2009年01月28日
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原田武夫:春節(旧正月)に狙われた人民元を巡り交錯する思惑と構図
2009年 1月28日(水) 12時1分

IISIAが読み解くマーケットと国内外情勢

 26日、米国・ワシントンにあるジョージタウン大学で行われた講演における発言に、世界中の為替マーケット・ウォッチャーたちの注目が集まっている。講演を行ったのはドミニク・ストロス・カーン国際通貨基金(IMF)専務理事。そこで同専務理事は「人民元は過小評価されていると私はこれまで何度も確認してきた」と断言したのである。

 なぜこの発言が注目を集めているのかといえば、IMFの幹部は2006年以来、ここまではっきりと人民元の為替レートの妥当性について述べたことがなかったからだ。IMF部内で人民元を巡る為替レートについて議論がなされてこなかったわけではない。むしろ逆であり、まさに喧々諤々(けんけんがくがく)の議論がそこでは行われてきたのである。しかし、現在の中国経済と比較した場合、果たして現行の人民元レートが果たして妥当なのかどうかについて、これらの議論によっても結論が出されることはなかった。それがここに来て、専務理事という最高幹部が突然、断言したというのだからセンセーショナルなのである。しかも仮にこれがIMFとしての公式発言であると認定された場合、国際機関としての規約上、IMFは中国政府との協議を速やかに行わなければならないことになる。ところが協議は行うとしても、中国としてIMFより資金提供を受けていないため、IMF側からの要求に応じる義務は一切ない。つまり鳴り物入りで協議をしたところで、完全に空振りに終わる可能性が高いのである。そのことが人民元をめぐる諸問題についての協議を行うことにつきIMFが尻込みをしてきた最大の理由であることは言うまでもない。

 今回、IMFによる事実上の方針転換が金融マーケットに衝撃を与えているもう一つの理由が、このストロス・カーン発言に先行して米国勢がこれまでに無い勢いで中国批判を開始している点にある。オバマ新政権の要であるガイトナー財務長官は22日、米連邦上院財政委員会に対して書簡を発出。その中で「オバマ大統領は中国が為替を操作していると確信している」と明言したのである。これに対して中国当局はすぐさま強硬に反発しており、オバマ政権は発足早々にして、国内で強硬論を唱える連邦議会との関係で矢面に立ちつつも中国の面子を慮った対応に終始してきたブッシュ前政権当時の方針から「対中強硬論」へと大きく舵を切ったことになる。そしてそのような中、オバマ政権としてはかつて1980年代半ばに日本に対して強く要求したように、今度は中国に対して「内需拡大」を強く求めている。つまり「人民元を“不当”に安くして対米輸出の洪水を引き起こすのではなく、自国でしっかりとマネーを回し、富と繁栄のサイクルを回せ」というのである。

 対する中国側も状況が風雲急を告げる中、ただ手をこまねいて待っているだけなのではない。サブプライム証券など米国由来のリスク資産に基づく損失額が莫大なものであることを露呈しつつある中、世界的な金融メルトダウンが着々と進展しつつある。米国は当初、それを食い止めるべく、自国マーケットへの投資という形での“穴埋め”を豊富な外貨準備を抱える中国に期待し、IMFの場での議論(SWF(ソヴリン・ウェルス・ファンド)による対外投資ガイドラインである「サンティアゴ原則」の採択(昨年(08年)10月))を率先して進めてきた。しかし、泥沼化する米国経済の低落にもかかわらず対米投資を行うことはいかに潤沢な資金を持つ中国とはいっても正に「カネをドブに捨てる」ようなもの。「既に発展した沿岸部との比較で立ち遅れている内陸部への投資こそ先決」(中国銀行幹部)という議論を昨秋より俄かに展開し始め、米国からの要求を巧みに回避した。もっとも沿岸部との差が20年分に相当すると言われる内陸部を開発することは、中国マーケットでの内需拡大を必然的に導く。その限りにおいては、オバマ政権による要求に合致する方向へと自らを追い込んでいるように見えなくもない。

 ただし、中国勢としてはいわば「PLAN B」を思い描き、実現させつつあることも見逃せない。資源国、とりわけアフリカ諸国を相手にその資源を集中的に買い付ける一方、ターゲットとなったその国におけるインフラ整備プロジェクトを一手に引き受けることで、中国を起点とした外需という意味での「富と繁栄のサイクル」をも創りつつあるのである。日本ではあまり報じられないがその勢いはすさまじいものがあり、ボツワナでは国際空港の建設を始めたものの、現地当局の建築許可すらとることなく着工したため、中国側関係者が逮捕・拘束されたという“珍事件”すら最近発生しているのである。

 米欧勢の思惑が交錯する中、「内需拡大」か、はたまた「資源を豊富に抱えた途上国を相手にした外需拡大」か。中国勢としてはマーケットにおいて身動きの取れない春節(旧正月)の休暇中に仕掛けられ、休み明けとなる2月2日以降に中国勢が見せる対応はとりわけ要注目であるといえよう。(執筆者:原田武夫<原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA) CEO>)





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最終更新日  2009年01月28日 13時10分00秒
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