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パタヤ旅行記(1/May まとめました)
パタヤ旅行記
以前の日記に書いた「パタヤ旅行記」を、その前後部分も含めてまとめた。
その1 ホテル予約
スクムビットのカラオケ・ホステスのKと、三月二十二日の日曜日に会うことになった。海に行きたいという彼女の希望で、パタヤに行くことになった。ちなみに、彼女の働くカラオケ店は、ホステスをテイクアウト出来ないシステムだという。もちろん個人的にOKというホステスはいるらしいが。彼女はダメなほう、この仕事は三月から始めたばかりだという。
自分の本心を言えば、パタヤなんぞに行かず、アパートでゴロゴロするとか、せめてバンコクの繁華街を歩くとか、せいぜいその程度がいいのだが。でも「本当にパタヤに行くの?」とか聞かれると、さすがにやっぱり行きたくないとも答えられない。せめて「パタヤなら泊りがけで行きたい。」連休でもないかぎり、無理のはず。「じゃあ、土曜日の夜に行きましょう。」あれ?「土曜日は休めるの?」夜は仕事だろう。「本当はダメなんだけど、なんとかする。心配しないで。」要はズル休みらしい。
「でもパタヤならいつでも行けるから、日曜日にゆっくりと計画立てて来週でも行こうよ。」「来週は休めるかわからない。」あー、もう行かないわけにいかないのか。仕方がない。覚悟を決めた。ウエブでパタヤのホテルを予約できるサイトを探した。なんとパタヤには何十件ものホテルがある。どこがいいのか、全然見当が付かない。値段もピンからキリまで。スイートじゃなくても、少しグレードの高い部屋で3,000バーツくらいがよさそうだ。でも絞りきれない。「どこか好きなホテルはないのか?」返事「Siam bayviewがいい。一度だけいったことがあるけど、ナイスだった。」誰と行ったかとか突っ込むのは控えた。調べると、デラックスルームで100US$。タイのホテルなのになぜ米ドル建てなのか不可解だ。それにやたら高いぞ。予約サイトで68US$だ。まあいいか。予約した。
翌日、朝一番でメールをチェックした。期待した通り、WEBの予約サイトからのメールが入ってる。予約申し込みの結果をメールで知らせてくれるのだ。日本語のサイトなのに英語のメールなもんでイヤになる。内容は、要するにSiam bayview hotelはフルブッキングだから予約は受け付けられないということ。一応まだハイシーズンだし、混んでるんだろう。おお、と言うことは、行かなくていいのか?でもホテルは山ほどあるしな。
とりあえずKにメッセージを送った。「フルブッキングで予約は受付られなかった。日を変えたほうが良くはないか?それとも他のホテル探すか?」返事。「ホテルの名前はたくさん知ってるよ。教えようか?」おーい、どうしても今週末に行く気なのかよ。いいよ、自分で調べるから。ネットで調べてるうちに、重大なことが判った。なんとその日、パタヤではミュージック・フェスティバルが開かれるらしい。日本からもアイドル歌手が出演するようだ。じゃあホテルも混むわけだ。だがしかし、彼女の目的もそれなのか?
自分で調べると返事したのに、彼女もホテルに片っ端から電話してるらしい。時々メッセージが入る。「Siam bayviewが空いてた。でも2,600バーツ。」自分が予約サイトで調べたら68US$、約3,000バーツだった…彼女は高いと言う。その後も何件かの情報を送ってくる。「わかった、予約はお任せします。結果をあとで教えてね。」そりゃあ最初から彼女に全部頼めば、言い出した手前やってくれるだろうし、楽なのもわかってた。仕事サボってこんなことやるのは気が引けてるのも事実。だけど、この旅行は自分が主体的に手配したかったのだが。
その後、Kから「どのホテルがいい?」と連絡があった。やっぱり「4星のSiam bayviewにしよう。」と答えた。普通に考えるに、KはSiam bayviewを予約するだろう。しかしいくら待っても、その後の連絡がない。聞いてみる。「予約はもうすんだの?」「してほしいの?私はできないよ。」だからしてくれって頼んだのにー。どうせ電話かけたんだから、ついでにやってくれよ。言動に一貫性がないのはタイ人だからだろうか。でもなぜか「出来ない」と言ってる。「Why?」返事がない。おそらく何か事情があるんだろう。深くは詮索しない。「わかった、自分で予約する。」ホテルの電話番号が送られて来た。ちょっとムッとする。
しかし仕事場の設計室には10人以上がいるし、その半分は自分よりも英語が上手だ。そこでパタヤのホテルに電話なんぞしようものなら、彼女とパタヤへ行くのがバレてしまう。ホテルを予約(それも一部屋だけ)するんだから泊まりにきまってるわなあ。一応、立場上それはマズイし、社長の耳にでも入ったらいやだし。社長はプライベートな部分に口をはさむような人ではないが、自分が信頼してる人に良くない印象を持たれるのはイヤだ、勝手な話だが。
試しに別のWEB予約サイトを使ってみた。全部英語で目が回る。SUBMITボタンを押すと、なぜかオンライン・チャットが始まる。面白いんだけど、要するに予約に必要な情報(ホテル名とか日付とかカード番号とか連絡先電話番号とか)を聞かれて入力するだけで、別に普通のフォームで入力するのと何も変わりがなかったりする。というか、相手を待たせてるという意識があるから、あせりまくりでタイピングを間違えたりする。それも英語だし。それに、予約の結果がどうなのか、どうやって連絡されるのか、よく判らない。中途半端なシステムだ。
突然携帯が鳴った。出てみると女性が早口の英語で何か言ってる。遠いこともあり、何言ってるのか判らない。もっとゆっくり話してくれ。耳が慣れてきて、先ほど申し込んだWEB予約サイトの会社からだった。Siam bayviewがフルブッキングだから別のホテルでどうかと言っている。そんなことより先に、予約の結果を正式に知らせるのが筋だろう。その後で別のホテルを薦めるべきだろう。身勝手な話にかなり腹が立った。「そんなホテルしらない。どこにあるのか判らない。」地図があるから自分達のWEBサイトを観ろという。観た。そんなもの無い。またチャットをやれとか言うが、チャットで地図が見れるはずがない。何か操作しろと言うけど、そんな画面がない。理解できません。さようなら。
別のサイトでパタヤの地図を観た。WEB予約サイトが薦めるホテルは、ビーチ南側の半島にあった。パタヤビーチに近ければいいけど、ちょっとなあ。また電話。しつこいなあ。「あなたのサイトに地図がなかったんで、他のサイトを探した。セントラルから遠いからイヤだ。」「ちょうどパタヤ・ミュージック・フェスティバルやってるから、セントラルのホテルはどこもフルなんですよ。」でもKが調べた情報では、空きが二件あった。「でも遠いからイヤだ。」「パタヤは小さな町ですよ、遠くありませんよ。」自分はパタヤを数回訪れてるから土地勘がある。とても「遠くない」といえる距離ではない。もちろん遠いからイヤなのではない。予約会社が身勝手でしつこいのがイヤなんだ。「マイ・アウ・カップ、コープ・クン・カップ」
さてどうするべえ。ちょうど午後三時、メンバーがゾロゾロと部屋を出て行き、英語が判らないメンバーが二人だけ残った。チャーンス!Siam bayviewに電話した。「予約したい。22日。」「お部屋はご用意できます。2,875バーツです。」あれ、Kの情報と違うぞ。「それはオーシャンビューですか?」「いえ、ガーデンビューです。これしかご用意できません。」これも違う。Kはオーシャンビューが空いてると。やっぱ、窓から海が見えるほうが良いに決まってる。これはもう値段の問題じゃないな。「また電話します。」英語の電話に汗だくになった。
Kにメッセージを送った。「Siam bayviewに電話した。部屋は空いていたがオーシャンビューじゃなかった。せっかく一緒に行くんだから、海が見えるバルコニーが欲しい。別のホテルを探す。明日の朝までに予約の結果がわかるから、もし失敗したら、残念だがSiam bayviewにする。」返事。「一緒ならどこでもいいよ。でもうれしい。」言動が一致すれば結構なことなんだが。
ホテルを選ぶ条件は、4星クラスでオーシャンビューの部屋。100US$までなら出す。最初に使ったWEBサイトに、別のホテルの予約を依頼した。ここはメールで返事が来る。サイトも日本語があるし、365日24時間営業だそうだ。第二希望まで予約を頼める。一時間後に回答、全滅。正直、こんなに早く回答があるとは思わなかったんで、もう一度別のホテルを依頼。たぶんこれが最後のチャンスだろう。二時間後、メール着信。第一希望はフルブッキング。もう一軒の返事を待っているから、もう少し待って欲しいと、担当者からメールが来た。何度も予約に失敗して恐縮してるようだ。
夜10時を回ってメールが着信した。英文と日本語が二通。他に題名が日本語で、内容が文字化けしたメールが二通。どうもHTMLメールを送ってきたらしい。この予約サイト、なかなかちゃんとした対応するなあと思ってたけど、HTMLメールを送る馬鹿サイトだとわかった。読めないからテキストメールで再送してくれと書いて返送した。
読めるメールを読んでみると、予約が確定したらしい。Siam bayshore hotel、4星。おー、よかった。がんばったかいがあった。ところが先を読むと、読めないメールは予約確認書とクーポン、カードからの引き落とし確認書らしい。ホテルにプリントしたクーポンを持っていってチェックインしろという。読めないメールをどうやってプリントすればいいのか。
でも使ってるメーラーはHTMLにも対応はしている。なぜ化けるんだろう。なんとか表示させる方法はないものか。HTMLの部分をメモ帳にコピペして、拡張子をHTMLにしてファイルした。それをIEで開く。読めた… でも普通の人はこんなこと考えつかないよなあ。どうするんだろう、読めない場合は。アパートにはプリンタがないんで、明日、会社のプリンタで印刷する。ノートパソを持っていくのも面倒だからWEBメールのアドレスに転送する。会社のパソコンで受信すればいい。
というわけで、すったもんだの挙句に何とかホテルの予約が出来た。
その2 土曜日
さすがに土曜日は落ち着かなかった。もちろん仕事が手につくはずもなく、なにも出来ない。というより、さしあたってやる仕事もなく、メンバーの仕事を随時チェックするだけなのだが、タイミング的にはチェックする段階でもない。Kからは「今日は時間の流れがゆっくりだね。」というメッセージ。彼女も早く行きたくてソワソワしてるようだ。
予定を考えた。パタヤ着があまり遅くなるのもイヤだから、せめて6時ごろまでにはエカマイのバスターミナルに着きたい。とすれば、アパートからタクシーとBTSを乗り継いで一時間ぐらいだから、5時ごろにはアパートを出なければならない。会社の定時は5時、全然間に合わない。なんとかして定時前に会社を出ないといけない。本来土曜日は、自分にとっては自由出勤ということになっている。仕事が忙しければ出勤するし何か用があれば休んでもよい。社長やW氏も自由出勤なんで土曜日にゴルフに行ったりしてる。しかしファクトリーマネージャのJ氏はじめ工場のメンバーはそれを知らないらしい。まあ、自分が大抵は土曜日に出勤してるから、それが当然と思ってるんだろうけど。運転手のB君さえもそうだ。
だから早く帰るのに誰に何をことわる必要もなく、帰りたいときに帰れるのだけど、なにか理由がないと帰りずらい。頭を抱えてたら、J氏が頭が痛いのかと聞く。ニッ・ノーイ。実は本当に痛い感じがするし、汗をかくんだが暑くなく、逆に寒いくらい。まるで風邪の引き始めみたいな感じで、本当に変だ。J氏は「土曜なんだから帰って寝れば?」という。有難くそうさせてもらった。体調だけなら帰る必要もないのは言うまでもない。病院に行くかとか聞かれるけど、そんな大げさなもんじゃないし、だいいちこれからパタヤに行くのだ。
会社を出たのは3時半。飛ばせばアパートまで30分ぐらいだが、B君のとろくさい運転では無理。でもうまくすれば5時過ぎにはエカマイに着ける。Kにメッセージ。「ちょうど今、風邪引いたからアパートに帰る。5時過ぎにエカマイに着くでしょう。」「本当?熱はないの?」「心配ない。君の顔をみれば元気になるでしょう。」こんなクサイの、平気で送れるようになった。「5時にエカマイに行きます。」予想より少し早い。いい感じ。
アパートについたけど、さすがにB君にモーチット駅まで送ってもらうわけにもいかない。軽くシャワー、用意しておいた着替えと水着の入ったバッグを持って出る。会社で印刷したクーポンも忘れず。タクシーを止め、行き先を告げると運転手は「カッポーン」と答えて走り出す。どうもチャトゥチャク公園の西側から行こうとしてるようだが、ちょうどそこは有名なウイークエンド・マーケットの真っ最中。渋滞に巻き込まれる。まったく、なんでこんなルート選んだのか。Kにメッセージ「Taxi, Trafic Jam!」バホンヨーティーン通り、駅の100メートルぐらい手前で運転手はタクシーを停めた。渋滞は続いている。ここで勘弁してくれということらしい。マーケット帰りの人たちが駅へと列を作る。料金を払ってるあいだにもタクシーのドアを開けて乗ろうとするヤツがいる。礼儀というものを知らないのか。こんなことならサパーン・クワイまで行ったほうが楽だったのかもしれない。
40バーツのチケットを買ってBTSに乗る。土曜の夕方とあって混んでるが、始発駅乗車なんで何とか座れる。Kにメッセージ「Now, Mochit Station」エカマイは遠い。5時過ぎに着いた。バスターミナルは初めてで、場所がわかるか心配だったけど、BTSの駅から見えるので判った。自分と同じようにバッグを持った人々の後について、難なくバスターミナルに到着。待ち合わせの場所を指定したわけじゃないけど、Kはターミナルの正面で待っていた。満面の笑顔。缶ペプシを貰う。自分が来る時間を予想して買っておいたらしい。飲みながら中に入った。
PATTYAと書いてある窓口で乗車券を買う。一人90バーツのエアコンバス。安い。指定席になっている。もちろん並びの席だ。発車時間は17時50分。30分も先だ。バスを待っている人が多い。特にパタヤ行きの乗り場は人だかりがしてる。たぶんバスはこの時間、10分おきにあるはず、乗る人が多いから30分待たされるのだろう。例のミュージック・フェスティバルのためか。若い人が多い。日本人は自分だけのようだ。
17時50分過ぎに、乗り場にバスが来た。乗り場に行こうとすると、アナウンスを聞いていたKが違うという。これは17時発のバス。パタヤが大渋滞で、戻りのバスが遅れているらしい。なんと一時間の送れ。ということは、自分達が乗るバスは19時ごろになるのか。何台かのバスを見送り、やっと乗車したのが19時20分。エカマイで2時間も待ったことになる。しかしKの大きな瞳から見つめられていると、待つのも苦痛ではないから不思議。
バスはスクンビットを走り、途中からチョンブリ-パタヤ モーターウエイに入る。仕事でよく利用する高速。初めてタイを訪れた6年ぐらい前、まだガタガタだったスクンビットを、リムジンタクシーでシラチャまで何度も走った。この高速は工事中で、いったい何時頃できるのか見当もつかなかったのを思い出した。高速も完成したし下の道も見違えるほど良くなった。チョンブリで高速が終わり、チョンブリバイパスに入る。Kは自分の肩に頭を乗せて寝ている。倒れないように肩を抱く。パタヤのターミナルに着いたのは9時を過ぎていた。
パタヤにはタクシーがない。その代わりにピックアップの荷台に幌と座席をくくりつけたソンテウが大量に走り回ってる。ソンテウは乗合でもあり、チャーターもできる。メーターなどと言うものはないから、料金は交渉制だ。バスターミナルにはソンテウが待っていた。もうすでに10人近い人が乗っている。座席に乗れるのはあと一人か。乗合のソンテウらしい。ドライバーのオヤジがパイナイと言うんで、サヤーム・ベイショアと答える。じゃあ前の席に乗れ。Kと二人で助手席に乗った。Kが小柄とはいえ、ドライバーと横に3人は結構キビシイ。
すぐ若い女性が乗り込み、満席になったソンテウは走り出した。ミュージック・フェスティバルの影響で町は大渋滞だ。ソンテウは裏道を縫うように走る。渋滞の大通りを無理矢理突っ切る。クラクションの合唱。反対車線を走り信号ギリギリを右折。歩行者があわてて飛びのく。バンコクでも野蛮な運転をする車は多いが、とてもそんなもんじゃない。久々のワイルドドライビング。自分の足が何度架空のブレーキを踏んだか。このドライバー、頭おかしいんじゃないかと思い始めたころ、やっと道路が空いてきた。パタヤの夜の歓楽街をソンテウは快走する。赤いネオン。ピンクのバービア。ゴーゴーの音楽。思わず声を上げる自分を、Kが睨む。
途中何箇所かで乗客を降ろした。降りた客は、助手席の窓からドライバーに料金を払う。自分の前を金が行き来する。どうも一人20バーツらしい。停まったのはどこも見覚えのない場所ばかりだ。座席の乗客が全部降りて、自分達だけが残った。ソンテウはまたしばらく走り、停まった。サヤーム・ベイショアだという。二人分60バーツを払って降りる。駐車場のゲート。確かにSIAM BAYSHORE RESORTと書いてある。係員がゲートを開けてくれ、駐車場を100mほど先の建物に向かって歩く。建物からこちらに歩いてくる人もいるが、なんか変だ。
建物に着いた。フロントへの案内板がある。建物を迂回して行くのか。Kが警備員に何か聞いている。建物の中を通ってフロントへ行けるらしい。中に入った。中庭を取り囲むように廊下がある。建物の形が複雑で、どちらに行くのか見当がつかない。中庭はまるでジャングルのようだ。プールの向こう側に灯りのついた建物。どうやって行けばいいか。なんとか通路を探して辿り着いた。フロントがあった。どうもソンテウから降ろされたのは裏の駐車場だったようだ。あのドライバー、横着しやがって。宿泊客を裏口に案内するなんて聞いたことないぞ。
チェックイン。もう10時だ。フロントにアロハみたいなの着た兄ちゃんが二人。ホテルのユニフォームだろうが、スッゴク感じが悪い。似合わない。まるでチンピラみたいだ。それに照明が暗い。プリントしてきたクーポンを差し出す。後ろの照明で何かのリストと照合している。二人で何かボソボソと話してる。スッゴク感じ悪い。そんなの、客に見せることじゃあないだろうが。市役所の戸籍係だってもっとマシな対応するぞ。だいたい、タイ人なのに笑顔がない。警察の取り調べじゃあないんだぞ。本当に四つ星のホテルなのか、ここは。まあ、遅く着いたのが悪かったんだろう。昼間ならかわいい女の子がにこやかに対応してくれるのだろう、きっと。
ベルボーイに案内されて部屋へ向かう。長い通路を通り奥へ。エレベータを待つ。なんとエレベータは先ほど入ってきた裏口の近くだった。二台のエレベータのうち一台は死んでいるようだ。動いているほうのエレベータに乗る。年配のファラン夫婦が同乗する。やけにフレンドリーに挨拶されて恐縮する。このエレベータも押しボタンの具合が悪い。かなり強く押さないと反応しないのだ。部屋は5階だ。このホテル、5階建てなのだ。敷地をタップリと使った感じが贅沢だけど、眺めのいい高層階のほうが好きだ。部屋のカギを開けるのにベルボーイが苦労している。鍵穴の具合が悪いのか。なんともお粗末だ。
部屋に入る。大して広い部屋ではないし、別に変わったところもない。ベルボーイも説明らしい説明はしないが、いかにもチップを待っている雰囲気。イヤイヤながら財布から20バーツを渡す。やれやれ、やっと着いた。さっそくカーテンを開けた。どう考えても海ではない。遠くに山が見え、眼下には庭が広がっている。そうか、このホテルは第五希望ぐらいだったから、オーシャンビューかどうかはあまり気にしなかったんだ。バルコニーもあるし、まあいいか。キングサイズのベッド。ラタンのソファーとテレビ。リゾートホテルの雰囲気はあるものの、普通のホテルという感じ。これで「デラックス」かあ。
さて、外へ出てみよう。二人で着替える。部屋を出るときに、ドアのキーを調べる。開くのを確認して出かける。また具合の悪いエレベータ(やけに遅い)を使い長い廊下を通ってロビーへ。正面玄関から外へでる。正面には海。右側の賑やかなほうに向かう。そういえば、まだ食事をしていない。二人で少し歩くと、「Walking Street」があった。いわば歩行者天国。道路の両側に、レストランやらバービアやらゴーゴーやらが軒を連ね、夜の11時近いというのに、多くの人々が歩いている。こりゃスゴイ。まるで子供みたいなゴーゴーの客引きがセーラー服着てる。見とれてるとKに鼻をつままれた。
喧騒のWalking streetの端まで歩いた。そうだ食事。シーフードレストランの看板をKが見つけた。ここにしよう。店はバービアの横の通路を通った奥にあるようだ。それにしても、奇声をあげるファランとかばっかりで、動物園みたいだな、ここは。レストランは海に突き出したオープンテラス、ちょっといい雰囲気だ。客は他にファランの女性グループと老夫婦ぐらいか。メニューは英語もあるし写真もある。さすが国際リゾートだけあるな。食べたいものを適当に頼み、あとはKにフォローしてもらう。二人だからあまり多くは食べられない。「ビール飲んでいい?」「一本だけね」ドリンクカウンターのボーイにビアシンを頼む。ジェスチャーで大か小か。Kを見ると睨んでる。スモールサイズ。そうか、今晩は簡単に寝かせてもらえないのか…
さすがに海で食べるシーフードは美味しい。でかい海老にかぶりつく。トムヤムクンも美味しい。来てよかったー!おっと、生の貝は勘弁してくれ。沖に「Holly Wood」とネオンがきらめく船が停泊している。近くの桟橋から連絡船がでるらしい。確か「Holly Wood」って、ディスコじゃなかったっけ?ラヨーンの「Holly Wood」には行ったことがある。K曰く「ディスコだけど女ばっかり。」要するに風俗なのね。どんなことしてくれるんだろう。ちょっと興味があったりして。「あなた、行っていいよ。私はホテルで待ってる。」顔に出たか。そんなことしたら、後で大変なことになるに決まっている。途中のセブンイレブンで買い物をして、お尻を振りながら歩くオネエチャンに見とれながら、またWalking streetをホテルに戻った。長い夜になりそうな予感。
その3 日曜日
朝。鳥のさえずりで目を覚ました。ベッドから抜け出し、散らばっている服を身に付ける。気配でKも目を覚ます。時計を見ると七時半。たぶん五時間ぐらいしか寝ていないと思うが、スッキリとした目覚めだ。窓のカーテンを開けてKと二人、ベランダにでる。椅子とテーブルが置いてある。それに座って朝の景色を楽しむ。庭の木々。遠くに見える山。エキゾチックな鳥が飛ぶ。さわやかな空気。Kが自分の写真を撮る。照れ笑い。ゆっくりと時間が流れる。休日のリゾート。
シャワーを浴びて朝食に行く。レストランはフロントと同じ建物にある。入り口の女性にルームカードを見せて中にはいる。うわー、スゴイ人数だ。ちょうど朝食のピークにあたったようだ。客の9割がファラン、残りは中国人か。日本人もタイ人も自分達のほかには見当たらない。ありがちな朝食ブッフェ。まあ一日だけだから文句もないが、一週間ならもたないなあ。トースト、ベーコン、ソーセージ。やっと空いてる席を見つけた。6人掛けだが平気で二人で座る。ウエイトレスがテーブルを片付けに飛んでくる。前客が帰ったらすぐに片付けるべきだろう。ちょっと不愉快。コーヒーも注ぎにこない。四つ星ホテルのメインダイニングだよなあ。
そのまま外へ散歩にいく。玄関前の道路を渡り、海岸へ下りていく。穏やかな波。思ったほど汚れてもいない。新しい建物の方へ歩く。大量のモーターボートが置いてある。建物はまだ工事中だ。Pattaya Portと書いてある。半島の山の上にFM放送局と銅像(たしか第一次大戦で活躍したタイ海軍の提督だったか)と寺がある。その向こうには高層ホテル。ここはパタヤ海岸の南端にあたるわけだ。暑くなってきたので部屋に戻る。二人とも日に焼けるわけにはいかないのだ。
シャワーを浴びてテレビを観ながらイチャイチャしてると、それだけで済まなくなってくる…チェックアウトまではまだ時間がある。Kは一眠りするという。自分はなぜか眠くないので、ベランダでコーヒーを飲む。満足感と罪悪感が入り混じった、不思議な感覚。根が小心者だからと自分で笑う。11時半。Kを起こして支度させる。フロントに向かう。中庭で雷がなり、突然の豪雨。スコールか。まだ雨季じゃないはずだが。
フロントに着いた。レセプションは昨夜と同じチンピラみたいな兄ちゃん。チェックアウトだからキャッシャに向かうと、若い女性がいる。先客ファランの対応をしている。自分の番。チェックアウト・プリーズ。料金はクレジットカードでエージェントに支払われるから、ここでの支払いはないはずだ。「ミニバーはご利用になりましたか?」いいえ。「それではお支払いはありません。バイバイ。」おいバイバイかよ。この場で払わないからといって、タダで泊まったわけじゃないんだが。これでも客だぞ。ムッカー!スッゴク感じが悪い。もうこんなホテル、二度と来ない。
さて、とりあえずチェックアウトは済んだものの、まだ外では雷が鳴り響き、スコールが続いている。しばらくすれば止むだろう。ロビーのソファーに座って、雨が止むまで待つことにする。ロビーにいると、多種多様な人々が行き交う。体育会系のバッグを抱えたファラン(白人)の若者。おなじくファランの年配夫婦。中国人のオヤジたち。インド人の男性グループ、年齢不詳。急な雨でプールから逃げてきた水着姿のオバサン達。日本の隣国から来た、やはり体育会系の若者。同じ国のオヤジ。タバコ吸いながら歩いている。それにしても、隣国人が来ると、和やかだったロビーが、一瞬にして剣呑になってしまう。見事に雰囲気が悪くなってしまうのだが、なぜなんだろう。自分が日本人だからそう感じるのだろうか。Kはコン・ガウリーは大嫌いだという。日本人の客もいる。やっぱり体育会系のデカいバッグを抱えた若者達。よく判らないが、テニスか何かの大会でもあるんだろうか。自分達のソファーの正面に座ってる男も日本人のようだ。「宅八郎」が老けたような感じで、ちょっとキモイ。ソファーで居眠りしている。こいつ何しに来たんだ。
Kは座っているのが退屈なようで、自分に絡みつく。手を握り、腕を組み、寄りかかる。Kは股上が短くてウエストが緩めのジーンズをはいているから、動くたびにお尻のほうから下着が見えそうになる。ジーンズを引っ張り上げてやるんだが、Kは気にしないようだ。正面の「宅八郎」は居眠りしてるようだだけど、たぶん寝たふりしてこちらを見ている。わざとKとイチャイチャ。刺激的なポーズ。「宅八郎」が反応するのが面白い。
ファラン以外の東洋系、インド人や隣国人が、こちらをチラチラと見る。なんで日本人のオヤジがタイ人の若くて結構カワイイ女とイチャついてるのか。羨望と嫉妬が入り混じったような視線を感じる。おいおい、日本人は君達のような三流国から来た人とは違うんだぞ。パタヤはファランの縄張りだけど、一般的にタイでの日本人は、君達とは全然逆の評価をされているのだ。君ら、ハッキリ言って嫌われてるぞ。独善と自意識と偏見のカタマリ?、でも本気でそんなふうに思った。
さて、これからどうする?Kはコ・ラン(ラン島)に行ってみたいという。30分もいればいいよ。とすれば2時間もみればいいかな。すぐ近くからボートが出てるらしい。Kは時々、玄関まで様子を見に行くが、雨が止む気配がない。そのうちに時刻は午後2時。雨はまだ降っている。コ・ランは諦めよう。バンコクに帰ろう。ところでバスターミナルまでどうやって行くんだ?やっぱりソンテウか。このホテル、車を呼んでくれそうな雰囲気ではない。どうやってソンテウを拾うか。玄関先で悩んでいると、ホテルの前をソンテウが時々通ることに気づいた。じゃあ表で待っていれば拾えるかも。玄関の庇で待っていると、何分もしないうちにソンテウが通りがかり、ホーンを鳴らして停まった。雨の中、ソンテウの座席に乗り込んだ。大正解。
Kが運転手と交渉して、バスターミナルまで80バーツでチャーターした。豪雨の中、ソンテウは走る。一応は屋根があるけど、スゴイ勢いで風が吹き込み、冷たい雨が二人を濡らす。寒いというKの肩を抱いていた。冠水した道路も水しぶきを上げて走る。風と雨、音と振動。雨は途中から小降りになったけど、もう勘弁してくれと泣きがはいるころ、やっとターミナルに着いた。遠いのだ。
ターミナルに入って驚いた。げげー!ターミナル全部に人人人…若者が隙間なく座り込んでいる。何百人いるのか見当がつかない。見ると、チケット売り場にも長蛇の列。ざっと50人は並んでいるか。これじゃあ何時のバスに乗れるのか判らない。このターミナルはバンコク行きのバスだけだ。全員がバンコクに帰るのだ。もちろんミュージック・フェスティバルの影響。
そこでふと思い出した。パタヤ行きのバスはモーチットのターミナルからも出ているはず、ということはパタヤからモーチットへ行くバスもあるわけだ。考えてみればモーチットはアパートからも近いんだから、何もエカマイにこだわる必要は全然ない。Kだって今日は自分のアパートに泊まるつもりらしいし。
50人も並んでいる窓口はエカマイ行きだった。隣にあるモーチット行きの窓口は、ほんの10人ぐらい。難なくチケットを買えた。値段は同じく一人90バーツ。BTS代を考えたら安上がりだ。しかしチケットを見て驚いた。バスの発車時刻は16:40、まだ二時半だぞ。もう二時間も待つのかあ。でもターミナルの状態を見れば、二時間待ちで済むのはラッキーなんだろうなあ。
お腹がすいたんで遅い昼食を取ることにした。ターミナル近くにもクイッティオ屋とか飯屋とかあるが、ちょっと奮発して斜め向かいの中華料理屋に入った。中途半端な時間なので他に客もいない。時間はタップリある。ゆっくりと食事した。窓際の席。料理を何種類も注文しても、二人では全部は食べきれない。もったいないけど仕方がない。
さすがにゆっくりの食事も、一時間で終わってしまった。ターミナルに戻る。相変わらず人人人…一時間経っても全然変わらない。座る場所さえない。それでも冷房のある、本来の待合室に入った。なんと空いている席がある。ホッとして座った。エカマイ行きもモーチット行きも、特別ダイヤで10分おきに出ている。運行時間も正確なようだ。外にいる多くの若者は、エカマイ行きのバスを待っているらしい。モーチット行きに乗るのは少しだけ。
16:40のバスが来た。Kと二人で乗る。ホッとする。バスはスクンビットをバンコクに向かって走る。チョンブリのバイパスにはないらず、市内を通る。賑やかな町並み。ここも久しぶりだ。チョンブリ-パタヤ モーターウエイにも入らない。ひたすらスクンビットを走る。途中からチョンブリモーターウエイに入る。料金所で大渋滞。日曜の夕方、どうしようもない。プララーム・ガウの上の高速を通り、ジュン・ワタナ方面へ。モーチットのターミナルへ着いた。
タクシー乗り場に行く。ここも人人人…いつものことだが、タクシーの乗車に、列などはつくらない。ただ我勝ちに前の方にでてくるのがタイスタイルらしい。たぶん何か順番はあるんだろうけど、何がなんだかわからない。なぜかなかなか乗れない。自分達の順番なのに勝手に乗ったヤツがいるらしい。Kが怒っている。それでも何とかタクシーを捕まえた。ワッ・サミアン・ナリィ。この辺の運転手なら知っている、アパート近くの寺の名を告げる。ターミナルから出た道で渋滞。サンデーマーケット帰りの車も多い。「渋滞でメシ食う暇もないよ。」運ちゃんがKにぼやいてる。アパートに着いたのは、午後8時近かった。二人のパタヤ旅行は終わった。
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