日本語はダメか2

日本語はダメか2

2008.12.26
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カテゴリ: 尊厳 自立 発想



 痛ましかった。痛ましすぎた。
 あの食べ方。
 冷凍食品しか食べていないようなことも言っていた。料理も作らない母親も、夫の死から一ヶ月で、少しずつ元気を取り戻しているらしい。
 人気(ひとけ)をあれほど恋しがった心。
 家の中では会話もないようだ。弟は大学4年生らしいが、就活のことについても進路についても何も関心を持っていない。
 がつがつ……まさにそんな感じの孤独のむき出し。

 ポケットに爪切りを持っていた。大事なものだったが、彼に差し出した。
「爪を切っておくんだよ」


「ここはね、飲食をする場なんだ! 外でやりなさい!」彼の近くへ行って語気を強めた。
 ああ、そうなんですか、と言うような返事で外へ出て行った。

 ヨウスケが感心した。
「うるせえな、とか反発もしないで(センセイの)言うことを聞くんですね!」

 これまでどのようなことを身につけてきたのか。言われてきたのか。
 言われたこともなかったのか。
 君は孤独地獄のどん底であえいでいるのか。「仰げば尊し」も知らない、と言った。新聞は読まない、TVは見ない。我が家のキッチンに腰を下ろした際に、テレビのニュースで、飯島愛の死を知ったくらいだ。

 2012年12月12日(マヤ暦)には、何かが起きる、よい人にはよいことが、悪いヤツには悪いことが、などと言うことには非常に興味があるようだった。背中が痛い、胸がつかえる……それも2012年に関係があるのです、と。

 コチラが歌ったのは「子守歌」系が多かった。偶然だろうが、彼に聞かせるような気分だった。
 一計を案じた。「ただで飲み食いというのは、おいしくないだろう。五百円出しなさい」

 さっき家で聞いたことだが、まだ勤め始めたばかりで、日数が足りないまま年末年始の休みに入ってしまった、月給を貰っていない、とのことだった。コンピューター関係の仕事で、会社の面倒で資格も取った、と言う。
 ふっと気になった。来年になってきちんと出社できるのだろうか、と。

「ママに詫びなさい」と催促した。トイレをあんなにも汚したのだ。
 目に「元気」が少し戻ってきたように見えた。
「あんまり喋らなかったが、楽しかったかい」


 ホリさんは少しおねむになったようだった。「あ、もうお時間だものね」とママ。
 10時、駅前でホリさんと別れた、左と右へ。二人でまた歩いて帰った。風が冷たかった。バス通りではなく、木々の生い茂る裏道を通って。昔、家へ帰りたくなくてベンチで眠ったりした公園の脇を通って。
「こんな道、知りませんでした」
 地元の小学校・中学校を卒業した彼。元気な時は「この辺りで知らないところはない」と言っていた彼。

 人が「知る」とは、どこからどこまでか。

 我が家に着いた。数時間前にいかにも窮屈そうに履いた靴下を脱いだ、ジャンパーを脱いだ。「ありがとうございました」
 自転車をガレージから出した。「あの、センセイのメールアドレス、分かりますか」
 新しくしたばかりだった。「gym……」彼は携帯に打ち込んだ、こちらの動きをキャッチして点いたり消えたりする照明の光を頼りに。

「気をつけてな、転ぶなよ」
 万感の思いで言葉を投げた。 





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最終更新日  2008.12.26 07:36:00 コメントを書く


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