トゥーランドット:リカルダ・メルベートカラフ :ステファノ・ラ・コッラリュー :セレーネ・ザネッティティムール :シム・インスン皇帝アルトゥム :市川和彦ピン :萩原 潤パン :児玉和弘ポン :糸賀修平役人 :井出壮志朗感想 東京春祭プッチーニ・シリーズは、一昨年vol.1「三部作」、昨年vol.2「ラ・ボエーム」が新型コロナ感染症の影響で相次ぎ中止となり、今年は遂に「トゥーランドット」が公演されるとのことで、曇り空の中、人出多い上野まで出掛けた。 客席は1階奥、3、4階席に空き席多く、6~7割程度の入。舞台は張り出しが出され反響板あり。ローエングリンと同じく照明で色が付けられ、夜の場面では舞台上手壁面に丸スポットで月が表されていた。 オケは6プルト約80名、合唱は各パート13~18名で総勢約60名で女声が多少多く、衣装は上下黒。ローエングリンと同じく合唱は舞台奥の反響板前に5列、1.5m程間を空けた上で全員マスクなし、並びは通常の下手側からSATB配列。 (つい上野のカレーランチに並んで時間掛りギリギリに)開演2分前に客席に着いた時点で既に合唱、オケが舞台上に登場。指揮者登場し、まずはオケと合唱の音量、音圧に圧倒される。 今回舞台上には譜面台は置かれず、歌手は全て暗譜。来日歌手4名は何れも素晴らしい。 カラフ役ステファノ・ラ・コッラは突き抜けた声で最後まで歌い切り、有名アリア「誰も寝てはならぬ」も素晴らしい。場面に合わせ、合唱=民衆の方を向いたり、3幕最後はトゥーランドットと抱き合ったりと演技も加えていた。 リュー役セレーネ・ザネッティはリリコだが感情を込めた歌声。 ティムール役シム・インスンも役に合った存在感のある歌声。 そしてタイトルロールのリカルダ・メルベートはワーグナー、R.シュトラウス歌手だが、役に合わせ力を入れすぎず超高音を歌い続ける所はさすが。 日本人歌手の皆さんも大変良かった。 衣装は、男声人は黒の燕尾服、リューは黒のノースリーブドレス、トゥーランドットは2幕は水色のドレス、3幕はゴールドに近い茶色のドレスで如何にも王女らしい。 所々出てくる児童合唱は、ブレザー姿の20名程が舞台前に並んで歌う。 オーケストラは1幕目最初はゆっくりのテンポで入ったが、どんどんとテンポアップして盛り上げて行く。3幕アリア「誰も寝てはならぬ」では、一度音楽を止め客先からの拍手を受け、プッチーニが筆を止めた3幕リューが亡くなった所で音楽を止めて十数秒程間を空けた所は演奏会形式では違和感なく、歌手との呼吸もぴったり、大きな指揮で音楽の盛り上げ方が上手いのは経験豊富なイタリア人指揮者ならでは。 本オペラは合唱が歌う所が多く、それも高音、大音量が要求され難曲。東京オペラシンガーズは、静かな場面では座ったまま歌い、フォルテ部分では立ち上がり80人のオーケストラを圧倒する声量で、3幕フィナーレを盛り上げていた。 先日のワーグナー「ローエングリン」に続いて大満足の公演だったが、客先に空席が多かったのは残念。ぜひワーグナーだけでなく、プッチーニ・シリーズも続けてほしい。 本音楽祭は目玉の一つバス・バリトンのブリン・ターフェルが来日する直前のPCR検査で陽性となり来日取りやめとなったとのことだが、数々の困難を乗り越えて素晴らしい音楽祭を開催している関係者、スタッフの皆さんに重ねて感謝したい。End
2022.04.17
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鑑賞日:2022年4月9日(土)14:00開演入場料:4,950円(D席 4階2列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2021/2022シーズンオペラ『ばらの騎士』リヒャルト・シュトラウス作曲全3幕(ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :サッシャ・ゲッツェル演 出 :ジョナサン・ミラー美術・衣裳:イザベラ・バイウォーター照 明 :磯野 睦再演演出 :三浦安浩舞台監督 :髙橋尚史合唱指揮 :三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団児童合唱 :多摩ファミリーシンガーズ管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演元帥夫人 :アンネッテ・ダッシュオックス男爵:クリスティン・ジクムントソン→妻屋秀和オクタヴィアン:マリア・カターエワ → 小林由佳ファーニナル :与那城 敬ゾフィー :安井陽子マリアンネ :森谷真理ヴァルツァッキ:内山信吾アンニーナ :加納悦子警 部 :妻屋秀和 → 大塚博章元帥夫人の執事:升島唯博ファーニナル家の執事:濱松孝行公証人 :晴 雅彦料理屋の主人 :青地英幸テノール歌手 :宮里直樹帽子屋 :佐藤路子動物商 :土崎 譲3人の孤児 :肥沼涼子、小酒部晶子、長澤美希感想 大好きな「ばらの騎士」の公演があるとのことで、20℃を超え初夏を思わせる天候の中、初台まで出掛けた。 ロビーに人も多く、テラスビッフェでは、ワインやシャンパンも飲める。ようやく日常が戻って来た印象。客席も1階前2列のみ空席のみで、Z席を含めほぼ満席の状況。 新国立劇場「ばらの騎士」の本演出は、過去に3シーズン観ており本日で4回目。1幕、2幕とも時代設定にあった舞台装置で3幕の居酒屋の仕掛けも奇をてらったものでなく、衣装含め、安心して観られる演出。2011年4月大震災後の公演は特に印象に残っている。 今回上手側の席だったため、1,2幕は上手の廊下部分がよく観え、1幕終わりにオクタヴィアンが駆けて出て行く所も見えたが、3幕は廊下が下手側になるので廊下は全く観えず。 時間となり指揮者登場で序曲が始まる。ホルンも無事に奏でられ幕が開き、伯爵夫人の寝室。ここでの伯爵夫人とオクタヴィアンのやり取りがぎこちなく恋仲に見えない。歌の方も独唱はそれなりに聞こえるものの重唱にバラバラ感あり綺麗に聞こえてこない。これは3幕終わりの3重唱まで全てに共通して感じた。 これまで観たシーズンの歌手との違い、代役日本人歌手の影響も大きいだろうが、演出変更の影響もあると思われる。 新型コロナ対策で歌っている時は距離を空ける演出になっているため、1幕のベッドの上で一緒に歌うことは出来ず、二人の恋愛感が伝わってこない。 2幕のオックス男爵はオクタヴィアンと剣で争い、過去シーズンでは足を怪我する設定だったが腕を怪我する設定に変更。これも従者を側に寄せないためと思われるが、ソファーに横になり大げさに痛がる設定と合わず、従者も周囲をウロウロしているだけで違和感あり。 オーケストラも新型コロナ対策でオケピットを浅くしているためか、少々迫力不足に感じてしまった。 ぜひ新型コロナの影響がない状態での再演を観たい。 End
2022.04.09
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鑑賞日:2022年4月2日(土)15:00開演入場料:8,000円(D席/4階 R3列)【主催】東京・春・音楽祭実行委員会【共催】(財)東京都歴史文化財団 東京文化会館東京・春・音楽祭2022東京春祭ワーグナー・シリーズvol.13楽劇「ローエングリン」<演奏会形式>ワーグナー作曲全3幕(ドイツ語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :マレク・ヤノフスキ管弦楽 :NHK交響楽団コンサートマスター:白井 圭合 唱 :東京オペラシンガーズ合唱指揮:エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩音楽コーチ:トーマス・ラウスマン出演ローエングリン :ヴィンセント・ヴォルフシュタイナーエルザ :マリータ・ソルベルグ→ヨハンニ・フォン・オオストラムテルラムント :エギルス・シリンスオルトルート :エレーナ・ツィトコーワ→アンナ・マリア・キウリハインリヒ王 :タレク・ナズミ王の伝令 :リヴュー・ホレンダーブラバントの貴族:大槻孝志、髙梨英次郎、後藤春馬、狩野賢一小 姓 :斉藤園子、藤井玲南、郷家暁子、小林紗季子感想 新型コロナ第6波のまん延防止の影響と、歌手や演目まで変更で魅力乏しく、しばらくオペラ鑑賞を中断。3年ぶりの東京春祭ワーグナー・シリーズ開催、ようやく海外一流歌手が舞台上で聞けそうとのことで、桜満開の上野へ出掛けた。 クロークやドリンクサービスは無いものの、ロビーは結構な人混みで、客席はほぼ満席。舞台は張り出しが出され、今回映像がないため後部は反響板あり。映像が無い代わりに場面毎に照明で色が付けられ、これでも十分効果あり。 オケは6プルト3管編成で約80名、合唱は各パート14~16名で総勢60名。これにバンダが加わる。2018年の同音楽祭、同公演はオケ7プルト、合唱100人だったので少し小規模になっているが、合唱は1.5m程間を空けた上で全員マスクなし、オケの弦もコンマス始めマスク無しの方も見られた。 開演時間となり合唱、オケが舞台上に登場しチューニング。指揮者登場し、前奏曲が奏でられ、まずはその音量、音圧に圧倒される。 合唱は中央が女声でその上手バス、下手テノールの配置。今回合唱人数を絞った関係で音量落ちる女声を中央に配置したと思われる。 フォルテ部分ではオケに負けずに聞こえており、反響板も加わってその効果あり。但し男声合唱の弱音部はパート離れた事による多少のズレを感じた。 3幕最初は、舞台上合唱は女声8人のみ。婚礼の合唱は裏歌で厳かに響き、その後女声8人の美しい合唱。3場の間奏曲の間に合唱団全員が再登場し、「ハインリヒ王、万歳」の大合唱に続く音の厚みが素晴らしい。プロのオペラ歌手の方々の顔も多く見られさすが。 オケも、バンダのトランペットを3幕3場で舞台上手下手の前後に配置させ、音楽の立体感を浮き出させており、舞台装置がなくても演出が出来ている。 歌手は、皆さん素晴らしい。タイトルロールのヴォルフシュタイナーは、2幕後半から声が若干危なくなったが、3幕長い「グラール語り」まで力で歌いきりさすが。エルザ役オオストラムはワーグナー歌手程力強さは無いものの、オケに負けること無くリリコの美しく響く高音域と安定した中音域で素晴らしい。オルトルート役キウリは、高音部で金切り声的な所もあったが、魔女悪役にあった歌い方。ハインリヒ王役ナズミ、テルラムント役シリンス、伝令役ホレンダーは役に合わせた安定した歌声だった。 やはり本公演の一番の功労者は指揮者マレク・ヤノフスキで、一糸乱さない指揮でどんどん音楽を引っ張って行く。3幕は登場し指揮台に立つやいなや、拍手が鳴り止まない内に間奏曲を始め、婚礼の合唱へ続けることで音楽の緊張感を保っていた。80歳を超えるご高齢だが、年齢を全く感じさせない指揮だった。 終演後は、拍手が鳴り止まず何度もカーテンコールが行われ、最後に指揮者登場でお開きに。 新型コロナ感染の魔法・制限を解き放すような公演で、やっとオペラの日常が戻って来たことを実感出来た。 来年は「マイスタジンガー」が予定されており、今から楽しみ。また本シリーズで楽劇未演奏の「トリスタンとイゾルデ」もぜひ聴きたい。 何よりも、新型コロナ禍の中、ムーティー始め多くの海外著名演奏家を来日させ、数々の困難を乗り越えて音楽祭を開催している関係者、スタッフの皆さんに感謝したい。End2024/4/8追記 本公演の歌手変更2名あり、『マリータ・ソルベルグは、健康上の理由により出演ができなくなりました。』と記載あったが、もう一人は『当初出演を予定しておりましたエレーナ・ツィトコーワは、本人の都合により出演ができなくなりました。』 ツィトコーワ本人の都合が気になってプロフィールを見た所、出生地がサンクト・ペテルブルグとなっており、ロシアのウクライナ侵略戦争の影響でしょう。 当面ロシア出身の音楽家の演奏は聞けない状況で、早く終わることを祈るばかりです。
2022.04.02
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鑑賞日:2022年1月30日(日)14:00開演入場料:2,500円(E席/5階 R2列)【主催】(財)日本オペラ振興会、(社)日本演奏連盟2022都民芸術フェスティバル参加公演藤原歌劇団公演歌劇「イル・トロヴァトーレ」ヴェルディ作曲全4幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館大ホールスタッフ指 揮 :山下一史演 出 :粟國 淳総監督 :折江忠道美 術 :横田あつみ衣 裳 :増田恵美照 明 :大島祐夫舞台監督:齋藤美穂合唱指揮:安部克彦合 唱 :藤原歌劇団合唱部管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演レオノーラ :西本真子マンリーコ :村上敏明ルーナ伯爵 :上江隼人アズチェーナ:桜井 万祐子フェランド :相沢 創イネス :髙橋未来子ルイス :工藤翔陽 ロマの老人 :江原 実 伝 令 :濱田 翔 感想 新型コロナ・オミクロン株の流行で「まん延防止等重点措置」が出されている中、藤原歌劇団の新春公演を聴きに上野まで出掛けた。 アクシデントを予想し、早めに移動し、開場時間にはホール到着。入り口の「本日の出演者」掲示に変更なくまずは一安心。 13:15分からの作品解説は総監督の折江忠道さんが登場。何時もの大声で、コロナ禍での準備、練習の苦労状況を聞くことが出来た。 客席は1階席両サイド、3階席に空席が多く、都民芸術祭で安価に設定されているE席にも空席が見られ6~7割程度でコロナの影響大。 1幕と2幕は連続して演奏され、途中休憩は2回。幕が開くと舞台前面の左右5m程は上までの壁で、中央部分を囲むように舞台装置を配置。 場面に合わせ、階段や扉、木々等が配置され、奥に大きな月が映される。 事前の作品解説でコロナ対策で人の動きを制約して演出するため、舞台上を狭くしたとのこと。また左右と奥の上部に人が並べるようになっており、そこに合唱が加わり、距離を取った上で歌、演技をしていた。 3幕フィナーレのマンリーコのカヴァレッタ「見よ、恐ろしい炎を」では、奥の壁が3箇所開いて、赤い照明とともに兵士たちが登場し盛り上がる演出に。 4幕レオノーラのカヴァティーナ「恋は薔薇色の翼に乗って」で、途中指輪の中の毒を飲む場面で、舞台奥の月が赤色に変わるなど、歌に合わせた演出が取られていた。 以前本作品を鑑賞した際は、4幕が呆気なく終わってしまう印象だったが、今回3幕フィナーレと4幕で音楽のテンポ、ダイナミクスを大きく変えるオケの演奏と、演出も加わり、違和感なく4幕を理解することが出来た。 歌手の方は、レオノーラのビブラートが大きく音程が不明瞭な部分があったり、マンリーコが途中で音が届かなくなった所もあったが、全体としては各役を歌えていた。 有名なマンリーコのカバレッタ「見よ、恐ろしい炎を」ではハイCが出ていたので良かった。1幕フィナーレの三重唱はバランス、テンポも良く、ヴェルディらしさを感じることが出来た。 歌手の中ではアズチェーナ役の桜井万祐子が恐ろしさを感じさせるよく通る歌声で素晴らしかった。 合唱は残念ながら全員マスク装着、「見よ、恐ろしい炎を」の男声合唱は少々迫力不足に。 コロナ禍のオペラ公演、準備、練習、演出等、ご苦労も多かったかと思われれるが、その中でオケ、歌手、演出がバランス良くまとめられた公演だった。End
2022.01.30
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まずは昨年末の「第九」演奏会ですが、首都圏、大阪の主な公演の指揮者、合唱は下記の状況。新日フィル シモーネ・ヤング→鈴木秀美 二期会合唱団読響 フランチェスコ・アンジェリコ→ジョン・アクセルロッド 新国立劇場合唱団東フィル ケンショウ・ワタナベ→角田鋼亮 新国立劇場合唱団東響 秋山和慶、ジョナサン・ノット 新国立劇場合唱団日フィル 角田鋼亮、小林研一郎 東京音楽大学,日本フィルハーモニー協会合唱団都響 準・メルクル 二期会合唱団東京シティ 高関 健 東京シティ・フィル・コーアN響 ファビオ・ルイージ→尾高忠明 東京オペラシンガーズ神奈川フィル 川瀬賢太郎 プロ歌手による神奈川フィル第九合唱団(28名)大阪フィル ラルフ・ワイケルト→ガエタノ・デスピノーサ 大阪フィルハーモニー合唱団関西フィル ヴァハン・マルディロシアン→大友 直人 関西フィルハーモニー合唱団日本センチュリー 瀬山智博 日本センチュリー合唱団 11月末に突如外国人入国禁止となり、急遽、指揮者、ソリストの変更が相次ぎ、大変な状況。合唱は、マスクなしで人数絞ったプロ合唱団か、マスクを付けて関連合唱団、大学のアマチュアを歌わせていました。また一部の地域主体の演奏会(札幌、仙台、川崎、他)も行われ、市民公募合唱団はほぼマスク着用のようです。「少ない人数で良いのか」、「マスクをして第九が歌えるのか」等々言われてますが、クラスター発生は聞こえてこず、なにはともあれ関係者の皆様はご苦労さまでした。マエストロ井上道義は、マスクを理由に指揮を降りたようで。大阪フィル 躍動の第九年明けても外国人入国禁止は続き、オペラ公演も大変な状況に。楽しみにしていた2月の東京二期会「影のない女」は演出スタッフが入国できず、何度も公演されている宮本亜門演出「フィガロの結婚」へ変更。新国立の「さまよえるオランダ人」「愛の妙薬」も相次ぎ日本人歌手に変更で、興味は激減。2年連続でオペラ公演を中止している東京春祭は、4月「ローエングリン」「トゥーランドット」を予定しており、演奏会形式のため主役級の日本人歌手への変更はしないでしょうから、それまでに入国制限を緩和してもらいたい。ムーティーも聞けないのでは・・・。WHOも「コロナ渡航制限「価値ない」撤廃・緩和勧告」を出しているので。End
2022.01.23
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鑑賞日:2021年11月28日(日)14:00開演入場料:6,000円(BC席シーズンセット券/2階F列)【主催】(財)東京二期会、【共催】(財)ニッセイ文化振興財団《二期会創立70周年記念公演》ベルリン・コーミッシェ・オーパーとの提携公演東京二期会オペラ劇場〈二期会名作オペラ祭〉NISSAY OPERA 2021提携オペレッタ「こうもり」ヨハン・シュトラウスII世作曲(ドイツ語歌唱、日本語台詞上演/日本語字幕付)会場:日生劇場スタッフ指 揮 :川瀬賢太郎演 出 :アンドレアス・ホモキ舞台美術:ヴォルフガング・グスマン照 明 :フランク・エヴィン合唱指揮:根本卓也演出助手:上原真希舞台監督:幸泉浩司公演監督:加賀清孝合 唱 :二期会合唱団管弦楽 :東京交響楽団キャストアイゼンシュタイン:小林啓倫ロザリンデ :森谷真理→木下美穂子フランク :杉浦隆大オルロフスキー:成田伊美アルフレード :金山京介ファルケ :加耒 徹ブリント :大川信之アデーレ :雨笠佳奈イダ :内山侑紀フロッシュ :森 公美子感想 11月は所要が入り、日生オペラ「カプレーティとモンテッキ」、新国立「マイスタージンガー」と相次ぎ聞きに行けず。 東京二期会シーズンセット券に入っている公演、年末も近づき「こうもり」を観に、新型コロナがすっかり収まり急激に人出が増えている中、日比谷、日生劇場へ出掛けた。 1年振りの日生劇場は、入り口でのアルコール消毒、遠隔カメラによる検温、チケット半券自身もぎり、チラシピックアップ、ドリンクサービス中止(ペットボトル販売のみ)等の新型コロナ感染対策はこれまで通り。 客席は前2列以外は全席販売で、ほぼ満席。オケピットには管楽器も入り、通常のオペラ公演を聞くことが出来た。 舞台は幕が開いた状態で、装置全てがベージュ色のカバーに覆われた状態で、序曲が始まる。序曲途中でカバーが除かれ、アイゼンシュタイン邸宅の居間が表れる。 家具の配置や奥の壁が動いて、そのままオルロフスキー公爵邸の舞踏会場に転換。 本来3幕物を2部構成にしており、2幕ハンガリーの伯爵夫人に変装したロザリンデがフランス人侯爵ルナールに扮したアイゼンシュタインから懐中時計を取り上げ、オルロフスキー公爵のシャンパンの唄で第1部が幕。20分の休憩を挟み、まだ客席が暗転になる前から演奏が始まり、堅苦しくないオペレッタならではの演出。 再び家具などの舞台装置が動かされ、天井の巨大シャンデリアが降ろされた状態で監獄の所長フランクの部屋となる。オルロフスキー公爵はファルケが雇った女性を男装させた偽物程度の読み替えで、全体的に違和感のない演出。 オケはスピーディな演奏で、どんどん物語が進められるのは、指揮者の功績でしょう。 ロザリンデ役の森谷真理さんが東京二期会退会伴い木下美穂子さんへ変更あったものの、歌手は皆さん役に合った歌声で、日本語の台詞も解り易い。2017年公演の再演とのことで、演技もスムーズ。フロッシュ役の森公美子の講釈は、自らの歌声とオペラに絡めたお話で面白い。 やはりオペレッタはこのような肩肘張らない演出が良いと思った公演だった。 すでに東京二期会の「2022-2023シーズンラインアップ」が発表されており、11月の日生劇場オペレッタは「天国と地獄」とのことで楽しみに。End
2021.11.28
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鑑賞日:2021年10月31日(日)15:00開演入場料:5,000円(7列→12列)【主催】神奈川県立音楽堂、(財)神奈川芸術文化財団神奈川県立音楽堂室内オペラ・プロジェクト第4弾オペラ「シャルリー~茶色の朝~」ブルーノ・ジネール作曲フランク・パヴロフ原作日本初演(フランス語上演・日本語字幕付)会場:神奈川県立音楽堂曲目<第1部>ベルトルト・ブレヒト/クルト・ヴァイル:『三文オペラ』より「メッキー・メッサ―の哀歌」モーリス・マーグル/クルト・ヴァイル:「セーヌ哀歌」ロジェ・フェルネ/クルト・ヴァイル:「ユーカリ」ベルトルト・ブレヒト/クルト・ヴァイル:『三文オペラ』より「大砲ソング」アルヴィン・シェルホフ「ヴァイオリンとチェロのための二重奏」より第二楽章ジンガレスカパウル・デッサウ:ゲルニカ~ピカソに捧げるブルーノ・ジネール:パウル・デッサウの‟ゲルニカ”のためのパラフレーズ(日本初演)<第2部>「シャルリー~フランク・パヴロフの小説『茶色の朝』にもとづくポケット・オペラ」日本初演 (フランス語上演・字幕付)スタッフ演出:クリスチャン・レッツ 照明・舞台監督:アントニー・オーベリクスプロダクション:アンサンブルK/CCAMヴァンドゥーヴル・レ・ナンシー国立舞台センターの共同プロダクション出演アンサブルKソプラノ:アマンディーヌ・トラン→アデール・カルリエヴァイオリン:エロディー・ハースチェロ:マリー・ヴィアールクラリネット:グザヴィエ・フェルタンピアノ:セバスチャン・デュブールパーカッション:グレゴリー・マサット<第3部>作曲家ブルーノ・ジネール(オンライン)を囲むクロストーク(日仏通訳付)ゲスト・スピーカー:高橋哲哉(哲学者・東京大学名誉教授)ブルーノ・ジネールは来日できなくなり、オンラインでのトーク出演感想 神奈川県立音楽堂主催の室内オペラ・プロジェクトで「シャルリー~茶色の朝」の日本初演があるとのことで小雨模様の中、紅葉坂を登って音楽堂まで出掛けた。 開演の2時間前にメールが入り、字幕表示装置が見にくいため席の移動があるとのことで、開場直ぐにホールへ。振替デスクで7列から12列への移動だが、縦位置はそのままで通路側は確保されたので快諾し座席へ。客席は前7列を空席としたものの、ほぼ満席の状況。 第1部は、第1次対戦から第2次対戦の間に書かれた反政府のユダヤ系の作曲家により書かれた小品。クルト・ヴァイルの「三文オペラ」や「ユーカリ」はシャンソン風でジャスの要素もある。後半3曲は現代音楽で、ピアノの弦を直接叩く特殊奏法もあり。 舞台を緑のカーテンで仕切り、その前で演奏された。歌唱曲ではソプラノのアデール・カルリエ以外の奏者もコーラスとして参加。40分。 第2部は白い紗幕の前に形の異なる6席の白い椅子が置かれ、右端にTV。楽器は全て紗幕の後ろでオペラ「シャルリー」が演奏される。 シャルリーは登場せず、その友人女性により語られる設定。基本友人女性一人が歌い、語るのだが、5人の演奏者がコーラスに入ったり、語りや自警警察として登場するだけ。 物語はペットの犬が茶色だけに制限され、他の色のペットは毒入りの餌で殺される。それが猫にも適用され、新聞や雑誌も廃刊され1誌に制限。そしてペット制限処罰は過去にも適用され、シャルリーも自警団の密告から捕まり、やがて友人女性宅にも警察がやって来るところで幕。 日常の何気ない制限がやがて大変な事態になると言うナチスによるユダヤ人虐殺に通じる内容で、最初のゆったりとした静かな音楽から段々と緊張感が増し、恐怖が襲ってくる音楽になっている。50分程度。 第3部は本作品を作曲したブルーノ・ジネール氏とオンラインでのトークとなっており、ブルーノ・ジネール氏は大型画面に登場し、通訳を介して、ゲストの哲学者、高橋哲哉氏との対談が行われた。 原作「茶色の朝」の主人公シャルリーは男性だが、作曲を委託された劇場からソプラノ歌手の起用を要請されたため、その友人女性との設定でオペラ化したとのこと。この物語りの「法令不遡及の原則」を破る「法令の遡及適用」は先日の香港でも起こっている訳で遠い話では無い。 フランスの現代小オペラを聞ける貴重な機会となった。 プログラムには室内オペラ・プロジェクトの次回公演として、来年10月にファビオ・ビオンディ指揮、エウローパ・ガランテによるヘンデル「シッラ」の予告が掲載。 昨年新型コロナ感染で来日リハーサルまで行って直前に中止となった公演であり、今から楽しみに。End
2021.10.31
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鑑賞日:2021年10月3日(日)14:00開演入場料:4,950円(D席 3階R9列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2021/2022シーズンオペラ『チェネレントラ』ロッシーニ作曲全2幕(イタリア語語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :マウリツィオ・ベニーニ→城谷正博演 出 :粟國 淳美術・衣裳:アレッサンドロ・チャンマルーギ照 明 :大島祐夫振 付 :上田 遙舞台監督 :髙橋尚史管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団チェンバロ:根本卓也合唱指揮 :三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団出演ドン・ラミーロ :ルネ・バルベラダンディーニ :上江隼人ドン・マニフィコ:アレッサンドロ・コルベッリアンジェリーナ :脇園 彩アリドーロ :ガブリエーレ・サゴーナクロリンダ :高橋薫子ティーズベ :齊藤純子感想 新型コロナの第5波での公演中止や当方都合で3ヶ月近くオペラ公演から遠ざかってしまったが、ようやく非常事態宣言も解除され東京、初台まで出掛けた。 非常事態宣言が解除されたものの、クローク閉鎖、来場者カード記入、カメラによる体温測定、アルコールによる手の消毒後にチケット半券の自身でもぎり等は同じ。ドリンクサービス閉鎖で1階ホワイエでペットボトル販売は復活。 客席はZ席が販売再開され、1階前2列除き販売対象となり、ほとんど空き席は見られず久しぶりの満席状態に。 2021/2022シーズン開幕公演『チェネレントラ』は新演出で、映画スタジオで「チェネレントラ」を撮影しているとの設定で演奏される。序曲が始まり幕が上がると撮影所のオフィスでオーディション中の状況。色々な衣装を着た役者たちがマネージャーの机に集まり、その後ろには「チェネレントラ」のポスターと小道具も面白い。 大掛かりな壁等のセットはなく、大きな部屋の扉部分や階段、窓、暖炉のみが置かれ、周りは照明で各場面を作り上げる。個別のパーツを移動させるだけで場面転換できるのでスムーズ。 また紗幕やふすまが組み合わさった様な仕切りが舞台中央に置かれ、紗幕の後ろでクレオパトラ?等の別な映画撮影が見えるが、基本オペラの進行を邪魔すること無く進められる。 王子がチェネレントラを探しに行くのは、馬車ではなく板に絵を書いたスポーツカーなどメルヘン的。家来たちの衣装、髪型も昔のミュージカルのようで面白い。 歌手は皆さん上手く、重唱も聞かせてくれる。王子ラミーロ役のルネ・バルベラは高音が明るく響き、2幕アリア「そう、誓って彼女を見つけ出す」ではハイCを軽々と出し、観客は「ビズ」と叫びたい所だが、マスクエチケットで盛大な拍手のみとなった所に、アンコールが入り流石心得ている。 義父男爵ドン・マニフィコ役アレッサンドロ・コルベッリはお得意の役らしく、演技含め聞かせる。意地悪姉さん役の高橋薫子と齊藤純子、従者で偽り王子役の上江隼人もベテランで歌声に表現があり上手い。 何と言ってもタイトルロールの脇園彩は低音から高音まで安定した歌声で、最後のアリア「苦しみと涙のために生まれ」はたっぷりレガート、アジリタも正確な音程で素晴らし。 今回座席が上手サイド奥のためか、音が届きにくい印象。舞台中央に仕切りがあると、反響板効果で歌声がよく飛んでくるが、舞台奥まで見える状況だと余り飛んでこない。 オケもオケピットが深く小規模編成のためか不足気味に感じた。オケピット内下手を高くしチェンバロが置かれており、場面転換時のアドリブ演奏では、「セビリアの理髪師」「ギヨーム・テル」序曲に加え、バッハやベートヴェンも加わり楽しませてくれた。 「チェネレントラ」は2009年新国立劇場で指揮:デイヴィッド・サイラス、アンジェリーナ:カサロヴァ、王子:シラグーザ、オケ:東フィルで聞いており、その時の記憶と比べると今回感動が少ない。 歌手の技量差はあると思うが、オケの演奏でロッシーニ・クレッシェンドの強弱、テンポの揺れが余り無いように思い、指揮者の差が大きいかと思われる。その1年前2008年スポレート歌劇場来日公演は、技術よりも母国のノリを感じて更に感動した覚えが。 とは言え、ようやくコロナ禍が明け2021/2022シーズンの開幕としてピッタリの演目で十分に楽しむことが出来た。早く入国待機期間が撤廃、外国キャストが来日出来で、今シーズンは無事に公演が続くことに期待。End
2021.10.03
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鑑賞日:2021年7月11日(日)14:00開演入場料:4,950円(D席 4階2列)【主催】(財)新国立劇場新国立劇場2020/2021シーズンオペラ『カルメン』ビゼー作曲全4幕(フランス語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :大野和士演 出 :アレックス・オリエ美 術 :アルフォンス・フローレス衣 裳 :リュック・カステーイス照 明 :マルコ・フィリベック管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団合 唱 :新国立劇場合唱団、 びわ湖ホール声楽アンサンブル児童合唱:TOKYO FM少年合唱団出演カルメン :ステファニー・ドゥストラックドン・ホセ :ミグラン・アガザニアン→村上敏明エスカミーリョ:アレクサンドル・ドゥハメルミカエラ :砂川涼子スニガ :妻屋秀和モラレス :吉川健一ダンカイロ :町 英和レメンダード:糸賀修平フラスキータ:森谷真理メルセデス :金子美香感想 新国立劇場「カルメン」は新演出のプレミエ公演で指揮者が大野和士とのことで、まん延防止処置から緊急事態宣言切り替え前日の東京、初台まで出掛けた。 明日からの緊急事態宣言では、客席50%以下の制限が復活するため、既に50%超えている公演のチケットは7/12以降販売停止とのこと。本日の公演は制限前のため、ほぼ満席の状況で開催された。 有名な序曲が始まって直ぐに幕が開き、鉄骨を組み上げた壁で野外ステージの裏側が現れる。ミュージシャンが2箇所の入り口から出入りし、そのファン達が集まってくる。 原作のタバコ工場は野外ステージ、カルメン達はミュージシャンと業界関係者、工場の竜騎兵は警備員、密輸団は麻薬販売と現代に読み替えられているが、それなりに話が繋がり、2019年神奈川県民ホール「カルメン」公演のブロードウェイ、ハリウッド同様、違和感はなし。エスカミーリョは闘牛士なのかミュージシャンなのかはよく解らず。 今回休憩は1回のみで1幕と2幕、3幕と4幕が場面転換の数分を挟んで連続して演奏された。 序曲が終わると鉄骨の壁が上がり、ステージが登場。手前でミカエラのやり取りの後、カルメンがハバネラを歌う所がステージ奥のスクリーンに拡大して写される。ミュージシャン、観客入り乱れての喧嘩騒動となり、警備員のモラレス、ドン・フォセ、スニガが登場し、カルメンを取り逃がし1幕終了。2幕の酒場の場面は、鉄骨の壁の中にテーブルが置かれ、ステージ近くのレストランスペースか。 30分の休憩挟んで、3幕はステージ裏の機材置き場のスペースで、上部から薄光りが入り明け方の設定か。密輸団が楽器運搬用のワゴンに麻薬を入れ麻薬を運搬する中で、カード占い、エスカミーリョ登場、ミカエラからの母の病状を聞き、ドン・ホセが故郷へ。 4幕は1幕最初のステージ裏側に赤いカーペットが敷かれ、次々とミュージシャンが通り、ファンと記念写真。エスカミーリョとカルメンが腕を組んで登場するとドン・ホセが現れ、最後はナイフで刺して幕。 オケは序曲はスピーディーに演奏されるものの、ハバネラ等はかなりゆっくりとしたテンポ。歌手の歌いやすさを重視したか、楽しむことが出来た。当方としてはもう少しテンポアップした演奏の方が好みだが。 なお本公演はオペラ・コミック様式を取り入れ、途中セリフが多く入っている。 歌手は、タイトルロールのステファニー・ドゥストラックが素晴らしい。中域から低音でも声の明るさが保たれ聞きやすい。容姿もカルメンにピッタリ。 ドン・ホセ役の村上敏明は、初日演技のみで歌唱の代役を立て歌わなかったようだが、今日は最後まで熱唱。花の歌は素晴らしかった。ただ全体的に明るめの声質のみであり、いつもの中域の表現豊かな歌声が聞こえなかったのは本調子ではなかったためか。 エスカミーリョ役のアレクサンドル・ドゥハメルは体格よく目立っていたが、歌声はそれほど届いて来ない。 ミカエラ役の砂川涼子はお得意の役で、純粋な田舎娘の雰囲気が出てて大変良かった。 その他の役は普段主役級の日本人歌手がそつなく歌い、問題なし。重唱もバランスが良い。 そして合唱も児童合唱含め完璧だった。 コロナ禍で海外の歌手、演出家を集め、プレミエ公演を行うのは、関係者は大変な苦労があったことと思われる。 やはりすべてを取りまとめた大野和士音楽監督の功績でしょう。 次の大野和士プロデュースのオペラ夏の祭典「マイスタージンガー」が楽しみ。End
2021.07.11
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鑑賞日:2021年6月6日(日)15:00開演入場料:4,400円(D席 4階R2列)【主催】(財)東京都歴史文化財団 東京文化会館東京文化会館 舞台芸術創造事業〈国際共同制作〉 オペラ『Only the Sound Remains -余韻-』 カイヤ・サーリアホ作曲原作:第1部 能「経正」、第2部 能「羽衣」(英語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館 大ホールスタッフ指 揮 :クレマン・マオ・タカス演出・美術・衣裳・映像:アレクシ・バリエール振 付 :森山開次美術・照明・衣裳:エティエンヌ・エクスブライア音 響 :クリストフ・レブレトン舞台監督:山田ゆか出演<第1部:Always Strong>経 正:ミハウ・スワヴェツキ(カウンターテナー)行 慶:ブライアン・マリー(バス・バリトン)ダンス:森山開次<第2部:Feather Mantle>天 女:ミハウ・スワヴェツキ白 龍:ブライアン・マリーダンス:森山開次管弦楽 東京文化会館チェンバーオーケストラ バイオリン:成田達輝、瀧村依里 ヴィオラ :原裕子 チェロ :笹沼樹 カンテレ :エイヤ・カンカーンランタ フルート :カミラ・ホイテンガ 打楽器 :神戸光徳コーラス 新国立劇場合唱団 ソプラノ:渡邊仁美 アルト :北村典子 テノール:長谷川公 バ ス :山本竜介感想 フィンランドの作曲家カイヤ・サーリアホの作品は「遥かなる愛」をMETライブビューイングで鑑賞し、独特の音楽世界を持った現代オペラに興味を持ち、東京文化会館主催で能を原作とした公演があるとのことで、緊急事態宣言下の結構人出がある上野まで出かけた。 東京文化会館はいつも通り、カメラによる体温チェック、手をアルコール消毒、チケット半券を自らもぎり、プログラムをピックアップして入場。ロビーの座席はほとんど無く、2階より上階の廊下の椅子も全て取り払われていた。 客席は、前後左右に空席は設けられていないものの、1階席は左右、2階席以上は舞台近く側の座席を販売対象から外し、全体で50%以下になっている様だった。 オケピットの中には、フィンランド民族楽器のカンテレ、ドラ他数々のパーカッション、フルート奏者はピッコロ等の木管楽器を持ち替えてバスクラも演奏。コーラス4人もオケピットの中に。 指揮者は既にオケピットに座っており、客席暗転、音楽と同時に幕が上がる。第1部「経正」は舞台中央とその奥に白い幕が舞台上部から吊るされているだけのシンプルなもの。 その白幕には、舞台に合わせ紅葉や墨絵の文字が映写される。上下黒の衣装の行慶が登場し、法親王の命により、青山の琵琶を仏前に据え、討ち死にした経正を弔うため管弦講を行う。白い幕に人影が表れ、舞台袖で上下黒衣装の経正が歌うが、白い幕を破り髷を結った白い衣装の経正の亡霊役森山開次が登場し踊り始める。やがて戦を思い出し激しく苦しく踊るが、その身を恥ずかしく思い、見られまいと燈火を消し、破れた白い幕から暗闇に消え失せる。 最後、紺色のシャツを着たコーラス4人も舞台に上がり歌い終曲。 第2部「羽衣」は、舞台奥くまで開けて黒い壁に囲まれ、煙幕が炊かれた中、舞台左右から複数のスポットライトが照らされる。舞台中央には大きな布幕が吊るされ、これが羽衣となる。 コーラス4人が漁夫仲間として立っており、そこへ黒衣装の漁夫の白龍が登場。舞台中央の布幕の羽衣を見つけ持って帰ろうとする所に、白い衣装の天女が登場。羽衣を返すよう頼むが白龍は聞き入れず。 「それがないと、天に帰れない。」と悲しむ天女の姿に心を動かされ、天女の舞を見せれば返すと白龍は約束するが、「羽衣を返すとそのまま天へ帰ってしまうのでは」と躊躇する。 天女の「そんなことはしません。」言葉に、白龍が自らの浅ましい心を恥じて羽衣を返す。白い衣装を着た森山開次が天女役で加わり、春の三保の松原を賛美し舞い続け、舞台奥が開いて白い光が入り、彼方の富士山へ舞い上がり霞にまぎれて消えて行き幕。 音楽は、歌、楽器も各マイクで拾い、エコーやサンプリング等の電子加工がされてスピーカーから発せられる。そのため2階席正面は、ミキサー等の機材が置かれ全て操作されていた。 音楽としては無調で、例えばカンテレが琴、フルートが横笛、太鼓が鼓に聞こえたり、亡霊が出てくる不気味な音色なったり、天界の様な音になったりする。コーラスも、舞台上除き、風の音を出したり、言葉を繰り返したりするのみ。 こけおどしの大音量は入れず、それでいて音楽に統一感があり、英語の歌詞なのに日本的に感じてしまうのは、作曲、作品の素晴らしさでしょう。歌手の二人もカウンターテナーとバス・バリトンの響きで、見事に作品に溶け込んでいた。 唯一違和感を感じたのは森山開次のダンスで、あれほど激しく動き回る必要はあったのか。能のような動きの方がしっくりしたのでは。 第1部、2部とも約45分の長さで、25分休憩挟んで約2時間、現世とは異なった別世界の日本らしさを感じることが出来た素晴らしい体験だった。 カーテンコールは、出演者、演奏者に加え、スタッフ、作曲者も加わって、何度も行われ、その間客席からの拍手は途切れることはなかった。 今回の2作品の共通テーマである「自らの行いを恥じ、悔い改める」ことは日本古来からの文化、考え方と思うが、最近は自らの主張ばかりに固執し、他人を非難、中傷する場面に出くわすことばかりと言わざるを得ない。 このような考えに改めて気付かさされることは、本公演が正に音楽、芸術、文化だからでしょう。 End
2021.06.06
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鑑賞日:2021年5月23(日)14:00開演入場料:6,000円(BC席シーズンセット券/ 2階10列)【主催】(財)東京二期会二期会創立70周年記念公演二期会ニューウェーブ・オペラ劇場オペラ「セルセ」ヘンデル作曲全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:めぐろパーシモンホール 大ホールスタッフ指 揮 :鈴木秀美演 出 :中村 蓉装 置 :松生紘子衣 裳 :田村香織照 明 :喜多村 貴演出助手:根岸 幸舞台監督:幸泉浩司公演監督:大島幾雄管弦楽 :ニューウェーブ・バロック ・オーケストラ・トウキョウ(NBO)コンサートマスター:戸田 薫合 唱 :二期会合唱団出演セルセ :澤原行正アルサメーネ:本多 都アマストレ :長田惟子アリオダーテ:田中夕也ロミルダ :塚本正美アタランタ :新宅かなでエルヴィーロ:堺 裕馬ダンサー:中村 理、北川 結、池上たっくん、久保田 舞、田花 遥、山田 暁感想 コロナ禍緊急事態宣言下、東京二期会がバロック・オペラ「セルセ」の公演を行うとのことで、都立大学駅で降り、めぐろパーシモンホールに向かった。 初めて訪れるホール、木材、ガラス、コンクリートを組み合わせた中々素敵な建物で、手前のめぐろ区民キャンパスの緑豊かな公園にマッチしている。中に入るとホール・ホアイエは2階まで吹き抜けになっており、全面ガラス張りからの公園の眺めが目に優しい。 ホール入口でカメラで検温、アルコールで手を消毒、チケット半券を自身でモギリボックスへ、来場者カードを箱に入れ、プログラムをピックアップと通常の新型コロナ対策がされていた。 今回、3回目の緊急事態宣言前にチケット売出し、宣言後に発売停止したため、左右の空席は設けられず、6~7割の入りか。 オケピットにチェンバロ2台が指揮者の左右に置かれ、テオルボ、リュート等が見える。ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウは、東京二期会のバロックオペラ演奏のために集められた古楽器演奏集団らしく、BCJのメンバーも見える。 演奏は完璧なピリオド奏法のため、これ以上大きなホールでは難しいでしょう。 ほぼ時間通りに指揮者登場し、演奏が始まると直ぐに幕が上がる。舞台中央奥から左右手前に壁が設けられ、その壁の一部から場面に合わせ、酒場と姉妹の部屋が瞬時に現れる。また中央付近に階段が設けられ、壁の上も演技の場となったり、壁奥に隙間を作り、そこから登場したりと次々に場面が変わる。 原作は3幕構成だが、第1幕と第2幕前半を連続で演奏し、休憩は1回のみ。 多くの曲にダンサーによるダンスが入り、出演者たちも歌いながら踊り続けるので、中々大変。インド映画のミュージカルの様。欧州ではバロック音楽に奇抜な演出やダンスを加えることが流行っているようで。確かにピリオド奏法にはビートがあり、ダンスが合う。 オペラの内容も喜劇なので、当方としては違和感なく楽しめた。 合唱は各パート4人の16人、コロナ対策で舞台上には登場せず、舞台壁上で黒服で楽譜を持って声だけで参加。 歌手は皆さん大変なダンスの中でも、正しく歌えていた。その中でもロミルダ役塚本正美のアリア「あの人を愛する?、それは妬みです」 完璧な音程と声の響きで素晴らしかった。 但し違和感を感じたのは2箇所。 1つは「オンブラ・マイ・フ」がなんと3回も歌われる。まずは原曲通り第1幕冒頭にセルセが歌うが、次に何故かアルサメーネが第2幕後半 「この苦しみを終わらせるために」の絶望の後に歌い、更にフィナーレの合唱の後にセルセが再度登場し、第1幕の人々が集まり大木のように動く演出でまた歌うのである。確かに有名で美しいアリアだが、なぜ3回も同じアリアが歌われるのか?フィナーレの後に付け足しなんて何故? 今回公演の最大の違和感はセルセがテノールで原曲よりオクターブ低いままで全て歌われたこと。演出優先でテノールにしたと思われるが、原作のカウンターテノールかメゾ・ソプラノでないと、歌声が響いて来ず、重唱では和音の幅が広がり綺麗に聞こえない。 違和感を感じる所はあったものの、沢山のダンスで、音楽を楽しむことが出来た。新国立劇場「ジュリオ・チェーザ」中止は残念だったが、バロックオペラの演奏機会が増えることを期待したい。End
2021.05.23
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4/25から5/11まで東京都、大阪府、京都府、兵庫県対象に3度目の緊急事態宣言が発令コンサートは、中止又は無観客公演に。公立の新国立劇場、東京文化会館、東京芸術劇場等は休館、営業休止サントリーホール 無観客公演のみ(ほとんど中止、延期)オペラシティーホール 無観客公演のみ(ほとんど中止、延期)オーチャードホール 主催公演中止新国立劇場オペラ「ルチア」は4/25千秋楽公演が中止。東京春音楽祭は4/23に全公演終了しており、影響なし。ラ・フォル・ジュルネは、GW中に1日特別公演予定してたが「まん延防止」で中止とのアナウンスが先にあり影響なし。クラシック音楽、オペラ公演でクラスターの発生はこれまで無いが、一斉に中止とのことでGW中に鑑賞は不可能に。関係者にすれば、ホールキャンセル料は取られないにしても、当日ギャラは無論のこと、既に発生している事前宣伝費、プログラム印刷、リハーサル代は誰も保証してくれない。キャンセル料支援制度(上限2500万円)が出来たが、困難な付帯条件あり(延期・中止となった公演に関する内容のPR動画を制作し、海外向けに配信すること)、大手しか対応出来ない?益々コンサートは開けにくくなる。なお4都府県のみのため、その他の地域は対象外で、神奈川県のミューザ川崎、神奈川県民ホール、音楽堂は今の所予定通り。明日は水戸芸術館で小曽根真のコンサート鑑賞予定。End
2021.04.29
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鑑賞日:2021年4月4(日)14:00開演入場料:4,950円(D席 3階L3列)【主催】(財)新国立劇場2020/2021シーズンオペラ『夜鳴きうぐいす』 ストラヴィンスキー作曲 全3幕(ロシア語上演/日本語及び英語字幕付)オペラ『イオランタ』 チャイコフスキー作曲 全1幕(ロシア語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :アンドリー・ユルケヴィチ →高関 健演出・美術・衣裳:ヤニス・コッコスアーティスティック・コラボレーター: アンヌ・ブランカール照 明 :ヴィニチオ・ケリ映 像 :エリック・デュラント振 付 :ナタリー・ヴァン・パリス管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団合 唱 :新国立劇場合唱団出演<夜鳴きうぐいす>夜鳴きうぐいす:ハスミック・トロシャン → 三宅理恵料理人 :針生美智子漁 師 :伊藤達人中国の皇帝:ニカラズ・ラグヴィラーヴァ → 吉川健一侍 従 :ヴィタリ・ユシュマノフ僧 侶 :志村文彦死 神 :山下牧子三人の日本の使者たち:高橋正尚/濱松孝行/青地英幸<イオランタ>ル ネ :妻屋秀和ロベルト :ユーリ・ユルチュク →井上大聞ヴォデモン伯爵:ヴィクトル・アンティペンコ →内山信吾エブン=ハキア:ニカラズ・ラグヴィラーヴァ →ヴィタリ・ユシュマノフアルメリック :村上公太ベルトラン :大塚博章イオランタ :エカテリーナ・シウリーナ →大隅智佳子マルタ :山下牧子ブリギッタ :日比野幸ラウラ :富岡明子感想 これまで観たことのないロシアもののダブルビルでのプレミエ公演とのことで、桜が散り始めた中、初台まで出掛けた。 入場までは、これまで通りのカメラによる体温測定、来場者カード提出、手のアルコール消毒、チケット半券もぎり、チラシ、プログラムは、来場者自身でピックアップ。ドリンクサービスは無し、レストランは予約した上での利用となっていた。 緊急事態宣言解除後のチケット売出しのため、舞台前3列除いた全席発売と思われるが、客席は1階席左右、奥、2階席左右に結構空席があり、6~7割程度の入り。コロナ過とポピュラーでない作品のためでしょう。 オケピットは深く設置、ピアノ、ハープ2台、ティンパニは見えるものの、「夜鳴きうぐいす」で使われる多彩なパーカッションは見えない。どうやらコロナ過対策で舞台袖での遠隔での演奏だったらしい。 時間となり場内暗転、チューニング、指揮者登場で序曲が始まると紗幕となって、影絵風の大きな木の森が表れ、そのの木の枝が動くところまで表現されている。舞台奥には場面に合わせた映像が投影され、照明含め、正にアンデルセン原作のおとぎ話の世界に入り込んだ印象。これらの演出はすべて海外からのリモートで作り上げたとのことで、かなり大変だったと思われる。 「夜鳴きうぐいす」は幕を閉めることなく連続でストラビンスキーらしい、派手な音楽が次々演奏されたが、歌唱部分は単調で、盛り上がりを余り感じる間もなく50分で幕。 コロナ過で指揮者、歌手も来日できず大幅に変更。その中でもタイトルロール役の三宅理恵のコロラトゥーラが良かった。 40分の休憩を挟んで「イオランタ」の公演。 「イオランタ」は打って変わって、チャイコフスキーらしい叙情豊かな旋律満載の作品。 まずは父ルネ王が盲目の娘イオランタを心配し苦悩して歌うアリオーソを妻屋秀和がその心情を込めて高音から超低音まで歌い上げ素晴らしい。 なんと言ってもタイトルロールの大隅智佳子が圧巻! 目の見えない時の辿々しい動きの中に、侍女達と遊ぶ少女の心を歌い、ヴォデモン伯爵から光の世界を教えられた時の戸惑いから互いに惹かれ合う2重唱の素晴らしさ。そして最後に治療が成功し光の世界を知った歌はホール中を振るわせる高音の歌声に。 1幕もの約100分程の演奏だったが、十分に楽しむことが出来た。久しぶりに歌声の響きにに圧倒され、これだから劇場鑑賞はやめられない。 カーテンコールでは、大型TVモニターが登場し、海外にいる演出、照明、振付のスタッフがLiveで映され、笑顔で拍手されていた。 コロナ過で世界中の劇場が閉まっている大変な状況の中で新作オペラを上演できた新国立劇場関係者の努力に感謝を。 東京・春・音楽祭は、ラ・ボエームは中止となったものの、ムーティ、ショルテスの来日が叶い、「マクベス」「モツレク」が演奏されるとのことで、スタッフ皆さんの努力があってこそ。 きっとこの日本の実績が世界の音楽界に評価され、素晴らしい音楽家、歌手たちがより多く来日しくれることに期待。End
2021.04.04
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鑑賞日:2021年2月21(日)14:00開演入場料:6,000円(C席シーズンセット券/ 4階L1列)【主催】(財)東京二期会、(社)日本演奏連盟2020年度文化庁文化芸術振興費補助金2021都民芸術フェスティバル 参加公演フランス国立ラン歌劇場との提携公演《二期会創立70周年記念公演》東京二期会オペラ劇場オペラ「タンホイザー」台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー(パリ版準拠(一部ドレスデン版を使用)にて上演)全3幕(ドイツ語上演/日本語字幕付)会場: 東京文化会館 大ホール スタッフ指 揮 :アクセル・コーバー →セバスティアン・ヴァイグレ 原演出 :キース・ウォーナー 演出補 :ドロテア・キルシュバウム 装 置 :ボリス・クドルチカ 衣 裳 :カスパー・グラーナー 照 明 :ジョン・ビショップ 映 像 :ミコワイ・モレンダ 合唱指揮:三澤洋史 演出助手:島田彌六 舞台監督:幸泉浩司 公演監督:佐々木典子 合 唱 :二期会合唱団 管弦楽 :読売日本交響楽団 キャストヘルマン :長谷川 顯タンホイザー:芹澤佳通 ヴォルフラム:清水勇磨 ヴァルター :高野二郎 ビーテロルフ:近藤 圭ハインリヒ :高柳 圭ラインマル :金子慧一エリーザベト:竹多倫子ヴェーヌス :池田香織牧 童 :牧野元美4人の小姓:横森由衣、金治久美子、実川裕紀、長田惟子 感想 昨年からの新型コロナ感染対応でワーグナーのオペラ公演も相次いで中止。東京二期会でワーグナー「タンホイザー」を予定通り行うとのことで、気温が上がり花粉が飛び交う中、上野まで出掛けた。 入り口手前でカメラで体温測定、来場者カード提出、手をアルコール消毒、チケット半券自身でもぎり、配役チラシを自身ピックアップ。ドリンクサービスは一切無し。 本公演はC席シーズン券の席指定で購入したが、途中で前後左右空席へ変更のため15番分程端へ移動となった後に、12月中旬から追加席発売となった経緯があり、客席は詰まっている部分もあれば、前後左右空席としている所もあり、全体で5~6割程度か。 場内暗転、チューニング、指揮者登場から、有名な序曲が演奏。新型コロナの影響かオケピット内の弦楽は少な目、ハープ2台と2幕トランペット6本はオケピット場外の左右に配置。序曲途中に幕が上がり音楽が途切れること無く1幕へ。 今回の演出キース・ウォーナーは新国立劇場「リング」で斬新な演出の記憶有り。1幕ヴェーヌスベルクでは中央奥が絵画となり、そこから肌色コスチュームのダンサーたちが飛び出て、タンホイザーにまとわり付く。2幕では歌合戦の舞台、3幕では建物のバルコニー?に。 天井からはドライヤーの先のような金属の輪がつながったものが点滅しながら上下に動くのは、ヴェーヌスベルク、地上、天国への入り口なのか? ヴェーヌスに連れられて黙役の男の子が登場。1幕では紙に何か書いているようだが途中でその紙をばらまき始めたのは、子供の頃のタンホイザー?。ワーグナー?と解りにくい所があるものの、オペラのストーリーを邪魔する程ではなく、舞台左右に2階を設け、そこからも合唱に歌わせた所は、音楽に厚みを持たせている。 歌手は女声陣が素晴らしい。ヴェーヌス役の池田香織は、ワーグナー作品に多く出演しており、オケに負けない声の出し方、演技が上手い。エリーザベト役の竹多倫子も美しい歌声で、4階席までよく聞こえてくる。 男声陣はオケの音に押される所があり、2幕のタンホイザーはエリーザベトに完全にかき消された所も。3幕でオケが小さめになると、それなりに聞こえ、ヴォルフラム役の清水勇磨は、エリーザベトへの気持ちを抑えながらタンホイザーを引き止める歌声、演技は良かった。 オケは序曲から1幕は少々不安な所が聞かれたが、2幕トランペットが入ってから音楽全体の圧が高まり、3幕間奏曲から一点して弱音となり、ワーグナーの音楽を楽しめた。今回唯一変更となった指揮者セバスティアン・ヴァイグレは、バイロイトで指揮経験あり。更に読響の常任指揮者で、昨年末の「第九」から来日し読響を指揮しており、息の合ったオケの鳴らせ方が上手かったのでしょう。 そして一番感動したのは合唱。3階席正面のガラス窓からライトで指揮補助が入り、2幕「幸あれ芸術の館」は大迫力ながら力で押さず、3幕巡礼の合唱は近づき、遠ざかる強弱と分厚い男声ハーモニーが素晴らしい。ワーグナーを良く知っている合唱指揮者の三澤洋史の功績でしょう。 この新型コロナ禍において世界中のオペラハウスが休館の中、本格的なワーグナー公演を聴けたのは奇跡的。 4月にはここ東京文化会館で東京春音楽祭「パルジファル」が予定されているが、出演者の来日が未定で、チケットの発売が延期中。無事開催されることを祈るばかり。End
2021.02.21
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鑑賞日:2021年2月14日(日)14:00開演入場料:2,970円(D席 4階2列)【主催】(財)新国立劇場2020/2021シーズンオペラ『フィガロの結婚』モーツァルト作曲全4幕(イタリア語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮 :エヴェリーノ・ピド→沼尻竜典演 出 :アンドレアス・ホモキ美 術 :フランク・フィリップ・シュレスマン衣 裳 :メヒトヒルト・ザイペル照 明 :フランク・エヴァン再演演出:三浦安浩舞台監督:高橋尚史管弦楽 :東京交響楽団合 唱 :新国立劇場合唱団チェンバロ:小埜寺美樹出演アルマヴィーヴァ伯爵:ヴィート・プリアンテ伯爵夫人:セレーナ・ガンベローニ→大隅智佳子フィガロ:フィリッポ・モラーチェ→ダリオ・ソラーリスザンナ :臼木あいケルビーノ :脇園 彩マルチェッリーナ :竹本節子バルトロ :妻屋秀和バジリオ :青地英幸ドン・クルツィオ :糸賀修平アントーニオ :大久保光哉バルバリーナ :吉原圭子二人の娘:岩本麻里、小酒部晶子感想 ダンボール箱オペラで有名な演出だが、これまで鑑賞したこと無く、新型コロナ感染の中、開催されるとのことで初台へ向かった。入場までの対応は、先日の「トスカ」と同じ。 新型コロナ感染防止の緊急事態再発動後のチケット売出しだったため、前後左右の空席は設けず単純に50%の販売時点で打止め。そのため4階席はD席分は満席、C席は中央ブロックはほぼ満席で、左右のブロックの2~4列目は空席。1階席も中央付近は満席に近かったが、左右ブロックは空席が目立つ状況。新国立劇場は空調による換気が出来ているとの判断でしょう。 時間となり場内暗転、チューニング、指揮者登場で序曲が始まると直ぐに幕が開く。舞台は一回り小さな上下左右に白い壁に囲まれた舞台上に「トウキョウ」「LONDON」「VIENNA」と書かれた白い段ボール箱が後ろから次々に積み上げられる。そこへフィガロが登場し、紐で壁を計測し始め第1幕開始。 1,2幕と3、4幕は連続して上演され、休憩は1回(30分)のみ。全ての幕はこの舞台上で行われ、2幕で大きな白い衣装ダンスが運び込まれたり、ケルビーノが飛び降りた後に舞台下からスチールのはしごが掛けられれアントーニオが登場したり、左右、後ろの壁がずれて屋外になったりするのみ。 元々混乱する場面が多いオペラなので初見者には向かない演出だが、余分な物が無いだけに、歌手たちと音楽に集中出来る。 舞台前の黒い張り出しに民衆の合唱が立ったり、3幕の民衆たちとの踊りが無かったのは新型コロナ感染対策だったのか。 レチタティーヴォはチェンバロが入りオーソドックス。音楽のテンポは中庸で、アリアでは少々遅くしてたっぷり歌わせており、指揮者の沼尻竜典の功績でしょう。 歌手は皆さん素晴らしい。フィガロ役のダリオ・ソラーリは、明るめのバリトンで「もう飛ぶまいぞこの蝶々」のアリア含め「トスカ」のスカルピアより合っている。伯爵のヴィート・プリアンテも、演技含め良かった。 日本人歌手も素晴らしく、ケルビーノ役の脇園彩は「恋とはどんなものかしら」のアリア含め、ズボン役にピッタリ。伯爵夫人役の大隅智佳子は、昨年10月「夏の夜の夢」に続いて急な代役にも関わらずビブラートの掛からない美しい歌声で、アリア「あの楽しい思い出はどこに」は伯爵夫人の感情が十分に伝わる歌唱だった。 また重唱もバランス良く合っており、スザンナと伯爵夫人の「手紙の二重唱」は美しい響きに。4幕フィナーレの伯爵の「伯爵夫人 私を許してくれ!」からの重唱も美しい。 前回は主役全員が死んでしまう「トスカ」だったが、今回は誰も亡くならない「フィガロの結婚」。物語がごちゃごちゃしているが最後は何となく納得した気分にさせられるのはやっぱりモーツァルトの音楽な訳で、その素晴らしい音楽を十分に楽しめる公演だった。End
2021.02.14
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鑑賞日:2021年1月31(日)14:00開演入場料:5,544円(C席 4階3列)【主催】(財)新国立劇場2020/2021シーズンオペラ『トスカ』プッチーニ作曲全3幕(イタリア語上演/日本語及び英語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレススタッフ指 揮:ダニエレ・カッレガーリ演 出:アントネッロ・マダウ=ディアツ美 術:川口直次衣 裳:ピエール・ルチアーノ・カヴァッロッティ照 明:奥畑康夫管弦楽:東京交響楽団合 唱:新国立劇場合唱団、世田谷ジュニア合唱団出演トスカ :キアーラ・イゾットンカヴァラドッシ :フランチェスコ・メーリスカルピア :ダリオ・ソラーリアンジェロッティ:久保田真澄スポレッタ :今尾 滋シャルローネ :大塚博章堂 守 :志村文彦看 守 :細岡雅哉羊飼い :渡邉早貴子感想 緊急事態宣言が再度発令下、スカラ座出演の指揮者、主役歌手達が早期来日、隔離期間を経て出演とのことで、販売停止の直前にチケットを入手し、初台へ向かった。 入り口の来場者カード提出、体温測定(案内ルートが短く改善)、手の消毒、自身でのチケット半券モギリ、チラシピックアップはこれまで通り。 本公演は1階前3列除き空席設けず販売していた所に、緊急事態宣言のが再発令。その段階でチケットが50%以上販売済みだったため、その後の販売を急遽中止。客席は4階はほぼ満席。Z席分は販売無く空席。1階、2階に所々空席が見られた。 今回の演出は2000年がプルミエで、当方は2009年に鑑賞済み。演出家のアントネッロ・マダウ=ディアツは2015年に亡くなっている。オーソドックスで豪華な舞台装置。特に1幕の聖堂外側から瞬時に聖堂内に切り替わり豪華な祭壇が登場、3幕で地下牢と塔の上が上下に入れ替わるのが鮮やかで、オペラパレスの舞台装置に合わせて作られた、劇場を代表する演出と言えるでしょう。 歌手は期待通りの素晴らしい歌声。タイトルロールのキアーラ・イゾットンは声質としては少々暗めだが、場面に合わせて歌い方を次々に変える。1幕でのカヴァラドッシへの愛情と嫉妬心、2幕スカルピアとの憎悪のやり取り、3幕の不安な心境からの最期の悲しみの表現がその歌声だけで伝わるところが凄い。 カヴァラドッシのフランチェスコ・メーリはよく通るテノールの歌声。高音にも余裕があり、弱音でも十分に飛んでくる。「妙なる調和」「星は光りぬ」でも、一本調子にならず、歌詞の内容に合わせた歌声に変えていく。拍手は鳴り止まず、コロナ過でなければ盛大な「ブラボー」が飛んだでしょう。 スカルピア役のダリオ・ソラーリは、明るめのバリトンの声で、容姿も良く、悪役に見えないが、2幕でのトスカとの掛け合い重唱では、恐ろしさが表現出来てきた。 オケのテンポは早くなく中庸。アリアの所はテンポを落とし、歌手に十分に歌わせる。さすがイタリア人指揮者。 合唱は、児童唱含め良い。1幕「テ・デウム」は迫力満点で、2幕カンタータの影歌もきっちりと歌っており素晴らしかった。 まだまだ続く新型コロナ感染で世界中のオペラ劇場が公演中止となる中、イタリアの素晴らしい指揮者と歌手を揃えて、豪華な演出でオペラを鑑賞することが出来たのは、新国立劇場の関係者皆さんのご努力の結果と言えるでしょう。 次の公演は「フィガロの結婚」。今回スカルピア役のダリオ・ソラーリがフィガロを歌うようで、今から楽しみ。End
2021.01.31
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外出自粛で帰省中止、初詣にも出かけず、TVでクラシック番組を鑑賞●12/31 NHK-Eテレ クラシック名演・名舞台 N響「第9」演奏会 指揮:パブロ・エラス・カサド Sop)髙橋絵理、MS)加納悦子、Ten)宮里直樹、Br)谷口 伸、新国立劇場合唱団 合唱は少なくてもよく聞こえた。●1/1 NHK-Eテレ ウィン・フィルニューイヤーコンサート 指揮:リッカルド・ムーティ ホール無観客での演奏会生中継 曲が終わっても拍手がないため盛上りに欠ける。●1/2 WOWOWライブ METライブビューイング「トゥーランドット」 故ゼフィレッリ演出の豪華舞台。グランドオペラはこうでなければ。●1/3 NHK-Eテレ NHKニューイヤーオペラコンサート 指揮:広上淳一、東フィル、新国立劇場合唱団、二期会合唱団、藤原歌劇団合唱部 森麻季は更に美貌に。TV解像度が上がり、容姿の違いがより明確に。 タンホイザー「巡礼の合唱」は、何故か女声加え、突然終わって違和感大。昨年終わり頃にようやくクラシック、オペラ演奏会が行われるようになって来た矢先、年末の都・県知事申し入れで、1/8急遽「緊急事態宣言」が1都3県に再発令。今回は飲食業営業夜8時までを軸に、イベント関係の制限は・夜8時まで・5000人以下かつ収容客数50%以下急に言われても1月公演はすでにチケット販売済みで、各主催者皆さんの対応はさぞや大変でしょう。全席発売中は返金? 平日夜公演はマチネに早める?新国立劇場「トスカ」は・2/3の夜公演は開演時間変更・その他マチネ公演は1/11(月祝)18時時点で、観客数が50%超えている公演販売終了。 50%に未達公演は、50%に達したところで販売を終了。既に、スカラ座出演の指揮者:ダニエレ・カッレガーリ、キアーラ・イゾットン、フランチェスコ・メーリ、ダリオ・ソラーリが来日し待機中とのことで、急遽チケットを確保。オーソドックスな演出なので、その歌声を楽しみに。End
2021.01.10
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鑑賞日:2020年12月29日(火)15:00開演入場料:8,000円(S席 1階29列)【主催】神奈川県民ホール/(財)神奈川芸術文化財団神奈川県民ホール 年末年越しスペシャルファンタスティック・ガラコンサート2020癒しのオペラ&バレエ会場:神奈川県民ホール 大ホール出演 指 揮 :太田 弦司会・バリトン :宮本 益光ソプラノ :森野 美咲カウンターテナー:村松 稔之テノール :城 宏憲バレエ :上野 水香、中家 正博コンサートマスター・ヴァイオリン:石田 泰尚ピアノ :中島 剛オルガン :荻野 由美子管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団曲目<第1部>オリンピックファンファーレとテーマジョン・ウィリアムズ作曲オペレッタ『メリー・ウィドー』より「ダニロの登場歌」 レハール作曲 宮本 益光オペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』間奏曲 マスカーニ作曲アヴェ・マリア カッチーニ作曲 村松 稔之オペレッタ『こうもり』より「侯爵様、あなたのような御方は」 ヨハン・シュトラウス2世作曲 森野 美咲オー・ソレ・ミオ カプア作曲 城 宏憲バレエ『くるみ割り人形』より グラン・パ・ド・ドゥチャイコフスキー作曲 プティパ振付 上野 水香、中家 正博<第2部>オペラ『フィデリオ』序曲 ベートーヴェン作曲オペラ『タンクレーディ』より「この胸の高鳴りに」 ロッシーニ作曲 村松 稔之オペラ『アイーダ』より「清きアイーダ」 ヴェルディ作曲 城 宏憲オペラ『ジャンニ・スキッキ』より「私のお父さん」 プッチーニ作曲 森野 美咲「フラカナーパ」「現代のコンサート」「鮫」 ピアソラ作曲 石田 泰尚 Pf:中島 剛バレエ「瀕死の白鳥」 サン=サーンス作曲 フォーキン振付 バレエ:上野 水香 Vl:石田 泰尚 Pf:中島 剛オペラ『カルメン』より「闘牛士の歌」 ビゼー作曲 宮本 益光交響曲第3番「オルガン付」第2楽章より サン=サーンス作曲 Org:荻野 由美子<アンコール>オペレッタ『こうもり』より「シャンパンの歌」ヨハン・シュトラウス2世作曲 森野 美咲、村松 稔之、城 宏憲、宮本 益光ラデツキー行進曲 ヨハン・シュトラウス1世作曲感想: 年末恒例の神奈川県民ホールのガラ・コンサート。バラエティー豊かな演目を楽しみに師走の中、山下公園まで出かけた。 新型コロナ感染症対策で、受付で手のアルコール消毒、カメラによる体温測定、観客自らチケット半券モギリ、プログラムピックアップと他のホールと同様の対応。 客席はカップル、グループには並んだ座席となっているが、一列当たり半数以下になるよう割当られ、舞台はバレエ用に張り出し設置されており、半数以下の1000人程度と思われる。 指揮者は昨年までの松尾葉子に代わり、今回から大阪交響楽団正指揮者の太田弦。そのためかオペラ曲目が多くなっているが、歌手に合わせ安定した指揮で、とても26才とは思えない。 歌手は、カウンターテナー村松稔之が入り、バラエティーあり。ソプラノ森野美咲はウィーン在住で、今回に合わせ帰国隔離期間を経ての出演とのこと。城宏憲は「オー・ソレ・ミオ」のロングトーンで高音のトリルを入れ、宮本益光は安定した歌声だった。 石田”オレ”様のピアソラは緊張感ある超技巧演奏で圧巻。上野水香、中家正博の『くるみ割り人形』も素晴らしバレエ。 一番は今回も上野水香と石田泰尚の共演。一昨年はタンゴだったが、今年はサン=サーンスの『動物の謝肉祭』の「白鳥」をバイオリンとピアノ演奏に振り付けたもの。 究極Pのヴァイオリンに合わせた上野水香の踊りは、正しく「瀕死の白鳥」。この組み合わせを見られるのは本ガラ・コンサートだけで、これだけでチケット代の元が取れた気分に。 アンコールはこうもり「シャンパンの歌」、「ラデツキー行進曲」で一気に年末気分に。 やっぱり生きて行く上で音楽は欠かせないものであり、安心して鑑賞できる生活に早く戻ることを祈念したい。 End
2020.12.29
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