東方見雲録

東方見雲録

2023.03.14
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カテゴリ: 郷土


© 朝日新聞社

島根の優れた景観づくりをたたえる島根県主催の「しまね景観賞」の審査委員長で歴史学者の藤岡大拙(だいせつ)・島根県立大学短期大学部名誉教授(90)が「古代の歴史とその風景」と題して、島根の景観の魅力や、人々の気質との関わりについて講演した。

講演は同賞が今回で30回になることを記念し、松江市で2月に行われた。

 出雲市斐川町出身の藤岡さんは、まず古代出雲について、「荒神谷遺跡(出雲市)からは358本もの銅剣が見つかった。加茂岩倉遺跡(雲南市)の銅鐸(どうたく)の数も圧倒的だ。これらは古代出雲が日本列島で最も栄えていたことを物語っている」と述べた。

 ところが、古代出雲は千数百年前、大和朝廷に敗れた。「その打撃がいかに大きく、屈辱だったか。それから出雲国の先祖たちは、じっと閉鎖的な国をつくって生きてきた」として、敗北感が出雲人に大きな影響を与えたと強調した。

 さらに、現在の益田市出身の作家・田畑修一郎が書いた紀行文「出雲・石見」を引きながら、「水と空と雲がつくりだす微妙なたゆたい、揺らぎが、出雲人の繊細さなど、あらゆる出雲的なものに反映している」と述べ、風土や景観が出雲人の感性にもたらした影響を指摘した。

 出雲の景観で象徴的なのが宍道湖の夕景。藤岡さんは、作家の渡辺淳一が「みずうみ紀行」で「宍道湖の落日の美しさは、日本の湖のなかでも抜きんでている」と書いたことを紹介した上で、「宍道湖の夕日の美しさには、人間の魂を浄化させるような不思議な力がある。その力はどこから来たかといえば、古代出雲が大和朝廷に敗れたことによるのではないか。物理的な美しさだけでなく、霊的、スピリチュアルなものがある」と指摘。古代出雲の繁栄と敗北の歴史が宍道湖の夕景の美に宗教的な深みを与えていると説いた。

 一方、石見の景観について藤岡さんは、「万葉集」の柿本人麻呂の長歌を取り上げ、「出雲の海岸線が複雑であるのに対し、石見の海岸線は直線的」と指摘。さらに田畑修一郎の「出雲・石見」を紹介しながら、屋根に赤い石州瓦がふかれた石見の町並みに触れた。「石州瓦や、飯銅瓶(はんどがめ)と呼ばれる大きな水がめを作り続けるところに、石見人の一途さ、心意気が反映されている。石見には阿弥陀仏をひたすら信仰する浄土真宗の門徒も多く、そこにも石見人の一途さが表れている」と述べた。(大村治郎)
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Last updated  2023.03.14 07:00:10
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