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近しいひとにうれしいことが訪れると、すぐ「お祝い、お祝い」という気持ちになる。世知辛いこの世にあって、そうたびたび訪れるわけではないよろこびごとを、きっちり祝っておかなくては、という思いもある。
季節の行事や、家の者たちや友だちの誕生日、就職のほか、「逆上がり記念」とか「一輪車記念」、「おじいちゃん、おばあちゃん、いらっしゃい」という祝いもある。 自分の分だけでなく、身近なよろこびごとをかき集めるかのような勢いで、祝おうとしている。おっつけ、うちの食卓で祝うことになるのだから、たいしたことではないが、ひとの慶事のお相伴にあずかるときのうれしさは、格別なものがある。
「今週末、リョウヘイの壮行会やるから」
と発表する。
「今晩、アイバチャンのお誕生日会します。7時までには帰ってきてください」
と貼り紙をする。
そういうとき、手の空いている者たちが、「じゃ、つくっちゃいますか」と言いながら食卓に集まってくる。
紙、鉛筆、色鉛筆(DERMATOGRAPH)をとり出して、食卓にならべる。
誰かが、紙1枚ずつに、「遼」「平」「、」「板」「前」「修」「業」「が」「ん」「ば」「れ」「!」と鉛筆で下書きをする。
誰かが、それをなぞりながら、マジックインクで太字に仕上げていく。
そうして文字とバックの色塗りがはじまる。
これをするあいだ、「何て書こう?」と相談するほか、ほとんど打ち合わせもなく、作業はどんどんすすむ。この作業風景、すごく好きだ。
お祝い=たれ幕つくり。いつの頃からこうしてきたかは忘れたが、誰かのお祝いをする、というとき、掃除や料理にとりかかる前に、家の者たちはいきなり「たれ幕屋」になる。
これができてしまえば、お祝いの会の準備の半分はできたようなものだ。
「遼平、板前修業がんばれ!」
「アイバチャン お誕生日おめでとう」
これさえできていれば、料理なんかはふだん食べているものに、飾り気と面白みを少し加えればいい、という気持ちになる。
さて、きょうは長女23歳の誕生日。
3月30日という、年度のどん詰まりに生まれたので、本人はどこかで苦労をしたかもしれないが、芯のあるいい女になった。と、思う。
娘ではありながら、姉さんみたいでもあり、友だちでもあるひとが、すぐ近くで育ったことを、しみじみありがたく想いながら、「たれ幕屋」になる。このたびは、末娘とふたりの「たれ幕屋」。
みんなで食卓を囲む。
たれ幕の前で、記念写真を撮る。
——そういうのが、わたしが考える、祝い。

こんな感じに、がしがし色を塗ります。
DERMATOGRAPHは、
大好きな文房具のひとつです。

「たれ幕」といっても、小さな看板(?)の連なり……。
こういう仕事だけは、みんな、すごく早いです。
がーっとはじめて、ばーっと描いて、すっと終わる感じ。
どの仕事(勉強)も、そうだといいんですが。