ココとレオのブログ
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昨晩獣医向けセミナーに行って来ました。私は獣医ではありませんが、ステロイド投与と血栓症がキーワードとして結びついたので、勉強のために参加させていただきました。ココが半年以上ステロイドを服用しているので。一般に猫の血栓症は有名ですが犬の血栓症はあまり知られていません。しかし獣医学の教科書にも新しく章立てされたりと、ちょっと話題なのだそうです。診断と治療は獣医に任せるにしても、われわれ飼い主も知っておくに越したことはないかと。ご参考までにレジュメから。 ※ここから転載はしないで下さい。--------------------------------------------------------どんな疾患の症例の時に血栓を考えるか?・血栓形成の要因3つ(Virchowの3原則) ⇒ 1.血管壁の性状変化 【例】敗血症、イヌ糸状虫症、血管炎など 2.血流の変化 【例】心疾患、カテーテルなどの物理的閉塞、長時間の伏臥(エコノミー症候群のようなもの)など 3.血液成分の変化 【例】タンパク漏出性腎症、タンパク漏出性腸症、クッシング症候群、敗血症、免疫介在性溶血性貧血、DICなど血栓症による症状は? ◎大動脈血栓症 ・症状 ⇒急性、慢性、慢性から急性 (猫の場合はほとんどが急性だが、犬は慢性が多い) ⇒痛み(背部、局所的でない) (どこを痛がっているのかわからないが背中を触ると嫌がるetc) ⇒パッド、爪のチアノーゼ ⇒後肢虚脱、後肢不全麻痺 ・身体検査 ⇒股動脈だけでは判断できない(50%が正常) ⇒後肢プロプリオセプション低下、脊髄反射低下 ・基礎疾患 心疾患、タンパク漏出性腎症、タンパク漏出性腸症、腫瘍、肝疾患、糖尿病、慢性膀胱炎、副腎皮質機能亢進症など ◎肺動脈血栓症 ・症状 ⇒呼吸困難、頻呼吸、沈鬱、チアノーゼ ・身体検査所見 ⇒湿性ラ音~正常 ・検査所見 ⇒レントゲン、正常のことも多い 凝固亢進状態の症例で、急な呼吸困難を呈したら、肺動脈血栓症を疑い治療開始する ・基礎疾患 腫瘍、感染症(敗血症、肺炎など)、免疫介在性溶血性貧血、副腎皮質機能亢進症、タンパク漏出性腎症、拡張型心筋症など ◎前大静脈血栓症(右心房の直前の血管における血栓) ・症状 ⇒頭部、頚部、前肢の浮腫 ⇒結膜、強膜の充血 ⇒胸水貯留 ・基礎疾患 敗血症、免疫介在性血液疾患、腫瘍、タンパク漏出性腎症、心疾患 ほとんどの症例において頸静脈カテーテルを設置 ◎門脈血栓症 ・症状 ⇒急性の腹痛:腸管の壊死 ⇒門脈圧亢進に伴う症状:腹水貯留、消化管出血、多発性門脈シャント形成 ・基礎疾患 膵壊死、腹膜炎、悪性腫瘍 ほとんどの場合がステロイドの投与あり ある症例で、後肢のふらつきから起立困難になり、ヘルニアと診断されステロイド投与。腹水貯留を認めたため来院もその後死亡。基礎疾患が診断できなかった。ステロイド投与が血栓形成の原因と考えられるが、獣医学の領域ではまだ明確になっていない、医学領域(ヒトの場合)ではメチルプレドニゾロンパルス療法による報告が多い。しかし原疾患と相乗的な作用があるかは不明。 ⇒基礎疾患+症状から、血栓症を考慮することが重要!!どうやってリスクを評価するか?診断するか? ◎クッシング症候群の犬における血栓形成リスクの機序 ・凝固因子の活性化 ・アンチトロンビンの低下 東大病院でのクッシング症候群57例中3例が血栓症の合併症。約5%。これは低くない数値だそうです。どう対応すればよいか? (具体的な療法などは割愛) ◎ステロイドとNSAIDは同時に投与しても大丈夫? ⇒超低用量のアスピリンであれば27日間は安全に使用できる。まとめ ・基礎疾患 免疫介在性血液疾患、腫瘍、タンパク漏出性腸症、タンパク漏出性腎症、敗血症、心疾患、副腎皮質機能亢進症など ・症状 後肢麻痺、呼吸困難、顔~両前肢浮腫、腹水(漏出液)、発作など ・診断/臨床検査 超音波検査(院内で可能)、FDP、D-dimer、アンチトロンビン ・治療 血栓溶解治療、抗凝固治療、抗血小板治療--------------------------------------------------------このほかのテーマで、心タンポナーデとクッシング症候群の症例の紹介がありましたが、割愛します。もしご興味があれば、東京大学の動物病院に直接お問い合わせください。レジュメが見たいだけなのよぉ、って方は私宛にメッセージください。血栓って超音波検査でくっきり見えるんですね。超音波なら動物病院にも置いてありますよね。いちいちCTとかMRIとか言われるとちょっと・・・だけど、超音波なら飼い主から「ちょっと調べてください」って言える。なーんて思いました。顔とか胸が浮腫んで、足が立たなくなったら、呼吸が荒くなったら、お腹にお水が溜まっていたら、血栓があるかもしれないから、せめてステロイドはやめて、ってことくらいしか飼い主にはできないのかな。
2010年01月23日
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