船出にあたって


イギリスの有名な帆船物語「ホーンブロワー・シリーズ」にちなんでいます。
セシル・スコット・フォレスター作のこの物語は、ナポレオン時代前後に
ホレイショ・ホーンブロワーが候補生から提督になるまでを描いた
長大な冒険ストーリーです。

主人公のホーンブロワーは、船酔いに弱いけれど機知に富み、
勇気があるというよりは、部下にしめしがつかーん! なんて理由で
結局数々の大勝利をおさめてしまう、実にヒーローらしくないヒーロー。
世のお父さんたちにもお薦めしたい作品です。

私はこの「ホーンブロワー・シリーズ」を妊娠中に読みましたが、
そこで戦闘シーンに負けずたびたび出てきた描写が、航海の準備風景。

18世紀の船長たちは、帆船に100日分の食料と水を蓄えて長い航海に備えました。
荒くれた乗組員をそろえ、大海原に出るとそこは風任せ、波任せの道なき道。
途中、何ヶ月も食料はおろか水も補給できない事態もあります。
しかし、コンパスを読み、星を読み、島影を読むことによって、
船長たちは冒険を着実な旅路にしてきたのです。

100日分のサバイバル物資。
これだー、と思いましたね。まさに私がしていたことは。

私が子供を生むにあたってまずしたことは、
子育てに便利な家=船を見つけることでした。
日当たりがよく静かで、買い物が便利で駅が近い。
パートナーと両親の協力が得られなくなったとき、
始めたのは3ヶ月間、丸々冬ごもりしてもいいように
食料その他をこの小さな船に蓄えることでした。
3ヶ月、というのは出産前後の身動きできない状態を
ひとりで乗り切るために多めに見積もった時間です。
出来るだけ荷物は減らし、必要な米はスーツケースで買いに行き、
冷凍庫はストックでいっぱいにして、
それからタクシーに乗って病院に向かったのです。

そして、とらのすけという新たな乗組員を得て、長い航海が始まりました。
手漕ぎボートにGPSも積まず、
北極星だけを頼りにハワイを目指すような、
頼りない船、頼りない船長ですが、わくわくしています。
この旅はどんなものになるんだろう。
どんな景色に、そしてどんな人たちに出会えるのだろうと。

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