日本語はダメか2

日本語はダメか2

2011.09.07
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「や ま な し」……言葉とは、単に文字に表されたものだけではない。その文字を使ったヒトの心のその奥をこちらが感じなければならない。
 そうでなければ、ただ単に言った言わないだけで終わってしまう。
 二行三行程度の「つぶやき」の世界とは違う。
気の合うなかまと一緒の時間を持つと、言葉への愛着および探求心がいや増す。

 さて、とすると、宮沢賢治は「やまなし」の中で何を示唆しようとしたのだろうか。

 以下に、「クラムボン」に関する諸説をおおよそ年代順に並べてみよう。


 ただし、各研究者の言葉は、その時点における意見であることをお断りしておきたい。
 つまり、更なる研究の結果として、現在では別の意見をお持ちかもしれぬ。なお、敬称は略させていただきます。

1、アメンボ説(昭和14~43年)
 この説が研究初期の主流を占めたのは、十字屋版全集の注に出たことが影響している。新聞掲載された無校訂のものは二カ所がクラムボンではなく「クラムポン」になっていた。
 初期形原稿が公表されるまでこの「クラムポン」が単なる誤植であるかどうかは定かではなかった。 おそらくここからの連想で、英語の「cramp」「clamp」により、かすがい・気根と解釈され、それがアメンボの作る形相と似ていることから類推されたと思われる。現在ではあまり支持されない。

2、小生物説(昭和46年)
 アメンボ説の亜流。恩田逸夫氏らが諸説の一つとして述べ、プランクトンや川えびが挙げられる。ゲンゴロウ、水すまし、といった説も。しかし、現在ではそれほど支持されていない。

3、蟹の吐く泡説(昭和?年~現在)
 誰が言い始めたかは定かではないが、現在まで支持されている考え方の一つ。第二章の兄弟の泡くらべとも関連づけて考えられる。「やまなし」を読んだ子供たちに「クラムボンとは何か」を質問したときに必ず出てくる答えの一つでもある。
 後の「crab+bomb説」とも合致する。

4、光説(昭和?年~現在)

「魚がこんどはそこら中の黄金の光をまるつきりくちやくちやにして」という記述に注目すると出てくる説でもある。クラムボンは魚の行き来に影響を受けており、その点でここの記述と一致する。

5、crabからの連想説(昭和54年~現在)
 蟹の英語、crab とクラムボンが似ていることから、ここからの連想、あるいは、crab+bomb(泡)とするもの。新修版全集で小沢俊郎氏がこの説をあげ、後に続橋達雄氏もこれに共感を表す。

6、蟹の母親説(昭和?年)
「やまなし」に母蟹が出てこないことから、このような説も出てくる。


7、蟹語説(昭和60年~現在)
 最初に「蟹語」という言葉を使ったのは谷川雁氏ではないかと思われる。
 以後、他の各説と共にこの説は用いられ今に至る。
 したがって一つの説というよりも、クラムボンを把握するための一つのキーワードである。
 その後、「蟹語クラムボンの意味は何か」という方向と、「蟹語であるから理解できない(理解しない)」という方向とが明確に分かれてくる。

8、解釈してはいけない説(昭和60年~現在)
 現在の主流の一つ。様々に想像できるところに価値があるとされ、研究者が意味を固定することを避ける傾向が強くなっている。
 とりわけ教育の世界では、現在の理解偏重主義のアンチテーゼとしても、この説が重要視される。

9、全反射の双対現象として生じる外景の円形像説(平成16年)
 物理学を専門とされる伊藤仁之氏による説。水中から水面を見上げると、外界の様子は、光線の屈折により、丸く見える。光説の一つであるが、賢治ならではの自然科学の観点を取り入れた点で秀逸な説。

 かなりの部分の引用ではあるが、あまり意味を追求しないで「呪文」のような言葉として受け入れる、という説も有力になっている。
 言葉とは、すぐに理解出来る意味だけではないところの「魔術的・呪文的」響きを含んでいる。

 研究とは、後世への導きであり、ヒントであろう。
 それを敬意をもって研究の一助にする……それを認める役目も担っていることを視野に入れて欲しい。





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最終更新日  2011.09.07 21:35:15 コメントを書く


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