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2004年11月19日
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カテゴリ: こんなの読んだ!
著者・河合隼雄、南伸坊
新潮文庫

心のケア、などという言葉が盛んに言われるようになった昨今ですが、実際に「心のケア」って何をするの?って思っていました。カウンセリングとか心理療法とかいうものがあるというのも知っているし、カウンセリングは、実は数回受けたことがあります。(残念ながら、あまり役に立ったと思えないんだけど…。)それ以外にも、ロールシャッハテストだの箱庭療法だの、音楽療法だの、精神分析etc…。いろいろあって、よく分からない、というのが正直なところです。

この本は、心理療法の権威とも言える河合隼雄さんが先生、イラストレーターの南伸坊さんが生徒、という形で、河合先生の講義を受けて、南さんがレポートにまとめる、というのを交互に載せています。

心理学は科学なのか、そうではないのか?
科学として考えようとすると、あまりにも曖昧な部分が多いのです。実験して証明できるものではない。なにしろ扱っているのが、「人間関係」なのですから。「人間」単体で考えてもあまり意味はなくて、人間同士の関係において、いろいろと問題を抱えている人を扱うので「人間関係」。
医学的に考えることも、もちろんできます。最近急増しているといわれるうつ病や、神経症、統合失調症…様々な精神疾患がありますし、それを治療するための優れた薬もたくさん開発されています。そういった病気は、脳内物質の分泌に異常をきたしているために起こるらしい、ということが分ってきており、それを正常にするためのお薬がいろいろあるわけです。それを正しく投与することによって、症状は確かに緩解します。

とはいうものの…。じゃあ、薬止めたらどうなるの?
脳内物質の異常をきたすようになった原因が、人間関係にあるとしたら、そこをなんとかしなくちゃ、根本的には治らないんじゃないの?


なんだか分ったような、分からないような?
でも、そう簡単に人間の心なんて分からない、分ってたまるか、という態度で心理療法家はクライアントに臨まなければならないようです。だって、心理療法家が「あなたのことなら、なんでも分かりますよ」って人だったら、恐くてうかうか相談にも行けません。お互い分からない、ということころからスタートする。そして共同作業で、少しでも分かるようにしていくわけです。

この本の中で、とても印象に残った部分がありました。箱庭を作ったり、カウンセリングで人に話したりすることで、何故心が治っていくのか。確かに不思議ですよね。
それを河合先生はこのようにおっしゃっています。
「そもそも心理療法というのは、来談者(クライアント)が自分に相応しい物語を作り上げるのを援助していく仕事だと言うこともできる。」
この文章を読んだ時、私は心のなかで何かがストンと収まるような気がしました。

誰にでも、その人にしかない人生という物語があるわけです。で、不安や病気を抱えて悩んでいる人にとっては、それを自分の「物語」の中で、どう位置付けて良いのか分からない。納得のいく位置付けができないから、困っているんです。ところが、(これは誰にでも経験のあることかもしれませんが)人に話したり、あるいは絵を描く、箱庭を作る、ということを専門家の人と一緒に行うことで、位置付けに困っている問題を、ある程度客観的に見直すことができるわけです。それによって、その問題が自分の人生でどういう位置付けになるのか、あるいはどういう意味を持つのか、少しずつ整理することができて、自分の物語に組み込むことができ、クライアントの心の問題は解消する方向へ向かうのです。

つまり、こうやって日記を書いたりするのも、自分の物語を日々整理するためには、多いに役立つことなんですね。

虚言僻のある人、というのがいますが、そういう人は、作り話をすることで、なんとか自分の物語を支えているのだと考えられるそうです。もしくは、意味不明なことを言ったり、叫んだり、暴れたりということも、そういう方法でしか、自分を表現する方法がないからなのです。
「死にたい」という人は、実は「生きたい」「助けてくれ」というのを、そういう言い方でしか表現できなくなっているわけです。
(なんだか、このあたり、身につまされるんです…)



臨床心理士やカウンセラーを目指している人には、是非読んでほしい本です。
そうでなくても、周りに心の問題を抱えた友人、家族がいる人も読んでみてほしいです。

私自身にとっても、意味深い本でした。これからも繰り返し読むと思います。
私自身の物語に組み込めないで、持て余している事がいくつもありますから…。





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最終更新日  2004年11月21日 17時48分14秒
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