ヨカッタ探し

ヨカッタ探し

October 7, 2006
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カテゴリ: 読書ろぐ(mystery)
本格的に秋学期が始まり、1週間…。
ほ、本が読めない
電車内、就寝前、空き時間…活字は追ってるんだけど、
文献、論文ばかりで、趣味の本が読めない
う゛ーーーややストレス溜まってるかも。

やっと週末です。
やるべきことは置いといて、整理した本棚から本を1冊。
北村薫さんのデビュー作 『空飛ぶ馬』 。


ヒロインの女子大生”わたし”は19歳。
ふとした縁で、大学の卒業生でもある噺家・春桜亭円紫師匠と知り合い、
”わたし”が出会う幾つかの謎を、円紫師匠が鮮やかに解きほぐしていく物語。
大学の先輩後輩でもある2人が出会い、共通の師の記憶に残る棘をスッと
円紫師匠が抜いてみせるのが「陰暦五月の梅雨の晴れ間」(「織部の霊」)。
それから、7月末の「砂糖合戦」では、冷夏にうっかりノースリーブで渋谷へ着た
”わたし”が円紫師匠に「家なき子」と喩えられ、次の「胡桃の中の鳥」は
夏休みに”わたし”が友人達と山形蔵王へ円紫師匠の独演会を聞きにいく話。
本作中でもっとも「辛(から)い」結末となる「赤頭巾」は10月のお話で、
そこでは憧れの女性の選んだ道に思わず顔を覆ってしまう”わたし”も、
ラストの「空飛ぶ馬」の中では、クリスマスをむかえ、その日、20歳になる。

”わたし”にこんな言葉を贈る。
「-どうです、人間というのも捨てたものじゃないでしょう」

改めて読んでみて、一つ一つの話も、その謎解きもさることながら、
一連の物語の流れ、全体としての構成が素晴らしい!!と思う。
前作でのエピソードが次の話に続き、出会う謎を通して、

それを限りなく温かい目で見守っている、円紫師匠の眼差しと。
これはシリーズもの、という頭で読んでいたので、これまでは
気づかなかったのだけど、この1作でも完成形というか、一つの形
を呈しているんだな、と思いました。
…といいつつ、やっぱりファンとしては、『朝霧』以降の”わたし”の姿も
見たいなぁとも思っちゃうのだけど

それから、今回読んでハッとしたのは、3話目「胡桃の中の鳥」の1節。


  私はすぐに、このところ連日報道されている母親に置き去りにされた子供達のことを思った。
 そのうちの三歳の女の子は、兄と兄の友達に殺されたのだという。


…これって、映画「誰も知らない」のモチーフとなった、
西巣鴨の子ども置き去り事件、のことだよなー。
単行本『空飛ぶ馬』の刊行は1989年で、事件が起きたのは1988年のこと。
わたしが初めて読んだのは文庫だったし、それも文庫発売すぐ、では
なかったから、1997年とか98年とかそれくらいだったんじゃないか、と思う。
だからその頃の話だとなんとなく捉えていて、それがちっとも
違和感なかったもんだから、ずっと気づかなかったけれど。
そうか。”わたし”ってお姉さんだったんだぁ~。
今では、『朝霧』の”わたし”の年齢も追い抜かしてしまったけれど
と、なんか不思議な感慨に浸りました。
それにしても、確か『六の宮の姫君』の中で、北村さんは”わたし”に
ドラマをやるなら新しい筋はいらない、菊地寛の『真珠夫人』でもやればいい、
というようなことを言わせていて、その何年後かには、実際に
『真珠夫人』がドラマ化されて人気を博し…
まるで時代を見通しているかのようだ、と思ったものだけれど。
こんなところにも…。
いやいや、この事件がそれだけ当時の人の心に残った、ということなんだよね。
自分の作品の中で触れずにはいられないほど。
その事件をもう一度、捉えなおして作品化したいと思うほど。
今はなんだか、そんな事件が多過ぎて、わたしなんかは「ああ、またか」
と思っちゃう。神経が麻痺している。
いいことじゃないのはわかってるんだけど…。

最後、脱線してしまったけれど
時代を超えて色あせない魅力、何度読んでも新しい感動がある、
心に残る何かがある…平成の名作だな、とつくづく思ったのでした。





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最終更新日  October 8, 2006 02:20:26 AM
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