ルナ・ワールド

ルナ・ワールド

都合のいい相手


「うーん。ほんとにね、どうなってもいいんだ。友達でもいいし、付き合ってもいいし。どっちにしろ、仲良くなれる人だと思うから。それがね、仲良くなれるのがね、一番大切。」
友達には強がりを言ってたって、そんなのが口先だけの強さなんだって事は自分が一番良くわかってる。彼がはっきりしなかったから傷ついた彼女のことも気にしてる。傷つきたくない。でも、惹かれる。私も彼女と同じ苦しみを味わうことになるのかな、と心配になる。でも、私は今、特定の彼氏が欲しいわけじゃない、ただ、一緒にいて、楽しくて、ふざけあえて、でも充分男の匂いを嗅がせてくれる人といたい、と思ってるだけだから・・・。それが、誰でもいいわけじゃない所がややこしい。だから、たまにそうそう、こういう人よ、こういう人と時間を共有したいの!って、人を見つけると、入れ込んでしまう。特定な彼氏が欲しいわけじゃなくて・・・、なんて理論やモットーは頭の片隅に追いやられてしまう。はっきり言って、とても恐い。リスク無しの恋愛などあり得ないのも分かってる。でも、恐い・・・。

「うん。いとこがさ、ちょっとした新年会やるんだよ。何も予定がないんだったらさ、一緒に来る?結構、面白い奴らだしさ、楽しめると思うんだけど。どう?」
「えーっと。いいの?ほんとにいいのかな?お邪魔とかじゃないわけ?」
「全然。来る?これからならまだ電話できるから、それならちょっと連絡しなきゃなんないけど。」
「うん。そうだね。楽しそうかも。ほんとに良いんだったら、じゃ、一緒させてもらおうかな。」
「そう。じゃ、さ、あまり遅くなる前に連絡しなきゃなんないから。明日、また連絡すっから。とりあえず、明日の午後。じゃな。」
「うん。お休み。」

うーん。淋しくなりがちなシーズンにちゃんと気を使ってくれるような人が周りにいてくれて、良かったー、いい友達になれると良いな、と思う側から既に、これはどういう事なんだろう・・・、と、モクモク疑惑の暗黒の雲が立ち込めていた。どっちにしろ噂は広まらないように気を付けようとは思った。

彼の言う、いとこの新年会、は、実は割と年と親等身の離れた、どちらかといったら、親戚の新年会だった。正直、びっくりした。何だかみんなに、「友達だよ」って、紹介されたけど、周りはほとんど30代以上か10才未満で、しかも、家族以外の人を連れてきてる場合は内縁の・・・、という関係だったから、周りはもちろん、みんな、「友達」ね、はい、って感じだった。友達に言わせれば、それは明らかにデートだよ、って言われてから初めて、そうだったか、と、ハッとしたし。私がお間抜けなのかも知れないけど。60代のはとこの人にさよならを言う時も、「また・・・、会うでしょう。何か親戚の行事がある時は、きっとまた来るでしょう?」って言われたし。気に入られたんだなー(いつも通り)、と思った。でも、実は、これが彼と出かけたのが初めてです、とはとても言えなかった。言い出せるような雰囲気じゃなかったなー。

彼と二人きりになると、いつも黙りこくってしまった。彼女のことが気になったから。彼のことを見るたびに、かっこいいな、いいやつだな、と思う度に、一体何があったんだろう、実は見かけよりもずっとひどい人なんだろうか、私には見抜けないところがあるんだろうか、って、考えずにはいられなかった。で、こんな事を考えてるとはまさか言えない(と思っていた)から、結果、黙り込んじゃう。自分から、損な所に引っ込んじゃってた訳だ。事情を知ってる人と話して、やっぱり思ったとおりの、今の私には都合のいい人だ、と確認した今晩は肩の荷が落ちたような気がして、気が晴ればれ。うーん。爽快。

でも、やっぱり恐いんだけどね。だって、本当に恋に落ちちゃったら、悔しいじゃない。恐いじゃない。ねー、そうでしょう?



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