全255件 (255件中 101-150件目)
鑑賞日:2017年2月11日(土)14:00開演入場料:¥5,000 (C席:4階4列) 【主催】(財)日本オペラ振興会、愛知県芸術劇場藤原歌劇団公演歌劇「カルメン」ビゼー作曲 全4幕(フランス語上演/字幕付)会場:愛知県芸術劇場大ホール総監督 :折江 忠道 指 揮 :山田 和樹演 出 :岩田 達宗 合唱指揮:須藤 桂司美 術 :増田 寿子衣 裳 :半田 悦子照 明 :大島 祐夫舞台監督:菅原 多敢弘振 付 :平 富恵舞 踊 :平富恵スペイン舞踊団 合 唱 :藤原歌劇団合唱部、東京少年少女合唱隊管弦楽 :愛知室内オーケストラ 出演:カルメン :ミリヤーナ・ニコリッチ ドン・ホセ :笛田 博昭 エスカミーリョ:王 立夫ミカエラ :伊藤 晴スニガ :伊藤 貴之モラレス :押川 浩士フラスキータ:平野 雅世メルセデス :米谷 朋子ダンカイロ :安東 玄人レメンダード:狩野 武 感想: 創立以来初めて藤原歌劇団定期公演を愛知で行うことと、指揮者が今若手注目の山田和樹とのことで雪がちらつく中、名古屋栄まで出掛けた。 入場時にチラシと一緒にビニール袋に入ったプログラムが配られる。印刷は愛知公演専用で東京公演との内容差は不明だが、東京公演では通常有料(¥1,000)なので得した気分に。 45分前からの解説には間に合わず、終了後に客席へ。場内は8割程度の入りで4階中央は満席状態。客席は高年齢者だけでなく、若い人女性や、演目のためか家族連れも見られ、幅広い年齢層となっている。 時間になり暗転、スポットライト浴び指揮者登場、有名な序曲がスタート。所々管の音が不安定だったり、弦が遅れ気味に聞こえる部分あり。しかし幕が進むに連れて安定した音楽となり、3幕から4幕では、ダイナミックで緩急のテンポも揃って盛り上がった。今回管弦楽が日本オーケストラ連盟未加入の愛知室内オーケストラのため出来を心配したが、山田和樹が演奏会で振ったこともある若手オーケストラとのことで上手く指導が出来たのでしょう。けして大音量やテンポでごまかすことなく、ソロパート、アンサンブルとも一つ一つの音が明快に聞こえてきて、ビゼーの美しい旋律の音楽を表現できていたのは指揮者の功績でしょう。 演出は、第1幕たばこ工場、第2幕酒場、第3幕山中、第4幕闘牛場とも左右置かれた灰色の壁の位置や角度を変え、その前に門やテーブル、椅子、荷物を配置することで各場面を表していた。 全場面中央付近に赤い月を出現させ、情熱的な愛、血の色を表現していたのか。そのためかカルメンは赤いドレスを着ることなく、4幕も白のウェディングドレスの様な衣装となっていた。 また4幕冒頭に闘牛場前で群衆が開場を待っている場面で「知事万歳」となり、なんと大きなシルクハットを被り大村愛知県知事ご本人が登場、客席も盛り上がる。 歌手ではドン・ホセ役の笛田博昭が素晴らしい。花の歌は余裕のハイCで客席からは思わずブラボーの連発。演技含め、ホセの心境を上手く表現できていた。地元出身の凱旋公演で力が入っていたのでしょう。タイトルロールのミリヤーナ・ニコリッチは容姿はカルメン的なのだが、こもった歌声でビブラート多く音程も下がり気味のため客席まで飛んでこないのは残念。ミカエラ役の伊藤晴は高音で少々叫び気味も良く聞こえてきた。エスカミーリョ役の王立夫は若干力不足でヒーローには見えず。 本オペラは合唱場面が多いのだが、さすが藤原歌劇団合唱部で素晴らしい。少年少女も演技含め良かった。 終演後ロビーには出演者が出てきて見送り、バレンタインデー間近で出口では来場者にチョコレートのプレゼントあり。色々観客へのサービスが盛り込まれ、主催者側も愛知初公演に力を入れていることが判る。東京一極集中の観客の奪い合いの現状から、地方での新しい観客の開拓を目指しているのでしょう。 来年2月の定期公演「ナヴァラの娘/道化師」には既に愛知公演が組まれており、オケはセントラル愛知となっている。また今年10月には東京二期会「ばらの騎士」公演もオケが名フィル、本ホールで公演予定されており、東京と同じオペラ公演を名古屋で聞けるとのことで、今から楽しみ。End
2017.02.11
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鑑賞日:2017年1月22日(日)10:00開演入場料:¥3,600 (スクリーン1/P列) 【主催】松竹株式会社METライブビューイング2016-2017シーズン歌劇「遙かなる愛」カイヤ・サーリアホ作曲 全5幕(フランス語上演/字幕付)会場:ミッドランドスクエアシネマ指 揮:スザンナ・マルッキ演 出:ロベール・ルパージュ美 術:ミカエル・カリー照 明:レビン・アダムス台 本:アミン・マアルーフ管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団出演:クレマンス(トリポリの女伯爵):スザンナ・フィリップスジョフレ・リュデル(ブライユ領主、騎士歌人):エリック・オーウェンズ巡礼の旅人:タマラ・マムフォードMET上演日:2016年12月10日感想: 今シーズン初めてのMETライブビューイングを観に名古屋駅前のミッドランドスクエアへ出掛けた。作品は現代オペラでフランス女流作曲家カイヤ・サーリアホ「遙かなる愛」、当方初見で日本では2015年5月東京オペラシティでコンサート形式の公演のみとのこと。 物語は12世紀の吟遊詩人ジョフレ・リュデルが、巡礼の旅人の話から海の彼方の高貴な女性クレメンスの存在を知り、理想の愛を求めて彼女に会いに行くが、途中で病となり、お互いの愛を確かめたところで息絶えてしまうと言うシンプルな内容、登場人物は3人だけで世界共通の解りやすいストーリーだ。 序曲はフルート、ピッコロの叙情豊かな音楽で日本の能や雅楽を想わせる旋律。無調性ながらもフランス語をのせた歌の旋律は美しく、ピアノやパーカションが入っても邪魔すること無く、漂うように切れ目なく音楽が続いていく。 歌手3人は何れも素晴らしい歌声でその想いを歌い上げる。デジタル録音、映画館の音響も良く、高音では耳が震え、会場のざわめきも聞こえ、劇場に居るような錯覚を覚える。 何と言っても素晴らしいのは演出。舞台には上手から下手までLEDライトが取り付けられたラインが約30本、オケピット上から舞台奥まで貼られている。このLEDラインの色を変えることで朝、昼、夜の海を表すだけでなく、点滅をコントロールすることでまるで波が起こっているように見える。 このライン間にゴンドラの船が浮かび左右に動く。中央にはカメラクレーンの様な幅1m、長さ5m程の台が上下し、左右にも動き、歌手がその上で歌うことで岸を表現。 圧巻だったのは2部4幕でリュデルが船に乗りクレマンスの居るトリポリに向かう場面で、音楽に合わせ、LEDラインの傾斜が変わり、中央付近だけが光り立体感を出すことで海の嵐を表現し、客席のこちらは船に乗って酔っている気分になって来る。 更にリュデルの夢の中でクレマンスが歌う場面では、LEDラインの下から迫り上がってクレマンスが登場し、照明効果で亡霊のように浮かび上がって見えた。 夢の中に居るような気分になり、この官能的な作品の世界へより惹きつけられた演出に驚き。本演出のロベール・ルパージュは「シルク・ドゥ・ソレイユ」で世界的な人気を博しているとのことで、美術設計のミカエル・カリー氏と一緒に幕間のインタビューに登場したが2人共多忙とのことで世界の別な場所を結んでのMET総監督のピーター・ゲブル氏とのインタビューとなっていた。本作初演時に作曲者カイヤ・サーリアホもロベール・ルパージュ氏の演出を希望するも多忙のため実現しなかったとプログラムには記載。 今回のLEDラインの他、プロジェクションマッピング等映像技術はどんどん進歩しており、これから新しい演出のオペラが出てくることを期待。 End
2017.01.25
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鑑賞日:2016年12月29日(木)15:00開演入場料:¥13,000 (S席ペア:1階30列) 【主催】神奈川県民ホール神奈川県民ホール 年末年越しスペシャルファンタスティック・ガラコンサート2016至極のオペラ&バレエ会場:神奈川県民ホール 大ホール出演指 揮 :松尾葉子司会・バリトン:宮本益光ソプラノ :高橋維テノール :城宏憲バレエ :上野水香、柄本弾(東京バレエ団)トランペット :守岡未央ヴァイオリン :石田泰尚管 弦 楽 :神奈川フィルハーモニー管弦楽団ピ ア ノ :中島剛曲目<第1部>チャイコフスキー オペラ『エフゲニー・オネーギン』より「ポロネーズ」モーツァルト オペラ『ドン・ジョヴァンニ』より「酒がまわったら今度は踊りだ」〈宮本〉モーツァルト オペラ『魔笛』より「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」〈高橋〉ハイドン トランペット協奏曲 変ホ長調 より 第1楽章〈守岡〉プッチーニ オペラ『ラ・ボエーム』より「冷たき手を」〈城〉ドリゴ バレエ『エスメラルダ』より「パ・ド・ドゥ」〈上野、柄本〉サン=サーンス オペラ『サムソンとデリラ』より「バッカナール」<第2部>ロッシーニ オペラ『セビリアの理髪師』序曲プッチーニ オペラ『ラ・ボエーム』より「私が街を歩くと」〈高橋〉ヴェルディ オペラ『リゴレット』より「女心の歌」〈城〉ピアソラ アディオス・ノニーノ〈石田、中島〉ピアソラ リベルタンゴ〈上野、柄本、石田、中島〉ヴォルフ=フェラーリ オペラ『マドンナの宝石』より「第1間奏曲」ジョルダーノ オペラ『アンドレア・シェニエ』より「祖国を裏切る者」〈宮本〉<アンコール>ヴェルディ オペラ『椿姫』より「乾杯の歌」<城、高橋、宮本>ヨハン・シュトラウス ラデツキー行進曲 感想: 年末時間が取れたのでジルベスターコンサートを探し、 山の神のリクエストで神奈川県民ホールの年末ガラ・コンサートへ出掛けた。 今回で12回目とのことで、客席は満席。管弦楽、オペラ・アリア、バレエに加え、ソロ楽器が入りバラエティにとんだ音楽と踊りを楽しむことが出来るのでリピーターも多いのでしょう。 宮本益光さんの司会で曲紹介や出演者とのインタビューが入り、普段クラシックを聞かない人でも判りやすい。 何と言っても石田オレ様のヴァイオリンでの上野水香、柄本弾のタンゴは、両者の緊張感ある演奏と踊りの相乗効果で素晴らしい出来に。これだけでも入場料の元が取れた気分になる。 来年は7月から再来年5月までホールの改修工事で休館のため、ガラコンサートは年越しでなく7月開催予定とのことで、日程が合えばまた聞きに行きたい。 End
2016.12.29
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鑑賞日:2016年11月27日(日)14:00開演入場料:¥9,000 (B席:2階I列) 【主催】東京二期会 【共催】日生劇場東京二期会オペラ劇場NISSAY OPERA 2016提携ライプツィヒ劇場提携公演歌劇「ナクソス島のアリアドネ」R.シュトラウス作曲 プロローグ付1幕(ドイツ語上演/字幕付)会場:日生劇場指 揮 :シモーネ・ヤング演 出 :カロリーネ・グルーバー 装 置 :ロイ・スパーン 衣 裳 :ミヒャエラ・バールト 照 明 :喜多村 貴 演出助手:太田麻衣子 舞台監督:幸泉浩司 管弦楽 :東京交響楽団出演:執事長 :多田羅迪夫音楽教師 :山下浩司 作曲家 :杉山由紀 プリマドンナ/アリアドネ:田崎尚美 テノール歌手/バッカス:菅野 敦 士 官 :伊藤 潤 舞踏教師 :大川信之 かつら師 :原田 圭 召使い :湯澤直幹 ツェルビネッタ:清野友香莉 ハルレキン:近藤 圭 スカラムッチョ:吉田 連トゥルファルデン:松井永太郎 ブリゲッラ:加藤太朗 ナヤーデ :廣森 彩 ドゥリヤーデ:田村由貴絵 エコー :北村さおり 感想: 「ナクソス島のアリアドネ」ウィーン国立歌劇場公演のチケットが取れず、同じ演目の東京二期会公演を観に冬の小雨模様の下、日生劇場へ出掛けた。 今回演出はライプツィヒ劇場公演を持って来たもので、第1幕(プロローグ)は現代の屋敷のエントランスで背景には室内駐車場が描かれている。 踊りのグループはハーレーに乗って登場、革ジャンとサングラスの暴走族風で歌に合わせた振りも面白い。第2幕(本編)は、複数の円形テーブルに白いテーブルクロスが被せられ、観客たちが椅子に腰掛け、ワインが振る舞われているパーティー会場。その中でアリアドネ、バッカス、3人のニンフのオペラにツェルビネッタ、ハルレキンと男たちが加わってドタバタの中でアリアドネの美しいアリアで登場人物が眠り始め、最後は全員倒れて眠ってしまい幕。皮肉とユーモアが入った物語を上手く表現できた演出と思えた。 歌手は、アリアドネ役田崎尚美、作曲家役杉山由紀皆始め皆さん響く声で良かった。ツェルビネッタ役の清野友香莉は美しい高音で装飾音符もよく歌えていたが、少々声量不足なるもアリアドネとの対比になっており良かった。 一番良かったのは管弦楽で30人程度の小編成とは思えない豊かな響きで、シュトラウスの芳醇で豊かな音楽を聞くことが出来た。指揮者の功績が大きかったのでしょう。 今回日生劇場1300人キャパのためか最安価席の入場料が¥9,000と高めだったが、結果的に本オペラの音楽には合った大きさだったと言える。 日生劇場では来年、藤原歌劇「ノルマ」、二期会「こうもり」始め、ホール主催で「ラ・ボエーム」「ルサルカ」等すでに予定されており、今から楽しみ。 End
2016.12.27
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鑑賞日:2016年10月23日(日)14:00開演入場料:¥5,000 (E席:4階RA列) 【主催】びわ湖ホール、ニッセイ文化振興財団、日本オペラ振興会、日本センチュリー交響楽団沼尻竜典オペラセレクション歌劇「ドン・パスクワーレ」ドニゼッティ作曲 全3幕(イタリア語上演/字幕付)会場:びわ湖ホール・大ホール指 揮:沼尻 竜典演 出:フランチェスコ・ベッロット美 術:マッシモ・ケッケット衣 装:クリスティーナ・アチェーティ照 明:クラウディオ・シュミット合 唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル、藤原歌劇団合唱部管弦楽:日本センチュリー交響楽団出演:ドン・パスクワーレ :牧野 正人マラテスタ :須藤 慎吾エルネスト :アントニーノ・シラグーザノリーナ/ソフローニア:砂川 涼子公証人 :柴山 秀明 感想: 公演機会が少ないドニゼッティ「ドン・パスクワーレ」をシラグーザを迎えて、沼尻ドラゴンが指揮をするとのことで、びわ湖ホールまで出掛けた。 本公演は日生劇場、びわ湖ホール、藤原歌劇団、日本センチュリー交響楽団の4団体共同製作となっており、7月に既に日生劇場で3回上演されており、今回演出は同じだが、タイトルロールの牧野正人以外の出演者、指揮者、オケまで変わっての公演となっている。 客席は7割程度の入り。S、A席以外は売り切れのはずなので、チケットを入手したが当日来なかったお客がいた事になり残念。 時間となり、客席暗転、指揮者登場し、軽快な序曲を演奏。客席から拍手が入り、第1幕の幕が開く。斜めに配置された壁に大きな複数枚の絵画が飾られ、如何にもお金持ちの邸宅の居間となっている。1、2幕は同じ設定で、3幕は壁の絵がなくなり灰色の壁がむき出しに。ソファーや家具なども運びざされ、ソフローニアが散財し全て交換する事になっているとの設定。ドニゼッティ歌劇場の全面協力を得たとのことで、読み替えなど無くオシャレで解りやすい演出となっていた。 歌手は、何と言ってもエルネスト役アントニーノ・シラグーザのいつものピンと張ったテノールの輝かしい歌声。2幕冒頭のアリアや裏歌も含め、素晴らしく、これだけで来た甲斐がある。1回だけの公演とは勿体無い(東京でソロリサイタルはあったようだが)。 タイトルロールの牧野正人初め、日本人の皆さんもベテラン揃いで、安定した歌声で良かった。ただ、喜劇にしては少々重めの歌声が多く、もう少し軽めの方が良かったか。 指揮者の沼尻竜典はベルカントものはこれまでほとんど振ったことがないとWebページに書かれていたが、テンポ良く、ダイナミックもあって、オケを引っ張っていた印象。 びわ湖ホールは、JR最寄り大津駅からも少々遠く不便を感じるが、びわ湖畔に建てられ、ロビーからの眺めも素晴らしく、オペラの別世界にゆっくりと浸れることが出来る。 来年3月からワーグナーのリング4部作をスタートさせるとのことで、今から楽しみだ。 End
2016.10.23
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鑑賞日:2016年10月2日(日)14:00開演入場料:¥4,860 (D席:4階1列) 【主催】新国立劇場2016/2017シーズンオープニング公演楽劇「ニュールベルングの指輪」第1日「ワルキューレ」リヒャルト・ワーグナー作曲全3幕(ドイツ語上演/字幕付)会場:新国立劇場オペラパレス指 揮 :飯守泰次郎演 出 :ゲッツ・フリードリヒ美術・衣裳:ゴットフリート・ピルツ照 明 :キンモ・ルスケラ演出監修:アンナ・ケロ舞台監督:村田健輔管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演ジークムント :ステファン・グールドフンディング :アルベルト・ペーゼンドルファーヴォータン :グリア・グリムスレイジークリンデ :ジョゼフィーネ・ウェーバーブリュンヒルデ:イレーネ・テオリンフリッカ:エレナ・ツィトコーワゲルヒルデ :佐藤 路子オルトリンデ :増田 のり子ヴァルトラウテ:増田 弥生シュヴェルトライテ:小野 美咲ヘルムヴィーゲ:日比野 幸ジークルーネ :松浦 麗グリムゲルデ :金子 美香ロスヴァイセ :田村 由貴絵 感想: 新国立2016/2017シーズンのオープニング公演、芸術監督の飯守泰次郎氏が指揮するとのことで、少し涼しく感じる曇り空の下、初台まで出掛けた。 指輪4部作の1作目「ラインの黄金」は前シーズンに公演され、2、3作目を今シーズン、4作目を来シーズンオープニングに公演が既に予定されている。 演出のゲッツ・フリードリヒは2000年に亡くなっており、生前演出したフィンランド国立歌劇場プロダクションを持ってきたもの。 第1幕は舞台上に直方体の部屋が傾いて設置され、背面が抜けて森に場面転換。第2幕は長い台形の板が傾いて置かれ回転することで、神の世界と現世とを瞬時に転換。第3幕は滑走路の上をドーム上で覆い基地の様で音楽に合わせ滑走路のラインのランプが点滅する。この滑走路が四角切り取られ、その周囲を炎で囲み、岩山となる。幕中の場面転換は音楽を途切れさすこと無く瞬時に行われ、衣装を含め納得できる演出となっている。 3幕冒頭ワルキューレたちが死んだ戦士を復活させる場面ではセックスを連想させ、ヴォータンとブリュンヒルデのやり取りも男女の恋愛を連想させる演出となっていた。 歌手は総じて素晴らしい歌声。特にジークムント役ステファン・グールドは、現在のヘンデンテノールを代表するだけのことがあり、大音量のオケの中でも最後まで余裕を持った強く、よく通る歌声を聞かせてくれた。 本シリーズ「ラインの黄金」ではミーメを次回「ジークフリート」ではタイトル・ロールを歌うとのこと。ヴォータン役グリア・グリムスレイヴィータン、新国立前リングシリーズでもフリッカ役だったエレナ・ツィトコーワも良かった。日本人のワルキューレ達も皆さん良かったです。 飯守泰次郎の指揮は、大きくテンポ変えること無く、ゆっくり目に進める。オケも1幕で若干危ない所があったが、場面が進むに従って熱気を帯び、第3幕は盛り上がって幕。 2回の休憩含み、5時間超えの長丁場。当方座席周囲の影響でトラブル有ったが、劇場側スタッフの適格な判断で第3幕は快適に聴くことが出来た。さすが国立劇場だけあってリスク管理が行き届いていることに感謝。 来年春の3作目が今から楽しみ。End
2016.10.02
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鑑賞日:2016年9月24日(土)14:00開演入場料:(前売り)¥5,000 (自由席) 【主催】東海バロックプロジェクトオペラ制作委員会あいちトリエンナーレ2016舞台芸術公募プログラム公演 バロック・オペラ「ポッペアの戴冠」 モンテヴェルディ作曲プロローグ、全3幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:名古屋市芸術創造センター演 出:池山 奈都子音楽アドヴァイザー:宇田川 貞夫プレトーク:小堀 勝啓照 明:曽我 裕幸衣 装:下斗米 大輔舞台監督:大蔵 聡子出演:アモーレ :原田 幸子ポッペア :加藤 佳代子ネローネ :小林 木綿オッターヴィア:志田 理早オットーネ:弥勒 忠史セネカ :森田 学ドゥルシア:本田 美香乳母/侍女:石原 由佳子アルナルタ:丹羽 幸子警士/兵士1:蔦谷 明夫小 姓 :長谷川 菊兵士2 :片山 博貴 演奏:リコーダー:小谷 智子、片岡 博明ヴァイオリン:荻野 美和、廣田 雅史テオルボ :佐藤 亜紀子チェロ :宇田川 貞夫、高橋 弘治チェンバロ・オルガン:鈴木 美香チェンバロ:杉浦 道子感想: 本格的なバロックオペラ公演は東海地域で初めてとのことで、新栄町の名古屋市芸術創造センターまで出掛けた。 名古屋市芸術創造センターホールの客席数は640席でバロックオペラに向いた大きさ。本公演は1階席(490席)のみを客席とし、8割り程度の入り。 入り口で受け取った無料プログラムには本オペラのストーリーについて全く書かれていないが、開演20分前にプレトークがあり、そこで紹介するので省略したのでしょう。 幕が上がると、舞台は反響板に覆われ、舞台上の山台に演奏者がおり、その前と山台の最上部で歌手が歌う設定。舞台装置としては1幕で山台最上部にカーテンで仕切られた寝室が設けられ、上手、下手に四角い柱状のものが数本置かれている程度。 照明効果に加え、時々反響板へプロジェクタによる絵画が映し出される。 演奏は全てピリオド楽器が使われてるとのことで、優しい音色で舞台上でも歌手を邪魔する音量にならない。指揮者はおらず、演奏者の息で合わせる。チェンバロとチェロが1組ずつ左右に分かれて配置され、歌手に合わせて演奏を分けることで音楽に立体感を感じた。 オルガンの響きが心地よかった。 プロローグ~第1幕と第2幕~3幕の間に15分の休憩が入り16時半に終了したので、演奏時間としては2時間10分程度。2幕最初のセネカの自殺場面などカットされていたが、本公演は昼、夜の同日2回公演で、主役の歌手の方は大変では? 歌手はオットーネ役の弥勒忠史のカウンターテナーが素晴らしい。正確な音程とテンポ、以前別なオペラで聞いた際にも感じた十分な音量で歌い、観客を引きつける。歌に合わせ演奏も充実したように聞こえる。ところが女性陣の中には、ピッチが低くいのにドラマティコに歌ったり、か細すぎて聞こえてこないレベルの方がいたりとばらつきが大きい。バロックオペラは、もともとカストラートで書かれているので、正確な音程で美しく歌うものと思っていたのだが。 それでもピリオド楽器を始め、バロックオペラとして十分に楽しむことが出来た。愛知で今後も継続することを期待したい。 End
2016.09.24
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鑑賞日:2016年9月17日(土)15:00開演入場料:¥6,000 (C席:4階4列) 【主催】あいちトリエンナーレ実行委員会、愛知県芸術劇場あいちトリエンナーレ2016プロデュースオペラ歌劇「魔笛」モーツァルト作曲全2幕(ドイツ語上演/日本語字幕付)会場:愛知県芸術劇場大ホール演 出・美術・照明・衣装:勅使川原三郎指 揮:ガエタノ・デスピノーサ合 唱:愛知県芸術劇場合唱団管弦楽:名古屋フィルハーモニー交響楽団ダンサー、ナレーション:佐東利穂子、東京バレエ団出演:賢者ザラストロ:妻屋 秀和夜の女王 :高橋 維王子タミーノ :鈴木 准王女パミーナ :森谷 真理鳥刺しパパゲーノ:宮本 益光恋人パパゲーナ:醍醐園 佳侍女1 :北原 瑠美侍女2 :磯地 美樹侍女3 :丸山 奈津美弁者&神官1 :小森 輝彦従者モノスタゥス:青柳 素晴神官2 :高田 正人武士1 :渡邉 公威武士2 :小田桐 貴樹童子1 :井口 侑奏童子2 :森 季子童子3 :安藤 千尋感想: 3年毎に開催され、今年で3回目になるらしい国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2016」でオペラ「魔笛」を取り上げるとのことで、名古屋市栄の愛知県芸術劇場へ出掛けた。 「魔笛」は元々時代不詳で一般市民を対象に作られた作品なので、これまでも色々な演出がされて来たが(円谷プロ演出の怪獣ものが思い出される)、今回ダンサー、振付家でもある勅使川原三郎氏の演出で『世界のテシガワラが拓く、かつてないオペラ』とのことで、興味を持って見ることに。 序曲の途中で幕が上がり、黒色で囲まれた空間の舞台では黒服のダンサーが踊る。舞台天井から大中小各3つ、合計9つの銀色の大きな輪が降りてくる。輪以外の舞台装置は無く、この輪の位置を色々変え、照明を加えることで、森や宮殿の場面を表現。ザラストロの神殿では舞台全体を覆う大きな輪が出現し、場面転換があったことが分かる。 衣装の方は、アニメ的にデフォルトされており、王子は赤のスポーツウェア系、王女は白いワンピースに青いタイツ、パパゲーノは鳥羽根、モノスタトスは白い人形、僧侶は茶色の人形に入って登場。歌手が動かない場面では、歌に合わせダンスが加わる。途中何曲が歌がカットされた部分は、ダンサーの1人が体を動かしながら日本語でナレーションを加え補う。 歌手ではザラストロ役の妻屋秀和が流石の低音を響かせ存在感あり。パパゲーノ役の宮本益光も心情に合わせた歌声と演技で上手い。女性の中ではパミーナ役の森谷真理が豊かな声量で良かった。 休憩を除くと2時間10分程度で30分程のカットあり。確かに客席には子供もおり、原作通りの3時間近いと大変かと思うが、ザラストロスや僧侶などの歌が大幅にカットされ残念。 『かつてないオペラ』と言うほどの斬新な演出とは思えず、ナレーションでカットされるよりは、もう少し歌が聞きたかった。 携帯電話の呼出音や話し声等、愛知でよく経験する通り客席は相変わらず騒がしい。今回トリエンナーレ関係チラシが沢山ある関係でビニール袋に入れて配られたため、そのこすれる音が会場中から聞こえた、今後配慮必要。 来年3月の神奈川県民ホール主催オペラが当初の宮本亜門演出「フィガロの結婚」から勅使川原三郎演出「魔笛」に変更されており、本演出で再演するのだろうか?End
2016.09.17
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鑑賞日:2016年9月10日(土)14:00開演入場料:¥3,000 (E席:4階4列) 【主催】(財)日本オペラ振興会藤原歌劇団公演歌劇「カプレーティ家とモンテッキ家」ベッリーニ作曲全2幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:新国立劇場オペラパレス 指 揮:山下 一史演 出:松本 重孝管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 合 唱:藤原歌劇団合唱部 合唱指揮:須藤 桂司美 術:荒田 良衣 裳:前岡 直子照 明:山口 暁舞台監督:菅原 多敢弘総監督 :折江 忠道 出演:ロメオ :向野 由美子ジュリエッタ:高橋 薫子カペッリオ :安東 玄人テバルド :笛田 博昭ロレンツォ :東原 貞彦感想: 公演機会が少ないベッリーニ作品の中で未聴の「カプレーティ家とモンテッキ家」が藤原歌劇団で上演されるとのことで、残暑の中、初台まで出掛けた。 物語は「ロミオとジュリエット」を題材にしたオペラで、ズボン役のロメオとジュリエッタ以外の歌手は全て男性。 ベッリーニの流れるような旋律の序曲の後、男声合唱で両家の争いをけしかける場面となる。 演出は原作通りの時代設定で、場面毎に幕が降ろされ、カプレーティ家宮殿広間、ジュリエッタの寝室、墓場等に場面転換される。 照明は暗目で歌手へスポットを当てることで、観客をより歌手の心情へ集中させ、違和感なく自然に物語に入って行ける演出となっていた。 何と言っても1幕2場のジュリエッタ役高橋展子のアリア「ああ幾度も・・・」が素晴らしい。弱音のオケから始まり、途中はアカペラで、高音部分も正確なピッチと抑制された声量でジュリエッタの想いを伝える、素晴らしいベルカントの歌声。4階席最後列の天井桟敷まで十分に響いて来た。そしてロメオ役の向野由美子との二重唱のバランスが良く、同声による美しいハーモニーでより若い二人の想いが伝わってくる。 それでいて、第2幕2場でのロメオとテバルト役笛田博昭との争いでは男性同士の戦いに聞こえるのは、ベッリーニの作曲力の成せる業と、歌手の力量なのでしょう。 休憩1回挟んで3時間弱、周知の物語のためより音楽中心に聴くことになり、管弦楽も進むに従って、より歌と合うようになり、ベッリーニの美しい音楽に浸ることが出来た。 他のベッリーニ作品も聞きたくなった。End
2016.09.10
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鑑賞日:2016年7月17日(日)14:00開演入場料:¥4,000 (D席:5階L2列) 【主催】(財)東京二期会東京二期会オペラ劇場《二期会名作オペラ祭》 歌劇「フィガロの結婚」モーツァルト作曲全4幕(イタリア語上演/日本語字幕付)会場:東京文化会館 大ホール指 揮:サッシャ・ゲッツェル 演 出:宮本 亜門管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 合 唱:二期会合唱団 装 置 :ニール・パテル 衣 裳 :前田 文子 照 明 :大島 祐夫 合唱指揮:大島 義彰演出助手:澤田 康子 舞台監督:村田 健輔 公演監督:大島 幾雄 出演:アルマヴィーヴァ伯爵:小森 輝彦 伯爵夫人 :大村 博美 ケルビーノ :小林 由佳 フィガロ :黒田 博 スザンナ :嘉目 真木子 バルトロ :妻屋 秀和 マルチェリーナ :押見 朋子 ドン・バジリオ :高橋 淳 ドン・クルツィオ :渡邉 公威 アントニオ :鹿野 由之 バルバリーナ :盛田 麻央 花 娘 :藤原 唯、宍戸 茉莉衣 感想: 先月の「セビリアの理髪師」の続きである「フィガロの結婚」(作曲された年代は逆だが)。宮本亜門演出作品を東京二期会公演で再演されるとのことで夏空の下、3連休中日で人混みの中、上野まで出掛けた。 著名な作品でベテラン歌手陣出演のためか満員札止め。 オケピット内は小編成でチェンバロも置かれている。 時間となり客席暗転で指揮者登場。サッシャ・ゲッツェルは神奈川フィル客演指揮者時代に軽快な音楽を聞いた覚えがある。序曲から早めのテンポで期待が持てる。序曲から間を開けずに幕が開き、第1幕へ。 演出は宮本亜門で、2006年に一度鑑賞している。その時同様に衣装含めオーソドックスな演出で歌詞の内容に合わせて歌手に細かい演技が付けられている。 今回休憩は1回のみで、1、2幕と3、4幕は休憩入れずに素早い展開で緊張感を保っていた。ケルビーノが2階から飛び降りる場面はオケピットの中へ。 歌手はベテランが多く皆さん歌唱、演技含め上手く、安心して聞ける。重唱のバランスもとても良い。 タイトルロールの黒田博は2006年には伯爵役で出演しており、立派な歌声。立派すぎてフィガロとしてはコミカルな表現が少々不足気味か。 伯爵夫人役の大村博美は抑えた歌声で役を表現。特にアリア 「あの楽しい思い出はどこに」では、前半をPに抑えた歌唱で伯爵夫人の苦悩を表していた。 ドン・バジリオ役の高橋淳は歌う場面が少ないものの、重唱では低音パートが多い中でテノールが5階席まで十分に聞こえて来たのは流石。 オーケストラ、歌手、演出と特出した部分がなく、全体的にバランスが良く取れており、モーツァルト音楽の楽しい部分を表現出来ていた。 ただ2、4幕の終わりで幕が閉まり始めると、まだ音楽が演奏されているのに、拍手やブラボーの掛け声が出たのは興ざめで残念。 今年夏のSOMFは小澤征爾+サイトウ・キネンオケでのオペラ公演が無いためパス。次は9月の高橋薫子さんのジュリエッタを楽しみに。End
2016.07.17
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鑑賞日:2016年6月19日(日)14:00開演入場料:¥5,000 (B席:2階G列) 【主催】日生劇場(公益財団法人ニッセイ文化振興財団)NISSAY OPERA 2016オペラ「セビリアの理髪師」ロッシーニ作曲全2幕(イタリア語上演/字幕付)会場:日生劇場指 揮:園田 隆一郎演 出:粟國 淳管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団合 唱:C.ヴィレッジシンガーズ装 置:横田 あつみ照 明:大島 祐夫衣 裳:増田 恵美振 付:伊藤 範子舞台監督:幸泉 浩司演出助手:上原 真希、奥村 啓吾合唱指揮:及川 貢副指揮:大川 修司、鈴木 恵理奈、石崎 真弥奈コレペティトゥア:星 和代、平塚 洋子、河原 義出演:アルマヴィーヴァ伯爵:山本 康寛 ロジーナ :中島 郁子 バルトロ :久保田 真澄フィガロ :上江 隼人 ドン・バジリオ:デニス・ビシュニャ ベルタ :藤谷 佳奈枝 フィオレッロ:清水 勇磨 士 官 :妹尾 寿佳アンブロージョ:木谷 圭嗣公証人 :及川 貢感想: 日生劇場主催のオペラ公演。「セビリアの理髪師」とのことで、時々雨粒が降る梅雨の曇り空の下、有楽町まで出掛けた。 オケピット中央にはチェンバロが指揮者側に鍵盤が向けられ置かれ、弾き振りでの演奏。園田隆一郎は欧州で活動中の指揮者で、昨年より藤沢市民オペラ芸術監督にも就任している。序曲から軽快なテンポで、期待が膨らむ。 舞台は中央が高くなった部分の前後中央が高い壁(幕の絵が書かれている)で隔てられている。舞台の両脇には高い木枠の塔があり、その下部の歯車を出演者が回すと舞台が回転して場面転換となる。中央の高い壁は場面に合わせ開閉し、バルトロ邸前広場、街並み、バルトロ家室内、入り口やバルコニーに瞬時に転換する。衣装も原作のイメージ通りで違和感なし。 フィガロのアリア「町のなんでも屋」ではデフォルメされ絵に書かれた街並みが現れ、ドン・バジリオのアリア「中傷とはそよ風です」では噂を広める影武者たちが踊ったり、フィガロとアロンゾに化けた伯爵がバルトロを布でぐるぐる巻きにしたりと解りやすい演技が入る。 客席の子供たちの笑い声も多く聞かれ、親子連れにも配慮された演出で好感が持てる。 歌手は、ベテランのフィガロ役の上江隼人、バルトロ役の久保田真澄、ドン・バジリオ役のデニス・ビシュニャが表情豊かな歌声と演技でオペラ・ブッファらしい作品を楽しむことが出来た。 ロジーナ役の中島郁子は、カヴァティーナ「ある声が今しがた」始めよく歌えていた。 アルマヴィーヴァ伯爵役の山本康寛は装飾音符を丁寧に歌っているのだが、テンポが緩み盛り上がりに欠けてしまう。最後のアリアは省略しても良かったのでは。 全体としてまとまっており、解りやすい演出、ホールの大きさも作品に合っており、ロッシーニらしいオペラを楽しむことが出来た。アリアでは歌手に合わせたテンポ、盛り上がる重唱部分では全体を引っ張って行くスピード感を維持しており、指揮者の功績でしょう。 ロッシーニオペラは10月びわこホール「ドン・パスクワーレ」を確保しており、今から楽しみ。End
2016.06.19
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鑑賞日:2016年6月5日(日)10:00開演入場料:¥3,600 (スクリーン5・J列) 【制作・配給】松竹(株) METライブ・ビューイング2015-16R.シュトラウス作曲歌劇「エレクトラ」(全1幕、ドイツ語/日本語字幕付)会場:名古屋ミッドランドスクエアシネマ(スクリーン5) (MET上演日 2016年4月30日)指揮:エサ=ペッカ・サロネン演出:パトリス・シェロー管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団出演:エレクトラ:ニーナ・ステンメクリテムネストラ: ヴァルトラウト・マイヤークリソテミス:エイドリアン・ピエチョンカエギスト:ブルクハルト・ウルリヒオレスト:エリック・オーウェンズ他感想: METライブ・ビューイングの今シーズンラスト公演を観に、小雨の中、名古屋駅近くのミッドランドスクエアまで出掛けた。 演目は初めて見るR.シュトラウス「エレクトラ」。歌劇としては「サロメ」の次の作品であり、1幕もので女性主人公のタイトルロールなど共通点が多い。「ばらの騎士」や「ナクソス島のアリアドネ」等の脚本を手がけたホーフマンスタールとの共同第1作目でもある。 冒頭フレミングの作品紹介の後、ステンメ、サロネン、ゲルプ総裁との対談が5分程あり、開演。 幕が上がると宮殿の庭だが、灰色の壁に囲まれた暗い場所。衣装は時代設定とは無関係な現代衣装で黒や灰色中心の薄汚れた色合い。下女たちが掃除していると、突然大音量のオケが鳴る。オーケストラの構成は譜面指定通りなら、116名必要とのことで、ワーグナーの指輪の108人を超えるとのこと。 このすさまじい音量の中でもタイトルロールのニーナ・ステンメの声は飛び出て聞こえてくる。1幕と言えども約100分ほとんど出ずっぱりで歌い続け、連続する高音も最後まで歌いきり素晴らしい。 本作品がほとんど上演されないのは、これだけ歌言える歌手が希薄なためでしょう。 他の出演者も皆さんオケに負けな声量で、クリテムネストラ役のヴァルトラウト・マイヤーもメゾとは思えない高音を楽々、思いを込めた歌唱だった。 100分間大音量の緊張感が続くため客席側も疲れる作品。客席は5割程度の入りで少な目で珍しい演目の影響でしょうが、このような素晴らしいマイナー作品を取り上げるのも流石MET。 既に来シーズンの公演紹介があり、本タイトルロールのニーナ・ステンメがイゾルデを歌うラトル指揮「トリスタンとイゾルデ」やフレミングが元帥夫人、ガランチャがオクタヴィアンの「ばらの騎士」等、素晴らしい演目が予定されており、今から楽しみだ。End
2016.06.05
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鑑賞日:2016年4月16日(土)14:00開演入場料:¥7,776 (C席:4階1列) 【主催】新国立劇場2015/2016シーズンオペラ「ウェルテル」ジュール・マスネ作曲全4幕(フランス語上演/字幕付)会場:新国立劇場オペラパレス指 揮 :マルコ・アルミリアート→ミシェル・プラッソン →エマニュエル・プラッソン演 出 :ニコラ・ジョエル 美 術 :エマニュエル・ファーヴル衣 裳 :カティア・デュフロ照 明 :ヴィニチオ・ケリ舞台監督:大仁田雅彦合唱指揮:三澤洋史合 唱 :新国立劇場合唱団、TOKYO FM 少年合唱団管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団出演ウェルテル :マイケル・ファビアーノ→マルチェッロ・ジョルダーニ →ディミトリー・コルチャックシャルロット:エレーナ・マクシモワアルベール :アドリアン・エレートソフィー :砂川涼子大法官 :久保田真澄シュミット :村上公太ジョアン :森口賢二 感想: 新国立2015/2016シーズンはこれまで都合が合わず聞けずじまいだったが、新作とのことで初台まで出掛けた。 本公演は指揮者とタイトルロールが当初から3回も変更になる珍しいケースで、その出来を少々心配しつつ、いつもの4階席へ。 演出は原作通りの設定で、1幕大法官の庭、2幕教会前の広場、3幕アルベール家の応接間、4幕ウェルテルの書斎は建物壁や小道具、背景絵でそのままのイメージを表現しており、結構豪華。3幕と4幕は休憩を挟まず間奏曲の間に場面転換し、緊張感を維持。有名なピストル発砲は昨年のMETの様な余分な演出は入れず、幕を閉めたまま、音楽のみで表現した所も良い。 歌手は主役3人、日本人含め皆さん良く歌声が響き、フランス語も違和感なし。タイトルロールのディミトリー・コルチャックは若々しい歌声とルックスでその役にピッタリ、交代になって良かったか。 ソフィー役の砂川涼子も美しい高音で存在感あり。クリスマスの裏歌も4階席まで響いて来て良かった。 本作品には子供たちが重要で声量の関係から人数を増やしたりすることも多いが、原作通りの6人で演じており立派。 オーケストラは、少々もたつく所も見られたが、ワーグナー並の豊かな音楽をよりロマンチックにしたマスネの音楽を表現できていた。 新国立劇場の次公演「ローエングリーン」はフォークトを楽しみしていたが都合が合わず残念。 既に来シーズンの新国立劇場プログラムが発表されており、指輪4部作のワルキューレ、ジークフリート、ルチアの新作等が予定されており今から楽しみに。End
2016.04.16
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鑑賞日:2016年4月11日(日)15:00開演入場料:¥9,300 (C席:4階L2列) 【主催】東京・春・音楽祭実行委員会東京・春・音楽祭~東京のオペラの森2016~東京春祭ワーグナー・シリーズvol.7楽劇「ニーベルングの指環/第2日《ジークフリート》」(演奏会形式/全3幕/ドイツ語上演/字幕・映像付)会場:東京文化会館大ホール出演指 揮 :マレク・ヤノフスキ ジークフリート:アンドレアス・シャーガー ブリュンヒルデ:エリカ・ズンネガルド さすらい人 :エギルス・シリンス ミーメ :ゲルハルト・シーゲル アルベリヒ :トマス・コニエチュニー ファーフナー :シム・インスン エルダ :ヴィーブケ・レームクール 森の鳥 :清水理恵管弦楽:NHK交響楽団ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル 音楽コーチ:トーマス・ラウスマン 映像:田尾下 哲 感想: 春恒例の「東京のオペラの森」は今年12回目。一昨年から指輪4部作の連続公演が始まっており、今年は第2日「ジークフリート」とのことで、桜が散り始めている上野まで出掛けた。 客席は、空席が殆ど無い満席状態。開演時間となり、客電が落とされるとオーケストラ登場。作曲者指定の人数のようで、演奏会形式のため、その規模の大きさに改めて驚かされる。コントラバス8本、ハープ6台は圧巻。楽器の持ち替えやソロパートなど演奏状況を直接見られるのも演奏会形式ならでは。 舞台奥スクリーンに各場面に合わせた映像が映されるが、森の中の滝の流れや、岩山の炎、雲の流れ程度の動きのため邪魔に感じずにすんだ。 歌手は皆さん大オーケストラと同じ舞台に立っているのにも係わらず、よく聞こえてきた。また、歌い方に変化をつけることで演技がなくても十分に各役の場面毎の感情が伝わってくる。 特にタイトルロールのアンドレアス・シャーガーの恐れを知らない若者の歌声、ミーメ役ゲルハルト・シーゲルのコミカルで腹黒い役を歌声で上手く表現出来ていた。ただ1人の日本人、森の鳥役の清水理恵は5階席から会場中にコロラトゥーラの歌声を響かせていた。 休憩2回挟んだ5時間の長丁場でも最後まで集中して聞けたのは、強弱、テンポを確実にコントロールし、ワーグナーの音楽を表現出来ていたためであり、指揮者マレク・ヤノフスキの統率力の成果なのでしょう。 来年はいよいよニーベルングの指環/第3日 『神々の黄昏』が予定されており、いまから楽しみだ。End
2016.04.10
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鑑賞日:2016年4月3日(日)10:00開演入場料:¥3,600 (スクリーン5・J列) 【制作・配給】松竹(株) METライブ・ビューイング2015-16プッチーニ作曲歌劇「マノン・レスコー」(全4幕、イタリア語上演/日本語字幕付)会場:名古屋ミッドランドスクエアシネマ(スクリーン5) (MET上演日 2016年3月5日)指 揮:ファビオ・ルイージ演 出:リチャード・エア管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団出演:マノン・レスコー:クリスティーヌ・オポライス騎士デ・グリュー:ヨナス・カウフマン→ロベルト・アラーニャマノン・レスコーの兄:マッシモ・カヴァレッティジェロンテ大臣:ブリンドリー・シェラット感想: 今シーズンのMETライブ・ビューイングは都合がわず見に行けてない状態だったが、今日は時間が合い、花曇りの下、名古屋駅近くのミッドランドスクエアまで出掛けた。 客席は2番目に大きいスクリーン5(204席)で7割程度の入り。遅れても客席に座れるのがライブ・ビューイングの良い所。 冒頭のデボラ・ヴォイトの作品紹介から直ぐに序曲が始まり、直ぐに幕が開くとフランス田舎の駅。汽車が到着し、マノンが降りてくる。 原作は馬車が着く宿屋だったので時代設定は現代に数十年程近い設定。第2幕ジェロンテ妾宅、第3幕の港も舞台中段までの長い階段が設置されており、上下、左右の広がりを感じさせる。幕間のインタビューでシェラットが「手すりのない急な階段を歌いながら降りるのが大変だった」とのコメントあり。 オーケストラは、強弱、緩急が適切にコントロールされ、テンポ・ルバートは歌手含めピッタリで指揮者ファビオ・ルイージが適格にコントロールしている印象。 歌手はいずれも熱演。マノン役のクリスティーヌ・オポライスは、2年前にMET「蝶々夫人」を歌っている間に並行公演の「ラ・ボエーム」のミミ役が体調不良となり、ライブ・ビューイング録画当日に急きょ歌い大成功を収めてからMETのプッチーニ歌手に定着。ライブ・ビューイング次回公演「蝶々夫人」もタイトルロールの予定。 相手デ・グリュー役は当初ヨナス・カウフマンで、プログラムにも写真が掲載、紹介されているが、体調面の関係で次回公演「蝶々夫人」ピンカートン役のロベルト・アラーニャが初役で熱演。若干ピッチが届かない部分もあったが、パワーで押し切った歌声。カウフマンは昨年のミュンヘン公演でも同役好評でカメラ的にも期待していたので残念と思っている女性方々も多いでしょう。 幕間の総裁インタビューで来シーズンの公演紹介があり、ラトル指揮「トリスタンとイゾルデ」、ドミンゴがタイトルロールの「ナブッコ」、ダムラウとグリゴーロの「ロメオとジュリエット」、ネトレプコがタチヤーナを歌う「エフゲニー・オネーギン」、カーセン演出、フレミングが元帥夫人、ガランチャがオクタヴィアンの「ばらの騎士」等ぜひ観たい演目が予定されており、今から楽しみだ。End
2016.04.03
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鑑賞日:2016年3月19日(土)14:00開演入場料:¥3,000 (E席:3階12列) 【主催】神奈川県民ホール神奈川県民ホール・びわ湖ホール・iichiko総合文化センター・東京二期会・神奈川フィルハーモニー管弦楽団・京都市交響楽団・九州交響楽団 共同制作神奈川県民ホール・オペラシリーズ2016歌劇「さまよえるオランダ人」ワーグナー作曲全3幕→1幕(ドイツ語/日本語字幕付)会場:神奈川県民ホール・大ホール指 揮 :沼尻 竜典演 出 :ミヒャエル・ハンぺ装置・衣装:へニング・フォン・ギールケ照 明 :斎藤 茂男音 響 :小野 隆浩合唱指揮 :三澤 洋史合 唱:二期会合唱団、新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団出演オランダ人:ロバート・ボークダーラント:斉木 健詞ゼンタ :横山 恵子エリック :樋口 達哉マリー :竹本 節子舵 手 :高橋 淳感想 ここ数年春恒例のびわ湖ホールとの共同製作オペラを見に、小雨の中、山下公園側の神奈川県民ホールへ出掛けた。 1階両サイドに空きがみられるものの、2,3階席は満席。指揮者登場で序曲が演奏され、幕があく。 舞台上は船の甲板が再現され、前面にはCGで作成された嵐の情景が映写され、なかなかの臨場感。これで甲板まで動くとTDLやUSJのアトラクション並なのだが。 船が港に着くと甲板はそのままで、女達が甲板上の扉を開き糸を取り出し糸紡ぎ場に早変わり。オランダ船が近づくところも迫力満点。 本オペラには水夫役の男声合唱が多く必要で、オランダ船(幽霊船)とのやり取りでは録音が使われたりするのだが、今回は幽霊船側の男声合唱も登場するため新国立劇場合唱団も加わり100人規模で迫力ある歌声を聞くことが出来た。 タイトルロールのロバート・ボークを始め、皆さん良く歌えており演技も良かった。ダーラント役の斉木健詞はタイトルロールにも勝るとも劣らない深い歌声。最近緊急降板することが多い舵手役の高橋淳も元気な歌声を聞くことが出来た。 管弦楽は神奈川フィルらしい繊細な弦に迫力ある管楽器が加わり、沼尻竜典の指揮に引っ張られワーグナーの音楽が表現されていた。 途中に休憩を挟み、2部構成や3幕で上演することも多いが演目だが、今回は映像を上手く使い切れ目なく1幕、2時間強での演奏。聞く方は少々疲れるが(歌手はもっと大変)、緊張感が途切れること無く、その分原作の音楽を良く表現出来ていた。 演出含めレベル高いオペラを低価格で聞けるのは、会館主催で多くの共同制作体制で出来ているためと思われるが、来年は神奈川県民ホールとiichiko総合文化センターで「フィガロの結婚」、びわ湖ホールは単独でリング4部作を始めるようであり、同様のレベルが維持されるかは少々心配だが、演目が増えることを楽しみに。End
2016.03.19
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鑑賞日:2016年2月20日(土)14:00開演入場料:¥2,000 (E席:5階1列) 【主催】(財)東京二期会、(財)日本演奏連盟 2016都民芸術フェスティバル 参加公演パルマ王立歌劇場とヴェネツィア・フェニーチェ劇場との提携公演東京二期会オペラ劇場歌劇「イル・トロヴァトーレ」全4部(イタリア語/日本語字幕付) ジュゼッペ・ヴェルディ作曲 会場:東京文化会館大ホール指 揮:アンドレア・バッティストーニ 演 出:ロレンツォ・マリアーニ 美 術:ウィリアム・オルランディ 照 明:クリスチャン・ピノー 演出補 :エリザベッタ・マリーニ 合唱指揮:佐藤 宏 音楽アドヴァイザー:田口興輔 舞台監督:佐藤公紀 公演監督:直野 資 管弦楽:東京都交響楽団 合 唱:二期会合唱団 出 演:レオノーラ :並河寿美 マンリーコ :エクトール・サンドバル ルーナ伯爵 :上江隼人アズチェーナ:清水華澄 フェルランド:伊藤 純 イネス :富岡明子 ルイス :今尾 滋 老ジプシー :三戸大久 使者 :吉田 連 感想 2年ぶりの東京二期会公演、指揮者が東フィル首席客演指揮者に就任したイタリア人バッティストーニが振るとのことで、冬の寒空の下、上野まで出掛けた。 今回の公演はパルマ王立歌劇場、フェニーチェ劇場との提携公演とのことで、ホールに入ると舞台上には中世戦乱の絵画の幕が貼られており、気分は中世ヨーロッパへ。 時代設定は原作通りで、衣装も違和感なし。提携公演の割には大きな舞台装置は無く、馬の置物や長い剣等が置かれる程度で、黒を基調に照明を使って歌手へのスポットを多用することで自然と感情移入がしやすくなる演出。 歌手では、女声陣が感情こもった歌声で素晴らしい。レオノーラの並河寿美は、マンリーコへの想いと助けるために伯爵のものになると嘘を言って毒を飲んで歌う「恋は薔薇色の翼に乗って」はその思いが伝わってきた。 アズチェーナ役の清水華澄は、母親を火炙りされた伯爵への恨み、間違って我が子を炎に投げ入れた後悔、最後に実の弟を処刑させたと伯爵に歌う恐ろしさをホール中に響く歌声で聴かせた。 男声陣は少々音量に劣るものの、マンリーコ役エクトール・サンドバルは、「見よ、恐ろしい炎を」でハイCで歌い、合唱と舞台裏で歌う「ミゼレーレ」は美しいいハーモニーだった。 合唱も「アンヴィル・コーラス」や「燃えさかるあの炎」は迫力があって良かった。 何と言っても一番良かったのは管弦楽で、ダイナミックスが大きく、テンポの上げ方も素晴らしい。後半に向かって緊張感が増していき、アカペラから始まる4幕最後は恐ろしさを十分に表現できていた。 今回オケが余りオペラ演奏をしない東京都交響楽団で少々心配だったが(ホールでプログラムを見るまで東フィル思い込んでいた)、ヴェルディの中期代表作の音楽をここまで表現できたのは、イタリア人指揮者バッティストーニの功績でしょう。今回5階席の舞台寄りで、双眼鏡を介して指揮振りがよく見えたのだが、大きな体格で体中を使ってのダイナミックな指揮振りで、オケをグイグイと引っ張っている。 譜面台に楽譜はあるが、時々固めてめくっており、ほとんど頭に入っているのでしょう。重唱では歌手へも適格な指示を出しているように見えた。2012年東京二期会公演「ナブッコ」を聞いてその指揮振りに驚いたが、28歳ですでにスカラ座を初め世界中の歌劇場で指揮をしており今後が益々楽しみ。 レベルの高いオペラ公演を、5階席とは言え低価格で見られるのは都民芸術フェスティバルで賛助金が出ているためでしょう。 機会があればぜひバッティストーニ指揮のオペラ公演をまた見たい。End
2016.02.20
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鑑賞日:2015年12月5日(土)14:00開演入場料:¥3,800 (D席:3階4列) 【主催】(財)日本オペラ振興会、Bunkamura藤原歌劇公演歌劇「仮面舞踏会」ヴェルディ作曲全3幕(イタリア語/日本語字幕)会場:Bunkamura オーチャードホール公演監督:折江 忠道 指 揮 :佐藤 正浩演 出 :粟國 淳 装置・衣装:アレッサンドロ・チャンマルーギ照 明 :笠原 俊幸振 付 :伊藤 範子合唱指揮:須藤 桂司合唱:藤原歌劇団合唱部管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 出演リッカルド:西村 悟レナート :堀内 康雄→牧野 正人アメーリア:小川 里美ウルリカ :鳥木 弥生オスカル :高橋 薫子シルヴァーノ:和下田 大典サムエル :久保田 真澄ト ム :小田桐 貴樹判 事 :納谷 善郎アメーリアの召使:狩野 武 感想 ヴェルディ中期の名作なれど、日本では頻繁に公演されない演目であり、久しぶりに渋谷へ。東京トンテキの大トンテキランチでエネルギーを蓄え、オーチャードホールの長い階段を登って3階席のいつもの天井桟敷へ。 2013年2月公演の再演。舞台中央に10m幅の階段があり、その前の壁が楕円形に開いて舞踏会の広間になり、閉じて壁画になり部屋の中に変わる。衣装も時代設定通りで、舞踏会の衣装は特に豪華。 歌手は、リッカルド役の西村悟、アメーリア役の小川里美、オスカル役の高橋薫子は、よく通る声で音程も確か、各役の心情を良く表現出来ていた。レナート役の牧野正人や数日前に急きょ堀内康雄から交代に成ったにも係わらず、素晴らしい歌声と堂々とした演技で2年前同役で出演したとは言え、さすがでした。 オーケストラは、テンポ良く演奏を進め、fpのダイナミックが大きく、ドラマチックな演奏で何時もの東京フィルとは異なりヴェルディの音楽を上手く表現できていたのは指揮者の功績。指揮者の佐藤正浩は、藤原本公演は今回デビューとのことだが、欧州でのコレペティトール等の下積みでヴェルディ音楽が身についているのでしょう。 歌手、管弦楽、舞台演出がバランス良く揃った公演となり、国内関係者だけの演奏にも係わらず十分楽しむことが出来た。 藤原歌劇団の2016-2017シーズンの公演予定が既に発表されており、高橋薫子さんが十八番「愛の妙薬」とベッリーニ「カプレーティ家とモンテッキ家」に出演とのことで今から楽しみに。End
2015.12.12
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鑑賞日:2015年9月12日(土)15:00開演入場料:¥12,000 (F席:5階2列) 【主催】(財)日本舞台芸術振興会英国ロイヤル・オペラ来日公演歌劇「マクベス」ヴェルディ作曲全4幕(イタリア語/日本語字幕)会場:東京文化会館 大ホール指 揮:アントニオ・パッパーノ演 出:フィリダ・ロイド再演監督:ダニエル・ドーナー美 術:アンソニー・ワード照 明:ポール・コンスタブル振 付:マイケル・キーガン=ドラン再演振付:キルスティ・タップ殺 陣:テリー・キング殺陣(アシスタント):ロックハート・オグルヴィ合唱監督:レナート・バルサドンナ管弦楽: ロイヤル・オペラハウス管弦楽団合 唱:ロイヤル・オペラ合唱団コンサートマスター ヴァスコ・ヴァシレフ出演マクベス:サイモン・キーンリサイドマクベス夫人:リュドミラ・モナスティルスカバンクォー:ライモンド・アチェトマクダフ:テオドール・イリンカイマルコム:サミュエル・サッカー医師:ジフーン・キム夫人の侍女:アヌーシュ・ホヴァニシアン刺客:オーレ・ゼッターストレーム伝令/亡霊1:ジョナサン・フィッシャー亡霊2:野沢晴海(NHK東京児童合唱団)亡霊3:鈴木一瑳(NHK東京児童合唱団)ダンカン王:イアン・リンゼイ感想 ロイヤル・オペラ来日公演は、2010年「マノン」を聞いてタイトルロールのネトレプコの歌唱に圧倒され、更にオケや演出も良かった印象があり、今年も来日とのことで、チケット確保し、残暑も緩み曇り空の下、来日公演初日、上野まで出掛けた。 開演のアナウンス、場内暗転となり、チューニングの後、指揮者登場。指揮は2002年からロイヤル・オペラ音楽監督を務める、アントニオ・パッパーノ。 前奏曲からテンポの変化、ダイナミズムの大きな演奏で期待が持てる。オケは男性の割合が多く、ホルン4人は全て男性で、fが力強い。 幕が上がって、第1幕1場は森の中でマクベスとバンクォーが魔女たちと遭遇する場面。舞台左右と背面に舞台上部までつながる黒い格子状の壁で囲まれ、暗闇の状態。左右の壁の一部が扉状に開き、光が漏れ兵士たちの行進が進む。演出は基本的に左右と背面の黒壁で仕切られて進み、ベットが入り寝室や居間となり、背面の壁が上がり瞬時に野戦場や森への場面転換となる。 衣装含め基本黒を基調とした場面が多いが、王たちが黄金の馬と鎧で現れたり、黄金の格子状の檻のようなものの中で王位継承や最後の戦いが行われることで、黄金が王位、権力の象徴を表し、暗殺、殺害の場面の赤が血の色となり、色や照明の使い方でより強調されて目に映る。 また本オペラは前半3幕の進み具合に比べ、最後4幕は4つの各場面が短く、あっという間にマクベス夫人が狂乱の中、自害し、マクベスがマクダフに討たれてしまうのだが、今回第4幕1場荒野でマルコムがマクダフと決起する場面の舞台上でベットでマクベス夫婦が寝ており、夢の中の恐怖を表しているとの位置づけか。 更に1場から2場に代わる間奏で、舞台背面の壁が少し開き、浴槽の中で何度も手を洗うマクベス夫人を登場させ、2場の手についた血が落ちない狂乱の場面につなげており、唐突感、違和感なく物語に入って行けた。 2011年からの演出とのことで、素早い舞台転換含め、よく練れていると感じた。 歌手は皆さんよく通る役に合った声との印象。その中でもマクベス夫人役リュドミラ・モナスティルスカの声量は素晴らしく、ホール中を満たす歌声で圧巻。特に狂乱の場面は押し殺した弱めの声にもかかわらず、ビブラートを上手く使い、美しさの中に恐怖を感じるような歌となっていた。マクベス、バンクォー、マクダフ、マルコムも、素晴らしかった。また、亡霊役の日本の少年達のボーイソプラノも良かった。 兵士たちの迫力満点の合唱に比較し、魔女たちの合唱にバラバラ感があったが、これは魔女らしさを出すための特異な歌い方だったのでしょう。 なんといってもこのオペラを引っ張ったのはオーケストラで、大音量と消えそうなPP、テンポの差が大きく、それによって日本では通常聞けない、ヴェルディらしい劇的な音楽を表現していた。 これは英国育ちだが、両親がイタリア人の指揮者アントニオ・パッパーノの功績でしょう。 やはり音楽レベルの高い引越し来日公演は、新国立劇場のように外国歌手だけ集めても成し得ない、指揮者、オケ、歌手、演出全てが揃って初めて触れられるオペラを満喫することが出来た気分に。 休憩1回25分を挟んで3時間10分の公演だったが、あっという間にカーテンコールになった印象。 本当は、本場の劇場で聞くと更に良いのでしょうが・・・。End
2015.09.12
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鑑賞日:2015年8月29日(土)15:00開演入場料:¥10,000→¥9,000 (C席:4階3列) 【主催】セイジ・オザワ松本フェスティバル実行委員会 (財)サイトウ・キネン財団セイジ・オザワ 松本フェスティバル2015オペラ「ベアトリスとベネディクト」ベルリオーズ作曲(全2幕:フランス語上演/字幕付)会場:まつもと市民芸術館・主ホールスタッフ 指揮:小澤征爾→ギル・ローズ演出:コム・ドゥ・ベルシーズ装置:シゴレーヌ・ドゥ・シャシィ衣裳:コロンブ・ロリオ=プレヴォ照明:トマ・コステール映像:イシュラン・シルギジアン管弦楽:サイトウ・キネン・オーケストラ合唱:OMF合唱団キャスト出演ベアトリス:ダニエラ・マック→ヴィルジニー・ヴェレーズ→マリー・ルノルマンベネディクト:ジャン=フランソワ・ボラスエロー:リディア・トイシャークラウディオ:エドウィン・クロスリー=マーサードン・ペドロ:ポール・ガイソマローネ:ジャン=フィリップ・ラフォンウルスル:キャレン・カーギルレオナート:クリスチャン・ゴノン伝令・公証人:ヴァンサン・ジョンケ感想: 夏季後半恒例の「サイトウキネン松本フェスティバル」が今年から「セイジ・オザワ松本フェスティバル」に名称を代え、そのオペラ公演チケットが奇跡的に取れたので、8月最後の土曜日に雨模様中、松本へ向かった。 8/7に小澤征爾氏骨折で指揮者変更のニュースが入り集客を心配したが、会場ロビーには「完売御礼」の札が出され例年通りの賑わい、ホール座席にも空席無く、立ち見のお客も入っていた。 チケット確認時に席ランクに合わせた返金を受け取る。当方初めての経験で、小澤征爾氏の意向なのでしょう。 ベルリオーズ「ベアトリスとベネディクト」は初めて聴く作品。シェイクスピアの戯曲『空騒ぎ』が原作で、晩年のベルリオーズ自身がフランス語のリブレットを書き作曲したもので、オペラ・コミック形式でセリフも多く入る。 序曲は、リズミカルや美しい旋律が聞かれベルリオーズらしい。幕が開くと全面ガラス張りの植物園の温室のような建物が登場。中央広間の周囲に色々な植物が植えられ、舞台上手側にはレンガに囲まれた池に花が咲いている。 2幕結婚舞踏会の場面では、この舞台装置にテーブルや椅子を持ち込み、照明と映像を使って夜の星空や花火の様子を表現。 管弦楽はハープ2台入り、オケボックスはすし詰めの状況。各管楽器はソロ含め、外すことは勿論無く、素晴らしい演奏。弦楽器も素晴らしい音色だった。バンダの演奏も素晴らしい。 合唱はOMF合唱団と地元オーディション募集のようだが、プロ級の歌声と演技で、オペラ全体を盛り上げていた。 本作品はオペラ・コミックで劇的な要素があるわけでなく、アリア、重唱などがより重要になるのだが、ベネディクト役ジャン=フランソワ・ボラスのアリアはよく通るテノールの声で良かった。またエロー役リディア・トイシャーもリリコのソプラノで美しく、1幕最後のクラウディオ役エドウィン・クロスリー=マーサーとの2重唱も素晴らしい出来だった。 残念だったのはベアトリス役で当初発表ダニエラ・マックの代役ヴィルジニー・ヴェレーズが初日のみで、2日目から更に代役のマリー・ルノルマンが歌った様なのだが、ビブラートの多いこもり気味の声質で、声の抑揚が少ないため、盛り上がりに欠ける。へそ曲がりで皮肉屋であるが、最後はベネディクトとの婚姻届にサインをしてしまう心境の変化が客席に聞こえて来ない。これは指揮者の曲作りにも責任の一旦はあるのでしょう。 当初予定通りの指揮者と歌手であれば、もっと違った音楽になっていたのではと思うと、1,000円では埋まらない残念な心境に。 ただ、松本のホテル、レストラン、観光地での接客は大変親切で、街全体でこの歴史ある音楽祭を盛り上げているように感じる。 夏の終わりに松本に出かけ、温泉、美味しい蕎麦を食べて、クラシック音楽も楽しめるなら、十分価値がある音楽祭だと感じた。End
2015.08.29
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鑑賞日:2015年7月5日(日)14:00開演入場料:¥3,000 (D席:2階J列) 【主催】(財)日本オペラ振興会/朝日新聞文化財団 他藤原歌劇団2015/2016年公演オペラ「ランスへの旅」ロッシーニ作曲(全1幕:イタリア語上演/字幕付)会場:日生劇場スタッフ指揮:アルベルト・ゼッダ演出:松本重孝美術:荒田 良衣裳:前岡直子照明:服部 基舞台監督:菅原多敢弘合唱:藤原歌劇団合唱部演奏:東京フィルハーモニー交響楽団キャストコリンナ :佐藤美枝子メベリーア伯爵夫人:鳥木弥生フォルヴィル伯爵夫人:光岡暁恵コルテーゼ夫人 :清水知子騎士ベルフィオーレ:小山陽二郎リーベンスコフ伯爵:山本康寛シドニー卿 :伊藤貴之ドン・ブロフォンド:久保田真澄トロンボノク男爵 :三浦克次ドン・アルヴァーロ:牧野正人ドン・プルデンツォ:柿沼伸美ドン・ルイジーノ :真野郁夫デリア :山口佳子マッダレーナ :河野めぐみモデスティーナ :但馬由香ゼフィリーノ :藤原海考アントーニオ :立花敏弘感想: ロッシーニ「ランスへの旅」は、2006年に藤原歌劇団で初めて聞いた作品。今回は新演出で、4月大阪に続いて日生劇場での公演を見に梅雨空の下、有楽町まで出かけた。 13:15頃から公演監督の折江忠道さんから本作品の話があり、前回の公演監督だった岡山廣幸さんがお亡くなりになったとのことで、9年の時の流れを感じてしまう。 指揮者は前回と同じアルベルト・ゼッダで87歳になられたとのことだが、軽快な指揮でロッシーニ音楽を表現する。東フィルは近年ゼッタ氏指揮で定期公演も行っており、息はぴったり。今回の日生劇場はオケピット除くと1200人程度のキャパで、オケも小編成で歌手とのバランスも良く、ロッシーニ音楽には合っていたのでしょう。途中、騎士ベルフィオーレのアリアでのフルートのソロは完璧で素晴らしい演奏だった。 9年前は上野の東京文化会館大ホールだったのでハープがオケピットに入っていたが、今回は無く、吟遊詩人コリンナはどの様に歌うのか?と思ったが、序曲に合わせ幕が開くと、ホテル2階のバルコニーにハープが置かれており納得。第2部では、ホテルロビーと同じ位置に移動。ハープ演奏者も衣装をまとい、コリンナの歌に合わせて演奏することで、吟遊詩人に。 前回はイタリアから演出を持って来たためか、歌手達が動く度に海辺のバルコニーの床が軋んで鳴って、今にも壊れそうで心配したが、今回新演出で美しい色使いでホテルロビーを表現。2部の夜のパーティーも卓上の照明を使い、上品に表現されていた。 衣装もほぼ原作設定通りで、フォルヴィル伯爵夫人の衣装や帽子のデザイン、色使いが少々現代的かと思ったが、伯爵夫人の派手好きの性格を表されていたのでしょう。 歌手陣は9年前に歌ったベテランに若手が混ざった構成だったが、皆さん演技含め上手く歌われていた。1部最後の14重唱もバランス良く素晴らしい出来。 第2部のパーティーでは出演者が次々にお国自慢の歌を歌い、さながらのど自慢大会の様相。 その中でもフォルヴィル伯爵夫人役の光岡暁恵の歌声、表現が良く、余裕を持ってハイCで歌うところは素晴らしい。 リーベンスコフ伯爵役の山本康寛、シドニー卿役の伊藤貴之がホール中に響く声で演技も良かった。 原作は1幕ものだが途中25分の休憩を入れた2部構成、約3時間の公演にも係わらず、あっという間に過ぎてしまった印象。心から楽しくなる音楽を満喫することが出来た。 なお客席にTVカメラが入っていたので、後日TV放送される予定ありとのこと。End
2015.07.05
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鑑賞日:2015年5月30日(土)14:00開演入場料:¥3,888 (D席:4階R3列) 【主催】新国立劇場2015/2016シーズン オペラ歌劇「ばらの騎士」リヒャルト・シュトラウス作曲(全3幕:ドイツ語上演/字幕付) 会場:新国立劇場オペラパレススタッフ 指揮:シュテファン・ショルテス演出:ジョナサン・ミラー美術・衣裳:イザベラ・バイウォーター照明:磯野 睦合唱:新国立劇場合唱団、TOKYO FM 少年合唱団管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団キャスト元帥夫人 :アンネ・シュヴァーネヴィルムスオックス男爵 :ユルゲン・リンオクタヴィアン/マリアンデル:ステファニー・アタナソフファーニナ :ルクレメンス・ウンターライナーゾフィー :アンケ・ブリーゲルマリアンネ :田中 三佐代ヴァルツァッキ:大野 光彦アンニーナ :加納 悦子警部 :妻屋 秀和元帥夫人の執事/料理屋の主人:加茂下 稔ファーニナル家の執事:村上 公太公証人 :晴 雅彦テノール歌手 :水口 聡帽子屋 :佐藤 路子動物商 :土崎 譲感想: 好きなオペラの1つ「ばらの騎士」の公演が新国立劇場であるとのことで、夏日の炎天下、初台まで出掛けた。本公演は3シーズン目になり、これまで2シーズンとも鑑賞している。 1回目2007年の公演ではその遠近感を使った豪華な舞台装置と時代設定通りの衣装、そして海外から役にあった歌手を集め素晴らしい音楽を楽しむことが出来た。 2回目2011年の公演は、東日本大震災後、新国立劇場の最初の公演となり、公演日程の短縮や指揮者、日本人代役歌手への変更が有ったものの、震災後の混乱の中で、本格的なオペラ公演を聴くことが出来た。 今回の3シーズ目の公演は、主役級歌手は本オペラを歌ったことの有る実力歌手を呼び、日本側もベテラン歌手陣で揃えたキャストとなっている。 開演時間となり、チューニングが終わった所でマイクを持って公演監督が登場。主役歌手の急降板かと心配したが、ヴァルツァッキ役の高橋淳氏が体調不良でカヴァーの大野光彦氏へ、当初大野氏配役の元帥夫人執事を加茂下稔氏が演じるとのことで、まずは一安心。この後の2公演も同様の変更が公開されている。 オケピットはコントラバス6台、ハープ2台を始め、沢山の演奏者、楽器で溢れんばかり。指揮棒が振り下ろされると、ホルンの勇ましい音と伴に、シュトラウスの音楽がホール中にあふれる。 幕が開くと元帥夫人の寝室、大きなベッドの上で元帥夫人とオクタヴィアンが抱き合っているシーンからスタート。下手側に高さ方向一杯に窓が並び、途中で雨も降らせ、何度見ても素晴らしい演出。 音楽はテンポよくどんどん進み、ダイナミックの大きい演奏だが、歌手とのバランスも良い。1幕はバイオリンソロの高音で終わり、指揮者は指揮台を降りる際に、コンマスを賛えていた。 歌手陣は、前回日本人のオクタビアンやゾフィーと比較し、大音量のオケの中でも安定して聞こえて来る。本オペラはアリアはほとんど無く、モーツァルトを意識した重唱が多いが、バランスも良い。 オクタビアン役ステファニー・アタナソフはスマートで短い髪型が似合い、宝塚男役の様で、役にピッタリ。オックス男爵も前回のフランツ・ハヴラタよりも少し紳士的だが、女好きの田舎貴族を上手く演技していた。 ゾフィー役アンケ・ブリーゲルは修道院出たての純粋な少女を美しいソプラノの歌声を聞かせてくれた。そして元帥夫人役のアンネ・シュヴァーネヴィルムスはベテランらしく、丁寧な歌声で、元帥夫人の心境を表していた。 同じ演出で3回目、2007年チューリッヒ歌劇場来日公演を含めると同オペラの鑑賞は4回目となるため、字幕など見ずに音楽全体を鑑賞するように聴くことに。 そうすると1幕は元帥夫人の若き恋人が離れていくのではないかとの不安な心、第2幕はオクタビアンとゾフィーの若き2人の恋の始まり、第3幕前半は居酒屋での大騒ぎの後に3重唱により元帥夫人が去っていくと、まるでオペラ全体が交響曲の様に流れいる様に感じた。その中にテノール歌手のアリア、ワーグナー的なライトモチーフ、ヨハン・シュトラウス調のワルツが入ったりと、色々と楽しませてもらえる。 休憩2回含め4時間強だったが、あっという間に過ぎた印象。4シーズン目があれば、またぜひ観たい公演だった。End
2015.05.30
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鑑賞日:2015年5月23日(土)14:00開演入場料:¥4,000 (B席:2階L1列) 【主催】東海テレビ放送しらかわホール プレミアタイム2015田中彩子 ソプラノ・リサイタル「華麗なるコロラトゥーラ」会場:三井住友海上しらかわホール 出演:ソプラノ:田中彩子ピアノ :加藤昌則曲目<第1部>ナイチンゲールの歌 :グローテ愛の歌 :フォーレ影の歌 ~歌劇「ディノラー」より :マイアベーアアラベスク(ピアノ・ソロ) :シューマン野ばら :シューベルトすみれ :モーツァルト夜の女王のアリア ~歌劇「魔笛」より :モーツァルト<第2部>鐘の歌 ~歌劇「ラクメ」より :ドリーブさようなら ~歌劇「連隊の娘」より :ドニゼッティ風と海とカッペリの花(ピアノ・ソロ) :加藤昌則クローリスへ :アーン夏の名残りの薔薇 ~歌劇「マルタ」より :フロトー春の声 :ヨハン・シュトラウス二世<アンコール>天使の糧 :フランクアヴェ・マリア :シューベルト感想: 1~2月頃のTV放送やぶらぼうの記事で知ったウィーン在住ソプラノ歌手、田中彩子の名古屋のコンサートに出掛けた。 開演前のロビーでは、出身の京都にちなんだデザートや飲み物が用意され、女性を意識したプロモーションあり。開演時間には客席は満席に、3月の東京コンサートが早々にSold outとのことで注目株なのでしょう。 鮮やかなオレンジのドレスで黒スーツのピアニストと登場。1曲目の初めて聴く曲、高音のトリル部分が沢山出てくる曲だが確かな音程で歌い驚き。 低音部分の響きが不足気味かと思ったが、曲が進んで行くと、どんどん聞こえてくるように感じた。 途中、ピアノ・ソロが入り、有名な歌曲2曲のあと、お得意の「夜の女王のアリア」も、超高音Fも確実に歌い圧巻。 休憩の後は、鮮やかな赤いドレスで登場。冒頭のドリーブ「鐘の歌」は、困難な鐘の音の高音トリルやポルタメントを素晴らしい技術で歌う。 しらかわホールは1階421席、2階272席のジュークボックス型で天井が高く、音響が優れているホールで、室内楽や声楽のコンサートにピッタリ。 そのホール中の空気を震わせて、響かせている歌声。当方の鼓膜も何度も共振し、TVやCDでは味わえない。けして音量や勢いで歌うことなく、終始正確な音程で、1曲1曲、1音1音を丁寧に歌う。最後の曲が終わると、客席はスタンディングオベーションに。 コンサート中にMCは無く、アンコール前にマイクで挨拶があったのみだが、音楽中心のコンサートとの姿勢で好感が持てた。 これからの更なる進歩に期待したい。End
2015.05.23
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鑑賞日:2015年4月12日(日)10:00開演入場料:¥3,600 (スクリーン2・J列)【制作・配給】松竹(株)METライブ・ビューイング2014-15ロッシーニ作曲歌劇「湖上の美人」(全2幕、イタリア語上演/日本語字幕付)会場:名古屋ミッドランドスクエアシネマ(スクリーン2)(MET上演日:2015年3月14日)指揮:ミケーレ・マリオッティ演出:ポール・カラン管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団出演:ダグラスの娘エレナ :ジョイス・ディドナートスコットランド王ジャコモ5世:フアン・ディエゴ・フローレス反乱軍の騎士マルコム :ダニエラ・バルチェッローナ反乱軍の首領ロドリーゴ:ジョン・オズボーン反乱軍貴族のダグラス卿:オレン・グラドゥス感想: まだ観たこと無いロッシーニ「湖上の美人」、MET初演でロッシーニ歌いの歌手が揃ったとの前評判を聞き、花曇りの天候の下、名古屋駅前のミッドランドスクエアまで出掛けた。 前回「メリー・ウィドウ」の人気状況から、今回はチケット発売日に予約し見やすい最後列中央を確保。予想通り、当日はチケット売切れの満席状態に。METライブ・ビューイングの知名度は確実にアップしてるので、ぜひ来シーズンは二週間上演やアンコール上演を希望。 冒頭のパトリシア・ラセットの作品紹介から直ぐに演奏が始まる。序曲はなく、前奏に続いて直ぐに狩人や王家の人々の合唱が入る。 ロッシーニなので小規模オケながら、テンポ良くどんどん音楽を引っ張って行く。指揮者のミケーレ・マリオッティはロッシーニと同じペーザロ生まれ、三十代半ばながら、ロッシーニ・オペラ・フェスティバルの常連指揮者で、歌手にはタップリと歌わせてもタイミングはぴったり。 ロッシーニの素晴らしい音楽を表現できていた。 演出は大きな舞台装置はなく、舞台奥の映像と舞台上中央に丘や森があるのみで、照明も舞台中央のみに当てられ、より歌手達に意識が向くように演出されている。と言っても、瞬時に狩人小屋が下から出て来たり、森から瞬時に王宮広間に転換され、音楽を途切れさせない。衣装も、最後の王宮場面のためだけに見事なスコットランド貴族達の衣装が用意され、さすがMETです。 何と言っても、歌手たちが全て素晴らしい。4人いずれもロッシーニのタイトルロールが歌える歌手達であり、特に2幕前半のジャコモ5世とマルコムの決闘にエレナが加わった3重唱のクレッシェンド、緊迫感は素晴らしく、フローレンスとオズボーンの高音テノールの戦いにメゾのディドナート美声が加わって正しく歌声のバトル状態! 映画館音響にも関わらず鳥肌が立った程。 その後のマルコム役バルチェッローナがエレナを心配して歌うアリアも、溢れんばかりの愛情表現でズボン役にも係わらず、大柄な体格も加わって若い騎士に見えてしまう。 2幕最後のエレナのフィナーレ・アリアは、ロッシーニが当時最高のソプラノ歌手を想定した曲で超絶技巧を駆使しているが、ディドナートはほぼ完璧に歌っており流石です。 近年ロッシーニ作品が世界的に見直され「セビリアの理髪師」以外の作品も演奏される機会増えているが、これだけのロッシーニ歌手を揃えられるのはMETならではで、ぜひ生の演奏を聴きたい所。 但し、3800人収容の大ホールのためか、ディドナートやフローレスは少々無理に大きな声を出していたように聞こえた。前回のMET「セビリアの理髪師」でもロジーナ役のイザベル・レナードの声が小さいとの悪評が出ていたようで。 作曲当時の劇場の大きさを考えれば、1000人以下の劇場で演奏した方が作品に合ったバランスで、曲本来の良さが聴けるのでしょうが、興行的には困難なのでしょう。End
2015.04.12
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鑑賞日:2015年4月4日(土)15:00開演入場料:¥6,200 (D席:4階R3列) 【主催】東京・春・音楽祭実行委員会東京・春・音楽祭 -東京のオペラの森2015-東京春祭ワーグナー・シリーズvol.6楽劇「ニーベルングの指環/第1日《ワルキューレ》」(演奏会形式/全3幕/ドイツ語上演/字幕・映像付)会場:東京文化会館大ホール出演指 揮 :マレク・ヤノフスキジークムント :ロバート・ディーン・スミスフンディング :シム・インスンヴォ―タン :エギルス・シリンス ジークリンデ :ワルトラウト・マイヤーブリュンヒルデ:キャサリン・フォスター フリッカ :エリーザベト・クールマンヘルムヴィーゲ:佐藤路子 ゲルヒルデ :小川里美 オルトリンデ :藤谷佳奈枝 ヴァルトラウテ:秋本悠希ジークルーネ :小林紗季子ロスヴァイセ :山下未紗グリムゲルデ :塩崎めぐみシュヴェルトライテ:金子美香管弦楽:NHK交響楽団ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル音楽コーチ:トーマス・ラウスマン映像:田尾下 哲 感想: 春恒例の「東京のオペラの森」は小澤征爾の降板、東日本大震災等の数々の問題を乗り越え今年で11回目。昨年から指輪4部作の連続公演が始まっており、今年は第1日「ワルキューレ」とのことで生憎の雨模様の中、桜が散り始めている上野まで出掛けた。 舞台上には、ハープ6台、コントラバス8台他、広い大ホール舞台いっぱいに100人以上のオーケストラが広がっている。ワーグナーチューバも4本あり。 これだけ大編成でも、大音量で鳴らすのではなく、一つ一つの楽器の音色が聞こえてきてライトモティーフが明確に表現されている。3幕「ワルキューレの騎行」もやや遅めのテンポで重厚な音楽になっており、指揮者の功績でしょう。 演奏会形式だが、歌手たちは指揮者の左右の椅子付近で歌うが、譜面台はなく、全て暗譜での歌唱。3幕登場のブリュンヒルデ以外のワルキューレたちは、舞台下手に並んで譜面台を前に歌っていた。 皆さん素晴らしい歌声で、同じ舞台の大編成オケの中でも、よく聞こえてくる。 場面に合わせセピア色の風景静止画の映像が入り、3幕の最後は炎が映されたが、元々神々の物語であり、余り必要性は感じなかった。 残念だったのは3幕最後、音が無くなった所で直ぐに一度拍手が入ったこと。ワルキューレの幕切れは、ヴォータンの真意を汲んだ娘ブリュンヒルデをフリッカの忠告に従い神の世界から追放、眠らせ炎に包む苦悩の場面であり、音楽がPになって消え入る所。指揮者は指揮棒を止めたままなので、静寂な時間が欲しかったことは明らか。拍手は直ぐに止んで、しばらくの静寂の後、指揮者に合わせ大拍手とはなったが。 3幕、20分休憩2回を挟み5時間弱だったが、充実した演奏で意識がなくなること無く、最後まで楽しむことが出来た。これだけハイレベルのコンサートを毎年続けてこれたのは、何と言っても鈴木幸一委員長のリーダーシップでしょう。 来年の第2日「ジークフリート」も今から楽しみだ。 End
2015.04.04
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鑑賞日:2015年3月29日(日)15:00開演入場料:¥3,000 (自由席:2階5列) 【主催】中部フィルハーモニー交響楽団オーケストラの日2015第12回ファミリーコンサート中部フィルハーモニー交響楽団会場:小牧市市民会館ホール出演指揮・お話:福田一雄バレエ:後藤田恭子バレエ スタジオゲスト:高宮直秀、丸山陽司、伊藤啓輔管弦楽:中部フィルハーモニー交響楽団曲目<第1部> スポーツ音楽特集 古関裕而:栄冠は君に輝く シュランメル:ウィーンはウィーン カバレルスキー:組曲「道化師」よりギャロップ ヨハン・シュトラウス:トリッチ・トラッチ・ポルカ 古関裕而:オリンピック東京大会「オリンピック・マーチ」 ジョン・ウィリアムス:ロサンゼルス・オリンピック・ファンファーレ ハチャットゥリアン:組曲「仮面舞踏会」よりワルツ ワルトトイフェル:スケーターズ・ワルツ アンコール:「燃えよドラゴンズ!」<第2部>プロコフィエフ作曲 バレエ音楽「シンデレラ」より抜粋感想: 年度末3月31日は「ミミにイチバン!!」にちなみ、日本オーケストラ連盟が定めた「オーケストラの日」として全国33のプロ・オーケストラが親しみやすい音楽をテーマに一斉にコンサートを行うことになってるらしく、地元の中部フィルは今年「スポーツ音楽とバレエ」で少し早く3月29日にコンサートがあるとのことで小牧市市民会館まで出掛けた。 一昨年と同じくバレエのため舞台前には張出しが出され、舞台上にはシートが敷かれている。 第1部はスポーツに関連した音楽となっており、オケ、指揮者登場で冒頭はプログラムに無い「栄冠は君に輝く」で現在開催中の春の高校野球にちなんで演奏したとのこと。 オーケストラは4プルト編成で、1stヴァイオリンは5プルト。 スポーツ関連の音楽らしく、軽快で楽しめる。「ロサンゼルス・オリンピック・ファンファーレ」は、トランペットとトローンボーンで迫力満点で華やか。 第1部のアンコールは、地元にちなんで「燃えよドラゴンズ!」で客席から手拍子が入り終了し休憩へ。 休憩時間中に楽器が移動、舞台中央部分が開けられ左右後ろにコの字に囲むように配置、更にハープやピアノも加わり溢れんばかりの状況。さらに反響板後部が上がり、照明がセッティングされている。 第2部は指揮者登場し、プロコフィエフの重めの序曲が流れる。指揮者MCで事前に場面を説明し、バレエが入る。指揮台はコの字の角、舞台下手後部に置かれており、その位置で楽譜を見ていると踊りが見えなくなるため、指揮者はほとんど舞台後部中央で踊りを見ながらの暗譜状態で指揮をしていた。MCもただストーリを説明するだけでなく、音楽の構成や楽器の紹介、日本での初公演の紹介等とても80歳を超えているとは思えないしっかりした口調のバラエティ豊かな説明で、照明効果も加わって、抜粋ながらも音楽とバレエを楽しむことが出来た。 今回ファミリーコンサートのため小さな子供たちも多く、泣き声や叫び声、話し声が時々入ったのは仕方ないとは言え、演奏者、出演者に失礼になっていると感じてしまった。 母子室あるのだから、事前のアナウンスや座席位置の誘導などもう少し工夫出来たのでは。End
2015.03.29
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鑑賞日:2015年3月22日(日)14:00開演入場料:¥3,000 (E席:3階11列) 【主催】神奈川県民ホール神奈川県民ホール開館40周年記念神奈川県民ホール・びわ湖ホール・iichiko総合文化センター・東京二期会・神奈川フィルハーモニー管弦楽団・京都市交響楽団 共同制作公演 ヴェルディ 歌劇「オテロ」(全4幕:イタリア語上演/字幕付〉会場:神奈川県民ホール大ホール スタッフ:指揮 :沼尻竜典 演出 :粟國 淳 装置・衣裳:アレッサンドロ・チャンマルーギ照明 :笠原俊幸音響 :小野隆浩合唱指揮 :佐藤宏舞台監督 :菅原多敢弘合唱 :びわ湖ホール声楽アンサンブル、二期会合唱団、児童合唱団赤い靴スタジオ管弦楽 :神奈川フィルハーモニー管弦楽団ゲスト・コンサートミストレス:鈴木裕子出演: オテロ :アントネッロ・パロンビ デズデモナ :安藤赴美子イアーゴ :堀内康雄 エミーリア :池田香織カッシオ :大槻孝志ロデリーゴ :与儀 巧ロドヴィーコ:デニス・ビシュニャモンターノ :青山 貴伝令 :的場正剛 感想: ここ数年恒例のびわ湖ホールとの共催オペラ公演は、今年から大分iichiko総合文化センターも加わり、ヴェルディ晩年のオペラ「オテロ」の公演があるとのことで、春の陽気の中、山下公園隣の神奈川県民ホールに出掛けた。 席はいつもの3階席後ろのため延々と階段を登り、3階ロビーにはドリンクサービスが設けられており(コーヒーが今も\200)、少しはサービス向上あり。 指揮者登場後、直ぐに幕が開き、嵐の場面で合唱が入る。紗幕の奥で大きな布を動かし荒波を表し、照明により嵐の海を表現。嵐が去り、舞台装置が動き、砦の場面へ瞬時に転換。 舞台中央に八角形の演台が置かれ、周囲の砦の前が倒れ橋となってオテロが登場する場面は鮮やか。その後の幕も周囲の装置が動き、大広間、寝室に場面が変わるが、物語はこの八角形の演台上で進められる。 合唱の場面が多く子供も加わるが、一人一人の立ち位置、動き、演技が付けられており、素晴らしい演出だった。 オーケストラは神奈川フィルで、いつもの通りの繊細な弦楽の演奏に加え、今回、オーボエ、ホルン、チェロ等新しい首席奏者がソロを奏で若々しい音楽を聞くことが出来た。 歌手ではタイトルロールのアントネッロ・パロンビは欧州でお得意の役らしく、大きな容姿で力強い歌声と演技で、正しく英雄オテロを演じ素晴らしい。デズデモナ役の安藤赴美子もPでも3階席まで響く美しい歌声で4幕「柳の歌」はデズデモナの苦悩を表現されていた。イアーゴ役の堀内康雄もいつもの安定した歌声であったが、善人振りが見えてしまい、もう少し悪役の方が良かったか。その他皆さんよく歌え、演技もよく、休憩3回はさみ4時間弱の長時間に関わらず、飽きること無くレベルの高いオペラを楽しむことが出来た。 来年はワーグナー「さまよえるオランダ人」とのことで、日本人歌手にこだわらず、今回のように欧州トップ歌手のオランダ人を期待して待つことに。End
2015.03.22
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鑑賞日:2015年3月21日(土)14:00開演入場料:¥5,130 (D席:4階4列) 【主催】新国立劇場新国立劇場2014/2015シーズンプッチーニ作曲オペラ「マノン・レスコー」(全4幕:イタリア語上演/字幕付〉会場:新国立劇場オペラパレス スタッフ:指 揮:ピエール・ジョルジョ・モランデ演 出:ジルベール・デフロ装置・衣裳:ウィリアム・オルランディ照 明:ロベルト・ヴェントゥーリ合 唱:新国立劇場合唱団管弦楽:東京交響楽団出演:マノン・レスコー:スヴェトラ・ヴァッシレヴァデ・グリュー:グスターヴォ・ポルタレスコー :ダリボール・イェニスジェロント :妻屋 秀和エドモンド :望月 哲也旅籠屋の主人:鹿野 由之舞踏教師 :羽山 晃生音楽家 :井坂 惠軍曹 :大塚 博章点灯夫 :松浦 健海軍司令官 :森口 賢二感想: 思い起こせば4年前に3月27日のチケットを確保していたが3月11日の東日本大震災でプレミエ公演直前に中止が決まった公演。当時の出演予定者により公演されるとのことで、チケット代は上がったものの確保し、花粉が舞う春晴れの下、初台へ向かった。 プログラムを購入したが、表紙、中の写真は、4年前の稽古風景のため、今回の出演者、演出がそのまま撮影されており唯一のメリットか。 演出は、ジルベール・デフロが演出したベルリン・ドイツ・オペラ公演の衣装、舞台装置をレンタルしており、時代設定は原作通り。 4幕ものだが、休憩は1回のみで1-2幕、3-4幕は連続して演奏される。舞台装置は、細部まで豪華とは行かないものの、1幕の旅館前、2幕マノン家の寝室、3幕港からの船出、4幕荒野の砂漠の風景と必要な部分は用意されている。衣装は白基調に対しマノンのみがオレンジ、黄色と鮮やかな服装で目立たせている。詳細は、新国立サイトで。 演奏の方は、イタリア指揮者に引っ張られ、緩急、減り張りが明確な演奏でドラマチックなプッチーニの音楽を表現していた。 歌手はタイトルロールのスヴェトラ・ヴァッシレヴァは歌声、容姿も素晴らしくマノンを表現できていたが、デ・グリュー役グスターヴォ・ポルタの方は高音までしっかり歌っていたものの、学生設定には容姿的に少々無理があり。 本作「マノン・レスコー」はプッチーニ3作目の初期出世作であり、同じ原作のマスネ「マノン」と比較すると、物語のつなぎ部分が無く、各場面切り取っての演奏になっており、より愛し合う2人の歌と演技が重要になるのでしょう。 新国立の鑑賞は5月に「ばらの騎士」を予定。「ばらの騎士」新国立再演も2011年4月で震災の影響で開催が危ぶまれたものの出演者一部変更で公演され、余震がある中、客席の期待含め素晴らしい演奏を聴くことが出来たことを思い出し、楽しみに待つことに。End
2015.03.21
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鑑賞日:2015年2月22日(日)10:00開演入場料:¥3,600 (スクリーン3・B列) 【制作・配給】松竹(株) METライブ・ビューイング2014-15レハール作曲歌劇「メリー・ウィドウ」(全3幕、英語上演/日本語字幕付)会場:名古屋ミッドランドスクエアシネマ(スクリーン3) (MET上演日:2015年1月17日)指揮:アンドリュー・デイヴィス演出:スーザン・ストローマン管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団 出演:ハンナ :ルネ・フレミングダニロ :ネイサン・ガンヴァランシエンヌ:ケリー・オハラカミーユ :アレック・シュレイダーツェータ男爵:トーマス・アレンニェグシュ :カーション・エルロッド感想: 前回の「セヴィリャの理髪師」の予告編から気になっていた「メリー・ウィドウ」を観に、名古屋駅前のミッドランドスクエアまで出掛けた。 前々日夜のネット予約時点で180席に対し既に空席は10席程度、少々首が疲れる2列目しか取れず、当日はチケット売切れの満席状態に。METライブ・ビューイングの知名度に驚き。 冒頭のディドナートの作品紹介から直ぐに序曲の演奏が始まる。オペレッタのためオケは小編成で、小気味良く有名な旋律が次々に演奏される。 序曲後半から幕が上がり、パリ公使館の舞踏会に。オペレッタのため台詞が多く、今回台詞、歌詞とも英語上演であり、スクリーンの字幕だけではニアンスが分かりづらい。 後ろの席の外国人は途中大笑いしており、英語のヒアリング能力があればもっと楽しめるのでしょう。 歌手陣の中では、MET常連のフレミングの歌声が圧巻。1幕「ハンナの登場」からブラーバと拍手の嵐、2幕冒頭の「ヴィリアの歌」は特に素晴らしく、これだけでも観に来た価値あり。 ヴァランシエンヌ役ケリー・オハラはブロードウェイ歌手と言うだけ合って、声量は少々物足りないものの、台詞、踊りは役にピッタリ。 何と言っても今回の目玉は第3幕「マキシム」の場面。2幕からの連続でハンナ亭の庭から踊り子たちが登場し、間奏曲で踊っている間に舞台左右、上部から装置が入り「マキシム」が瞬時に出現。踊り子たちも舞台上部から登場し、カンカンになる所は豪華でさすがMET。 全幕踊りの場面はスピーディーで素晴らしく、衣装も300着以上とのことで、ブロードウェイ演出家ならではでしょう。 3幕の大騒ぎを観ていると、ぜひ生で舞台を観てみたくなる公演だった。End
2015.02.22
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鑑賞日:2015年1月25日(日)10:00開演入場料:¥3,600 (スクリーン3・E列) 【制作・配給】松竹(株) METライブ・ビューイング2014-15ロッシーニ作曲歌劇「セヴィリャの理髪師」(全2幕、イタリア語上演/日本語字幕付)会場:名古屋ミッドランドスクエアシネマ (MET上演日:2014年11月22日)指揮:ミケーレ・マリオッティ演出:バートレット・シャー管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団 出演:ロジーナ:イザベル・レナードアルマヴィーヴァ伯爵:ローレンス・ブラウンリーフィガロ:クリストファー・モルトマンバルトロ:マウリツィオ・ムラーロドン・バジリオ:パータ・ブルチュラーゼ感想: 新シーズンのMETライブ・ビューイングはこれまで時間が合わず見そびれてしまったが(アンナ・ネトレプコのマクベス夫人を見られず残念)、本日時間が取れたので、いつもの名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマまで出掛けた。 演目はポピュラーなロッシーニ「セヴィリャの理髪師」で180席中約8割の入り、METライブ・ビューイングの知名度が上がって来たのでしょう。 冒頭デボラ・ヴォイトの作品紹介から直ぐに序曲の演奏が開始。オーケストラの演奏会でも良く取り上げられる序曲だが、軽快なテンポと丁重なソロ旋律で流石。これだけでも気分はウキウキしてくる。序曲後半から幕が上がり、酔っ払った召使が中央の白布を取り去るとバルトロが酒瓶を抱えて睡眠中で笑いを誘う。 時代設定も原作通りで違和感なくオーソドックスな演出。原作にはない黙役の召使に面白い演技を付けて飽きさせない。 2幕ものだがバルトロの屋敷の周囲、家の中の色々な部屋に次々と場面転換が必要で、扉や壁部分を黒子が動かして瞬時に転換し音楽が途切れない演出。その黒子も衣装をつけている徹底ぶり。第2幕で嵐の夜、伯爵とフィガロがハシゴを使って2階の窓から侵入する所も、屋外から瞬時に建物側に回転させ階段から部屋の入ってくる様子となる。 オケピットの周囲を囲むように舞台張り出しが設けられ、歌手はオーケストラの前、客席直前まで出て来て歌う所もあり。 歌手は歌声が素晴らしいのはもちろん、細かい顔の表情の演技まで気を配っている。ロジーナ役のイザベル・レナードは昨年のMETライブビューイングの「コジ」ドラベッラ、一昨年のSKF松本の「こどもと魔法」「スペインの時」主役と同様、今回も低音から高音まで素晴らしい歌声と役にピッタリの美貌でした。今シーズンMETでは「フィガロの結婚」ケルビーノも歌っており、ルックスも必要なライブビューイングには欠かせないメゾソプラノと言えるでしょう。 伯爵役ローレンス・ブラウンリーはロッシーニがお得意で、超絶技巧の装飾音符を完璧に歌い、フィガロ、バルトロ、バジリオも役に合った歌声と演技で最後まで楽しむことが出来た。 休憩時間では出演者へのインタビューに加え、次回作「メリー・ウィドウ」の練習風景が映され、ブロードウェイ・スターのケリー・オハラの歌とダンスが披露された。 ハンナ役ルネ・フレミングとの共演とのことで、時間が合えばぜひ観に行きたい。End
2015.01.25
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鑑賞日:2014年11月16日(日)14:00開演入場料:¥5,000 B席2階F列 【主催】日生劇場ニッセイ オペラ 2014オスバルト・ゴリホフ作曲オペラ「アイナダマール」 (日本初演)(全3景、スペイン語上演/日本語字幕付)会場:日生劇場<第1部>「魂の詩人ロルカとスペイン」オペラ「アイナダマール」へのプロローグ出演:長谷川初範、柴山秀明、三枝宏次台本:田尾下哲<第2部>オペラ「アイナダマール」指 揮:広上淳一演 出:粟國淳美 術:横田あつみ衣 装:アレッサンドロ・チャンマルーギ照 明:大島祐夫振 付:マリアーノ・ブランカッチョ管弦楽:読売日本交響楽団合 唱:C.ヴィレッジシンガーズギター:智詠、フェルミン・ケロルカホン:朱雀ハルナシンセサイザー:平塚洋子出演マルガリータ: 飯田みち代ヌリア: 馬原裕子ロルカ: 向野由美子ルイスアロンソ: 石塚隆充ホセトリバルディ:小田桐貴樹闘牛士: 鹿野浩史教 師: 佐藤望感想 『アルゼンチン人作曲家ゴリホフによるロルカを題材とした、世界で話題のオペラ、待望の日本初演!』との見出しに引かれ寒空の中、有楽町駅から日生劇場へ向かった。 オペラとしては1時間半の長さのため、オペラの前に詩人ロルカの伝記を書いている記者のモノローグとしてロルカの紹介とロルカ役の詩の朗読があり、ただの解説や紹介と異なり、違和感なく2部のオペラへの導入の手助けとなった。 作曲者のオスバルト・ゴリホフは初めて聞く名前で、1960年アルゼンチン生まれ、クラシックだけでなく映画音楽も作曲しグラミー賞を受賞しているとのこと。 本作品は20世紀のスペインの詩人ロルカを恋人マルガリータにより3時代(ロルカとの出会い、1936年ロルカ拉致、1968年のウルグアイ)設定で語らせる。 現代音楽と言っても、無調や変拍子ではなく、スペインのフラメンコとクラシック音楽を掛けあわせ、ミュージカル仕立てで演奏される。 楽器も通常のオーケストラにPAを通したギター、コンボやカホンの打楽器、シンセサイザーが加わる。サンダーマシーンもあり。 舞台装置は岩のような床部分が動き、上部から鋭角な大型造形が吊るされ、照明により見え方が変わっていく。 舞台には歌手だけではなく、神秘的な衣装をまとった合唱や上半身裸の踊り手がほぼ登場して抽象的な演出となり、踊りも場面に合わせフラメンコ、バレエ、現代舞踊の要素が取り入れられ、現代芸術の集約と言ったところ。 歌手は皆さん役に合った歌声で、ビブラートや音程ズレなどほとんど無く素晴らしい。マルガリータの飯田みち代、ヌリアの馬原裕子も美しい高音を響かせており、ズボン役のロルカの向野由美子は低音もよく聞こえた。 驚いたのはルイスアロンソの石塚隆充で、マイクを使ったフラメンコ歌手のまるでイスラムのアザーンのような叫び声に圧倒された。 指揮者の広上淳一は登場時の丸坊主の容姿に驚かされたが、オケだけでなく、ギターや歌手への的確な合図を出しており、オケも大きさで圧倒するのではなく、次々と変わる音楽を的確に表現し締まった演奏になっていた。 これまでの現代オペラとは異なる音楽であり、音楽芸術の幅広さを知ることが出来た貴重な公演だった。 End
2014.11.16
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鑑賞日:2014年10月19日(日)14:00開演入場料:¥3,888 D席4階 【主催】新国立劇場 新国立劇場2014/2015シーズン公演モーツァルト作曲歌劇「ドン・ジョヴァンニ」(全2幕、イタリア語上演/字幕付)会場:新国立劇場オペラ劇場スタッフ指 揮:ラルフ・ヴァイケルト演 出:グリシャ・アサガロフ美術・衣裳:ルイジ・ペーレゴ照 明:マーティン・ゲプハルト合 唱:新国立劇場合唱団管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団出 演:ドン・ジョヴァンニ:アドリアン・エレート騎士長:妻屋秀和レポレッロ:マルコ・ヴィンコドンナ・アンナ:カルメラ・レミージョドン・オッターヴィオ:パオロ・ファナーレドンナ・エルヴィーラ:アガ・ミコライマゼット:町 英和ツェルリーナ:鷲尾麻衣感 想: 既に何度も観た演目で合唱も歌ったことも有る「ドン・ジョヴァンニ」だが、新国立公演はまだ観ておらず、2週連続の台風が去って秋晴れの中、初台まで出掛けた。 今回の演出は2008年新国立プリミエで3シーズン目の再演。時代設定、舞台、衣装とも原作通りで違和感なし。「ドン・ジョヴァンニ」は2幕ものだが、幕中の場面数が多く場面転換の方法がポイントになるが、新国立の舞台装置を上手く使い、運河の船着場でゴンドラで登場の場面から、上から瞬時に壁が降りてきて室内になったり、階段が出て来て街路になったり、奥からメリーゴランドが出て来て村の広場の場面に瞬時に転換され、音楽が途中で途切れること無く続き、演出が上手い。 最後の有名な地獄落ちも、煙とともにテーブルごと舞台が下がり、正に落ちていく印象で、衣装含め全体的にオーソドックスな演出で、小細工等なく、安心して楽しむことが出来た。 音楽の方も、先月二期会「イドメネオ」とは異なり、レチタティーヴォはチェンバロのみ、オケピットも空きスペースがある編成でテンポよく進んでいく。バンダの舞台上での演奏もあり、モーツァルトらしい音楽を楽しむことが出来た。 歌手の方も、皆さん役にあった歌声と容姿で、音量的に飛び出す所もなく、重唱もバランスが良かった。 その結果、音量的には少な目になり、4階席ではかなり遠目の演奏に聞こえてしまう結果に。出来れば1,000人以下のホールであれば全てバランスが取れるのでしょうが、興行的には致し方なしでしょうか。 新国立の再演では、来年の「ばらの騎士」を楽しみに。 End
2014.10.19
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鑑賞日:2014年9月14日(日)13:00開演入場料:¥8,000 C席4階2列 【主催】(財)東京二期会平成26年度文化芸術振興費補助金ウィーン・オリジナル・プロダクション《アン・デア・ウィーン劇場との共同制作》東京二期会オペラ劇場 モーツァルト作曲歌劇「イドメネオ」(全3幕、イタリア語上演/日本語字幕付)会場:新国立劇場 オペラパレススタッフ指 揮:準・メルクル 演 出:ダミアーノ・ミキエレット 装 置:パオロ・ファンティン衣 裳:カルラ・テーティ照 明:アレクサンドロ・カルレッティ演出補:エレオノーラ・グラヴァグノラ合唱指揮:大島義彰演出助手:菊池裕美子舞台監督:村田健輔公演監督:曽我榮子合 唱:二期会合唱団管弦楽:東京交響楽団キャストイドメネオ:与儀 巧イダマンテ:山下牧子イリア :新垣有希子エレットラ:大隅智佳子アルバーチェ:大川信之大祭司 :羽山晃生声 :倉本晋児感想 大隅智佳子さんの歌声を聞きたさに、少し涼しくなった気候の中、初台まで出掛けた。 イドメネオはモーツァルト初期のオペラ作品で、ダ・ポンテ3部作や魔笛に比較すると上演数が少なく、生で観るのは初見。 オペラ・セリアであり、レチタティーヴォは今回チェンバロでなくピアノとチェロの伴奏が入る。ティンパニの横には、回転レバーの付いた黒い箱のウィンド・マシーンが置かれ、嵐の場面で使用されていた。 今回アン・デア・ウィーン劇場との共同制作であり、演出はダミアーノ・ミキエレットで、新国立の「コジ・ファン・トゥッテ」で舞台設定を現代のキャンプ場にしてしまった斬新な若手演出家。 序曲が始まると白い幕にイドメネオが少年のイダマンテにスーツを着させる様子が白黒の映像で映し出される。 序曲が終わり、幕が開くと、舞台奥に向かって高くなるよう傾斜が付けられた砂の床で、あちこちに靴が散乱している。プログラムを読むと、戦争で死んだ兵士の靴らしい。 砂の床の左右は白いカーテンで仕切られており、第2幕ではそのカーテンが開けられ、合唱が椅子を左右に並べ王宮の広間となる。 嵐の場面では、その椅子やスーツケースを砂の床に投げ入れ散乱させる。また、嵐や怪物の場面では、体中に赤い色を塗られたゾンビの様な男2人が表れ、イドメネオにその赤い血をこすり付ける。 第3幕の神の声では白い幕が降ろされ、雲の様な映像が映し出され、PAを通して神の声が歌われる。その幕が切って落とされフィナーレへ。 なかなか斬新な演出の割にはストーリーと違和感なく面白い。ただ当初からイリアのせり出したお腹が気になっていたが、予想通り第3幕フィナーレ後のバレエ音楽の中で出産となるのはあまりにも蛇足。イリアがイダマンテと心が通じあったのは第3幕なので、第1幕から妊娠していたとすると父親は誰? 客席からは白けた笑い声も起こった。 音楽の方は、準・メルクルの指揮でスムーズに進む。全体に重めなのは、会場の大きさに合わせたためか。 歌手の方は、イダマンテをズボン役でメゾの山下牧子が上手く歌えていた。イドメネオ役の与儀巧も存在感あり。 何と言ってもエレットラ役の大隅智佳子の歌声は圧倒的。ヒロインの恋敵役で、舞台上で下着姿から次々に衣装を変えたり、第3幕で斧を振り回したり、神の声の後は体中に泥を塗りつけ、金髪のカツラを投げ出し丸坊主となり息絶える演技は強烈。 更にそのビブラートのないしっかりとした歌声は、劇場中に響き渡り、客席からは「ブラーバ」の掛け声と本日一番の拍手が鳴り止まない状態に。 ぜひ来年の東京二期会オペラは、大隅智佳子さん主役でベッリーニ作品を聴きたい。 End
2014.09.14
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鑑賞日:2014年7月5日(土)15:00開演入場料:¥18,000 D席3階5列 【主催】Bunkamura/テレビ朝日/イープラス/AMATIBunkamura25周年記念フランス国立リヨン歌劇場公演オッフェンバック作曲歌劇「ホフマン物語」(全5幕、フランス語上演/日本語字幕付)会場:Bunkamuraオーチャードホール スタッフ台 本:ジュール・バルビエ/ミシェル・カレ演出・衣裳:ロラン・ペリー美 術:シャンタル・トマ照 明:ジョエル・アダンビデオ:チャールズ・カルコピーノ指 揮:大野和士「アントニア」合唱指揮:アラン・ウッドブリッジ合 唱:フランス国立リヨン歌劇場合唱団管弦楽:フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団 出演ホフマン:ジョン・オズボーンオランピア/アントニア/ジュリエッタ/ステッラ:パトリツィア・チョーフィリンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:ロラン・アルバロミューズ/ニクラウス:ミシェル・ロジエ アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ:シリル・デュボア ヘルマン/シュレーミル:クリストフ・ガイ ナタナエル/スパランツァーニ:カール・ガザロシアン アントニアの母の声:マリー・ゴートロ 感想: 大野和士氏指揮のリヨン歌劇場公演が有るとのことで、先行抽選でチケットを確保し、梅雨時期の蒸し暑い中、渋谷のオーチャードホールまで出掛けた。 階段を上っていつもの3階席最後列へ。人気公演なので客席は満席状態だったが、なぜか当方両サイドは空き席だったので、足を伸ばして鑑賞出来たのは幸い。 5分押しでチューニングの後、会場が暗転と成り、指揮者登場。いきなり幕が開き、暗闇の中スポットに照らし出された歌姫ステッラ?がハープに合わせアリアを歌う(「ドン・ジョヴンニ」ドンナ・アンナのアリアらしい)。 元々「ホフマン物語」はオッフェンバックの未完の遺作のため、編曲や演出の自由度が高いのでしょう。 演出は音楽に合わせ、舞台上の壁、置物、照明がどんどん変わっていく。舞台上は総じて暗く、左右、中央の一部だけが使われ、過去の記憶、夢物語の世界を感じる。 「オランピア」の幕(第2幕)では、オランピアが短い足でアリアに合わせて空中に浮かび上がる。と前に出て来た所で、TVや映画カメラに使うクレーンに乗っていた種明かしあり。 ワルツの場面では、自動で動く車輪のついた台車に乗っていたようでロボットのような動きを表現。 「アントニア」の幕(第3幕)では、ミラクル博士が登場すると、窓の外や舞台全体に渦巻きが回転。歌い出しにあわせ、舞台左右、階段の上等、場所を次々に変えて登場することで悪魔の様な不気味さを演出。 死んだ母の歌声では、歌に合わせてCGで作ったゴーストのような白黒の顔の映像を壁一面に映し歌わせる。 音楽を邪魔するものでなく、現在的な舞台技術も取り入れた洒落た演出で、より音楽を引き出すことに成功している。 オーケストラの方は重めの演奏に感じたが、「オランピア」幕の間奏曲は音が広がる華やかな演奏で如何にもフランスのオケの音を感じた。 強弱、テンポの変化が歌手ともピったりで、昨年観た東京二期会公演より大きな音楽を感じることが出来たのは指揮者の功績でしょう。 歌手の方は、一人四役のパトリツィア・チョーフィの歌唱力に驚き。オランピアはレッジェーロ、アントニアはリリコ、ジュリエッタはスピントの声質が求められる役で、昨年の東京二期会公演の様に各々別なソプラノが歌うことが多いのだが、ステッラが3人全て兼ね備えた女性との役割を明確にするため一人で全てを歌うにもかかわらず、各役に合わせた歌声で完璧に歌えてしますのは素晴らしい。 タイトルロールのジョン・オズボーンもテノールのよく通る声で、苦悩の歌声含めこちらも素晴らしい。 リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット役のロラン・アルバロは深いバリトンの歌声で、こちらもホール中に響く。歌としては大げさではなく淡々と歌っているのだが、音楽自身と演出により、ホフマンを悪魔のようにつきまとう恐怖感を良く表していた。 その他の役も皆さんよく歌われており、合唱も音量もあり部厚いハーモニーを聞かせていた。 以前オーチャードホールでオペラ公演を聞いた時は、あまり響かないホールとの印象だったが、今回はオケ、歌手ともよく聞こえてきて、やはり技量、力の差なのでしょう。 今回、所要があり、3幕までで退出し、4幕「ジュリエッタ」、5幕プロローグが聞けなかった。ホフマンの舟唄を聞けなかったのは誠に残念。 大野和士氏の素晴らしさ、本場の歌手の実力を実感できる公演だった。また欧州の歌劇場引き連れて来日して欲しい。End
2014.07.05
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鑑賞日:2014年6月27日(金)18:30開演入場料:¥14,000 B席4階6列 【主催】中部日本放送・名古屋市第37回 名古屋国際音楽祭スロヴェニア国立マリボール歌劇場公演ビゼー作曲歌劇「カルメン」(全4幕:フランス語上演/日本語字幕付)会場:愛知県芸術劇場大ホール指 揮:サイモン・ロビンソン演 出:フィリップ・アルロー管弦楽:マリボール歌劇場管弦楽団合 唱:マリボール歌劇場合唱団 名古屋少年少女合唱団バレエ:マリボール歌劇場バレエ団出演:カルメン :ヴェッセリーナ・カサロヴァドン・ホセ :エフゲニー・アキモフエスカミーリョ:ジャック・グレッグ・ベロボフラスキータ :ヴァレンティナ・チュデンメルセデス :アマンダ・ストヨヴィッチダンカイロ :ヤキ・ユルゲッツレメンダード :ドゥシャン・トポロヴェッツスニガ :ヴァレンティン・ビヴォヴァロフモラレス :セバスティヤン・チェロフィガ感 想: 希少な名古屋での海外歌劇場来日公演、カサロヴァがカルメンを歌うとのことで1年近く前のCBC先行発売でチケットを入手し、定時で会社を飛び出して、栄の愛知県芸術劇場へ出掛けた。 心配していたカサロヴァの変更は無かったが、指揮者が変更に。 数分押しで客電が消え、チューニング後、指揮者登場。幕が閉まったまま有名な序曲を演奏。音量は弱め目で金管に多少不安定な音が聞こえたが無難に演奏。マリボール歌劇場は大ホールで定員844人なのでこの定員2,500人の愛知県芸術劇場大ホールはかなり大きい入れ物なのでしょうが、歌が始まると歌手の音量、テンポに合わせ、邪魔すること無く盛り上げるのは劇場付きのオーケストラならでは。 幕が開くと第一幕タバコ工場前の広場になるが、舞台の上下左右を青色の四角い枠で囲み、その奥に窓が描かれた壁。さらに上部から複数の窓枠が吊り下げられ、照明が加わって立体感のある舞台。第二幕は、長机、椅子と上部から照明が吊り下げられ酒場に。第三幕は荷物が山積みされ、密輸業者のアジトになり、ミカエラのアリア「何も恐れるものはない」で舞台下手半分黒幕が引かれ、その後黒幕が開くと荷物が無くなり、山中の夜空の風景が映しだされる。第四幕は舞台上に5枚の板が半円形に置かれ、奥の壁とで闘牛場を表現。 METやスカラ座のような豪華舞台装置ではないが、最小限の装置、置物と照明で、各場面が立体的に表されていた。 衣装も各々の役柄に合ったもので、時代設定の置換えなど無く、オーソドックスな演出となっていた。 バレエも6人と少ないものの、第二幕や第四幕を盛り上げていた。 また所々あれ?と思わせる演出が入っており、第一幕女工同士の喧嘩の場面では、モラレスが音楽に合わせて体操のような動きをしたり、カルメンの取り調べではタイプライターを出して音楽に合わせ打音、第二幕の間奏曲ではフラスキータとメルセデスが足や脇の下をカミソリで手入れをしたり、第四幕エスカミーリョがジプシー達にに入場券を配る細かい演技など演出家の遊び心でしょう。 ただ第四幕最後ドン・ホセに刺されたカルメンが倒れる場面で、闘牛で傷ついたと思われるエスカミーリョも連れて来られカルメンと並んで寝かされる場面は、全く蛇足に感じた。 肝心の歌手は、タイトルロールのカサロヴァが深みのある歌声で、一般的な自由奔放なジプシー女では無く、恋愛を真剣に生きる女性を演じていた。 既に数年前からウィーン歌劇場始め多くの劇場で本役を歌って来たこともあり、本日も歌詞の一言ずつに気を配って歌い演技を付けていた。そのため総じてテンポは遅れ気味になるが、オケは音量含め歌声を浮き出させるように上手く合わせていた。 ハバネラのアリアの直前の合唱がやたら早く、急にスローテンポでカサロヴァが歌い始めたが、これはもう少し早く歌ってほしいとの指揮者のアピール?ひょっとして前指揮者はこの勝手なテンポに我慢ならず辞めたのかもと勘ぐってしまうほどのテンポだが、役柄に入り込んで歌い込むタイプのカサロヴァは譲らないのでしょうね。 ドン・ホセ役エフゲニー・アキモフは、容姿、年齢が少々合わないものの、日本人には無い高音が柔らかく響くテノールの歌声で役柄に合っていた。 その他の役も皆さんよく歌えており、合唱も男女20人ずつでもよく聞こえて来た。 また今回の来日公演で、第一幕の子供たちは演奏する劇場地域の少年少女合唱を使っており、本日は名古屋少年少女合唱団が出演し、歌だけでなく演技も良く出来て場面を盛り上げていた。 管弦楽、歌手、演出含め、全体的にレベルの高い演奏となっていた。 唯一残念なのは、平日の夜公演の影響もあり、客席に観客が少ないことで、半分程度か。当方座った4階席は3割程度で、後半の第三、四幕は、空席の前の列に移動し、前席のお客の頭を気にすること無く、横10席分を一人で足を伸ばして観ることが出来で楽だったが、名古屋には音大も複数あるので、格安でチケットを配って集客しても良いのでは。 また別な役でのカサロヴァの歌声を是非聞きたい。 End
2014.06.27
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鑑賞日:2014年6月21日(土)14:00開演入場料:¥3,150 D席2階1列 【主催】新国立劇場新国立劇場2013/2014シーズン池辺晋一郎 作曲オペラ「鹿鳴館」(全4幕、日本語上演/字幕付)会場:新国立劇場中劇場 スタッフ原 作:三島由紀夫指 揮:飯森範親演出・上演台本:鵜山 仁作 曲:池辺晋一郎美 術:島 次郎衣 裳:前田文子照 明:沢田祐二振 付:上田 遙合 唱:新国立劇場合唱団管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団出 演:影山悠敏伯爵:黒田 博 同夫人 朝子:大倉由紀枝大徳寺侯爵夫人 季子:手嶋眞佐子 その娘 顕子:高橋薫子清原永之輔:星野 淳 その息子 久雄:経種康彦→鈴木 准女中頭 草乃:山下牧子宮村陸軍大将夫人 則子:鵜木絵里坂崎男爵夫人 定子:池田香織飛田天骨:早坂直家感 想: 2010年初演はチケットを取りそびれてしまい、今シーズン再演で高橋薫子さんが娘役で出演とのことで、梅雨の中休み、真夏日の中、初台まで出掛けた。 キャパが小さい中劇場公演の影響もあり満席状態。時間となり客電が消え、オーケストラがチューニングを終わった所で幕前に舞台監督が登場し、清原久雄役の経種康彦が健康上の理由で出演できず、2,4日目公演同役の鈴木准が本日も出演との紹介が合った後、指揮者登場で序曲がはじまる。 幕が開くと、影山伯爵邸・庭内にある茶室の設定だが、舞台床、奥は黒で、左右に鏡の効果がある板状の壁。舞台中央には、2m程の高さに円形の回り舞台が設置された抽象的な演出。衣装もほとんど黒や灰色を基調にしており、黄色の菊の花が目立つ程度。第3、4幕の鹿鳴館の場面も同じで、円形舞台の周囲に菊の花が増え、椅子、テーブルが置かれた程度の差異しか無い。(新国立劇場の公演記録をご参照) 音楽は、旋律に合わせて歌詞を歌うのではなく、音楽の伴奏に合わせて、管弦楽とは異なった音階で台詞が歌われ、歌い終わると、違った音楽が大音量で流れ、歌舞伎やTVドラマのような具合。プログラムには作曲の創作時に、三島由紀夫の原作戯曲の台詞を変更すること無く、影響が出ない範囲で切り込んで進めたと書いており、舞台芝居の台詞を重要視しているのでしょう。 その中でも、バンダが軍楽やワルツを奏でる時にオケピットでは少々不気味な曲想の音楽を演奏し、登場人物の混乱した心情を表したり、独白の部分で歌声をかき消す程の大音量を入れたりとオペラの枠に捕らわれない曲作りなっており、池辺晋一郎氏ならでは。 一番気になったのはひょっとこのお面を被ってのブラックユーモア的な舞踏会場面で、当時の西洋文化つけ焼きの風刺でしょうが、音楽、演出とも違和感があり、その後のラストの盛り上がりにつながっていないように思われた。三島由紀夫作「鹿鳴館」の題名からから受ける印象では、もっと華やかな舞踏会の部分があってから風刺に変わっても良いのでは。 歌手は皆さんよく歌えていたが、音楽とのバランスで日本が聞こえにくい部分は字幕で補足。 日本の創作オペラは再演されることは希少であり、今後手直しされながら更に良い作品になって行くことを期待。 End
2014.06.22
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鑑賞日:2014年6月1日(日)15:00開演入場料:¥12,000 (F席:3階13列) 主催:日本経済新聞社、公益財団法人日本舞台芸術振興会ローマ歌劇場2014年日本公演ヴェルディ作曲歌劇「ナブッコ」(全4部 イタリア語/日本語字幕付)会場:NHKホール指 揮:リッカルド・ムーティ演出・美術:ジャン=ポール・スカルピッタ衣裳:マウリツィオ・ミレノッティ合唱指揮:ロベルト・ガッビアーニ管弦楽:ローマ歌劇場管弦楽団合 唱:ローマ歌劇場合唱団出演:ナブッコ :ルカ・サルシイズマエーレ:アントニオ・ポーリザッカーリア:ドミトリー・ベロセルスキーアビガイッレ:タチアナ・セルジャン →ラッファエッラ・アンジェレッティフェネーナ :ソニア・ガナッシ大祭司 :ルーカ・ダッラミーコアブダッロ :サヴェリオ・フィオーレアンナ :スィムゲ・ビュユックエデス感想: 巨匠リッカルド・ムーティ指揮によるローマ歌劇場来日公演があるとのことで、真夏日の中、渋谷の坂を上ってNHKホールまで出掛けた。今回イープラスの先行抽選発売で当たった最安値席のため、3階席最後列の天井桟敷席。 5分押しで場内がチューニングが行われ客席が暗くなったが、指揮者がなかなか登場せず、更に5分程待ってようやく万雷の拍手とともに指揮者登場。 赤い幕が上がり、その後ろの黒い幕が閉まったまま序曲を演奏。日本のオケでは聞けない、ダイナミックが大きい、メリハリのある演奏で拍手とブラボーの声が掛かる。 幕が開くと、「エルサレムの神殿」の場面だが黒のバックに天井から吊るされた柱と中央に砂山の台があるのみ。他の場面も背景に木々が影絵で出てくる程度で、舞台装置はほとんど無し。雷や偶像が崩れる場面も映像化はなく、音楽主体の演出となっている。 合唱は100人近くが登場し、衣装によってヘブライ人、バビロニア軍兵士に代わり分厚いハーモニーを聞かせていた。 3幕の有名な「行け、わが思いよ、金色の翼に乗って」も座ったり、支え合うような体勢で歌われ、全体的に抑えた音量で良かった。合唱に関しては初日のブログ評は芳しくなかったが、本日で3回目の公演であり、ある程度NHKホールを克服出来たのでしょう。 歌手では、タイトルロールのルカ・サルシ、ザッカーリア役ベロセルスキーは深い声で良かった。イズマエーレ役アントニオ・ポーリは明るいテノールの声で良かったが、出番が少なく、ヴェルディ作品はバリトン中心に書かれていることを再認識。 この作品で悪役として重要なアビガイッレは、当初予定のタチアナ・セルジャンの調子が思わしくなく、代役のラッファエッラ・アンジェレッティが出演。 2オクターブのアリアなど高い音まで歌えていたが、リリコ寄りのビブラートが多い軽めの声質で音程が定まらず、残念ながらアビガイッレには合わない印象。 もっと重いスピンドかドラマティコに近い声質のソプラノであれば、より緊張感がある演奏になったのでは。 ヴェルディの初期の作品は、そのまま演奏されると面白みを感じない演奏となってしまうことが多いが、強弱のダイナミズム、瞬時のテンポ変更等で3部から4部へ盛り上げるのはイタリア人巨匠の指揮者とイタリアの劇場公演ならでは。 出来ればオペラ公演に不向きなNHKホールでなく、現地のローマ歌劇場であればもっと素晴らしかったと想像できる公演だった。End
2014.06.01
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鑑賞日:2014年5月25日(日)10:00開演入場料:¥3,500 (スクリーン2・D列) 【制作・配給】松竹(株) METライブ・ビューイング2013-14モーツァルト作曲歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」(全2、イタリア語上演/日本語字幕付)会場:名古屋ミッドランドスクエアシネマ (MET上演日:2013年4月26日)指揮:ジェイムズ・レヴァイン演出:レスリー・ケーニッヒ管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団出演:フィオルディリージ:スザンナ・フィリップスドラベッラ:イザベル・レナードデスピーナ:ダニエル・ドゥ・ニースフェルランド:マシュー・ポレンザーニグリエルモ:ロディオン・ポゴソフドン・アルフォンソ:マウリツィオ・ムラーロ感想: 単身赴任先での日曜日、時間が取れたので、METライブ・ビューイングを観に真夏日近くの晴天の中、名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマまで出掛けた。 演目はモーツァルト&ダ・ポンテ3部作の最終作品「コジ・ファン・トゥッテ」。2幕ものだが演奏時間は長く、幕間のインタビュー他25分含んで4時間近い。 前々日にWebでチケット確保したが、その時点で既に「△」マークとなっており150席中、20席程度しか空席がない状況で驚き。当日は満席状態で、METライブ・ビューイングの知名度が上がって来た?モーツァルト作品のため?病気から復帰したレヴァインが指揮?4月名古屋二期会マスターコース修了オペラでのコジ公演の影響か。 冒頭ルネ・フレミングの作品紹介が入り直ぐに指揮者レヴァインが映り有名な序曲の演奏が開始。序曲中の演出は無いようで、軽快な演奏ともに指揮者中心にオケ演奏者が映しだされ、旋律を口ずさみながら指揮をするレヴァインのアップが多く入り、劇場客席からは観ることの出来ないライブ・ビューイングならではの映像で面白い。 今回の演出は時代や場所の読み替え等なく原作通りの設定。海が描かれている幕が開くと、舞台はブラインド形状の壁で前後に仕切られ、前方側で酒を飲みながらフェルランドとグリエルモが恋人姉妹の貞操をアルフォンソと賭けをする場面となるが、ブラインド越しに庭園で待つ姉妹が見える仕掛け。そのブラインドの壁が一気に上がり、瞬時に庭園の場面となる。 男二人の出兵を見送った後の姉妹の家の場面は、デスピーナが上手から家ごと引っ張って登場。 コジは2幕ものだが、その幕内で場面が4回ずつ変わる部分を、工夫した演出も加えながら瞬時に行い、音楽を途中で途切れさせない演出は素晴らしい。 演技に関しては立ち位置や細かい動作にも気が配られている。姉妹の役作りでは差を際立たせるため、1幕目で既にドラベッラがアルバニア人を気にしている素振りを入れる演出もよくあるが、今回は1幕目では特に見られず原作通りの演出となっている。 コジは6人の歌手がある程度均等に歌い、特に重唱がポイントと思うが、今回の6人はアリアも上手く、特に重唱がバランス良く歌えている。重唱はピッチ、リズムが各々正確で、強弱も一人が目立ってはダメでバランスに気を使って歌っていた。今回若手から売れ始めている段階の歌手が多く、声質も含めて選んだのでしょう。 容姿も素晴らしいドラベッラ役のイザベル・レナードは、昨年SKF松本の「こどもと魔法」「スペインの時」でも主役で聞いているが、今回も演技含め素敵でした。 休憩時間にMET総裁ピーター・ゲルブと指揮者レヴァインとのインタビューがあり、元気な様子を見ることが出来た。来シーズンのライブ・ビューイングでは、「フィガロの結婚」と「マイスタージンガー」を振るとのことで今から楽しみ。End
2014.05.25
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鑑賞日:2014年5月10日(土)15:00開演入場料:1階席¥3,000(11列目)【主催】(財)豊田市文化振興財団、豊田市・豊田市教育委員会碧南市芸術文化ホール連携招待公演オペラ・コミック抱腹絶倒!イタリア直送、気鋭のオペラ集団「アマルコルド」会場:豊田市コンサートホール出 演:オペラ集団≪アマルコルド≫ ソプラノ:スージー・ヘレナ・ジョルジャディス テノール:マッシミリアーノ・バルボリーニ バス・バリトン&アコーディオン:クラウディオ・マッティオーリ 役者:バルバラ・ザナージ ヴァイオリン:グラウコ・ベルターニン ピアノ:ジョルジョ・ファショーロ曲目:<第1部>プロローグ~ ニーノ・ロータ「フェリーニメドレー」 (アマルコルド~8 1/2~甘い生活~道化師)オペラの名曲たち~ ロッシーニ「セヴィリアの理髪師」より”俺は街の何でも屋” ヴェルディ「リゴレット」より”あれかこれか” プッチーニ「ラ・ボエーム」より”ムゼッタのワルツ” ヴェルディ「リゴレット」より”女心の歌” ドニゼッティ「愛の妙薬」より”昔パリスがしたように” ジョルダーノ「フェドーラ」より”愛さずにはいられないこの思い” ピアソラ「リベルタンゴ」 ヴェルディ「リゴレット」より”慕わしい人の名は” モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」より”カタログの歌” プッチーニ「トスカ」より”星は光りぬ” モンティ「チャールダーシュ」<第2部>アンデス民謡?アルゼンチンタンゴ?カンツォーネ~ カルディッロ「カタリ・カタリ」 デ・クルティス「泣かないお前」 ファルヴォ「君に告げてよ」 デ・クルティス「帰れソレントへ」やっぱりオペラ~ モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」より”お手をどうぞ” ヴェルディ「椿姫」より”乾杯の歌”エピローグ~ モリコーネ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」 <アンコール>カンツォーネ メドレー 恋する兵士たち フニクリ・フニクラ オー・ソーレ・ミーオ感 想: 無料音楽情報誌の「ぶらあぼ」にオペラ集団「アマルコルド」 抱腹絶倒!オペラ・コミック、“爆笑間違いなし”のステージとの記事を見つけ、その会場が単身赴任先の愛知県とのことで、事前にホールWebでチケットを入手し、気温が25℃を超え夏の気配を感じる晴天の中、地下鉄鶴舞線直通の名鉄豊田線で豊田市駅まで出掛けた。 初めて行くホールだが、駅に隣接した豊田市民センター参合館(1-2階:銀行など商業店舗、3-7階:図書館、8-9階:能楽堂、10-13階:コンサートホール)にあり1998年11月に開館した音楽専用ホール。 壁、舞台、客席は木製、舞台2階にはパイプオルガンが据えられている。1階席810席、2階席は1階席を取り囲むバルコニー194席で合計1004席。天井からシャンデリア形状の照明が吊り下がり豪華。残響もクラシック演奏に合わせて適度で、お金がかかっている。さすが裕福な豊田市。 ホール主催の演奏会であり、客席は満席。 時間となりホール内の照明が全て消されると、アマルコルドのメロディ舞台上でピアノとヴァイオリン、客席後ろからアコーディオンを引きながらマッティオーリが舞台へ。 舞台上には3m位ポールが立てられた黒い円形の台上で白い仮面を着けたザナージがフェリーニ映画のテーマに合わせて踊る。円形舞台はフェリーニ映画の道化師のサーカスや8 1/2のラストシーンを想い出させる。 照明が明るくなるとマッティオーリが赤いツナギを抜いてフィガロに早変わりし”俺は街の何でも屋”を歌い始め、ソプラノのジョルジャディスとテノールのバルボリーニと次々にイタリア・オペラの有名なアリアを歌い続ける。 3人とも歌声が素晴らしく、2階パイプオルガン横でジョルジャディスが歌う”慕わしい人の名は”は特に良かった。テノールのバルボリーニとバリトンのマッティオーリは歌はもちろんユーモアたっぷりの演技が素晴らしい。 オペラのアリアの間にはヴァイオリン、アコーディオン、ピアノによるピアソラ「リベルタンゴ」、モンティ「チャールダーシュ」もテンポ早く緊張感ある演奏で上手い。 休憩挟んで第2分は男性4人がポンチョとソンブレロでアンデス民謡風で登場。演奏が終わるとマネージャ役のザナージに契約書を破られてしまうコントで会場をかわす。 その後ベルターニンのヴァイオリン・ソロ演奏のはずが、歌手が次々登場しカンツォーネを歌ってしまう。”乾杯の歌”で盛り上がって、最後は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」のテーマで歌手たちが黒い円形舞台上のポールの紐に繋がれて、幕。 アンコールのカンツォーネ3曲メドレーでは、マッティオーリがルイ・アームストロング風に歌うオー・ソーレ・ミーオが面白い。 オペラ・アリアをただ歌うのでなく、フェリーニを挟んでコントや踊りを付け楽しく見せるのは初めての試み。楽しく最後まで聞かせるのは上級の歌手、演奏があってこそでしょう。 ただ今回のコンサートでは字幕や歌詞訳などは全くないので、イタリア語が判らないとコメディの本当の面白さがわからず、客席は抱腹絶倒!には至らず。 どうも来日公演は今回のみのようだが、日本で演奏するには言葉を理解できる何かしらの補助手段が必要でしょう。 料金分は十分に楽しめたコンサートだった。End
2014.05.10
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鑑賞日:2014年4月5日(土)15:00開演入場料:¥6,000 D席5階L1列【主催】東京・春・音楽祭実行委員会【共催】東京文化会館、NHK交響楽団東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2014-東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.5『ニーベルングの指環』序夜《ラインの黄金》(全1幕/ドイツ語上演・字幕映像付/演奏会形式)会場:東京文化会館大ホール指揮:マレク・ヤノフスキ管弦楽:NHK交響楽団音楽コーチ:トーマス・ラウスマン出 演:ヴォータン :エギルス・シリンスドンナー :ボアズ・ダニエルフロー :マリウス・ヴラド・ブドイウローゲ :アーノルド・ベズイエンアルベリヒ :トマス・コニエチュニーミーメ:ヴォルフガング・アブリンガー=シュペルハッケファーゾルト :フランク・ヴァン・ホーヴファーフナー :シム・インスンフリッカ :クラウディア・マーンケフライア :藤谷佳奈枝エルダ :エリーザベト・クールマンヴォークリンデ:小川里美ヴェルグンデ :秋本悠希フロースヒルデ:金子美香 感 想: 春恒例の東京・春・音楽祭のメイン公演「ニーベルングの指環/序夜《ラインの黄金》」を聴きに、花曇りの中桜花見客で賑わう上野まで出掛けた。 上野駅公園口の改札は長蛇の列で、ホールまで10分以上掛かり、ホールチケット受付のチケットレスQは1箇所しか無く更に10分程並ばされた。少々早めに出掛けたので、いつもの5階席まで階段を登り開演10分前には席に着けたが。 舞台は張り出しが出されいるが、オケの椅子で目一杯。今回ワーグナーの指定通りの楽器編成らしく、ハープが6台も。舞台背面のスクリーンの前に16席ほど一列に並んで譜面台と椅子が用意され何か?と気になったが、第3場で金細工加工の打楽器と判明し、すごい迫力。 スクリーニは場面に合わせ、第1場は水底、第2、4場は山頂に城、第3場は地下のマグマの様なイラストが映される。特に動画などは無し。 歌手はオケの前、指揮者の左右に登場し歌うことになる。但し巨人のファーゾルトとファーフナーは、オケの後ろ上手側の山台の上から歌い、神々との違いを明確にしていた。 智の神エルダは客席2階から登場し、鮮やかな青のドレスと素晴らしい歌声で違いを表していた。 とにかく迫力あるオーケストラの音量で圧倒される。演奏会形式の成果でしょう。 歌手は皆さん素晴らしい歌声で、オケの大音量にも負けない歌声。日本人歌手も全く引けを取らず、特にフライア役の藤谷佳奈枝がホール5階まで届く美しい歌声。ローゲ役アーノルド・ベズイエンはお得意の役らしく、歌声の中にも少々コミカルな表現があり上手い。 無料のプログラムは10周年記念となっており、過去の公演の記録も掲載され、これだけでも十分に今日聴きに来た価値がある。当初の小澤征爾が抜け、存続が危ぶまれた時期を超え10回も続けて来られたのは鈴木幸一氏他、関係者皆さんのお力でしょう。 指輪4部作のスタートとしては十分に音楽を楽しむことが出来た。来年のワルキューレから長時間になり、体力を整えて臨みたい。 End
2014.04.05
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鑑賞日:2014年3月9日(日)14:00開演入場料:¥1,000 全席自由(12列目中央) 【主催】小牧市、小牧市教育委員会クラシック鑑賞講座気軽にクラシック「ようこそ!オペラの世界へ」ベルコレージ作曲 オペラ「奥様女中」(全2部、イタリア語上演/字幕付)会場:小牧市東部市民センター講堂曲目:第1部 ヴィヴァルディ作曲 ヴァイオリン協奏曲集『和声と創意への試み』 第1集『四季』Op.8より第1番「春」 第2部 ベルコレージ作曲 オペラ「奥様女中」指揮、チェンバロ:宮松重紀コンサート・ミストレス:古井麻美子管弦楽:中部フィルハーモニー交響楽団出 演:セルピーナ:高橋薫子ウベルト :立花敏弘感 想: 高橋薫子さんがお得意の「奥様女中」のオペラを小牧市で聴けるとのことで、花粉が飛び交う中、地元合唱のお仲間の車に同上させて頂き、桃花台にある東部市民センター講堂まで出掛けた。 今回の公演は小牧市教育委員会主催で行われたクラシック鑑賞講座の第3回目に当たり、指揮者の宮松重紀さんの第1回オペラの紹介、第2回オペラ「奥様女中」の紹介講義を経ての、本番公演となっている。 「奥様女中」だけでは40分程度のため、第1部は同じ弦楽構成で演奏可能な同時代の作曲家ヴィヴァルディの有名な「四季」から「春」を演奏。 中部フィルのバイオリン8人、ビオラ3人、チェロ2人、コントラバス1人は全て女性。唯一男性の宮松重紀さんはチェンバロを演奏。 コンミス古井麻美子さんが引っ張って緊張感ある演奏。 演奏後の拍手で全員退場した後に、再び宮松重紀さんがマイクを持って登場し、ピアノを使いながら「奥様女中」作品と今回の演奏について紹介有り。 15分の休憩を挟んで第2部はオペラ「奥様女中」を1,2部連続して演奏。 東部市民センター講堂は600人の客席だが、講演会等行われる一般的な多目的なホールなのでオケピットは無く、舞台上手にベッド、椅子、帽子掛けのみのセットが置かれ歌手が演じ、下手にチェンバロを中心に弦楽が集まり演奏が行われる。 本オペラは歌手は2人で、もう1人ウベルトの下男ヴェスポーネがいるのだが、黙役(歌、台詞無し)のため今回は指揮、チェンバロ演奏の宮松重紀さんが演技の代わりにチェンバロでその感情を上手く表現していた。 また舞台上は反響板を設置したまま、その背面に字幕を映写。 照明も使わず、最小限の小道具だけで、全ては歌手とオケの演奏によってその作品を演奏した訳だが、歌手が上手いと思わずその世界に引き込まれその部屋や人物たちの様子が目に浮かんで来る。高橋薫子さんはお得意の役らしく、何時もの素晴らしい歌声に加え、役に合わせた若々しく演技で、子供の頃からウベルトに育てられて、女中なのに遠慮のない所を上手く演じている。立花敏弘さんの歌声、演技も良かった。 ベルコレージの音楽は繰り返しが多いが、その中で繰り返される歌詞の内容が少しずつ変わって来る所により面白さを感じられた。 中部フィルの弦楽もチェンバロを中心に、バランス、テンポ良く演奏された。 第1部のオペラ紹介で宮松重紀さんご自身で言っておられた通りの「エコオペラ」だったが、音楽は大変豊かで贅沢に感じられた。この演奏を1,000円で聴けるのは小牧市主催ならでは。唯一残念だったのは客席が200人程度と少なかったこと。来年もぜひ呼んで頂き、事前の宣伝をお願いしたい。 End
2014.03.09
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鑑賞日:2014年2月7日(金)18:30開演入場料:¥3,000 全自由席 1階7列 【主催】名古屋芸術創造センター芸術創造センター招へい公演高橋薫子ソプラノリサイタルin Nagoya~マリンバ、ピアノと共に~会場:名古屋芸術創造センター出演:ソプラノ 高橋薫子マリンバ 石田まり子ピアノ 天石佐保子曲目:<第1部>ゆりかご(平井康三郎) 高橋薫子/天石佐保子 悲しくなったときは(中田喜直) 〃むこうむこう(中田喜直) 〃七つの子(本居長世/岩河智子) 〃揺籃のうた(草川信/岩河智子) 〃ムゼッタのワルツ(プッチーニ/サミュー) 石田まり子「メリー・ウィドウ」よりヴィリアの歌(レハール) 高橋薫子/天石佐保子<第2部>ノクターン 第20番(ショパン)天石佐保子約束(ロッシーニ) 高橋薫子/天石佐保子フィレンチェの花売り娘(ロッシーニ) 〃赤ちゃんの歌(ロッシーニ) 〃UTA IV for marimba(山川あをい) 石田まり子クロリスへ(アーン) 高橋薫子/天石佐保子もし僕の詩に翼があったなら(アーン) 〃「ロメオとジュリエット」より私は夢に生きたい(グノー) 〃<アンコール>ウラネバ? 高橋薫子/天石佐保子アヴェ・マリア(グノー)高橋薫子/石田まり子浜辺の歌(成田為三) 高橋薫子/石田まり子/天石佐保子感 想: 昨年末に「フィデリオ」を聴いた名古屋芸術創造センター主催で高橋薫子のコンサートがあるとのことで、週末金曜日会社を定時即飛び出して地下鉄を乗り継いで開演15分前にホールに到着。 客席は2階を閉め、1階席(490席)のみの中、約7割程度の入り。首都圏でのソロコンサートはいつも満席なのだが、クラシック音楽辺境地の中部圏かつ、ウィークデー公演としては、まあまあの入りか。 MCでは「今回名古屋では初めてのコンサート、本ホールの招待で開けた」とのこと。2年前に今回出演の3人による名古屋の喫茶店でのミニコンサートを聞きに行ったが、正式なソロコンサートとしては初めてなのでしょう。 客席が暗くなり、ピアニスト天石佐保子と供に水色のドレスで登場。第1部は、日本の歌を中心に、中田喜直「悲しくなったときは」や岩河智子の編曲が入った「七つの子」、「揺籃のうた」など丁寧に歌われ、思わず引きこまれてしまう。石田まり子のマリンバによるラ・ボエーム「ムゼッタのワルツ」の演奏を挟んで、レハール「ヴィリアの歌」は日本語での歌唱だったが後半の凄い盛り上がりで、客席を圧倒。 MCでは「このホールは音響が結構デッドだと言われたけど、練習では問題なかったですよ」との言葉通りで、オペラでは2千~3千人のホールでオーケストラの中で歌っても響く歌声を持ってすれば、余裕を持って、更に曲調を十分に表現する歌声を聴くことが出来た。 お仲間の石田まり子さん、天石佐保子さんは地元愛知中心に活動されており、客席はその関係で来られた方が多そうで、高橋薫子を初聴の方が多い様。 休憩中前席のご夫婦は「どんどん歌声が響いて来て、きっと幾らでも歌えるのでしょうね」の会話が聞こえて来て、「正しくそうなんですよ」と心の中で相槌。 15分の休憩を挟んで第2部は、天石佐保子のピアノによるショパンから幕が開き、イタリアとフランスの音楽。鮮やかな赤のドレスに着替え、ロッシーニ、マリンバの倍音を活かした素敵な「UTA」の演奏を挟んで、アーンの歌曲、最後のグノー「ロメオとジュリエット」は、客席を回っての歌唱。当方の席からは横や後ろ向いて歌う所を聴くことになるが、後ろ向きでも正面と同じように聞こえてくるのは、発声が素晴らしい証拠。正にベルカント。 何度も鼓膜が共振し、ホール中の空気を震わせる歌声で、拍手とともに「ブラーバ」の掛け声が飛ぶ。 横の客席からは歌声の素晴らしさ、驚きからため息も聞こえる。 アンコールは、3曲。ピアノ、マリンバと伴に「浜辺の歌」で静かに幕。 終演後は嬉しいことに出演者がロビーに出て来てお見送り。当方は高橋薫子さんと2年振りに直接お話しが出来て大満足。 こんな素晴らしいコンサートで入場料が3,000円にも係わらず空席があるのは残念。芸術創造センターさん、来年も呼んで頂き、ぜひ大々的に宣伝して下さい。 今回の演奏会プログラムに挟んであるチラシにもあったが、3/8小牧市の東部市民センターで高橋薫子さん主演で歌劇「奥様女中」の公演あり。 小牧市主催のクラシック鑑賞講座の一貫として行われるため、プロオーケストラも入って入場料は何と1,000円! 客席を埋めるべく、周囲に宣伝中。追伸:深夜はソチ冬季オリンピックの開会式のTV中継を見た。五輪の一つが開かなかったハプニング有ったものの、ロシアの歴史紹介ショーでイーゴリ公「ダッタン人の踊り」の合唱が流れ、男声合唱のアカペラ生演奏で国歌が歌われ、今でもロシア国民の中に合唱が息づいていることを感じた。End
2014.02.07
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鑑賞日:2014年2月2日(日)15:00開演入場料:¥4,000 E席4階L2 【主催】日本オペラ振興会藤原歌劇団公演ロッシーニ作曲歌劇「オリィ伯爵」(全2幕、フランス語上演/字幕付き)会場:東京文化会館大ホール指 揮 :デニス・ヴラセンコ公演監督:岡山 廣幸演 出 :松本 重孝合唱指揮:安部 克彦合 唱 :藤原歌劇団合唱部管弦楽 :東京フィルハーモニー交響楽団 出演:オリィ伯爵:アントニーノ・シラクーザアデル :光岡 暁恵 伯爵教育係:彭 康亮イゾリエ :松浦 麗 ランボー :森口 賢二 ラゴンド :吉田 郁恵 アリス :宮本 彩音 騎 士 :岡坂 弘毅感 想: ロッシーニ作品で公演希少の「オリィ伯爵」が藤原歌劇団で演奏されるとのことで、タイトルロールのシラクーザの歌声を楽しみに小雨模様の冬空の中、上野の東京文化会館まで出掛けた。 初めて聞く作品なので本日は早めに会場に入り、事前の作品解説と購入したプログラムを読んで備える(同様の人が多いのか、プログラムは休憩時に売り切れ)。 ロッシーニなのにフランス語なのは、32歳でパリのイタリア座の音楽監督に就任した際パリ公演を目的に作ったためで、プログラムによれば、国王即位記念のため数度しか演奏されなかった「ランスへの旅」から半分以上の旋律を持って来て、作り替えられたのが本作品。 ストーリーは好色貴族のオリー伯爵が、十字軍で男性が出征中のフォルムティエ城の伯爵夫人アデルを狙って、女巡礼団に扮して忍び込んだ所、小姓イゾリエと夫人とにやり込められ、裏口から退散し、十字軍の騎士達が凱旋しフィナーレと少々不道徳的な内容。(詳細はウィキペディアで) 演出は、作品に合わせた時代設定であるも、立ち木などは絵で書かれメルヘン的になっているが、特に違和感なし。 何と言ってもロッシーニの華やかな音楽が、序曲、アリア、重唱、合唱で次々に演奏され、楽しい気分に。テンポよく音楽が進められたのは、若い指揮者の功績でしょう。 歌手陣は、タイトルロールのシラクーザが今回もよく通る、美しい響きの歌声で、これが聞けただけでも来た甲斐あり。今回の好色な伯爵役も品があってピッタリの演技。また所々日本語の歌詞を入れ(昨年流行語大賞の「おもてなし」もあり)会場を和ませていた。 日本の歌手陣もアデル役の光岡暁恵、ランボー役の森口賢二などベルカントの装飾音符沢山の難曲を上手く歌えており、重唱も良かった。特に1幕フィナーレの「まさかのこと!」の7重唱はランスの旅の14重唱を持って来ており、大盛り上がりとなった。 小姓イゾリエはオリィ伯爵の家来なのに刃向かったり、女巡礼団が入場前に男声合唱で歌ったり、オリィ伯爵の教育係が悪巧みの女巡礼団に入っていたり等、突っ込みどころ満載の適当なストーリーだけれども、何となく最後は丸く治まり?それなりに納得させられてしまうのは、ロッシーニの音楽が素晴らしいからでしょう。 これからも上演機会の少ないロッシーニ作品が演奏されることを期待したい。End
2014.02.02
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鑑賞日:2014年1月19日(日)14:00開演入場料:¥3,780 D席4階 【主催】新国立劇場 新国立劇場2013/2014シーズン公演ビゼー作曲 歌劇「カルメン」 (全3幕、フランス語上演/字幕付) 会場:新国立劇場オペラ劇場指 揮:アイナルス・ルビキス演 出:鵜山 仁美 術:島 次郎衣 裳:緒方規矩子照 明:沢田祐二振 付:石井 潤合 唱:新国立劇場合唱団、TOKYO FM 少年合唱団ダンサー:新国立劇場バレエ団管弦楽:東京交響楽団出 演:カルメン :ケテワン・ケモクリーゼドン・ホセ :ガストン・リベロエスカミーリョ:ドミトリー・ウリアノフミカエラ :浜田理恵スニガ :妻屋秀和モラレス :桝 貴志ダンカイロ :谷 友博レメンダード:大野光彦フラスキータ:平井香織メルセデス :清水華澄感 想: 既に何度も観た演目で合唱も歌ったことも有る「カルメン」だが、新国立の新春公演で、タイトルロールが容姿も揃った若手注目株とのことで寒空の中、初台まで出掛けた。 今回の演出は2007年新国立プリミエで3シーズン目の再演。時代設定、舞台、衣装とも原作通りで違和感なし。 指揮者登場の後、有名な序曲。少々テンポが遅めに感じたが、ダイナミクスの大きな丁寧な演奏。2、3幕と進むとテンポも上がり、歌手、合唱とのバランスもよく、何時もの東京交響楽団とは思えない演奏で若手指揮者の功績でしょう。 主役3人は歌声、演技とも素晴らしい。ドン・ホセ役ガストン・リベロはよく通るテノールの声で、弱々しい演技も役に合っている。エスカミーリョ役ドミトリー・ウリアノフは大男で、安定した歌声でこちらも役に合っている。 何と言ってもタイトルロールのケテワン・ケモクリーゼが、その妖艶な容姿と演技、そして表現豊かなメゾソプラノの歌声で如何にも男達を虜にしてしまう印象で、今回が初めての役とは思えない出来。 2幕最初のジプシーの歌では、無理をして素人踊りを見せられこともあるが、今回踊りは周りのダンサーに任せ、前半椅子に座ってじっくり歌い、後半少し踊りを入れる所は良い演出。 日本人歌手の皆さんも良く歌えており安心して聞けた。その中では、メルセデス役の清水華澄が存在感のある歌声で良かった。 今回4階席の端で心配したが、前に乗り出す人もなく問題なく観ることが出来た。またフライングのブラボーや拍手もなく、オペラに集中して聴くことが出来た。これが続くことを願いたい。End
2014.01.19
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鑑賞日:2014年1月12日(日)10:00開演入場料:¥3,500 (スクリーン4・E列) 【制作・配給】松竹(株) METライブ・ビューイング2013-14ヴェルディ作曲喜歌劇「ファルスタッフ」(全3幕、イタリア語上演/日本語字幕付)会場:名古屋ミッドランドスクエアシネマ (MET上演日:2013年12月14日)指揮:ジェイムズ・レヴァイン演出:ロバート・カーセン美術:ポール・スタインバーグ衣装:ブリギッタ・ライフェンシュトゥール照明:ロバート・カーセン& ピーター・ヴァン・プレート管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団出演:ファルスタッフ:アンブロージョ・マエストリクイックリー夫人:ステファニー・ブライズアリーチェ:アンジェラ・ミードナンネッタ:リゼット・オロペーサメグ・ペイジ:ジェニファー・ジョンソン・キャーノフェントン:パオロ・ファナーレフォード:フランコ・ヴァッサッロ感想: 単身赴任先での日曜日、時間が取れたので、METライブ・ビューイングを観に冬晴れの中、名古屋駅前のミッドランドスクエアシネマまで出掛けた。 演目はヴェルディの遺作「ファルスタッフ」。ヴェルディ作品の中で唯一死人が出て来ない作品とのこと。 開演前に、MET総裁ピーター・ゲルブによる指揮者レヴァインと演出家ロバート・カーセンとのインタビューがあり、事前にプログラムを見るまでも無く本作品にスムーズに入って行ける。 病気療養のため昨シーズンをキャンセルした指揮者レヴァインのMET復帰公演でもあり、車椅子を回転させ客席を向いたところで既にスタンディングオベーション。 レヴァイン復帰に合わせ指揮台は車椅子を下から上げ、自動で回転もするような装置を設置しており、この辺りもさすがMET。 今回の演出は、1950年代に時代設定され、舞台装置、衣装、小道具が合わされている。また原作の場面設定を変更しており、2幕2場「フォード邸のサロン」はシステムキッチンとなり、隠れているファルスタッフを探し出す際にキッチン戸棚から料理器具や調味料をドンドンと放り出す演出となり、3幕1場「ガーター亭の外」は馬小屋の中で、生きている馬が干し草を食べている横で、川に放り込まれようやく抜けだしたファルスタッフが干し草の中で起き上がる場面となり、MET客席から笑いを誘う。 3幕最後のウィンザー公園での騒動も全員が角をかぶり、照明を使ってその影が猟師の亡霊に見せたり、フィナーレの婚約パーティーでの衣装、場面の早替え等、最後まで違和感なく観ることが出来、さすがロバート・カーセンの演出。 3幕ものだが、1、2幕は連続で上演され、各場の場面転換もスムーズ。昨年からのロイヤル、スカラ座(昨年日本公演もあり)との共同製作で熟れているのでしょう。 タイトルロールのアンブロージョ・マエストリは、幕間のインタビューにもあったようにその容姿と歌声から今回で202回目の本役出演であり、円熟した演技や歌い方でファルスタッフの人物そのもの様に思える。 クイックリー夫人役のステファニー・ブライズもお得意の役で男声レベルの低音も安定しており、アリーチェ役アンジェラ・ミード、ナンネッタ役リゼット・オロペーサ、メグ・ペイジ役ジェニファー・ジョンソン・キャーノは若手だがMETのオーディションや育成プログラム出身で主役級の歌声と演技で、ベテランと若手が上手く噛み合って舞台上のエネルギーを生んでいるところがMETの歴史なのでしょう。 1幕2場フィナーレの10重唱が素晴らしい出来。ナンネッタとフェントンのアリアは若々しい恋心を歌い、ヴェルディの若者達への希望の賛歌か。 2幕1場でファルスタッフが「名誉で何が出来る?折れた腕や足も治せない。」と歌う所は、晩年政治的活動から遠ざかり、農業経営をしていたヴェルディの心境なのでしょう。 作品も演奏も正に円熟の出来で、心豊かになる新年にピッタリの音楽を楽しむことが出来た。End
2014.01.12
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鑑賞日:2013年12月28日(土)14:00開演入場料:¥4,500 自由席(2階3列) 【主催】NCO合唱団、 (財)名古屋市文化振興事業団芸術創造センター名古屋市芸術創造センター創造活動サポート公演第2回NCO公演ベートーヴェン作曲歌劇「フィデリオ」(全2幕、ドイツ語/日本語字幕付)会場:名古屋市芸術創造センター指 揮:山田信芳演 出:池山奈都子管弦楽:フィルハーモニカー・ウィーン・名古屋合 唱:NCO合唱団出演:ドン・フェルナンド:能勢健司ドン・ピツァロ:中原憲フロレスタン :水野秀樹レオノーレ(フィデリオ):百々あずさロッコ :堀内紀長マルツェリーネ:児玉弘美ヤキーノ :大久保亮感 想: 名古屋二期会のオペラ公演に都合で行けず、残念に思っていた所、年末に「フェデリオ」の公演があるとのことで、みぞれが降る中、新栄駅降りて直ぐの名古屋市芸術創造センターへ出掛けた。 センター向かいのとんかつ店(マ メゾン 東桜店)で腹ごしらえしたため、開演10分前にホール到着。640席のホールだが、張り出し舞台のため客席は550席程度。1階席はほぼ満席のため2階へ3列の中央付近に座れた。 今回ホール形式の演奏とのことで、幕は無く張り出しの舞台にオケが乗り、奥半分1m程高くなった舞台で演じられる。 開演時間となり客席が暗転、オケ入場、指揮者入場で有名な序曲が始まる。フィルハーモニカー・ウィーン・名古屋は中部地区のアマチュア演奏家が2011年設立した管弦楽団。ホルンやヴァイオリンの音程が少々危ない所もあるも、フォルテの部分はベートーヴェンらしい音楽を聴くことが出来た。 演出は物干し棒やアングルで組んだ牢屋など最低限だが、照明やオケの前まで広く舞台を使いを各場面を表現出来ていた。 歌はすべてドイツ語で舞台上の字幕で表示、また台詞は日本語であり判りやすくなっている。 歌手は、タイトルロールの百々あずさがよく響く歌声でさすが藤原歌劇団。地元のドン・フェルナンド役の能勢健司、ロッコ役の堀内紀長も良かった。 合唱の出番は少ないが、兵士、囚人、民衆を演じ、賛助も入ってバランス良く聞こえた。 名古屋では希少なオペラ公演であり、今回は名古屋市芸術創造センターの協力を得ての公演だったようであり、ぜひ続けてほしい。 来年はシュトラウス「こうもり」当たりを聞きたい。End
2013.12.28
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鑑賞日:2013年11月03日(日)10:00開演入場料:¥3,500 F列【制作・配給】松竹(株)METライブ・ビューイング2013-14チャイコフスキー作曲 歌劇「エフゲニー・オネーギン」(全3幕、ロシア語上演/日本語字幕付)会場:名古屋ミッドランドスクエアシネマ(MET上演日:2013年10月5日)指揮:ワレリー・ゲルギエフ演出:デボラ・ワーナーディレクション:フィオナ・ショウ美術:トム・パイ衣装:クロエ・オボレンスキー照明:ジャン・カルマン映像:フィン・ロス、イアン・ウィリアム・キャロウェイ振付:キム・ブランドストラップ管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団バレエ:メトロポリタン歌劇場バレエ団出演:エフゲニー・オネーギン:マリウシュ・クヴィエチェンタチヤーナ:アンナ・ネトレプコレンスキー:ピョートル・ベチャワオリガ :オクサナ・ヴォルコヴァレヴァイン グレーミン:アレクセイ・タノヴィッツキー感想: 最近WOWWOWでも映像が流れるようになり知名度も上がってきたMETライブ・ビューイングの2013-14シーズンの開幕はチャイコの「エフゲニー・オネーギン」、ネトレプコが出演とのことで名古屋駅前のミッドランドスクエアまで出掛けた。 休憩が入って4時間の長丁場のため、食べ物、飲み物を買い込んで客席へ。客席は中央付近は満席で全体で7割程度の入り。 今回演出のデボラ・ワーナーは英国演劇界からグラインドボーン等でオペラ演出を多数行い大英帝国勲章受勲し今回MET初演出。原作通りの時代設定で入り込みやすい。第1幕では奥の部屋をガラス越しに見せたり、第2幕野外の決闘の場面等での照明の使い方が演劇らしい。 幕間の映像で、通常オペラでは見ることの出来ない緊迫した中での手際の良い舞台設定変更の様子が見られるのもライブ・ビューイングならでは。 健康上の理由でワーナー自身はMETへ表れず、代わりに女優のフィオナ・ショウが詳細な演技指導を行ったとのこと。 ライブ・ビューイングの大画面で観ていると、群衆(合唱団)の一人ひとりまで詳細な動きが付いており演劇舞台を観ているよう。 さらに主役歌手たちは、演技は勿論のこと、場面に合わせ表情の細部まで付けられており、メイキャップも通常のオペラ舞台ほど誇張されずまるで映画やTVドラマの様に。 歌手ではネトレプコが昨年「愛の妙薬」の肉食系アディーナとは打って変わって、第1幕の田舎地主の純粋な16歳娘と第3幕の公爵夫人の成熟した大人の女性を見事に演じ分けていた。全体的に内に秘めた想いを歌う場面が多く、第1幕の”手紙の場”長時間アリアや第3幕の二重唱はその心情がそのまま歌われているようで素晴らし。 幕間のインタビューでヴェルディアリア集CDを出し、今後はこれまでの娘役は余り歌わないとのことで、年齢相応のレパートリーに拡げて行くのでしょう。 タイトルロールのマリウシュ・クヴィエチェン、レンスキー役ピョートル・ベチャワもMET以外で本作に出演しており、容姿、歌声が役にピッタリ。 管弦楽もゲルギエフの指揮に合わせ、チャイコの叙情的な旋律をドラマチックに演奏するが、けして緩みすぎること無く、歌手と一体となって終始音楽が流れていたのは指揮者の功績でしょう。 ライブ・ビューイングでの歌手たちは、歌声や容姿は当然とし、映画・舞台俳優並みの演技、表情表現まで年々レベルアップして来ており、詳細な演出含めこれまでのオペラとは違った進化を感じた。エンディングの音楽が途切れる所でのラブシーンは正しく映画そのもの。 今シーズンこの後9作が公開予定で、カウフマンがタイトルロールの「ウェルテル」、グリゴーロ他若手歌手でゼフィレッリ演出「ラ・ボエーム」、復帰したレヴァインが振る若手歌手主体「コジ・ファン・トウッテ」など楽しみな公演があり、時間が合えば見に行きたい。End
2013.11.03
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鑑賞日:2013年9月15日(日)13:00開演入場料:¥13,000 F席3階【主催】(財)日本舞台芸術振興会ミラノ・スカラ座2013年来日公演ジュゼッペ・ヴェルディ作曲 歌劇「リゴレット」(全3幕、イタリア語上演/日本語字幕付)会場:NHKホール指揮:グスターボ・ドゥダメル合唱監督:ブルーノ・カゾーニ演出:ジルベール・デフロ再演演出:ロレンツァ・カンティーニ美術:エツィオ・フリジェリオ衣裳:フランカ・スクァルチャピーノ管弦楽:ミラノ・スカラ座管弦楽団合唱:ミラノ・スカラ座合唱団バレエ:ミラノ・スカラ座バレエ団、東京バレエ学校出演:マントヴァ公爵:ジョルジョ・ベッルージリゴレット :レオ・ヌッチジルダ :マリア・アレハンドレススパラフチーレ:アレクサンドル・ツィムバリュクマッダレーナ :ケテワン・ケモクリーゼジョヴァンナ :ジョヴァンナ・ランツァモンテローネ :エルネスト・パナリエッロマルッロ :セルジョ・ヴィターレボルサ :ニコラ・パミーオチェプラーノ伯爵:アンドレア・マストローニチェプラーノ伯爵夫人:エヴィス・ムーラ廷吏 :ヴァレリー・トゥルマノフ小姓 :ロザンナ・サヴォイア感想: スカラ座のヴェルディ来日公演で、しかもタイトルロールで有名なレオ・ヌッチ出演とのことで、どうせ当たらないだろうと申し込んだ「リゴレット」F席先行抽選(しかも唯一の休日指定)に幸運にも当たり、台風18号が近づく雨模様の中、渋谷のNHKホールまで出掛けた。 演出は原作通りの舞台設定。場面毎に専用のセットが組まれ、公爵の館はステンドグラスやシャンデリアが豪華。床面まで全て場面に合わせて作られている。 また3幕殺し屋の家では、照明による稲妻に加え、実際に舞台上に雨まで降らせ、流石スカラ座。1幕の舞踏会場面でのバレエも華やかでバンダ演奏のオケも入って豪華。 ネット上に本日以前の公演状況が掲載され、オケと歌手がずれているとか、合唱がバラバラ等の感想が出ており、一昨年のバイエルン国立歌劇場の来日公演でもあったNHKホールの音響問題かと心配したが、本日はほとんど感じられず、4回目とのことで、克服したのでしょう。 オケもダイナミクスが大きな演奏でテンポの揺れも歌手と合っており、今売り出し中の指揮者だけのことはある。 歌手陣はデッドで巨大なNHKホールにも関わらず、全ての音が3階最後列まで届いて来る。マントヴァ公爵役のジョルジョ・ベッルージは「女心の歌」を最高音を伸ばし、拍手喝采。ジルダ役のマリア・アレハンドレスはコロラトゥーラのソプラノで、転がるような美しい響きで鼓膜が震えた。 何と言ってもタイトルロールのレオ・ヌッチは、そのヨタヨタした足取りや手先の仕草まで正しく年老いた道化の動き。しかし歌声はしっかりと響き、とても71歳とは思えない。やはり2幕有名なアリア「悪魔め、鬼め」では、その感情こもった歌声にブラボーと拍手が鳴り止まず。 ネット情報の通り、2幕終了のカーテンコールで、ヌッチとアレハンドレスが登場し、指揮者へ合図すると、2幕最後の二重唱、「そうだ、復讐だ!」を歌い始める。客席の一部からテンポに合わせ手拍子が入ってしまい、やめて欲しいなと思っていると「シー」の声がそこら中ではいり、再度、ジルダの公爵への愛の歌とリゴレットの復讐の思いがこもった二重唱を堪能することが出来た。 圧巻は3幕の四重唱「美しい恋の乙女よ」。全く異なる歌詞を絶妙のバランスでそれぞれの思いがはっきりと伝わる歌声で聞こえて来て音楽は最高潮へ。 本日の公演が東京でのオペラ公演の最終日にあたっており、カーテンコールのあと幕が開き、オケや舞台スタッフまで登場し、「SAYONARA」、「See You Again!」の電飾のパネルが運び込まれる。舞台上にはNBSのさよならの看板が登場し、いつまでも鳴り止まない拍手喝采となった。 演出、舞台装置、オケ、歌手、合唱、バレエ全てにおいてレベルの高い公演でスカラ座の来日引っ越し公演ならでは。 なお10月28日0時(27日深夜)からNHK-BSプレミアムで9/9公演の録画放送があり。一部本日の出演者と違っており、楽しみ。End
2013.09.15
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鑑賞日:2013年9月14日(土)14:00開演入場料:¥3,000 D席3階【主催】神奈川県民ホール、(財)びわ湖ホール、 (財)東京二期会、(財)神奈川フィルハーモニー管弦楽団、 (財)日本センチュリー交響楽団共同制作オペラシリーズ神奈川国際芸術フェスティバル作曲:ワーグナー楽劇「ワルキューレ」/「ニーベルングの指環」第一日(全3幕、ドイツ語上演/日本語字幕付)会場:神奈川県民ホール 大ホール指揮:沼尻竜典演出・装置:ジョエル・ローウェルス衣裳:小栗菜代子照明:喜多村貴音響:小野隆浩(びわ湖ホール)舞台監督:八木清市管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団 &日本センチュリー交響楽団による合同オーケストラ出 演:ジークムント:福井 敬フンディング:斉木健詞ヴォータン :青山貴敬ジークリンデ:大村博美ブリュンヒルデ:横山恵子フリッカ :小山由美ゲルヒルデ :田崎尚美オルトリンデ:江口順子ワルトラウテ:井坂 惠シュヴェルトライテ:金子美香ヘルムヴィーゲ:平井香織ジークルーネ:増田弥生グリムゲルデ:杣友惠子ロスワイセ :平舘直子感 想: 神奈川県民ホールが今年12月から来年9月まで耐震補強、外壁改修、屋上防水等の改修工事のため長期休館となる関係で来年3月の神奈川県民ホールとびわ湖ホール主催のオペラが半年早めての開催となり、ワーグナー生誕200年に因んだ「ワルキューレ」が演目とのことで、山下公園沿いのホールまで出掛けた。 今回の演出は特に現代に持ってきたりせず、原作通りの古代ゲルマン、神々の時代の設定。 プログラムの演出家のインタビューでは「ワルキューレ」は指輪4部作の2番目となることから、観客に分かりやすくするためジークムントやジークリンデの回想場面では歌詞に合わせ舞台奥に子供が登場、焼けた家等映画のカットように表したとのことだが、短すぎてかえって目障りな印象。歌詞だけ十分では。 1幕後半にフリッカを登場させ、ジークムントとジークリンデのやりとりを観ているとの設定を加えたとのことだが、元々神々なので2幕で登場し1幕の内容でヴォータンを攻めても違和感はなく、蛇足と思えてしまう。 また、神の剣ノートングが日本刀なのは意味不明。 まあ指輪物語は元々矛盾だらけのストーリーなので、細かい演出はどうでも良く、音楽が重要。 管弦楽は、管楽器に迫力不足を感じるものの、弦楽が美しく流石、神奈川フィル。ワーグナー楽劇の弦楽の美しさを認識できた。 歌手陣は東京二期会ベテランが多く安定しているものの、ヘルデン・テノール、ワーグナー歌手とは言いがたい。「ワルキューレの騎行」も迫力が足らない。歌手とのバランスと言う面では、抑えた管楽器で歌が消されること無く良かったか。その中でも、フンディング役の斉木健詞が力強いバリトンの声で良かった。 長いオペラであり、所要のため本日は2幕で退席。 日本人歌手のみによるワーグナー楽劇だったが、少々迫力不足も破綻する部分なくバランスが取れた演奏を楽しむことが出来のは、指揮者の沼尻竜典の功績もあるでしょう。 次回の共同制作はまだ公表はなく、改修後か。 それから神奈川県民ホールの改修では、バリアフリー対応としてぜひ3階席までエスカレータかエレベータを設置して欲しい。 End
2013.09.14
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鑑賞日:2013年8月23日(金)19:00開演入場料:¥10,000 C席4階【主催】サイトウ・キネン・フェスティバル松本実行委員会 サイトウ・キネン財団サイトウ・キネン・フェスティバル松本ラヴェル作曲オペラ「こどもと魔法」「スペインの時」(各全1幕、フランス語上演/日本語字幕付き)〈グラインドボーン音楽祭との共同制作〉会場:まつもと市民芸術館・主ホール指揮:小澤征爾「こどもと魔法」、 ステファヌ・ドゥネーヴ「スペインの時」演出:ロラン・ペリー装置:バーバラ・デリンバーグ「こどもと魔法」 キャロリーヌ・ジネ「スペインの時」オリジナルデザイン:キャロリーヌ・ジネ、 フロランス・エヴラール照明:ジョエル・アダン衣裳:ロラン・ペリー、 ジャン=ジャック・デルモット合唱:SKF松本合唱団、SKF松本児童合唱団管弦楽:サイトウ・キネン・オーケストラ出 演:「こどもと魔法」 こども:イザベル・レナード 肘掛椅子/木:ポール・ガイ 母親/中国茶碗、とんぼ:イヴォンヌ・ネフ 火/お姫様/うぐいす:アナ・クリスティ 雌猫/りす:マリー・ルノルマン 大時計/雄猫:エリオット・マドア 小さな老人/雨蛙、ティーポット:ジャン=ポール・フーシェクール 安楽椅子/こうもり:藤谷佳奈枝「スペインの時」 コンセプシオン(時計屋の女房):イザベル・レナード ラミロ(ロバ引き):エリオット・マドア トルケマダ(時計屋):ジャン=ポール・フーシェクール ゴンザルヴ(詩人気取りの学生):デイビット・ポーティロ ドン・イニーゴ・ゴメス(銀行家):ポール・ガイ感 想: 今年勤続○○周年でリフレッシュ休暇を取得しなければならなくなり、金銭的に海外は諦め、折角の機会なので山の神とSKF松本へ出かけることにした。 5年前は集中豪雨で翌日の中央線がストップしたが、今回も14時頃に松本駅を降りた所、落雷豪雨状態でその先の大糸線はストップ。 幸いにも夕方には小雨となり、木曽屋で味噌田楽、馬刺し、やまめを食べた後、無事にまつもと市民芸術館へ到着。 ホール入口ではスタッフから「傘を持ち込まず傘立てへ」との指示があり、自動ドアの入り口を抜けると、空港と同じ金属探知機ゲートと手荷物検査のセキュリティーチェックを受ける。 えらく厳重だなと思っていると、「天候皇后両陛下がご鑑賞に伴うお願い」の案内を手渡され納得。 現地ワインの試飲や記念グッズを見ながら開演30分前に開場。2階サイド席に報道関係者が沢山入り、盛んに写真を撮影。 開演時間となり、両陛下の客席への入場を待って、小澤征爾の登場。いきなりブラボーの声が掛かる。 オペラに先立ちSKOのヴァイオリニスト潮田益子さんの死を悼みモーツァルトのディベルティメントより第2楽章がSKO弦楽メンバーで演奏された。 一度指揮者が退場し、SKO管弦楽が再入し、小澤征爾の再登場。いつものように譜面台には楽譜はなし。 ラヴェル「こどもと魔法」は、子供の創造の世界を表現したメルヘン的な内容で、ティーポットやティーカップ、壁紙や猫、カエル、とんぼ等が登場。 昨年のグラインドボーン音楽祭の演出を持ってきており、よく出来ている。オケピットにあった、黒い大きな箱は嵐の風音の発生器だった。 「こどもと魔法」終演後、両陛下がご退席されるまでしばらく待たされ、休憩に。 後半は指揮者が変わり「スペインの時」。こちらは時計屋のお色気たっぷりの奥様目当てに旦那が外出中に次々に男たちがやってきて鉢合わせになりそうな所で大きな時計の中に隠れる。その時計を奥様の言うとおりにロバ引きが2階へ、また1階へと担いで動かす。最後は旦那が帰ってきて、男たち全員が顔を合わて・・・・。 いかにもフランス風の風刺が効いた大人のオペラになっており、出演者の容姿、歌声がその役にピッタリの印象(日本人の出演者では余り観たくないな)。大野和士指揮のグラインドボーン音楽祭の録画と見比べたが、奥様役のイザベル・レナードと学生役デイビット・ポーティロは今回の方が更に役に合っている。 オーケストラはラヴェルの色彩豊かな音楽を表現出来ていたと思う。「こどもの魔法」の合唱も一般公募とは言え、演技含め良く歌えていた。 ただ前半が終了した所で天覧関係者以外で、2~3割の空き席が発生。小澤征爾だけが目的の観客と思われるが、オペラとしては後半の方が面白く、残念なことをしたとしたのでは。 オペラ終了後、有名なバーへ行き、ブラックベルモットを飲むことが出来た。 SKF松本はお祭りであり、松本の街、コンサート前後の食事、更に天覧コンサートの雰囲気含め、十分に楽しむことが出来た。 この華やかな雰囲気は通常のコンサートでは味合うことは出来ず、ぜひ続けて行ってもらいたいが、小澤征爾のご健康次第でしょう。 End
2013.08.23
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