2005年11月21日
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普段の日常生活の、すべてのしがらみから切り離され・・。
トランクひとつ持って、どこへ行っても、どうなってもいい、という一種過激なものが、人間のどこかには入ってる。

『旅』または『旅に出る』・・・こんな夢想がなければ、人間は生きてゆけない存在のような気がする。

そろそろ雪の便りを聞く頃には、ムーミン谷のトロールたちも長い冬に備えて、冬眠の準備で忙しくなる。

同じ頃には、南の国へのスナフキンの旅立ちがある。
春の訪れまでには、長い長い旅だ。

***   ***   ***   ***


長篇小説の多いヤンソンのムーミン物語のなかで、「ムーミン谷の仲間たち」は、短編集。
ひとつひとつの短篇小説が、ひとつづつのキャラクターの物語になっていて、脇役たちの思いがけないエピソードや真実が明らかにされています。


以下↓お気に入りのいくつかのフレーズをちょっとだけ紹介します。

『なぜ、みんなは 僕を一人ぼっちでぶらつかせといてくれないんだ。もしぼくが、そんな旅のことを人に話したら、僕はきれぎれにそれを吐き出してしまって、みんなどこかヘ行ってしまう。そしていよいよ、旅がどうだったかを ほんとうに思い出そうとするときには、ただ じぶんが話したことを思い出すだけじゃないか。そういうことを、どうしてみんなは、わかってくれないんだ』

そして、あおむけにねて、春の空をながめました。
彼の真上は、澄んだ紺色をしているし、
木の梢の上のほうは、海のような色をしています。

彼のぼうしの下のどこかで、あの調べが動き始めました。

 ----第一部は あこがれ
     第二部と第三部は 春のかなしみ。

     それから、そうです。
     たったひとりでいることの、


三月のすえの、あるよく晴れた、おだやかな日のことでした。
北へ北へとめざしてきたスナフキンは、まだ山の北がわに雪が消え残っているあたりまで来ました。
彼は南のふるさとを出て、小鳥がさえずっているのなんかをききながら、だれにも会わずに、一日じゅう歩いて来たのです。
歩くのは、大して苦労じゃありませんでした。
ーーランドセルは、もう殆どカラでしたし、心には、なんの気にかかることもありませんでしたから。


あしたも、きのうも、遠く離れていました。

ムーミントロールは、いつでもなにかを待って、あこがれています。
ムーミントロールは家にいて、スナフキンの来るのを待ちこがれ、スナフキンを崇拝しているのです。
それでいて、いつでも言うのでした。
「もちろんきみは、自由でなくちゃね。」
「きみがここをでてゆくのは、当然ですよ。」
「きみがときどきただひとりになりたいという気持ちは、ぼく、よくわかるんだ。」って。

そのくせ、そう言いながらも、ムーミントロールの目は、かなしみでまっくらになり、だれがどうなぐさめてもだめなんです。

「ああ、あいつはいいやつだなあ、あいつは!」

スナフキンは、こうつぶやいて、また道をつづけました。

スナフキンは、いつでも自分の食事は、自分で煮るのです。
そして、よっぽどのことがなければ、他人のためには食事はこしらえません。
他人の食事のことなんか気にしないのです。
みんなはいすやテーブルにつくのが大好きで、中には食事の時にナプキンまでつかうものもありましたが、スナフキンには、そんなものはいりません。
あるヘムルなんかは、食事のたびごと服を着替えると聞きましたが、そんなことはとんでもないホラだと思っていました。

あんまり おいしくもなさそうに、スナフキンは そまつなスープを飲みました。
その間にも 彼の目は、しらかばの木のそばの みどり色のこけを、じっと見るともなく見ていました。


「おまえさん、あんまりおまえさんが誰かを崇拝したら、ほんとの自由は得られないんだぜ。」
(スナフキン)

   ***   ***   ***   ***

とにかく、おんなのひとはいったん結婚して家庭に入ってしまうと、気ままな旅など無縁のものと考えがちですね☆
でも、ところがどっこい♪
そうでもない、こんな考え方も、あるんですよっ!

主婦の日常を、いちど捨ててみる~ ☆ 川上弘美さん☆の、こんなエッセイ。

「スナフキン」と言っても、最近は「くまのプーさん」なんかと一緒で、アニメや各種キャラクター・グッズの、なにげにひたすらに可愛い印象をお持ちのひとも、多いんじゃないだろうか。どちらも、原作のイメージとはちょっと離れたものが、先行しちゃってる。

一連のムーミン物語に登場するスナフキンは、少し不恰好で冷たい部分を持ってるし、クリストファー・ロビンの大切なぬいぐるみ人形のひとつとして、出て来るプーさんの風貌は、ありふれたテディ・ベアそのものだ。

ただ、どちらの原作でもそうだけれど、おとなの読者が読んでもはっとするような、言葉そのものはやさしいけれど、まるで哲学的とさえも言えそうな深遠で魅力にあふれた会話を、その本の中に発見したり、する。

現実のト-べ・ヤンソンの、孤独を愛して、ひっそりと虐げられる存在を見つめ、世の中のありとあらゆるものに「美」を発見しようとする視線が、ムーミン・トロールの物語には満ちあふれている。
そして、その全篇には北欧独特の暗く永い冬の陰影が射して、時折はシュールな風景の中での登場人物たちの行動に、不条理な狂気の危うさを覗かせたりする・・不思議なムードの小説だ。

そして、個人主義を貫いて、自分の生活スタイルを他人に崩されるのを極端に嫌うスナフキンは、この日本の現実社会の中で見れば、身勝手で偏屈なおちこぼれの若者に映るんだろうか。

A・A・ミルンのクリストファーとプーを始めとするぬいぐるみたちの、懐かしくも可笑しくてちょっぴり哀しい、100エーカーの森で繰り広げられる、数々のエピソードは、ピーターパン物語のネバーランドのようにもどかしい。

何故って、もう二度とそこには戻れないから。時間は、通り過ぎてしまう。それも、楽しく美しく輝くひと時ほど、永遠に続くように思えて、一瞬で過ぎてしまうものだ。

   ***   ***   ***   ***

☆~あるいは、主婦のばっくぱっかー問題について!






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最終更新日  2006年04月10日 07時50分21秒
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